第一部 21話 精霊
ー/ー「悪くはなかったぞ?」
ブラウン団長が慰めるように言った。
「遠距離がぁ……」
対する俺は課題が浮き彫りとなって落ち込んでいた。
「ふふふ。
まあ、良く考えなさい」
今は森の崖の上で小休憩中である。
森の深部から帰ってくる途中で、ちょうどアリスが落ちた近くだ。
ブラウン団長が見たいと言ったので案内した。
「では、始めるか」
ブラウン団長がおもむろに立ち上がる。
「?」
釣られて俺も立ち上がる。
崖下の森をブラウン団長は眺めている。
「ジャック」
「ん?」
ブラウン団長の囁くような声に軽い返事があった。
続けてローブのポケットから何かがもぞもぞと出てきた。
「うわ!」
「なんだ、精霊を見るのは初めてか?」
反射的に頷く。
これが精霊なのか?
「こいつは私の使い魔でジャックと言う」
「どーも」
ジャックと呼ばれた精霊は手の平に収まるサイズで、少年のように見える。
礼服でしっかりと固めて気軽に手を上げて見せた。
「こちらこそ……え? ブラウン団長の使い魔?」
なんだか俺の印象と違う。
前衛を任せられるような存在をイメージしていたのだが。
「よし、行くぞ」
「はいよ」
ブラウン団長とジャックは散歩にでも出かけるような気軽さで始めた。
「風?」
決して強くはない風がブラウン団長を中心として流れてゆく。
緩やかに、だけど満遍なく流れていく感覚がある。
「ふむ」
一つ頷いて、ブラウン団長は右手を伸ばした。
「魔弾よ、貫け」
それはいつもの『命令』だった。
だが、そこに込められた『魔力』の濃度を感じた気がして全身が粟立った。
――そんな。
百を優に超えるであろう魔弾がブラウン団長の頭上に浮かび――放たれる。
まさしく豪雨のように魔弾が崖下の森に降り注いだ。
「百三十二匹は倒したよ。
十二匹は撃ち漏らしだね」
雨が降り止んだ後、ジャックが結果を告げた。
「ふむ、やむなしか。
倒した魔物は村の人たちに後で回収してもらおう」
「あ、あの、百三十二匹? は命中したのですか?」
「ああ、そのようだな」
言葉が出ない。
何気なく告げた言葉の重みは凄まじい。
俺がその内の九匹を倒すためにどれほど苦労したのか。
「いや、命中させたのは私ではない」
「俺だ!」
得意げに自分を指さすジャック。
「?」
「風の精霊であるジャックには索敵と精度向上に専念してもらっていてね」
「……風の精霊」
「風の流れで生物の位置を把握してもらい、その上で魔弾の軌道修正をしているんだ。不意打ちなら九割くらい当たるぞ」
――この距離で九割の命中率。それも百発以上を同時に。
この人には驚かされてばかりだった。
「精霊ってすごいんですね?」
ジャックが満面の笑みで頷く。
それはそれは無邪気な笑顔で見ていて清々しい。
「そうでもないぞ?」
風の精霊が表情を驚愕に変えて自分の主を見た。
ガーン、と聞こえてきそうな顔である。
「使い方だ。
使い方次第なのだ」
真剣なブラウン団長の表情に、その意味を深く考える必要があると感じた。
ブラウン団長が慰めるように言った。
「遠距離がぁ……」
対する俺は課題が浮き彫りとなって落ち込んでいた。
「ふふふ。
まあ、良く考えなさい」
今は森の崖の上で小休憩中である。
森の深部から帰ってくる途中で、ちょうどアリスが落ちた近くだ。
ブラウン団長が見たいと言ったので案内した。
「では、始めるか」
ブラウン団長がおもむろに立ち上がる。
「?」
釣られて俺も立ち上がる。
崖下の森をブラウン団長は眺めている。
「ジャック」
「ん?」
ブラウン団長の囁くような声に軽い返事があった。
続けてローブのポケットから何かがもぞもぞと出てきた。
「うわ!」
「なんだ、精霊を見るのは初めてか?」
反射的に頷く。
これが精霊なのか?
「こいつは私の使い魔でジャックと言う」
「どーも」
ジャックと呼ばれた精霊は手の平に収まるサイズで、少年のように見える。
礼服でしっかりと固めて気軽に手を上げて見せた。
「こちらこそ……え? ブラウン団長の使い魔?」
なんだか俺の印象と違う。
前衛を任せられるような存在をイメージしていたのだが。
「よし、行くぞ」
「はいよ」
ブラウン団長とジャックは散歩にでも出かけるような気軽さで始めた。
「風?」
決して強くはない風がブラウン団長を中心として流れてゆく。
緩やかに、だけど満遍なく流れていく感覚がある。
「ふむ」
一つ頷いて、ブラウン団長は右手を伸ばした。
「魔弾よ、貫け」
それはいつもの『命令』だった。
だが、そこに込められた『魔力』の濃度を感じた気がして全身が粟立った。
――そんな。
百を優に超えるであろう魔弾がブラウン団長の頭上に浮かび――放たれる。
まさしく豪雨のように魔弾が崖下の森に降り注いだ。
「百三十二匹は倒したよ。
十二匹は撃ち漏らしだね」
雨が降り止んだ後、ジャックが結果を告げた。
「ふむ、やむなしか。
倒した魔物は村の人たちに後で回収してもらおう」
「あ、あの、百三十二匹? は命中したのですか?」
「ああ、そのようだな」
言葉が出ない。
何気なく告げた言葉の重みは凄まじい。
俺がその内の九匹を倒すためにどれほど苦労したのか。
「いや、命中させたのは私ではない」
「俺だ!」
得意げに自分を指さすジャック。
「?」
「風の精霊であるジャックには索敵と精度向上に専念してもらっていてね」
「……風の精霊」
「風の流れで生物の位置を把握してもらい、その上で魔弾の軌道修正をしているんだ。不意打ちなら九割くらい当たるぞ」
――この距離で九割の命中率。それも百発以上を同時に。
この人には驚かされてばかりだった。
「精霊ってすごいんですね?」
ジャックが満面の笑みで頷く。
それはそれは無邪気な笑顔で見ていて清々しい。
「そうでもないぞ?」
風の精霊が表情を驚愕に変えて自分の主を見た。
ガーン、と聞こえてきそうな顔である。
「使い方だ。
使い方次第なのだ」
真剣なブラウン団長の表情に、その意味を深く考える必要があると感じた。
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