06 兵藤の奇襲と鈴木理子の正体
ー/ー「ぐっ……!」
振り返った鈴木理子の首を、兵藤竜一の大きな両手が締めあげている。
「な――っ!」
ゴングが鳴り響くよりも数瞬早く、兵藤は動いていたのだ。
俺はつい、奇妙な声を上げてしまった。
「うぐ……」
鈴木は苦悶に満ちた表情で、つかみかかってくるその手を押さえている。
でもこれじゃまるで焼け石に水だ。
そもそも体格の差が違いすぎる。
失礼だけどあんな細腕で、やつの丸太みたいな剛腕をはねのけられるはずがない。
「へっ、油断したな鈴木? レスラーならゴングが鳴らなきゃピクリとも動けないと思ってただろ? その慢心が、命取りよぉっ!」
「ぐぅっ――!」
兵藤はさらに力を込めた。
やめろ、このままじゃ、鈴木が、鈴木が……
「卑怯なやつだ、そう思ったか?」
となりで腕を組む刀子冬真はまるで表情を変えてはいない。
あたかも真夏にエアコンにでも当たっているようなすずしい顔だ。
「刀子、とっ、とめなきゃ――」
「言ったろ? 見てろって」
「で、でも……」
こんな状況なのに、なんでこいつはこんなに余裕なんだ?
見てろってのは、鈴木がボコボコにされるとこでも見てろって意味なのか?
俺の頭の中はドロドロになった。
「それ――」
「うぐっ!」
兵藤が鈴木をつかむ両手を垂直に上げる。
体が宙に浮き、脚をバタつかせた。
「お、おい、兵藤! 頼むからやめてくれ! それじゃマジで鈴木が――」
「鬼神よ、テメェも男なら、真剣勝負にいらなく口を出すもんじゃねぇぜ? いいから刀子の言うとおり、黙って見てな」
俺はリングへ向かって叫んだが、兵藤も刀子と同じくまったく意に介してはいない。
鈴木は大量の汗をかき、その呼吸は小さくなってきている。
冗談じゃない。
このままじゃ下手すりゃ殺人ほう助だ。
いや、それよりも何よりも、目の前でひとりの人間の命が奪われてしまうなんてとこを目撃してるんだ。
これで黙っていられるか?
まともな人間であるならば。
返り討ちにされたっていい、ここは俺が、鈴木を助けなきゃ……!
シンプルにそう思った。
「ふん、正体を現したな?」
「え――」
俺が一歩足を踏み出そうとした瞬間、兵藤の巨体がリングへと沈んだ。
振り返った鈴木理子の首を、兵藤竜一の大きな両手が締めあげている。
「な――っ!」
ゴングが鳴り響くよりも数瞬早く、兵藤は動いていたのだ。
俺はつい、奇妙な声を上げてしまった。
「うぐ……」
鈴木は苦悶に満ちた表情で、つかみかかってくるその手を押さえている。
でもこれじゃまるで焼け石に水だ。
そもそも体格の差が違いすぎる。
失礼だけどあんな細腕で、やつの丸太みたいな剛腕をはねのけられるはずがない。
「へっ、油断したな鈴木? レスラーならゴングが鳴らなきゃピクリとも動けないと思ってただろ? その慢心が、命取りよぉっ!」
「ぐぅっ――!」
兵藤はさらに力を込めた。
やめろ、このままじゃ、鈴木が、鈴木が……
「卑怯なやつだ、そう思ったか?」
となりで腕を組む刀子冬真はまるで表情を変えてはいない。
あたかも真夏にエアコンにでも当たっているようなすずしい顔だ。
「刀子、とっ、とめなきゃ――」
「言ったろ? 見てろって」
「で、でも……」
こんな状況なのに、なんでこいつはこんなに余裕なんだ?
見てろってのは、鈴木がボコボコにされるとこでも見てろって意味なのか?
俺の頭の中はドロドロになった。
「それ――」
「うぐっ!」
兵藤が鈴木をつかむ両手を垂直に上げる。
体が宙に浮き、脚をバタつかせた。
「お、おい、兵藤! 頼むからやめてくれ! それじゃマジで鈴木が――」
「鬼神よ、テメェも男なら、真剣勝負にいらなく口を出すもんじゃねぇぜ? いいから刀子の言うとおり、黙って見てな」
俺はリングへ向かって叫んだが、兵藤も刀子と同じくまったく意に介してはいない。
鈴木は大量の汗をかき、その呼吸は小さくなってきている。
冗談じゃない。
このままじゃ下手すりゃ殺人ほう助だ。
いや、それよりも何よりも、目の前でひとりの人間の命が奪われてしまうなんてとこを目撃してるんだ。
これで黙っていられるか?
まともな人間であるならば。
返り討ちにされたっていい、ここは俺が、鈴木を助けなきゃ……!
シンプルにそう思った。
「ふん、正体を現したな?」
「え――」
俺が一歩足を踏み出そうとした瞬間、兵藤の巨体がリングへと沈んだ。
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