ユーステッド、発奮す

ー/ー



 ぽろぽろとこぼれるように何故か話してしまった。
 こんなとりとめない話を黙ってしっかり聞いてくれるとは思わなかった……しかも、

「で、でも……もしかしたらユーステッド様のお父様は貴方のその気持ちを分かった上で追放という処分にとどめ自由に生きるようにと……」

 とても5歳児とは思えない発言で僕に対して気を使ってくれたぞ……また情けなくなりそうだ。

「はは……それはないよ。父上はそんな風に僕を見ていなかった。こうやって口に出してあらためてわかったんだ。でも、もしそうだったらうれしいけど……ね」

 鳥の声と風で揺れる木々のざわめきだけが辺りを包む……沈黙を破ったのは、リリーだった。
 少し考えこんだ表情をしてか、話始める。

「えっと……じゃあ、今ここにいるユーステッド様が本当のユーステッド様ってことになる……ということですか?ずっと我慢して偉そうにしていたんでしょう?そんな偉そうなユーステッド様想像できないですね……わたしとしては今のちょっとマヌケなユーステッド様の方がとっつきやすいですし話やすい……あ」

 遠慮のない内容に、カイと僕は一瞬固まってしまった。

「リリー……もう少し発言の内容は選んで口にした方がいいよ……」
「マヌケ……そうかな……そうかも……そうだよね……」
「あ、えっと!ちがくてですね!デルフィヌスに住んでいるみんな自由な人が多いですし!自由になった今のユーステッド様ならすぐ馴染めるだろうなって!だってわたしの話もちゃんと聞いてくださったでしょう?わたし好きなものの話をするととまらなくなっちゃうのわかってるんですけど……ずっと嫌な顔もしないで聞いてくださったでしょう?」

 だから最初の時のリリーと、今のリリーは態度が違うのかな?大分くだけ過ぎだけれど……そんな風に感じてくれていたんだ。

「元々優しさに(あふ)れていて……立ち姿とか高貴な方なんだなってわかるんですけど……身分関係なくわたしに接してくれてしっかり話も聞いてくれて……周りに気配りもできていたのに……それをしまい込んじゃっていたってことですもんね?」
「ボクがこんなこと言うのは失礼かもしれないけど……故郷での環境がユーステッド様のいい所を潰してしまっていたのかな……」

 そうなのかな?素直にしていればもっと違っていたのだろうか?ちょっと泣きそうになる……。

「そ、そうなのだろうか?もしそうなら……僕はここでもう一度……」

 もう一度ここで大切なものを見つけて……愛することができる……?

「ティアのことも……間違えることなく……守ることができるだろうか」
「……それは聞き捨てなりません!」
「へっ?」

 カイの表情が変わる……なんで?
 メラメラと闘志(とうし)(いだ)いた瞳で僕を睨みつけてくるカイは自分の胸にバシッと手を当てて大きな声で言った。

「ティアを守るのは父の願いでもありボクの(ちか)いでもあります!」

 まぁまってくれ。
 ティアから僕のことを聞いているはずだろう?僕とティアが一緒になることは避けられないことのはず……確かにカイにとってティアは育ての母であるだろうし、大切に思っているだろうけど……父の願いって……まさか……?

「カイ……もしかして日記を……?」
「読みました……そうでなくてもボクはデルフィヌスとティアを一番に守るために今を生きています。ユーステッド様が義理の父となったとしてもそれは変わりません。なので……譲りません!」

 あの日記が不自然なところにあったのはカイが見つけて隠した……もしくは届かなくて落としてしまったからか。そうなると強敵だな……カイの圧が強い……相手はまだ子供だぞ……負けるな自分……!堂々としろ!

「ならば……僕とカイはライバルということになるかな?」
「そうなります……!」
「わかった……そういうことなら僕のことはもう様付けで呼ぶんじゃないぞ。年齢の差や立場など関係ない。今から僕と君は対等だ……負けないからな」
「ボクだって負けません……!」

 男同士、勝負の始まりの握手を交わす。

「え……えぇ……なんでそうなるんですか……?」
「これは男同士じゃないとわからない……」
「そうだよリリー。君は覚えておいて?ボクとユーステッドがライバルだということを!」

 リリーが呆れた顔になるのがわかった。

 グイっと残りのハーブティーを飲み干し、僕は颯爽(さっそう)本邸(ほんてい)の庭を後にする。もちろん、礼をして。
 礼儀を示さず去るなど、そんなところで負けていては勝負にすらならないしな……!これから忙しくなる……書斎(しょさい)の本をもっと片っ端から頭にいれて、もっともっとデルフィヌスのことを知って……それからティアのことももっと……あれからまだ会ってはいないけれど。
 そうだ!視察(しさつ)から帰って来た時に出迎えればいいんだ!今日まで僕は自分を見失っていた……だけど、もうそんなことにはならない。
 待っていても、ティアとの幸せな未来はやってこないのだから……!

「よしっ……!がんばるぞ!」

 素直な気持で向かい合えばきっと……!

 ******

「ふう……これだけ発破(はっぱ)をかければ大丈夫かなぁ……」
「え?カイ様……?ど、どういうことですか?」
「ティアがユーステッド様のことボクに話した時『まるでカイがもうひとり増えたみたい』って言っていたんだよ?これの意味わかる?リリー」
「えっと……こど……も……?」
「そう!ティアもティアで何を考えてあんな行動してるかわからないけど彼も彼だと思ったんだ。色々と理由はあったかもしれないけどボクの……デルフィヌスの義父(ちち)となる人でしょ?もう少しちゃんとしてもらわないと困るもん」
「でも……カイ様もティア様を大事になさっていて……」
「……ボクはデルフィヌスを守ることは出来るかもしれないけれどティアを『愛して守る』っていうのは彼とは違う別の形でしかできないでしょ?ティアにこれ以上寂しい思いをさせたくない。大切に思っているからこそのボクの行動なんだから……ちゃんとわかってくれていればいいけど……」
「以前から思っていたのですけど……カイ様って本当に5歳なんですか……?」
「……そうだよ?」


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 ぽろぽろとこぼれるように何故か話してしまった。
 こんなとりとめない話を黙ってしっかり聞いてくれるとは思わなかった……しかも、
「で、でも……もしかしたらユーステッド様のお父様は貴方のその気持ちを分かった上で追放という処分にとどめ自由に生きるようにと……」
 とても5歳児とは思えない発言で僕に対して気を使ってくれたぞ……また情けなくなりそうだ。
「はは……それはないよ。父上はそんな風に僕を見ていなかった。こうやって口に出してあらためてわかったんだ。でも、もしそうだったらうれしいけど……ね」
 鳥の声と風で揺れる木々のざわめきだけが辺りを包む……沈黙を破ったのは、リリーだった。
 少し考えこんだ表情をしてか、話始める。
「えっと……じゃあ、今ここにいるユーステッド様が本当のユーステッド様ってことになる……ということですか?ずっと我慢して偉そうにしていたんでしょう?そんな偉そうなユーステッド様想像できないですね……わたしとしては今のちょっとマヌケなユーステッド様の方がとっつきやすいですし話やすい……あ」
 遠慮のない内容に、カイと僕は一瞬固まってしまった。
「リリー……もう少し発言の内容は選んで口にした方がいいよ……」
「マヌケ……そうかな……そうかも……そうだよね……」
「あ、えっと!ちがくてですね!デルフィヌスに住んでいるみんな自由な人が多いですし!自由になった今のユーステッド様ならすぐ馴染めるだろうなって!だってわたしの話もちゃんと聞いてくださったでしょう?わたし好きなものの話をするととまらなくなっちゃうのわかってるんですけど……ずっと嫌な顔もしないで聞いてくださったでしょう?」
 だから最初の時のリリーと、今のリリーは態度が違うのかな?大分くだけ過ぎだけれど……そんな風に感じてくれていたんだ。
「元々優しさに|溢《あふ》れていて……立ち姿とか高貴な方なんだなってわかるんですけど……身分関係なくわたしに接してくれてしっかり話も聞いてくれて……周りに気配りもできていたのに……それをしまい込んじゃっていたってことですもんね?」
「ボクがこんなこと言うのは失礼かもしれないけど……故郷での環境がユーステッド様のいい所を潰してしまっていたのかな……」
 そうなのかな?素直にしていればもっと違っていたのだろうか?ちょっと泣きそうになる……。
「そ、そうなのだろうか?もしそうなら……僕はここでもう一度……」
 もう一度ここで大切なものを見つけて……愛することができる……?
「ティアのことも……間違えることなく……守ることができるだろうか」
「……それは聞き捨てなりません!」
「へっ?」
 カイの表情が変わる……なんで?
 メラメラと|闘志《とうし》を|抱《いだ》いた瞳で僕を睨みつけてくるカイは自分の胸にバシッと手を当てて大きな声で言った。
「ティアを守るのは父の願いでもありボクの|誓《ちか》いでもあります!」
 まぁまってくれ。
 ティアから僕のことを聞いているはずだろう?僕とティアが一緒になることは避けられないことのはず……確かにカイにとってティアは育ての母であるだろうし、大切に思っているだろうけど……父の願いって……まさか……?
「カイ……もしかして日記を……?」
「読みました……そうでなくてもボクはデルフィヌスとティアを一番に守るために今を生きています。ユーステッド様が義理の父となったとしてもそれは変わりません。なので……譲りません!」
 あの日記が不自然なところにあったのはカイが見つけて隠した……もしくは届かなくて落としてしまったからか。そうなると強敵だな……カイの圧が強い……相手はまだ子供だぞ……負けるな自分……!堂々としろ!
「ならば……僕とカイはライバルということになるかな?」
「そうなります……!」
「わかった……そういうことなら僕のことはもう様付けで呼ぶんじゃないぞ。年齢の差や立場など関係ない。今から僕と君は対等だ……負けないからな」
「ボクだって負けません……!」
 男同士、勝負の始まりの握手を交わす。
「え……えぇ……なんでそうなるんですか……?」
「これは男同士じゃないとわからない……」
「そうだよリリー。君は覚えておいて?ボクとユーステッドがライバルだということを!」
 リリーが呆れた顔になるのがわかった。
 グイっと残りのハーブティーを飲み干し、僕は|颯爽《さっそう》と|本邸《ほんてい》の庭を後にする。もちろん、礼をして。
 礼儀を示さず去るなど、そんなところで負けていては勝負にすらならないしな……!これから忙しくなる……|書斎《しょさい》の本をもっと片っ端から頭にいれて、もっともっとデルフィヌスのことを知って……それからティアのことももっと……あれからまだ会ってはいないけれど。
 そうだ!|視察《しさつ》から帰って来た時に出迎えればいいんだ!今日まで僕は自分を見失っていた……だけど、もうそんなことにはならない。
 待っていても、ティアとの幸せな未来はやってこないのだから……!
「よしっ……!がんばるぞ!」
 素直な気持で向かい合えばきっと……!
 ******
「ふう……これだけ|発破《はっぱ》をかければ大丈夫かなぁ……」
「え?カイ様……?ど、どういうことですか?」
「ティアがユーステッド様のことボクに話した時『まるでカイがもうひとり増えたみたい』って言っていたんだよ?これの意味わかる?リリー」
「えっと……こど……も……?」
「そう!ティアもティアで何を考えてあんな行動してるかわからないけど彼も彼だと思ったんだ。色々と理由はあったかもしれないけどボクの……デルフィヌスの|義父《ちち》となる人でしょ?もう少しちゃんとしてもらわないと困るもん」
「でも……カイ様もティア様を大事になさっていて……」
「……ボクはデルフィヌスを守ることは出来るかもしれないけれどティアを『愛して守る』っていうのは彼とは違う別の形でしかできないでしょ?ティアにこれ以上寂しい思いをさせたくない。大切に思っているからこそのボクの行動なんだから……ちゃんとわかってくれていればいいけど……」
「以前から思っていたのですけど……カイ様って本当に5歳なんですか……?」
「……そうだよ?」