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第52話 ORIGIN

ー/ー



突然連が立ち上がる。

「それじゃ、僕は行かなきゃいけない場所があるから」

「!?どこにいくの...?置いてかないでよ!」

サラが連の袖をつかむ。

「大丈夫。すぐに帰ってくるよ」

「......うん」

「ありがとう。大丈夫だよ、サラ。僕はもう、誰も傷つけさせないから」

「......!連......!」

こうして、連は“準備”を進め、再び外へと歩みを進めるのだった。




連らの住むマンションの下では、黒ずくめの者たちが待ち伏せをしていた。

公安だ。

すると、そこに何者かが下りて来た。

連だ。

リュックサックを背負っている。

「......君は」

「連」

「ああ、“彼”の息子だな」

「突然だが、送り出してほしい場所がある」

「何?いきなり何を─」

「命令だ。“オレ”に従え」

「っ...!!」

このとき、公安の者たちは、連から彼の父を彷彿とさせる底知れぬ威圧感を感じた。

公安は命令通り、連を車に乗せるのだった。




公安の車が到着したのは、首相官邸。

「ついたぞ」

「ああ。ご苦労」

そう言うと、連は車から降りた。

今の連は、これまでの優しい少年ではない。

連は堂々とした足取りで首相官邸へと足を踏み出すのだった。




「?お前は...」

警備の者は、連に接近する。

「連。八咫烏陰陽道...“140代目当主”だ」

「何用で来た」

「首相に会いたい。話さなければならないことがある」

「......父にそう言われたか?」

すると、連はこの世とは思えない鬼神のごとき目つきで相手を睨んだ。

「っ...!では何の用で─」

「言ったはずだ。会わせろと、な」

「用がなければ会わせられない」

と、そのときだった。

「何を言い争っているんだ」

「そ、総理!」

2人のもとにやってきた者...それは、内閣総理大臣だった。

「君は...彼の息子か」

「連だ」

「うむ。おそらく父に“報告”を任されたといったところだろう。入りなさい。“初仕事”を体験させてやる」

「.........」

警備の者は退いた。

連は総理を睨みつけながら、その後を歩くのだった。




「さ、ここが会議室だ。入りたまえ」

総理にそう言われ、連は会議室へ入る。

会議室の端々には、護衛の者が武装している。

「まあ座りなさい。......それで?“任務”は完遂したのかね?」

「......オマエは勘違いをしている」

「?なんだと?」

「オレがここに来たのは、任務完遂の報告のためではない」

そう言いながら連は席を立つ。

護衛の者たちは、連の突然の行動に警戒し、銃口を一斉に連に向けた。

「一体...お前は......」

総理も警戒を強める。

「オレがここに来た目的...それは、八咫烏陰陽道当主の継承を行ったという報告をするためだ」

「な、何を言っている。お前はまだ子供ではないか!」

すると次の瞬間、連は思い切りリュックサックを机上にたたきつけた。

ドン!という音に、総理は威圧されてしまった。

連は無言でリュックサックのチャックを開け、その“中身”を取り出し、突き付けた。

「───っ!!!」

総理は悲鳴を上げ、戦慄した。

護衛もこれには驚きを隠せない。

それは、連の父の首だった。

「これで分かっただろう。これより、八咫烏陰陽道の当主はオレであるとな」

「おい!護衛ィ!!」

護衛は皆総理の悲痛な呼び声に呼応し、連に銃を突きつける。

「貴様!悪戯にもほどがあるぞ!」

「......試してみるか?」

「何......?」

「悪戯かどうかを」

次の瞬間、連は文字通り“消えた”。

次の瞬間、護衛の一人の背後に回り、拳銃で射殺すると、その護衛からマシンガンを奪い取り、残りの護衛全員もあっけなく射殺してしまった。

タカの『神速』とエミの『必中』だ。

「ひいっ!!く、来るなあっ!」

連はへたり込んでいる総理ににじりよる。

「安心しろ。オマエを殺すつもりはない。死んでもらっては困る」

「......?」

「オレからの条件は、オレが八咫烏陰陽道140代当主であることを承認すること、そして、これ以上の干渉をやめること。いいな?」

「わ、わかった!条件を飲む!それぐらいならお安い御用だ!」

その後、総理は契約書にも迷いなくサインしてしまった。

連はこのとき、心の底から総理に対して、そして何より、この国に対して大きな失望を覚えたのだった。

ちなみに契約の内容はこうだ。

「連を八咫烏陰陽道当主であることの承認」、「八咫烏陰陽道への過干渉の停止」、「引き続き八咫烏陰陽道への支援は行うこと」

絶対に承認されないと思っていたが、すんなりと総理は最後まで契約書を読むことなくサインしてしまったので、連は拍子抜けした。

こうして、連たちは、その地位を確固たるものにし、安定した生活の確保を押さえることに成功したのだった。




それから2週間、彼らは学校へ行かないということを除いて、いつもの毎日を取り戻しつつあった。

しかし、そんな中でも彼らは自分たちの生きる意味を見失いつつあった。

が、




ある日のことだった。




”その日”......ヒロは何気なくパソコンでネットサーフィンをしていた。

と、そのときだった。

ネット掲示板を覗いていた時に、あるスレッドを見つけた。

そのスレッドのタイトルに、ヒロは妙にひきつけられるものを感じた。

そのタイトルには、『IS』、『少女』の2つの単語があったのだ。

ヒロは無意識にそのスレッドを開き、そして、その中で添付されていた動画のURLをクリックする。

「...成人向け?」

しかし、ヒロは好奇心に負けてしまった。

そのままそのサイトに飛び、ついに、動画を再生してしまった。



そこには、悪夢が映っていた。




「おい、ヒロ。どうしたよ?」

ヤスがヒロの様子がおかしいことに気づき、彼に近づく。

「あ?動画?なんだ、検索してはいけない系のやつでも見ちまったのかよ?」

周りの皆も明らかにヒロの様子がおかしいことに気づき、皆が彼の元へ集結した。

そして、皆、次に視線を移す。

その先にあった者は、『悪夢』だ。



彼らにとって、そこに映っていた”彼女”の姿は、忘れられないものとなった。

画面の向こう側に向けて助けを求めるような目。

それを見つめる欲望に満ちた男たちの目。

そして...

幾たびの地獄を経た後にあらわになる、画面の向こうを見つめる彼女の絶望に塗りつぶされた目。

彼らに、”生きる意味”が提示されてしまった瞬間だった。




「なあ、連。これから俺たちどうすんだ?まさかずっとここにいるわけじゃねえだろ?」

ヤスは胡坐をかきながら聞く。

「もちろん。“このまま”でいるなんて耐えられない」

連はそういいながら眉間にしわを刻む。

その目は、怒りと憎しみに燃えていた。

それは連に限らず、皆同じだった。

この日、連だけでなく、そこにいる誰もが誓った。

『必ず戻る』、と。




それから彼らはありとあらゆる鍛錬を尽くした。

体術、特殊能力、陰陽道...

できる限り、それら全てを伸ばした。




そして“あの事件”から6年が経過した。

当時、連らは15歳。

6年の間、世界中でたくさんのことが起こった。

戦争、『災厄』の復活と『解放軍』の結成、世界国家の崩壊と民族政府の出現、日本国・アメリカ合衆国の『復活』...

今や彼らは、激動の時代の真っ只中にいた。

そして彼らも、これからその時代の波にその身を投じていくことになる。

彼らは空港にいた。

そう、“あの事件”の始まりの場所であり、終わりの場所でもある。

「6年だ...ずっとこの日を俺は待ってたんだ...!」

ヤスは武者震いが止まらない。

「熟成された私たちの恨み...必ず晴らしてやる...!」

サラは拳を握り締めている。

「二度と笑顔でいられなくしてやるぜ」

ジュンは笑みを浮かべながらそう言った。

そこにいる誰もが、憎しみをぶつけられることに対する喜びで満ち溢れていた。

その目は、まさに狂気そのものだった。

ただし、一人を除いては。

「...なあ、引き返すなら今のうちだと思うんだけどよ...」

「何言ってんだよヒロ!!あいつらが憎くねぇのか!?」

ヤスはヒロに怒鳴る。

「そ、それは...!でも、これじゃアイツらとやってること同じなんじゃ─」

「ごちゃごちゃうるせえ!!いいから行くぞ!」

「......わかったよ」

こうして、ヒロも皆に続いた。

連は、そんなヒロを止めることはなかった。

連でさえ、“盲目”になっていたのだ。

こうして、飛行機は日本を発つのだった。




中東のある空港にて...

「えらく静かだな...」

ジュンは辺りを見渡しながらそう言った。

「無理もないわ。最近オリジンがシベリアを抜けたらしいもの。いつここに来るか分からないから」

「でもよ、都合は良いんじゃねえか?」

ヤスはそう言うと、乗り捨てられている軽トラを指さした。

「使わせてもらおう」

連がそう言うと、ヤスは筋力を増幅させ、窓ガラスを破壊してしまった。

「さ、入ろうぜ」

ヤスは堂々と入っていく。

「でもよ、俺たち、免許─」

「何言ってんだよヒロ!どーせここらに人はいねーんだ!アクセル全開よ!!」

そう言うと、運転席に乗り、鍵が差し込まれたままだったので、そのままエンジンをつけた。

「さあ、行くぜ!お前ら!しっかりつかまってろよ!!」

こうして、軽トラは猛スピードで砂漠を走り抜けていくのだった。





連は外の景色をいつまでも見つめていた。

そう、この景色こそが“あの日”に続く、『地獄の入り口』だった。

今度は自分たちが『地獄』を与える番だ。

連は、そう心の底で思うのだった。




「おい見えて来たぞ!」

ヤスがフロントガラスを指さしながらそう叫ぶ。

その先には、確かに“あの集落”があった。

「......変わってないのね」

サラがそう呟く。

「好都合だな」

タカがそう言うと、サラはうなずいた。

数分後、集落の前に来ると、一行は車から出た。

「おいお前たち、一体何の用で─」

次の瞬間、『神速』で背後に回り込んだタカによって、警備の者は刺殺されてしまった。

その後...

「連、準備は終わったぞ。これから俺はヒロの護衛に回る」

「ここは私たちにお任せください」

ジュンとレイがそう言うと、ヒロも続いた。

「“スイッチ”は俺が押す。大丈夫。やってやるさ。ここまで来たんだからな」

ヒロはボタンを見せながらそう言った。

連は2人の言葉に対し、うなずくと、集落を改めて見据える。

「さあ、始めようか」

こうして、一行は再び『地獄』へと足を踏み出すのだった。




集落に入ると、所々で変な目で見られた。

しかし、そんなこともお構いなしに一行は歩みをすすめた。

すると...

「おい、お前たち、一体どこから来たんだ!」

突然何者かが“聞き覚えのある声”でそう話しかけてきた。

「......!」

連はその顔を凝視した。

そう、その正体は、かつてここに来た時にもいた、この集落のリーダーだった。

「......ん?...!!お、お前らは...!」

リーダーも気づいたようだ。
驚きを隠せないでいる。

しかし、すぐに態度を改めた。

「ふん。どうせ復讐に来たのだろう。だが無駄だ」

「それはどうかな」

「何?」

次の瞬間、連は“あるもの”を取り出した。

マシンガンだ。

「なっ...!無駄なことを...!お前たち!こいつらを殺せ!!女子ども(おんなこども)は避難するんだ!」

次の瞬間、武装した男たちが大勢、総出で出てきた。
それに続き、女子どもは集落の外に行こうとし始めた。

「させるかよ!!」

そう言うと、ヤスとタカは女子どものもとへと向かって行った。

「なっ!おい!アイツらを狙え!」

「させない」

「!!」

次の瞬間、

連のマシンガンが火をふいた。

すると、武装した男たち一人一人の眉間を銃弾が貫いていった。

エミ、サラも連を射撃や爆撃などで援護する。

こうして、100人ほどいた武装勢力は数十秒で全滅してしまった。

「き、貴様...!」

「謝る気もないのか」

連はリーダーの眉間に銃口を突き付ける。

「ふん...!貴様らは神の敵だ!我々は正しいことをした!」

「“アレ”が正しいことなのか?」

「そうだ!正義のためなら、神は何をしようが我々を許してくださ─」

パァン!!

次の瞬間、連はリーダーの頭を撃ち抜いた。

これ以上、聞いていられなかった。

これ以上聞いていると、冷静さを欠いてしまうと思ったのだ。

「さて...次だ」

そう言った次の瞬間、集落のあちこちで爆発が起きた。

女子どもの悲痛な悲鳴が聞こえてくる。

そう、集落に入る前、彼らは集落の周囲のあちこちに大量の自作の地雷を仕掛けていたのだ。

「良い音色ね。気味がいいわ」

サラはそう言って鼻で笑った。

しかし、その手は震えていた。




「お願いします!!どうか...どうか子どもだけはっ...!」

「それじゃあガキが独りで可哀想だろうが!やっぱ“ずっといっしょ”のほうが良いよなァ!?」

そう言うと、ヤスは拳で親子の頭を挟み、粉砕してしまった。

「さあ次だ次ィ!!」

ヤスは獲物を求めるかのように、次のターゲットを探す。

このときヤスの心はもう、壊れ切っていた。

その証拠に、彼の残忍な言動とは裏腹に、彼の目からは涙が出て止まらなかった。

タカも淡々と老若男女問わず、その喉をナイフで掻き切っていった。

こうして、2人は鮮血に染められていった。

次の瞬間、ヤスがギロリとある親子を睨む。

その視線に気づいた母親は、息子に必死に逃げるよう促した。

「イド!!早く逃げなさい!!走るの!早く!!」

「何言ってんだよ母さん!そんなことできるわけないだろ!?」

ヤスが向かってくる。

と、次の瞬間だった。

突然母親がヤスに向かって突撃してきた。

「!?」

「元気でね...!イド...!!」

「!!こいつっ...!?」

母親の手に持っていたのは、手榴弾。

「ヤス!!あぶねえ!!」

次の瞬間、タカが『神速』でヤスに突撃し、その勢いのまま2人とも吹っ飛んだ。

すると次の瞬間、2人の目の前で母親は爆散した。

彼らの前に肉片という肉片が散らばった。

数分後、連たちが2人と合流した。

こうして、彼らの復讐は終わりを告げたのだった。




復讐は終わった。

しかし、その先には何の快感もなかった。

ただ、おぞましい何かがたぎってくるような、そんな不快感だけが彼らの中に残った。

サラはそれに耐えきれずに発狂してしまった。

エミはそんなサラを必死になだめる。

ヒロは自身がスイッチを押したことによるあの悲鳴の数々を思い出し、その場で嘔吐してしまった。

ヤスは目の前で爆散したイドの母親の様子を、涙を流して笑いながら何度も詳細に説明した。

タカはそんなヤスを、まるでバケモノを見るかのような目で見つめた。

その他の者たちも、皆この上ない不快感に悩まされた。

彼らは残忍であろうとしていた。

しかし、彼らはどこまで行っても人間だった。そして、子どもだった。

そんな彼らが、ここまでの“汚れ”に耐えられるはずがなかったのだ。

そんな中、連は唯一正気を保っていた。

しかし、後に”破綻“したことを考えると、耐えられなくなるのも時間の問題だったと言える。




その後、この混沌を吹き飛ばしたのは、連であった。

「皆、聞いてくれ」

『?』

「僕の夢、覚えてる?」

「世界平和...?」

「そうだよ、サラ。僕らはまだ夢を果たせてない。確かに、僕を含めて皆今は空っぽだ。でも、それも今日までにしよう。大丈夫。“居場所”は僕が作るから。だから果たそう。皆でさ」

『!!』

皆はこの時点で分かっていた。

連は皆の全てを背負おうとしているのだ、と。

しかし、それと同時に、同じ子どもである連に、それを背負わせることを彼らは選んでしまったのだった。




一頓着過ぎ、一行は集落の中央に集結した。

皆はそれぞれガレキの上に立っている。

皆は、そこで待っていた。

連自身が皆に伝えた、これから行われる連による “宣言”を、だ。

復讐を終えた今、彼らに残っていたのは、連の『世界平和』という夢だった。

そして、その夢のために必要なもの...それは圧倒的な恐怖であるということも彼らは理解していた。

自由はいつしか人を破綻させ、秩序を破綻させる。

そんな結論に至ったのは、連だけでなく、皆同じだった。

だから皆、今こうしてここに立っているのだ。

数分後、連が“後始末”を終え、彼らの前に立った。

「......連?」

サラは一瞬、目の前にいる人物が連であるか疑ってしまった。

これまでの優しく、純粋無垢な連は、そこにはいなかった。

そこにいるのは、底知れぬ恐怖を感じさせる“魔王”そのものだった。

それほどまでに、連の雰囲気は変わっていた。

そして、連は彼らの前で“言葉”を紡ぎ始めた。








我々は『恐怖』......『支配の象徴』

オレはその頂点に立つ者

オマエたちは、オレの手となり足となりて

オレに従い、尽くせ

これより......この世界にはびこる『自由』を奪い去る

そして、この世界に恒久の平和をもたらす......

ここに、我々の『始導』を宣言する

我々の名は......




『ヤタガラス』


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次のエピソードへ進む 第53話 「愚者」


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突然連が立ち上がる。
「それじゃ、僕は行かなきゃいけない場所があるから」
「!?どこにいくの...?置いてかないでよ!」
サラが連の袖をつかむ。
「大丈夫。すぐに帰ってくるよ」
「......うん」
「ありがとう。大丈夫だよ、サラ。僕はもう、誰も傷つけさせないから」
「......!連......!」
こうして、連は“準備”を進め、再び外へと歩みを進めるのだった。
連らの住むマンションの下では、黒ずくめの者たちが待ち伏せをしていた。
公安だ。
すると、そこに何者かが下りて来た。
連だ。
リュックサックを背負っている。
「......君は」
「連」
「ああ、“彼”の息子だな」
「突然だが、送り出してほしい場所がある」
「何?いきなり何を─」
「命令だ。“オレ”に従え」
「っ...!!」
このとき、公安の者たちは、連から彼の父を彷彿とさせる底知れぬ威圧感を感じた。
公安は命令通り、連を車に乗せるのだった。
公安の車が到着したのは、首相官邸。
「ついたぞ」
「ああ。ご苦労」
そう言うと、連は車から降りた。
今の連は、これまでの優しい少年ではない。
連は堂々とした足取りで首相官邸へと足を踏み出すのだった。
「?お前は...」
警備の者は、連に接近する。
「連。八咫烏陰陽道...“140代目当主”だ」
「何用で来た」
「首相に会いたい。話さなければならないことがある」
「......父にそう言われたか?」
すると、連はこの世とは思えない鬼神のごとき目つきで相手を睨んだ。
「っ...!では何の用で─」
「言ったはずだ。会わせろと、な」
「用がなければ会わせられない」
と、そのときだった。
「何を言い争っているんだ」
「そ、総理!」
2人のもとにやってきた者...それは、内閣総理大臣だった。
「君は...彼の息子か」
「連だ」
「うむ。おそらく父に“報告”を任されたといったところだろう。入りなさい。“初仕事”を体験させてやる」
「.........」
警備の者は退いた。
連は総理を睨みつけながら、その後を歩くのだった。
「さ、ここが会議室だ。入りたまえ」
総理にそう言われ、連は会議室へ入る。
会議室の端々には、護衛の者が武装している。
「まあ座りなさい。......それで?“任務”は完遂したのかね?」
「......オマエは勘違いをしている」
「?なんだと?」
「オレがここに来たのは、任務完遂の報告のためではない」
そう言いながら連は席を立つ。
護衛の者たちは、連の突然の行動に警戒し、銃口を一斉に連に向けた。
「一体...お前は......」
総理も警戒を強める。
「オレがここに来た目的...それは、八咫烏陰陽道当主の継承を行ったという報告をするためだ」
「な、何を言っている。お前はまだ子供ではないか!」
すると次の瞬間、連は思い切りリュックサックを机上にたたきつけた。
ドン!という音に、総理は威圧されてしまった。
連は無言でリュックサックのチャックを開け、その“中身”を取り出し、突き付けた。
「───っ!!!」
総理は悲鳴を上げ、戦慄した。
護衛もこれには驚きを隠せない。
それは、連の父の首だった。
「これで分かっただろう。これより、八咫烏陰陽道の当主はオレであるとな」
「おい!護衛ィ!!」
護衛は皆総理の悲痛な呼び声に呼応し、連に銃を突きつける。
「貴様!悪戯にもほどがあるぞ!」
「......試してみるか?」
「何......?」
「悪戯かどうかを」
次の瞬間、連は文字通り“消えた”。
次の瞬間、護衛の一人の背後に回り、拳銃で射殺すると、その護衛からマシンガンを奪い取り、残りの護衛全員もあっけなく射殺してしまった。
タカの『神速』とエミの『必中』だ。
「ひいっ!!く、来るなあっ!」
連はへたり込んでいる総理ににじりよる。
「安心しろ。オマエを殺すつもりはない。死んでもらっては困る」
「......?」
「オレからの条件は、オレが八咫烏陰陽道140代当主であることを承認すること、そして、これ以上の干渉をやめること。いいな?」
「わ、わかった!条件を飲む!それぐらいならお安い御用だ!」
その後、総理は契約書にも迷いなくサインしてしまった。
連はこのとき、心の底から総理に対して、そして何より、この国に対して大きな失望を覚えたのだった。
ちなみに契約の内容はこうだ。
「連を八咫烏陰陽道当主であることの承認」、「八咫烏陰陽道への過干渉の停止」、「引き続き八咫烏陰陽道への支援は行うこと」
絶対に承認されないと思っていたが、すんなりと総理は最後まで契約書を読むことなくサインしてしまったので、連は拍子抜けした。
こうして、連たちは、その地位を確固たるものにし、安定した生活の確保を押さえることに成功したのだった。
それから2週間、彼らは学校へ行かないということを除いて、いつもの毎日を取り戻しつつあった。
しかし、そんな中でも彼らは自分たちの生きる意味を見失いつつあった。
が、
ある日のことだった。
”その日”......ヒロは何気なくパソコンでネットサーフィンをしていた。
と、そのときだった。
ネット掲示板を覗いていた時に、あるスレッドを見つけた。
そのスレッドのタイトルに、ヒロは妙にひきつけられるものを感じた。
そのタイトルには、『IS』、『少女』の2つの単語があったのだ。
ヒロは無意識にそのスレッドを開き、そして、その中で添付されていた動画のURLをクリックする。
「...成人向け?」
しかし、ヒロは好奇心に負けてしまった。
そのままそのサイトに飛び、ついに、動画を再生してしまった。
そこには、悪夢が映っていた。
「おい、ヒロ。どうしたよ?」
ヤスがヒロの様子がおかしいことに気づき、彼に近づく。
「あ?動画?なんだ、検索してはいけない系のやつでも見ちまったのかよ?」
周りの皆も明らかにヒロの様子がおかしいことに気づき、皆が彼の元へ集結した。
そして、皆、次に視線を移す。
その先にあった者は、『悪夢』だ。
彼らにとって、そこに映っていた”彼女”の姿は、忘れられないものとなった。
画面の向こう側に向けて助けを求めるような目。
それを見つめる欲望に満ちた男たちの目。
そして...
幾たびの地獄を経た後にあらわになる、画面の向こうを見つめる彼女の絶望に塗りつぶされた目。
彼らに、”生きる意味”が提示されてしまった瞬間だった。
「なあ、連。これから俺たちどうすんだ?まさかずっとここにいるわけじゃねえだろ?」
ヤスは胡坐をかきながら聞く。
「もちろん。“このまま”でいるなんて耐えられない」
連はそういいながら眉間にしわを刻む。
その目は、怒りと憎しみに燃えていた。
それは連に限らず、皆同じだった。
この日、連だけでなく、そこにいる誰もが誓った。
『必ず戻る』、と。
それから彼らはありとあらゆる鍛錬を尽くした。
体術、特殊能力、陰陽道...
できる限り、それら全てを伸ばした。
そして“あの事件”から6年が経過した。
当時、連らは15歳。
6年の間、世界中でたくさんのことが起こった。
戦争、『災厄』の復活と『解放軍』の結成、世界国家の崩壊と民族政府の出現、日本国・アメリカ合衆国の『復活』...
今や彼らは、激動の時代の真っ只中にいた。
そして彼らも、これからその時代の波にその身を投じていくことになる。
彼らは空港にいた。
そう、“あの事件”の始まりの場所であり、終わりの場所でもある。
「6年だ...ずっとこの日を俺は待ってたんだ...!」
ヤスは武者震いが止まらない。
「熟成された私たちの恨み...必ず晴らしてやる...!」
サラは拳を握り締めている。
「二度と笑顔でいられなくしてやるぜ」
ジュンは笑みを浮かべながらそう言った。
そこにいる誰もが、憎しみをぶつけられることに対する喜びで満ち溢れていた。
その目は、まさに狂気そのものだった。
ただし、一人を除いては。
「...なあ、引き返すなら今のうちだと思うんだけどよ...」
「何言ってんだよヒロ!!あいつらが憎くねぇのか!?」
ヤスはヒロに怒鳴る。
「そ、それは...!でも、これじゃアイツらとやってること同じなんじゃ─」
「ごちゃごちゃうるせえ!!いいから行くぞ!」
「......わかったよ」
こうして、ヒロも皆に続いた。
連は、そんなヒロを止めることはなかった。
連でさえ、“盲目”になっていたのだ。
こうして、飛行機は日本を発つのだった。
中東のある空港にて...
「えらく静かだな...」
ジュンは辺りを見渡しながらそう言った。
「無理もないわ。最近オリジンがシベリアを抜けたらしいもの。いつここに来るか分からないから」
「でもよ、都合は良いんじゃねえか?」
ヤスはそう言うと、乗り捨てられている軽トラを指さした。
「使わせてもらおう」
連がそう言うと、ヤスは筋力を増幅させ、窓ガラスを破壊してしまった。
「さ、入ろうぜ」
ヤスは堂々と入っていく。
「でもよ、俺たち、免許─」
「何言ってんだよヒロ!どーせここらに人はいねーんだ!アクセル全開よ!!」
そう言うと、運転席に乗り、鍵が差し込まれたままだったので、そのままエンジンをつけた。
「さあ、行くぜ!お前ら!しっかりつかまってろよ!!」
こうして、軽トラは猛スピードで砂漠を走り抜けていくのだった。
連は外の景色をいつまでも見つめていた。
そう、この景色こそが“あの日”に続く、『地獄の入り口』だった。
今度は自分たちが『地獄』を与える番だ。
連は、そう心の底で思うのだった。
「おい見えて来たぞ!」
ヤスがフロントガラスを指さしながらそう叫ぶ。
その先には、確かに“あの集落”があった。
「......変わってないのね」
サラがそう呟く。
「好都合だな」
タカがそう言うと、サラはうなずいた。
数分後、集落の前に来ると、一行は車から出た。
「おいお前たち、一体何の用で─」
次の瞬間、『神速』で背後に回り込んだタカによって、警備の者は刺殺されてしまった。
その後...
「連、準備は終わったぞ。これから俺はヒロの護衛に回る」
「ここは私たちにお任せください」
ジュンとレイがそう言うと、ヒロも続いた。
「“スイッチ”は俺が押す。大丈夫。やってやるさ。ここまで来たんだからな」
ヒロはボタンを見せながらそう言った。
連は2人の言葉に対し、うなずくと、集落を改めて見据える。
「さあ、始めようか」
こうして、一行は再び『地獄』へと足を踏み出すのだった。
集落に入ると、所々で変な目で見られた。
しかし、そんなこともお構いなしに一行は歩みをすすめた。
すると...
「おい、お前たち、一体どこから来たんだ!」
突然何者かが“聞き覚えのある声”でそう話しかけてきた。
「......!」
連はその顔を凝視した。
そう、その正体は、かつてここに来た時にもいた、この集落のリーダーだった。
「......ん?...!!お、お前らは...!」
リーダーも気づいたようだ。
驚きを隠せないでいる。
しかし、すぐに態度を改めた。
「ふん。どうせ復讐に来たのだろう。だが無駄だ」
「それはどうかな」
「何?」
次の瞬間、連は“あるもの”を取り出した。
マシンガンだ。
「なっ...!無駄なことを...!お前たち!こいつらを殺せ!!女子ども(おんなこども)は避難するんだ!」
次の瞬間、武装した男たちが大勢、総出で出てきた。
それに続き、女子どもは集落の外に行こうとし始めた。
「させるかよ!!」
そう言うと、ヤスとタカは女子どものもとへと向かって行った。
「なっ!おい!アイツらを狙え!」
「させない」
「!!」
次の瞬間、
連のマシンガンが火をふいた。
すると、武装した男たち一人一人の眉間を銃弾が貫いていった。
エミ、サラも連を射撃や爆撃などで援護する。
こうして、100人ほどいた武装勢力は数十秒で全滅してしまった。
「き、貴様...!」
「謝る気もないのか」
連はリーダーの眉間に銃口を突き付ける。
「ふん...!貴様らは神の敵だ!我々は正しいことをした!」
「“アレ”が正しいことなのか?」
「そうだ!正義のためなら、神は何をしようが我々を許してくださ─」
パァン!!
次の瞬間、連はリーダーの頭を撃ち抜いた。
これ以上、聞いていられなかった。
これ以上聞いていると、冷静さを欠いてしまうと思ったのだ。
「さて...次だ」
そう言った次の瞬間、集落のあちこちで爆発が起きた。
女子どもの悲痛な悲鳴が聞こえてくる。
そう、集落に入る前、彼らは集落の周囲のあちこちに大量の自作の地雷を仕掛けていたのだ。
「良い音色ね。気味がいいわ」
サラはそう言って鼻で笑った。
しかし、その手は震えていた。
「お願いします!!どうか...どうか子どもだけはっ...!」
「それじゃあガキが独りで可哀想だろうが!やっぱ“ずっといっしょ”のほうが良いよなァ!?」
そう言うと、ヤスは拳で親子の頭を挟み、粉砕してしまった。
「さあ次だ次ィ!!」
ヤスは獲物を求めるかのように、次のターゲットを探す。
このときヤスの心はもう、壊れ切っていた。
その証拠に、彼の残忍な言動とは裏腹に、彼の目からは涙が出て止まらなかった。
タカも淡々と老若男女問わず、その喉をナイフで掻き切っていった。
こうして、2人は鮮血に染められていった。
次の瞬間、ヤスがギロリとある親子を睨む。
その視線に気づいた母親は、息子に必死に逃げるよう促した。
「イド!!早く逃げなさい!!走るの!早く!!」
「何言ってんだよ母さん!そんなことできるわけないだろ!?」
ヤスが向かってくる。
と、次の瞬間だった。
突然母親がヤスに向かって突撃してきた。
「!?」
「元気でね...!イド...!!」
「!!こいつっ...!?」
母親の手に持っていたのは、手榴弾。
「ヤス!!あぶねえ!!」
次の瞬間、タカが『神速』でヤスに突撃し、その勢いのまま2人とも吹っ飛んだ。
すると次の瞬間、2人の目の前で母親は爆散した。
彼らの前に肉片という肉片が散らばった。
数分後、連たちが2人と合流した。
こうして、彼らの復讐は終わりを告げたのだった。
復讐は終わった。
しかし、その先には何の快感もなかった。
ただ、おぞましい何かがたぎってくるような、そんな不快感だけが彼らの中に残った。
サラはそれに耐えきれずに発狂してしまった。
エミはそんなサラを必死になだめる。
ヒロは自身がスイッチを押したことによるあの悲鳴の数々を思い出し、その場で嘔吐してしまった。
ヤスは目の前で爆散したイドの母親の様子を、涙を流して笑いながら何度も詳細に説明した。
タカはそんなヤスを、まるでバケモノを見るかのような目で見つめた。
その他の者たちも、皆この上ない不快感に悩まされた。
彼らは残忍であろうとしていた。
しかし、彼らはどこまで行っても人間だった。そして、子どもだった。
そんな彼らが、ここまでの“汚れ”に耐えられるはずがなかったのだ。
そんな中、連は唯一正気を保っていた。
しかし、後に”破綻“したことを考えると、耐えられなくなるのも時間の問題だったと言える。
その後、この混沌を吹き飛ばしたのは、連であった。
「皆、聞いてくれ」
『?』
「僕の夢、覚えてる?」
「世界平和...?」
「そうだよ、サラ。僕らはまだ夢を果たせてない。確かに、僕を含めて皆今は空っぽだ。でも、それも今日までにしよう。大丈夫。“居場所”は僕が作るから。だから果たそう。皆でさ」
『!!』
皆はこの時点で分かっていた。
連は皆の全てを背負おうとしているのだ、と。
しかし、それと同時に、同じ子どもである連に、それを背負わせることを彼らは選んでしまったのだった。
一頓着過ぎ、一行は集落の中央に集結した。
皆はそれぞれガレキの上に立っている。
皆は、そこで待っていた。
連自身が皆に伝えた、これから行われる連による “宣言”を、だ。
復讐を終えた今、彼らに残っていたのは、連の『世界平和』という夢だった。
そして、その夢のために必要なもの...それは圧倒的な恐怖であるということも彼らは理解していた。
自由はいつしか人を破綻させ、秩序を破綻させる。
そんな結論に至ったのは、連だけでなく、皆同じだった。
だから皆、今こうしてここに立っているのだ。
数分後、連が“後始末”を終え、彼らの前に立った。
「......連?」
サラは一瞬、目の前にいる人物が連であるか疑ってしまった。
これまでの優しく、純粋無垢な連は、そこにはいなかった。
そこにいるのは、底知れぬ恐怖を感じさせる“魔王”そのものだった。
それほどまでに、連の雰囲気は変わっていた。
そして、連は彼らの前で“言葉”を紡ぎ始めた。
我々は『恐怖』......『支配の象徴』
オレはその頂点に立つ者
オマエたちは、オレの手となり足となりて
オレに従い、尽くせ
これより......この世界にはびこる『自由』を奪い去る
そして、この世界に恒久の平和をもたらす......
ここに、我々の『始導』を宣言する
我々の名は......
『ヤタガラス』