12月24日
ー/ー
部屋の日めくりカレンダーは、12月24日を示している。
今日は、クリスマス・イブ。
窓からは、白い粉雪がハラハラと舞っているのが見える。
世間では、カップルがいちゃいちゃとくっつきながら歩いていて、見ていて恥ずかしい。
でも、私はそんな下らないことはしない。
ネットで知り合った馬鹿なおやじ達をこの美貌で虜にして、金を巻き上げるのだ。
鏡に映る自分の顔は清楚で美しく、汚れを知らない。
白い肌にくりっとした瞳、長い睫毛の私に、道行く男は皆振り返る。
こんなにも美しい私だが、実はバージンだ。
間違っても、そこらの馬鹿な男にやったりしない。
私の初めては、本当に私の惚れたイケメンと、と決めているんだ。
私は支度を終え、ピンクのコートを着てマンションを出、待ち合わせ場所の噴水広場へ向かった。
繁華街に入るまでは、閑散として寂しい道だ。
幽霊なんて信じていない私だが、いつ幽霊が出てもおかしくない。
いつもの人気のない公園を通り過ぎようとする時……ふと、街灯に照らされたトイレを見た。
粉雪が舞う寒空の下にも関わらず、白いワンピースだけ着た女が出てきたのだ。
顔は下を向いていて、歩き方も虚ろ。
こんな寒空の下なのに、ワンピースだけなんて、頭がおかしいんだろうか。
それに、ダッサいワンピース。
私は、含み笑う。
ただ、あの女……どこかで見たことがある気がする。
どこだろう……。
そこでふと、私は待ち合わせ時間に遅れそうなことに気付き足を速めた。
待ち合わせの広場で、頭の禿げたチビおやじが私を見て目を丸くした。
「き、君が、霞ちゃん……」
「ええ」
「な、何て、綺麗なんだ……」
「そんな、綺麗だなんて……倉田さん、お上手ね! クリスマス・イブ、私と一緒に素敵な時間を過ごしましょうね」
私達は、繁華街の中へ入って行った。
*
「あぁ、キモかった!」
倉田というおやじと別れた後、私は眉を潜めた。
何度も、涙を流しながら『胸を揉ましてくれ』と懇願されたのだ。
勿論、揉ませるワケがない。
その懇願をやんわりと断りながら、金を巻き上げ、巻き上げ、おやじの所持金を全て奪って、笑顔で別れた。
罪悪感? そんなの、感じるワケがない。
あのオヤジが馬鹿で、キモいだけなんだから。
まだ、ギリギリ12月24日、クリスマス・イブ。
私は、うっすらと粉雪の積もる帰路の末、マンションの部屋のドアを開けた。
開けた瞬間、何だか異様な匂いと『ギー、ギー』とともに、何者かがもがく音がした。
どういうことだ?照明のスイッチを入れると……
「キャー!」
クワッと見開かれた目に、口からは涎が溢れ出ている。
それに、顔中に刻まれた、苦悶と悲しみに満ちた歪な皺と下にポトポトと落ちる尿……
白いワンピースの女が自分の部屋で首を吊っていたのだ!
女……いや、醜くもがき苦しみ、見る影もなくなっているが、この顔は……私……?
女……いや、『私』は、口から涎を飛ばしながら何かを訴えるように私へ向けて手を伸ばす。
背筋が凍りついた私は、開けたままのドアから外へ出て閉めた。
全身に鳥肌が立ち、何が起こったのか分からなかった。
どうして、私の部屋で、私が首を吊っているの?
混乱した。
でも……
時間が経つにつれ、少しずつ冷静さを取り戻す。
私は、あんなダサい白のワンピースなんて持っていない。
それに、私はここにいる。
あれが、私のワケがない。
そうだ、警察を呼ぼう。
でも……やはり、あの女が本当に自分じゃないのか、確かめたかった。
私は、恐る恐るドアを開けた。
すると……どういうことだ?
私の部屋は、いつも通り。
ソファーがあって、机があって、ベッドがあって……首を吊った女なんて、どこにもいなかったのだ。
私……どうしたの?
あれは……幻?
張り詰めた気持ちが一気に抜けた私は、余程疲れたのだろうか。
ベッドに倒れ込み、深い眠りについた。
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今日は、クリスマス・イブ。
窓からは、白い粉雪がハラハラと舞っているのが見える。
世間では、カップルがいちゃいちゃとくっつきながら歩いていて、見ていて恥ずかしい。
でも、私はそんな下らないことはしない。
ネットで知り合った馬鹿なおやじ達をこの美貌で虜にして、金を巻き上げるのだ。
鏡に映る自分の顔は清楚で美しく、汚れを知らない。
白い肌にくりっとした瞳、長い睫毛の私に、道行く男は皆振り返る。
こんなにも美しい私だが、実はバージンだ。
間違っても、そこらの馬鹿な男にやったりしない。
私の初めては、本当に私の惚れたイケメンと、と決めているんだ。
私は支度を終え、ピンクのコートを着てマンションを出、待ち合わせ場所の噴水広場へ向かった。
繁華街に入るまでは、閑散として寂しい道だ。
幽霊なんて信じていない私だが、いつ幽霊が出てもおかしくない。
いつもの人気のない公園を通り過ぎようとする時……ふと、街灯に照らされたトイレを見た。
粉雪が舞う寒空の下にも関わらず、白いワンピースだけ着た女が出てきたのだ。
顔は下を向いていて、歩き方も虚ろ。
こんな寒空の下なのに、ワンピースだけなんて、頭がおかしいんだろうか。
それに、ダッサいワンピース。
私は、含み笑う。
ただ、あの女……どこかで見たことがある気がする。
どこだろう……。
そこでふと、私は待ち合わせ時間に遅れそうなことに気付き足を速めた。
待ち合わせの広場で、頭の禿げたチビおやじが私を見て目を丸くした。
「き、君が、霞ちゃん……」
「ええ」
「な、何て、綺麗なんだ……」
「そんな、綺麗だなんて……倉田さん、お上手ね! クリスマス・イブ、私と一緒に素敵な時間を過ごしましょうね」
私達は、繁華街の中へ入って行った。
*
「あぁ、キモかった!」
倉田というおやじと別れた後、私は眉を潜めた。
何度も、涙を流しながら『胸を揉ましてくれ』と懇願されたのだ。
勿論、揉ませるワケがない。
その懇願をやんわりと断りながら、金を巻き上げ、巻き上げ、おやじの所持金を全て奪って、笑顔で別れた。
罪悪感? そんなの、感じるワケがない。
あのオヤジが馬鹿で、キモいだけなんだから。
まだ、ギリギリ12月24日、クリスマス・イブ。
私は、うっすらと粉雪の積もる帰路の末、マンションの部屋のドアを開けた。
開けた瞬間、何だか異様な匂いと『ギー、ギー』とともに、何者かがもがく音がした。
どういうことだ?照明のスイッチを入れると……
「キャー!」
クワッと見開かれた目に、口からは涎が溢れ出ている。
それに、顔中に刻まれた、苦悶と悲しみに満ちた歪な皺と下にポトポトと落ちる尿……
白いワンピースの女が自分の部屋で首を吊っていたのだ!
女……いや、醜くもがき苦しみ、見る影もなくなっているが、この顔は……私……?
女……いや、『私』は、口から涎を飛ばしながら何かを訴えるように私へ向けて手を伸ばす。
背筋が凍りついた私は、開けたままのドアから外へ出て閉めた。
全身に鳥肌が立ち、何が起こったのか分からなかった。
どうして、私の部屋で、私が首を吊っているの?
混乱した。
でも……
時間が経つにつれ、少しずつ冷静さを取り戻す。
私は、あんなダサい白のワンピースなんて持っていない。
それに、私はここにいる。
あれが、私のワケがない。
そうだ、警察を呼ぼう。
でも……やはり、あの女が本当に自分じゃないのか、確かめたかった。
私は、恐る恐るドアを開けた。
すると……どういうことだ?
私の部屋は、いつも通り。
ソファーがあって、机があって、ベッドがあって……首を吊った女なんて、どこにもいなかったのだ。
私……どうしたの?
あれは……幻?
張り詰めた気持ちが一気に抜けた私は、余程疲れたのだろうか。
ベッドに倒れ込み、深い眠りについた。