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【3】

ー/ー



「ねえ、……。理喜さんてまだ私と付き合いたいと思ってるのかな? それで、──もしまた申し込まれたら、お受けしてもいいんでしょうか?」
 帰宅するなり、琴恵は着替えもせずにベッドに腰掛けてロボットのスイッチをONにして問いを投げた。

 ピピピ、キュイ……キュ……

ハイ(はい)

カレハアナタヲ(彼はあなたを)トクベツニ(特別に)オモッテイマス(思っています)

ダレヨリモ(誰よりも)タイセツニシタイト(大切にしたいと)タイミングヲ(タイミングを)ミハカラッテイマス(見計らっています)

コクハクサレタラ(告白されたら)ウケルノガイイト(受けるのがいいと)オモワレマス(思われます)

 明瞭で具体的な回答。
 本当にすごい。このロボットは、……製作者の理喜は。
 そんな人が琴恵を求めてくれているのなら、その通りにすればいいのではないか。なんの取柄もない自分が、彼に楽しい時間を与えられるのならそれだけで。
 不意にベッドのシーツの上に放り出していたスマートフォンが通話着信を知らせた。視線を向けたディスプレイには「渡部 理喜」の文字。

「はい! 理喜さん──」
『琴恵ちゃん? 今ちょっとだけ話してもいい?』
 気遣ってくれる理喜に抗う気など最初からない。

「ええ、どうぞ」
『往生際が悪くて申し訳ないんだけど。無理なら断ってくれていいし、これで本当に最後にするから。……俺と付き合ってもらえないかな? 特別な、恋人として』
 心臓が鷲掴みにされたような気がした。
 どうして今。まるで琴恵の心を読んだかのようだ。しかしもう気持ちは決まっていた。ゆっくりと息を吸って、一瞬止めて。

「……はい。あの、私なんかで良ければ。どうぞよろしくお願いします」
 静かにそう答えた琴恵に、理喜の声が喜びの色を帯びたのが伝わって来る。

『琴恵ちゃん! えっと、明日会える? 俺の家に来ないか? ああ、いきなりは嫌かな?』
「いいえ。伺います」
 もう迷いなどはない。この人が琴恵の特別な人になるのだから。

『じゃあ明日。いつもの待ち合わせ場所で。食事してからうちに来てよ』
「はい、わかりました」
 通話を終えて、スマートフォンを持ったまま目が泳いでしまう。まるで夢の中にいるかのようで落ち着かない。
 明日、いや今日から琴恵の恋人になった彼。
 あんな素敵な人が、何もできない琴恵を選んでくれるなんて夢のようだ。

「ねえ、夢じゃないわよね? 本当にこれで良かったのかな。……理喜さんは、私、で──」

モチロンデス(もちろんです)

コレハゲンジツデス(これは現実です)

スベテウマク(すべて上手く)イクデショウ(行くでしょう)

 無意識に話し掛けた琴恵に、ロボットは感情の籠もらない「声」で返して来た。
 これは、現実。
 才能と自信に溢れた彼と共に過ごす時間を重ねれば、琴恵も少しは自信が持てるようになるかもしれない。なんでも無条件に頷くだけの人生から、一歩踏み出せたらどんなにいいだろう。
 そう、明日からは今までとは違う生活が待っている。幸せが約束されたようなものだ。
 琴恵の目には欠点など一つも見当たらない理喜に選ばれたことで、本当に「素敵な人間」に近づける気がした。



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「ねえ、……。理喜さんてまだ私と付き合いたいと思ってるのかな? それで、──もしまた申し込まれたら、お受けしてもいいんでしょうか?」
 帰宅するなり、琴恵は着替えもせずにベッドに腰掛けてロボットのスイッチをONにして問いを投げた。
 ピピピ、キュイ……キュ……
【|ハイ《はい》】
【|カレハアナタヲ《彼はあなたを》|トクベツニ《特別に》|オモッテイマス《思っています》】
【|ダレヨリモ《誰よりも》|タイセツニシタイト《大切にしたいと》|タイミングヲ《タイミングを》|ミハカラッテイマス《見計らっています》】
【|コクハクサレタラ《告白されたら》|ウケルノガイイト《受けるのがいいと》|オモワレマス《思われます》】
 明瞭で具体的な回答。
 本当にすごい。このロボットは、……製作者の理喜は。
 そんな人が琴恵を求めてくれているのなら、その通りにすればいいのではないか。なんの取柄もない自分が、彼に楽しい時間を与えられるのならそれだけで。
 不意にベッドのシーツの上に放り出していたスマートフォンが通話着信を知らせた。視線を向けたディスプレイには「渡部 理喜」の文字。
「はい! 理喜さん──」
『琴恵ちゃん? 今ちょっとだけ話してもいい?』
 気遣ってくれる理喜に抗う気など最初からない。
「ええ、どうぞ」
『往生際が悪くて申し訳ないんだけど。無理なら断ってくれていいし、これで本当に最後にするから。……俺と付き合ってもらえないかな? 特別な、恋人として』
 心臓が鷲掴みにされたような気がした。
 どうして今。まるで琴恵の心を読んだかのようだ。しかしもう気持ちは決まっていた。ゆっくりと息を吸って、一瞬止めて。
「……はい。あの、私なんかで良ければ。どうぞよろしくお願いします」
 静かにそう答えた琴恵に、理喜の声が喜びの色を帯びたのが伝わって来る。
『琴恵ちゃん! えっと、明日会える? 俺の家に来ないか? ああ、いきなりは嫌かな?』
「いいえ。伺います」
 もう迷いなどはない。この人が琴恵の特別な人になるのだから。
『じゃあ明日。いつもの待ち合わせ場所で。食事してからうちに来てよ』
「はい、わかりました」
 通話を終えて、スマートフォンを持ったまま目が泳いでしまう。まるで夢の中にいるかのようで落ち着かない。
 明日、いや今日から琴恵の恋人になった彼。
 あんな素敵な人が、何もできない琴恵を選んでくれるなんて夢のようだ。
「ねえ、夢じゃないわよね? 本当にこれで良かったのかな。……理喜さんは、私、で──」
【|モチロンデス《もちろんです》】
【|コレハゲンジツデス《これは現実です》】
【|スベテウマク《すべて上手く》|イクデショウ《行くでしょう》】
 無意識に話し掛けた琴恵に、ロボットは感情の籠もらない「声」で返して来た。
 これは、現実。
 才能と自信に溢れた彼と共に過ごす時間を重ねれば、琴恵も少しは自信が持てるようになるかもしれない。なんでも無条件に頷くだけの人生から、一歩踏み出せたらどんなにいいだろう。
 そう、明日からは今までとは違う生活が待っている。幸せが約束されたようなものだ。
 琴恵の目には欠点など一つも見当たらない理喜に選ばれたことで、本当に「素敵な人間」に近づける気がした。