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【閑話】アクリスとロアとカイン

ー/ー



【ラギルーガ】マエナスの家―。

店内は狭いものの、裏口から外へ出るとそこは広々した庭が広がっている。店内を見ればわかるが、手入れも掃除もまったく行き届いていない、なんともマエナスの性格が出ている中庭である。それでも、と。アクリスが留守の間に、ファランクスが一角の一番ひどい所の使用用途のわからない木材やら割れたりヒビの入った瓶、雑草などの処分をした。それでもすべての手入れは出来ないほど、無駄に広い庭。

整えられたわずかな広場部分と、残っている丈のある雑草をあえて利用し、鍛錬をするロアとアクリスの姿がそこにあった。

草むらの中に潜み、気配を消して様子をうかがい、相手の出方をうかがう。風で草がゆれる。そのタイミングで一気に相手に向かって距離を詰め、平行に剣を大きく振るう。ザッ!という音と共に勢いよく草が切れ、葉が舞い上がる。

確実に相手に当たるよう、低い位置への攻撃。

切られた草の先、さらに低い位置に体をさげたアクリスの姿を確認したロアは一瞬ひるむ。その隙をアクリスは見逃さない。低い体制のまま上半身と下半身を上手に使い回転させ、剣を握るロアの手、柄に狙いを定め、靴底を当て蹴り上げる。

ガッっと見事に直撃、衝撃でロアは剣から手を放してしまう。ガランガランっと音を立てて地面に落ちる。

「勝負あり!だね、ロアくん。」

「くぅ~~やっぱ勝てねぇぇ!」

「ロアも大分様になってきてるよ。」

ひと汗かいたロアとアクリスは、カインが入れてくれた冷えた果実水で休憩をとる。

「気配の感じ取り方とか、消し方とかは何となくわかってきたけど、そこからの切り替えがまだうまくいかねぇなぁ…」

「あはは…!数をこなして五感を鍛えるしかない、俺も散々やったから。でも、この短期間でここまで動けるようになるのはすごいよ、ロア。」

「アクリスさんはどなたに教えていただいたんですか?」

「もちろんファラだよ。あいつ教えるのうまいんだよ。基本の剣術だけでなく、俺にあった戦い方、動き方を引き出してくれて…俺もそんな風にできればいいんだけど。あ、ねぇどうだろうロア、俺、うまくできてるかな?!」

ふたり旅をしていた時は、常に精神を張り詰めた状態で過ごしていたアクリス。だが、ここへ来て少しずつ、不安がほころんできたのか、優しい、少し子供っぽい表情を見せるようになっていた。

「大丈夫っす!めっちゃ身に入ります!わかりやすいっす!俺の無駄なところ指摘してもらえるし!さすが師匠っす!!」

「ロアくんはただただうれしいってかんじですねぇ。」

「はは…うん、前向きになってくれているのはいいことだし、そう言ってもらえると、俺ももっと頑張れる。」

「そうなのかな…うん、そうなのかも…私もコムさんにまた教えてもらいたいなぁ…」

休憩を終え、再び鍛錬に戻り、中庭に響く剣が合わさる音。

単純な鍛錬なのかもしれない。でも、アクリスにとってはひとつひとつが大事な、己も仲間も成長するための礎。
支えられるだけでなく、支えるための力をもっと―もっと、高めていく。


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【ラギルーガ】マエナスの家―。
店内は狭いものの、裏口から外へ出るとそこは広々した庭が広がっている。店内を見ればわかるが、手入れも掃除もまったく行き届いていない、なんともマエナスの性格が出ている中庭である。それでも、と。アクリスが留守の間に、ファランクスが一角の一番ひどい所の使用用途のわからない木材やら割れたりヒビの入った瓶、雑草などの処分をした。それでもすべての手入れは出来ないほど、無駄に広い庭。
整えられたわずかな広場部分と、残っている丈のある雑草をあえて利用し、鍛錬をするロアとアクリスの姿がそこにあった。
草むらの中に潜み、気配を消して様子をうかがい、相手の出方をうかがう。風で草がゆれる。そのタイミングで一気に相手に向かって距離を詰め、平行に剣を大きく振るう。ザッ!という音と共に勢いよく草が切れ、葉が舞い上がる。
確実に相手に当たるよう、低い位置への攻撃。
切られた草の先、さらに低い位置に体をさげたアクリスの姿を確認したロアは一瞬ひるむ。その隙をアクリスは見逃さない。低い体制のまま上半身と下半身を上手に使い回転させ、剣を握るロアの手、柄に狙いを定め、靴底を当て蹴り上げる。
ガッっと見事に直撃、衝撃でロアは剣から手を放してしまう。ガランガランっと音を立てて地面に落ちる。
「勝負あり!だね、ロアくん。」
「くぅ~~やっぱ勝てねぇぇ!」
「ロアも大分様になってきてるよ。」
ひと汗かいたロアとアクリスは、カインが入れてくれた冷えた果実水で休憩をとる。
「気配の感じ取り方とか、消し方とかは何となくわかってきたけど、そこからの切り替えがまだうまくいかねぇなぁ…」
「あはは…!数をこなして五感を鍛えるしかない、俺も散々やったから。でも、この短期間でここまで動けるようになるのはすごいよ、ロア。」
「アクリスさんはどなたに教えていただいたんですか?」
「もちろんファラだよ。あいつ教えるのうまいんだよ。基本の剣術だけでなく、俺にあった戦い方、動き方を引き出してくれて…俺もそんな風にできればいいんだけど。あ、ねぇどうだろうロア、俺、うまくできてるかな?!」
ふたり旅をしていた時は、常に精神を張り詰めた状態で過ごしていたアクリス。だが、ここへ来て少しずつ、不安がほころんできたのか、優しい、少し子供っぽい表情を見せるようになっていた。
「大丈夫っす!めっちゃ身に入ります!わかりやすいっす!俺の無駄なところ指摘してもらえるし!さすが師匠っす!!」
「ロアくんはただただうれしいってかんじですねぇ。」
「はは…うん、前向きになってくれているのはいいことだし、そう言ってもらえると、俺ももっと頑張れる。」
「そうなのかな…うん、そうなのかも…私もコムさんにまた教えてもらいたいなぁ…」
休憩を終え、再び鍛錬に戻り、中庭に響く剣が合わさる音。
単純な鍛錬なのかもしれない。でも、アクリスにとってはひとつひとつが大事な、己も仲間も成長するための礎。
支えられるだけでなく、支えるための力をもっと―もっと、高めていく。