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ー/ー



 雨が、降っている。

 無数の光が細い尾を引きながら、あとからあとから落ちてくる。

 俺は勉強机から顔を上げて背中を伸ばした。首を回すと、ぼきぼきと小気味よいほどの音が鳴る。目は充血していて、視界の端はかすんでいた。

 三日前から降り続いている雨は、まだ止みそうになかった。

 空は灰色で薄暗い。

 時間的には、それほど遅いわけでもない。テスト期間中で早帰りなのだから。

 俺はため息をつくと、明日の教科のために再び机に向かった。

 教科書に印刷されている文字の羅列を頭に叩き込もうとする。しかし、どうにもうまくいかなかった。頭がぼうっとする。昨日はほぼ徹夜だったからだろうか。

将行(まさゆき)!」

 窓の外から細く高い声がした。初めは、気のせいだと思った。

「ねぇ、将行ってば!」

 確かに声がする。俺は窓を開けた。

 俺の部屋は一戸建ての二階にあり、玄関のほぼ真上に位置している。見下ろせば通りに面した門の前で、隣に住む幼馴染の千紗(ちさ)が大きく手を振っていた。肩にちょこんと乗せた赤い花柄の傘と、真っ直ぐな長い黒髪が揺れている。

「お前!? 何やってんだよ?」

「将行、雨だよ。出ておいでよ。早くしないと神様の飴を取り逃がしちゃうよ」

「何、言ってんだよ!?」

 叫びながら俺は外へ飛び出した。


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 雨が、降っている。
 無数の光が細い尾を引きながら、あとからあとから落ちてくる。
 俺は勉強机から顔を上げて背中を伸ばした。首を回すと、ぼきぼきと小気味よいほどの音が鳴る。目は充血していて、視界の端はかすんでいた。
 三日前から降り続いている雨は、まだ止みそうになかった。
 空は灰色で薄暗い。
 時間的には、それほど遅いわけでもない。テスト期間中で早帰りなのだから。
 俺はため息をつくと、明日の教科のために再び机に向かった。
 教科書に印刷されている文字の羅列を頭に叩き込もうとする。しかし、どうにもうまくいかなかった。頭がぼうっとする。昨日はほぼ徹夜だったからだろうか。
「|将行《まさゆき》!」
 窓の外から細く高い声がした。初めは、気のせいだと思った。
「ねぇ、将行ってば!」
 確かに声がする。俺は窓を開けた。
 俺の部屋は一戸建ての二階にあり、玄関のほぼ真上に位置している。見下ろせば通りに面した門の前で、隣に住む幼馴染の|千紗《ちさ》が大きく手を振っていた。肩にちょこんと乗せた赤い花柄の傘と、真っ直ぐな長い黒髪が揺れている。
「お前!? 何やってんだよ?」
「将行、雨だよ。出ておいでよ。早くしないと神様の飴を取り逃がしちゃうよ」
「何、言ってんだよ!?」
 叫びながら俺は外へ飛び出した。