ユーステッド、泥酔す
ー/ー
「……それでは、ごゆっくり。」
ロベリアは部屋を後にした。
…………
あんなに気まずい空気を作ってしまったのにもかかわらず、ロベリアは気にも留めていない感じだったな……侍女として優秀なのと、しっかりと教育されてる証拠かな?
なに、まだ到着して数時間だ、これから先、仲良くなる時間は十分あるし、僕の恥ずかしい行動を挽回することもできるだろう!
決意を胸に、薄汚れてしまった旅着を脱ぎ、お忍びで街へ出る時に来ていたお気に入りの服に着替え……ひと呼吸。
ぐぅ……キュルルル……
お腹から可愛らしい音がする。僕のお腹の虫がうったえているのだ。
「そういえばなにも食べていなかった……お腹……へったな……」
『腹の虫が鳴る』というのを知ったのは最近だ。
ひとりでデルフィヌス領まで向かう道のりは……知らないことだらけで、精一杯で。
やっと落ち着ける場所へ着いたとき……あれはどこの宿だったか……船の上だったか……何回もあったから最初は忘れたけど、盛大に鳴った腹の虫の音を聞いた人たちに笑われながら、もらったパンは……本当に美味しかったな。
ぐるるるぅ……きゅうぅん……
……思い出のパンじゃ今の僕の腹はふくれない。むしろ逆に腹が減ってくる。
住居の屋敷ってことは厨房もあるだろうし、ロベリアに言ってなにか作ってもらおうかな。他に誰かいるなら、それでもいい。
「ロベリア~?いないのか……?」
部屋から出て1階へ下りる。が、人の気配がない。
厨房と食堂が繋がっている場所まで来てみたけど……誰もいない。昼過ぎなのに、なにか作っていた気配もない。
「主人が視察にでているから……まさか……休暇をとっているとか……?」
可能性はある……ここまで誰にも会わないなんて普通ならありえない。ロベリアは残されて大変だな……さて、どうしたものか……さすがに厨房を漁るのは……ダメだ、そんな下品な真似はできない。
そうだ、せっかくだから街に出てみようか…そこなら確実に食事ができる。
さっきテラスから見た街のつくりは大体頭に入っているし、迷わず行けるはずだ。また坂道を上る苦労なんて二の次、今は、僕のお腹を満たす方が優先だ!
「そうと決まれば……」
玄関の扉を勢いよく開け、街へ向かう。
バタンッ……
「ユーステッド…………様?」
*********
やはりこの街は美しい。
旅の途中で立ち寄った街を思い出しても、いちばんだと思う。なにより、ゆっくりと街歩きができることが、僕はとてもうれしかった。
「……勢いあまって港まで戻ってきてしまった。」
調子に乗っているわけではない。恥ずかしながら……子供の様にはしゃいでいる、が正しいんだ。あの景色を見てから本来の目的をうっかり忘れてしまうほどに。
「お?!にいちゃん!まだ港にいたのか?」
「おま……君はたしか、あの時の?」
「おうおう……着替えてるなら、宿にはいけたんだな?そいつはよかった!」
「いや、宿というか……」
グギュルルルル…くぅ~っ
船を降りた直後に声をかけてくれたあの船乗りがまた、豪快に笑いながら僕に気付いて近づいてきた。そのタイミングでまたお腹が鳴ってしまう。
「はははははは!腹減ってんのかぁ!よっしゃ、ちょうどいい!」
「んぉっ?!」
「これも何かの縁だだな!俺もこれから飯なんだ、うまいところ知ってるから一緒にいこう!」
背中をバッシンバッシン叩かれた衝撃で呼吸が一瞬止まりそうになったけど……食事処に案内してくれるらしい。……街並みは見た、と、いっても、店の場所まではまだ把握できていなかったしちょうどよかった。彼の言うように、縁に感謝しなければ。
彼の名前はカーター。
港にくる貨物船の荷物を運ぶ仕事をしていて、人手が足りない時には船に乗り、周辺の島々を巡っていたりするらしい。美人の奥さんと、子供が3人のお父さん。
「さぁ!なんでも頼んでいいぞ!」
「なんでも……うーん」
案内された店は酒場のようだったが、渡されたメニューを見るに、レストランとしても営業しているようだ。
「(白身魚と野菜のスープ……カルパッチョ……地魚のムニエルの……ブドウソース?これは珍しいかも。お?牛すね肉の煮込みにステーキ?……肉料理もあるんだ……どれもおいしそうで迷ってしまうな……)」
「――……が、これだ!すきっ腹にきくぞー?」
ドンッ!ドンッ!
と、カーターがなにかを言いながら女店主から受け取った、木で作られたジョッキをテーブルに勢いよく置いた。中に満たされていたのは深い赤紫色の液体。メニューには飲み物は書かれていない……客はみな同じものを飲んでいるようだし、決まったものしかないのだろう。
「さぁー乾杯だぁ!」
「え、あ、か、かんぱい……?」
取っ手を握ってすぐ、カーターは僕のジョッキに自分のジョッキをぶつけて……そうか、こういう乾杯もあるんだな。グラスを天に掲げるだけではないんだ。でも、これはこれで……気持ちがいい。
一気に飲み干したカーターは豪快に息を吐く。
「っ!んっ!っぷはぁぁ……っ!朝も言ったとおもうけどよ、この一杯の為にがんばってるようなもんだだ!ははははは!」
「ちょいとカーター、あんまり飲みすぎるんじゃないよ?その勢いで飲まれちゃあ店にある樽が全部空っぽになっちまうよ!」
「「「あはははははは!!」」」
活気にあふれている、いい店だ。
街並みを見ながらきたけど、まだ午後のお茶の時間くらい。けど、海の男も、女も、朝早くから働いて、夜も早く、眠りにつく。こんな時間ではあるけど、仕事終わりの船乗りたちが集まって、楽しく食事や酒を嗜んでいる。
「……いい街だ」
「ん?どうした?ぐーっといけぐーっと!」
「あぁ、ありがとう。こんなに美味しそうなブドウジュースを頂くのは初めてだ」
「……ぶどうジュー?……なぁにいちゃん、一応聞くけど、今いくつだ?」
「……?18だが?」
ゴッゴッゴッ……と、勢いよくブドウジュースを……のどに……ながしまして…………
「これは……なんだか……かららがあとぅく……な………」
「度数が一番低いんだぞこれ……マジかぁ。」
「おい……ちぃ……ねぇ…………」
かれとおなじようにのんだほうがいいとおもったんだ、けど、
なんだでだろう?ふあふあしてきもちがよくなって……
「……あんた、まさか下戸の子連れてきたんじゃないだろうね?」
「そうみてぇだ……」
おいしいごはんをこれから、たべるんだから……ねちゃだめ……だ………
「…こんばんわシーナさん、こちらに…………あ。」
ロベリアの……声……?
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「……それでは、ごゆっくり。」
ロベリアは部屋を後にした。
…………
あんなに気まずい空気を作ってしまったのにもかかわらず、ロベリアは気にも留めていない感じだったな……侍女として優秀なのと、しっかりと教育されてる証拠かな?
なに、まだ到着して数時間だ、これから先、仲良くなる時間は十分あるし、僕の恥ずかしい行動を挽回することもできるだろう!
決意を胸に、薄汚れてしまった旅着を脱ぎ、お忍びで街へ出る時に来ていたお気に入りの服に着替え……ひと呼吸。
ぐぅ……キュルルル……
お腹から可愛らしい音がする。僕のお腹の虫がうったえているのだ。
「そういえばなにも食べていなかった……お腹……へったな……」
『腹の虫が鳴る』というのを知ったのは最近だ。
ひとりでデルフィヌス領まで向かう道のりは……知らないことだらけで、精一杯で。
やっと落ち着ける場所へ着いたとき……あれはどこの宿だったか……船の上だったか……何回もあったから最初は忘れたけど、盛大に鳴った腹の虫の音を聞いた人たちに笑われながら、もらったパンは……本当に美味しかったな。
ぐるるるぅ……きゅうぅん……
……思い出のパンじゃ今の僕の腹はふくれない。むしろ逆に腹が減ってくる。
住居の屋敷ってことは厨房もあるだろうし、ロベリアに言ってなにか作ってもらおうかな。他に誰かいるなら、それでもいい。
「ロベリア~?いないのか……?」
部屋から出て1階へ下りる。が、人の気配がない。
|厨房《ちゅうぼう》と食堂が繋がっている場所まで来てみたけど……誰もいない。昼過ぎなのに、なにか作っていた気配もない。
「主人が|視察《しさつ》にでているから……まさか……|休暇《きゅうか》をとっているとか……?」
可能性はある……ここまで誰にも会わないなんて普通ならありえない。ロベリアは残されて大変だな……さて、どうしたものか……さすがに|厨房《ちゅうぼう》を|漁《あさ》るのは……ダメだ、そんな下品な真似はできない。
そうだ、せっかくだから街に出てみようか…そこなら確実に食事ができる。
さっきテラスから見た街のつくりは大体頭に入っているし、迷わず行けるはずだ。また坂道を上る苦労なんて二の次、今は、僕のお腹を満たす方が優先だ!
「そうと決まれば……」
|玄関《げんかん》の扉を勢いよく開け、街へ向かう。
バタンッ……
「ユーステッド…………様?」
*********
やはりこの街は美しい。
旅の途中で立ち寄った街を思い出しても、いちばんだと思う。なにより、ゆっくりと街歩きができることが、僕はとてもうれしかった。
「……勢いあまって港まで戻ってきてしまった。」
調子に乗っているわけではない。恥ずかしながら……子供の様にはしゃいでいる、が正しいんだ。あの|景色《けしき》を見てから本来の目的をうっかり忘れてしまうほどに。
「お?!にいちゃん!まだ港にいたのか?」
「おま……君はたしか、あの時の?」
「おうおう……着替えてるなら、宿にはいけたんだな?そいつはよかった!」
「いや、宿というか……」
グギュルルルル…くぅ~っ
船を降りた直後に声をかけてくれたあの船乗りがまた、|豪快《ごうかい》に笑いながら僕に気付いて近づいてきた。そのタイミングでまたお腹が鳴ってしまう。
「はははははは!腹減ってんのかぁ!よっしゃ、ちょうどいい!」
「んぉっ?!」
「これも何かの|縁《えん》だだな!俺もこれから飯なんだ、うまいところ知ってるから一緒にいこう!」
背中をバッシンバッシン叩かれた衝撃で呼吸が一瞬止まりそうになったけど……食事処に案内してくれるらしい。……街並みは見た、と、いっても、店の場所まではまだ|把握《はあく》できていなかったしちょうどよかった。彼の言うように、|縁《えん》に感謝しなければ。
彼の名前はカーター。
港にくる|貨物船《かもつせん》の荷物を運ぶ仕事をしていて、人手が足りない時には船に乗り、周辺の島々を巡っていたりするらしい。美人の奥さんと、子供が3人のお父さん。
「さぁ!なんでも頼んでいいぞ!」
「なんでも……うーん」
案内された店は酒場のようだったが、渡されたメニューを見るに、レストランとしても営業しているようだ。
「(白身魚と野菜のスープ……カルパッチョ……地魚のムニエルの……ブドウソース?これは珍しいかも。お?牛すね肉の煮込みにステーキ?……肉料理もあるんだ……どれもおいしそうで迷ってしまうな……)」
「――……が、これだ!すきっ腹にきくぞー?」
ドンッ!ドンッ!
と、カーターがなにかを言いながら女店主から受け取った、木で作られたジョッキをテーブルに勢いよく置いた。中に満たされていたのは深い赤紫色の液体。メニューには飲み物は書かれていない……客はみな同じものを飲んでいるようだし、決まったものしかないのだろう。
「さぁー|乾杯《かんぱい》だぁ!」
「え、あ、か、かんぱい……?」
取っ手を握ってすぐ、カーターは僕のジョッキに自分のジョッキをぶつけて……そうか、こういう|乾杯《かんぱい》もあるんだな。グラスを天に|掲《かか》げるだけではないんだ。でも、これはこれで……気持ちがいい。
一気に飲み干したカーターは|豪快《ごうかい》に息を吐く。
「っ!んっ!っぷはぁぁ……っ!朝も言ったとおもうけどよ、この一杯の為にがんばってるようなもんだだ!ははははは!」
「ちょいとカーター、あんまり飲みすぎるんじゃないよ?その勢いで飲まれちゃあ店にある樽が全部空っぽになっちまうよ!」
「「「あはははははは!!」」」
活気にあふれている、いい店だ。
街並みを見ながらきたけど、まだ午後のお茶の時間くらい。けど、海の男も、女も、朝早くから働いて、夜も早く、眠りにつく。こんな時間ではあるけど、仕事終わりの船乗りたちが集まって、楽しく食事や酒を|嗜《たしな》んでいる。
「……いい街だ」
「ん?どうした?ぐーっといけぐーっと!」
「あぁ、ありがとう。こんなに美味しそうなブドウジュースを頂くのは初めてだ」
「……ぶどうジュー?……なぁにいちゃん、一応聞くけど、今いくつだ?」
「……?18だが?」
ゴッゴッゴッ……と、勢いよくブドウジュースを……のどに……ながしまして…………
「これは……なんだか……かららがあとぅく……な………」
「度数が一番低いんだぞこれ……マジかぁ。」
「おい……ちぃ……ねぇ…………」
かれとおなじようにのんだほうがいいとおもったんだ、けど、
なんだでだろう?ふあふあしてきもちがよくなって……
「……あんた、まさか|下戸《げこ》の子連れてきたんじゃないだろうね?」
「そうみてぇだ……」
おいしいごはんをこれから、たべるんだから……ねちゃだめ……だ………
「…こんばんわシーナさん、こちらに…………あ。」
ロベリアの……声……?