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 ゲーム世界に召喚されてしまったハヤトがやることは、レベリングにギルドのクエストと、ときおりあるアドミスの必須クエスト。それと、あまり手を付けてないけれどメインストーリーだ。それ以外にも食料や素材を調達して売ったり、寝床を確保したりと、生活面にも気を配らなければならない。

 そういったことを進めていくうちにハヤトはレベルアップしていく。同時に女神ヒナコもレベルアップするけれど、反比例してダウンするのは通帳の残高だ。

 ジュエールが必要なのは女神の御業だけではない。ネットショップで売っているアイテムも有用だ。極端に強くなるわけではないけれど、生存率を上げるには必要な物がある。

「これ、買ってあげたいんだけど、使い捨て感があるんだよなぁ」

 装備に特別な効果をランダムで付ける魔具の価格が千から三千(ジュエール)する。装備を買い換えたら無駄になると考えると手を出しづらい。強化錬金術師に頼めば強化を指定できるけど、素材の確保の手間とそれなりの料金がかかる。課金アイテムの場合は最高値は付かず強化内容はランダムだ。でも、簡単だし何も付けないよりはずっとマシなので付けるに越したことはない。

 その他、装備の見た目やカラーを変更するチケットや、ブランドとコラボした現代の私服など、ゲームにはよくありそうな課金要素が満載だ。自分だったらこんな恰好をしてみたいと妄想が膨らむほど魅力的なのだけど、ハヤトにとっては無用の長物。

「いやいや、無駄金なんて使ってられない」

 そんな葛藤をしながら帰宅した二十二時、ハヤトはNPCの女の子を口説いていた。

「気は確かか?!」

 お相手は、ハヤトがよく行く『キラボシ食堂』の看板娘。以前、母親と一緒にモンスターに襲われていたところを二度も助けた子だ。それがきっかけで顔見知りになった。

 名前はリディアちゃん。口説いているとはいっても露骨な感じではない。仲の良い友達から一歩踏み出したような切なくも甘い会話だ。その感じから好意があるのだとわかった。

 弟の恋愛事情を盗み見るのは気が引けるけど、十九歳の乙女は色恋沙汰が大好物。世の中にはさまざまな恋愛がある。二次元に恋するなんてざらだ。デジタルデータになってしまったのだからデジタルデータの女の子に恋をしたっていいじゃないか。それでヤル気が上がるなら、お姉さんは応援するぞ。

 精神的なエールを送った次の日。清々しく目覚めた私はスマホを見て肩を落とした。

 『ハヤトのステータスが【失恋】です。すべてのパラメーターが二割低下します』

 さらに悲しいことに、三百(ジュエール)を消費して使った【女神の歌】では消せないデバフだった……。どんなバッドステータスだよ!

 それでもやることはやらなきゃならない。私はバイトでハヤトはレベリングやクエストだ。だけど、さすがに二割低下は痛すぎる。消えない消せないデバフは呪いのようだ。異世界でひとりぼっちは寂しかろう。だからといってNPCに恋をして、失恋してしまうとは……。

 フラれたと言っても嫌いとかそういうことではないようだ。ハヤトは命の恩人だしね。

 このゲームの人たちにどんな思考ルーチンが与えられているのかはわからないけど、人間と遜色ない会話がなされている。

 人当たりも良い彼女には好意を寄せている人がいるらしい。それがハヤトのライバルだ。ここは姉として精神的なエールではなく直接的なエールを送ってやりたい。

 バイトから帰ってきた私はログインする前にフロンティアの女神を呼んだ。

「おーい、女神アドミス」

 数秒後、チュルリ~ンと音を響かせてスマホの中にアドミスが現れた。

「おはようございます。今日は朝から女神業ですか? 精が出ますね」
「いや、ハヤトの『性』が溢れちゃってるんでね。なんとかしてあげたくて」
「はい?」
「NPCの女の子と仲良くなる方法ってないの? ヤル気ゲージを上げないと死ぬわ。むしろすでに死んでいる。あんた女神でしょ? なんとかしてよ」

 無茶振りなのはわかっているけど、これくらいのことを言う権利はあるだろう。

「そう言うあなたも女神ですよ、ヒナコさん」
「お手上げだから呼んだのよ。戦いに直接関係ないんだから手を貸して」
「仕方ないですねぇ。ならばちょっと頑張ってみます」

 アドミスは両手を合わせて何やら念を込め始めた。その手がぼんやりと光りだし、数秒してから弾けて消えた。

「心を操ることはできませんが、動かすことはできます。その切っ掛けを作りました。そのためのアイテムも」
「何よそれ。どういうこと?」
「ハヤトさんがまだ諦めていなければ何かが始まるでしょう。ってことで、あとは若いおふたりと愛の女神に任せます。では~」

 アドミスは意味深な言葉を残してチュルリ~ンと消えた。

「誰が愛の女神だ」

 自分の恋愛ですらままならないってのに。

 こんなふうにアドミスとのやり取りをした私は不意に思った。女神アドミスとはいったい何者なのか。

 昨今のAIは人間に近い応答ができるけど、それにしては人間味に溢れている。それはゲーム内のキャラたちにも言えることだ。すべてのキャラにこれほど高度な対応をさせるなんてスーパーコンピューターでも使っているのだろうか。たとえそうだとしても、アドミスの存在はさらにその上をいく。なんせ、隼人をゲームの世界に召還したのだから。

 本当に女神が存在するの? 女神ではないとしたらいったいなんなの? 訊いたところで教えてはくれないだろう。

 フロンティアを作った会社はまだ新しく、大手ゲーム会社と比べれば資本金は小さな額だ。従業員数もたったの二桁ということも怪しいけど、クエストを自動生成するようなゲームなら少数の人員でいいのかもしれない。素人がざっと調べただけでわかることなんてそんなモノだ。それが陰謀やら超常的なことなら、一般の女子大生はお手上げだ。

 無駄な思考を巡らせることに疲れた私はスマホをポケットに突っ込んだ。

 それから二日。ゲーム時間で六日ほど、ハヤトはNPC美少女のリディアちゃんのお店に顔を出していないようだ。そのあいだに【失恋】というバッドステータスは【悄然】になっていた。少しは落ち着いたか。

 とはいえ、フラれた相手の顔を見るのが辛いであろうハヤトが彼女の店に足を運べるはずもない。

「どうしたもんかねぇ」

 アドミスは言っていた。「諦めていなければ何かが始まるでしょう」と。ともかく、顔を合わせなければ始まらない。私は【女神の囁き】を使って彼女の名前を連呼した。これってハヤトにはどんなふうに聞こえているの?

 失恋を忘れようとしている弟になんて酷なことを、と思いながらも『おまえのためだから』と言い聞かせ、鞭を打つ私の胸も少し痛い。これは恋愛モノを読んでいるときにも感じること。決して楽しんでいるわけじゃないぞ。純粋な姉心だからね。

 三百(ジュエール)を三回も注ぎ込んだ不確かな囁きは、心をチクチクと刺したのだろう。クエストを終えて町に帰ってきたハヤトは、遠巻きにお店を覗いていた。そして、リディアちゃんのクエストフラグ……ではなく、元気なさげな表情に胸を撃たれ、六日ぶりに足を踏み入れた。

 注文を取りにきたリディアちゃんに「いつもので」と常連ならではのやり取りをしたけど、一瞬視線を合わすも会話はなかった。ここまで来て尻込みするんじゃない!

 料理を持ってきた彼女に対しても何も言えない。気まずいのはハヤトだけじゃない。リディアちゃんも同じはずだ。

 食事も終わろうかという頃、来店したお客を席に案内した彼女に、ハヤトは意を決して声をかけた。

「リディアちゃん、元気ないね。何かあった?」

 このひと言で彼女も塞き止めていたかのように言葉を吐き出し始めた。

 彼女の元気が無い理由は母親の容体が悪いからだった。そういえば、店内に母親の姿が見られない。厨房内にいるのはリディアちゃんの兄と従業員がひとりだけだ。

 母親の容体を治すのに必要なのは高額な薬や危険な場所に咲く花などという、よくあるお使いクエストではない。三日前に狩猟に出た父親が戻ってこないことで、もともと病弱な母親は心労によって倒れてしまったというのだ。

 話を聞いたハヤトは「俺に任せてくれ」と男らしく言ってのけた。やっぱり男のモチベーションは女だねぇ。

 クエスト受注が確定するとハヤトのステータスウィンドウが自動で開き、最下部にリディアちゃんの好感度ゲージが追加された。

 なるほど、この事態を解決することで好感度を上げるというクエストなわけだ。恋愛シミュレーション的な奴だね。

 現在の好感度は二十三パーセント。低いように見えるけどマイナス方向にも伸びているので、興味は持たれているってことだ。伸びしろがある。そう考えよう。

 さらに、画面中央にメッセージが表示された。

 『ショップに新しい商品が追加されました』

 開いたショップの一覧に【キューピッドの矢】なるアイテムが点滅している。嫌な予感しかしないアイテム名をクリックして詳細を確認してみると……。

 『任意のキャラクターに対する想いを矢に宿し、対象者のハートを射抜くことで、その者の心に恋の花を咲かせる恋愛成就のアイテム。一万(ジュエール)

 恋愛すら金の力か! アドミス、私が愛の女神なら、お前は金の女神だな。

 嫌な予感が当たって私が脱力しているあいだにも、ハヤトはリディアちゃんと話を進めていた。行方不明の彼女の父親が狩猟に向かったのは町の北の森だという。

 話を聞いたハヤトは彼女が見ている前で素早く料理をたいらげて、「必ず見つけ出すよ」と告げてから店から飛び出していった。このとき、好感度が三パーセント下がった。なんで?

「ハヤトさーん、お代がまだ……」

 おい!



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 ゲーム世界に召喚されてしまったハヤトがやることは、レベリングにギルドのクエストと、ときおりあるアドミスの必須クエスト。それと、あまり手を付けてないけれどメインストーリーだ。それ以外にも食料や素材を調達して売ったり、寝床を確保したりと、生活面にも気を配らなければならない。
 そういったことを進めていくうちにハヤトはレベルアップしていく。同時に女神ヒナコもレベルアップするけれど、反比例してダウンするのは通帳の残高だ。
 ジュエールが必要なのは女神の御業だけではない。ネットショップで売っているアイテムも有用だ。極端に強くなるわけではないけれど、生存率を上げるには必要な物がある。
「これ、買ってあげたいんだけど、使い捨て感があるんだよなぁ」
 装備に特別な効果をランダムで付ける魔具の価格が千から三千|J《ジュエール》する。装備を買い換えたら無駄になると考えると手を出しづらい。強化錬金術師に頼めば強化を指定できるけど、素材の確保の手間とそれなりの料金がかかる。課金アイテムの場合は最高値は付かず強化内容はランダムだ。でも、簡単だし何も付けないよりはずっとマシなので付けるに越したことはない。
 その他、装備の見た目やカラーを変更するチケットや、ブランドとコラボした現代の私服など、ゲームにはよくありそうな課金要素が満載だ。自分だったらこんな恰好をしてみたいと妄想が膨らむほど魅力的なのだけど、ハヤトにとっては無用の長物。
「いやいや、無駄金なんて使ってられない」
 そんな葛藤をしながら帰宅した二十二時、ハヤトはNPCの女の子を口説いていた。
「気は確かか?!」
 お相手は、ハヤトがよく行く『キラボシ食堂』の看板娘。以前、母親と一緒にモンスターに襲われていたところを二度も助けた子だ。それがきっかけで顔見知りになった。
 名前はリディアちゃん。口説いているとはいっても露骨な感じではない。仲の良い友達から一歩踏み出したような切なくも甘い会話だ。その感じから好意があるのだとわかった。
 弟の恋愛事情を盗み見るのは気が引けるけど、十九歳の乙女は色恋沙汰が大好物。世の中にはさまざまな恋愛がある。二次元に恋するなんてざらだ。デジタルデータになってしまったのだからデジタルデータの女の子に恋をしたっていいじゃないか。それでヤル気が上がるなら、お姉さんは応援するぞ。
 精神的なエールを送った次の日。清々しく目覚めた私はスマホを見て肩を落とした。
 『ハヤトのステータスが【失恋】です。すべてのパラメーターが二割低下します』
 さらに悲しいことに、三百|J《ジュエール》を消費して使った【女神の歌】では消せないデバフだった……。どんなバッドステータスだよ!
 それでもやることはやらなきゃならない。私はバイトでハヤトはレベリングやクエストだ。だけど、さすがに二割低下は痛すぎる。消えない消せないデバフは呪いのようだ。異世界でひとりぼっちは寂しかろう。だからといってNPCに恋をして、失恋してしまうとは……。
 フラれたと言っても嫌いとかそういうことではないようだ。ハヤトは命の恩人だしね。
 このゲームの人たちにどんな思考ルーチンが与えられているのかはわからないけど、人間と遜色ない会話がなされている。
 人当たりも良い彼女には好意を寄せている人がいるらしい。それがハヤトのライバルだ。ここは姉として精神的なエールではなく直接的なエールを送ってやりたい。
 バイトから帰ってきた私はログインする前にフロンティアの女神を呼んだ。
「おーい、女神アドミス」
 数秒後、チュルリ~ンと音を響かせてスマホの中にアドミスが現れた。
「おはようございます。今日は朝から女神業ですか? 精が出ますね」
「いや、ハヤトの『性』が溢れちゃってるんでね。なんとかしてあげたくて」
「はい?」
「NPCの女の子と仲良くなる方法ってないの? ヤル気ゲージを上げないと死ぬわ。むしろすでに死んでいる。あんた女神でしょ? なんとかしてよ」
 無茶振りなのはわかっているけど、これくらいのことを言う権利はあるだろう。
「そう言うあなたも女神ですよ、ヒナコさん」
「お手上げだから呼んだのよ。戦いに直接関係ないんだから手を貸して」
「仕方ないですねぇ。ならばちょっと頑張ってみます」
 アドミスは両手を合わせて何やら念を込め始めた。その手がぼんやりと光りだし、数秒してから弾けて消えた。
「心を操ることはできませんが、動かすことはできます。その切っ掛けを作りました。そのためのアイテムも」
「何よそれ。どういうこと?」
「ハヤトさんがまだ諦めていなければ何かが始まるでしょう。ってことで、あとは若いおふたりと愛の女神に任せます。では~」
 アドミスは意味深な言葉を残してチュルリ~ンと消えた。
「誰が愛の女神だ」
 自分の恋愛ですらままならないってのに。
 こんなふうにアドミスとのやり取りをした私は不意に思った。女神アドミスとはいったい何者なのか。
 昨今のAIは人間に近い応答ができるけど、それにしては人間味に溢れている。それはゲーム内のキャラたちにも言えることだ。すべてのキャラにこれほど高度な対応をさせるなんてスーパーコンピューターでも使っているのだろうか。たとえそうだとしても、アドミスの存在はさらにその上をいく。なんせ、隼人をゲームの世界に召還したのだから。
 本当に女神が存在するの? 女神ではないとしたらいったいなんなの? 訊いたところで教えてはくれないだろう。
 フロンティアを作った会社はまだ新しく、大手ゲーム会社と比べれば資本金は小さな額だ。従業員数もたったの二桁ということも怪しいけど、クエストを自動生成するようなゲームなら少数の人員でいいのかもしれない。素人がざっと調べただけでわかることなんてそんなモノだ。それが陰謀やら超常的なことなら、一般の女子大生はお手上げだ。
 無駄な思考を巡らせることに疲れた私はスマホをポケットに突っ込んだ。
 それから二日。ゲーム時間で六日ほど、ハヤトはNPC美少女のリディアちゃんのお店に顔を出していないようだ。そのあいだに【失恋】というバッドステータスは【悄然】になっていた。少しは落ち着いたか。
 とはいえ、フラれた相手の顔を見るのが辛いであろうハヤトが彼女の店に足を運べるはずもない。
「どうしたもんかねぇ」
 アドミスは言っていた。「諦めていなければ何かが始まるでしょう」と。ともかく、顔を合わせなければ始まらない。私は【女神の囁き】を使って彼女の名前を連呼した。これってハヤトにはどんなふうに聞こえているの?
 失恋を忘れようとしている弟になんて酷なことを、と思いながらも『おまえのためだから』と言い聞かせ、鞭を打つ私の胸も少し痛い。これは恋愛モノを読んでいるときにも感じること。決して楽しんでいるわけじゃないぞ。純粋な姉心だからね。
 三百|J《ジュエール》を三回も注ぎ込んだ不確かな囁きは、心をチクチクと刺したのだろう。クエストを終えて町に帰ってきたハヤトは、遠巻きにお店を覗いていた。そして、リディアちゃんのクエストフラグ……ではなく、元気なさげな表情に胸を撃たれ、六日ぶりに足を踏み入れた。
 注文を取りにきたリディアちゃんに「いつもので」と常連ならではのやり取りをしたけど、一瞬視線を合わすも会話はなかった。ここまで来て尻込みするんじゃない!
 料理を持ってきた彼女に対しても何も言えない。気まずいのはハヤトだけじゃない。リディアちゃんも同じはずだ。
 食事も終わろうかという頃、来店したお客を席に案内した彼女に、ハヤトは意を決して声をかけた。
「リディアちゃん、元気ないね。何かあった?」
 このひと言で彼女も塞き止めていたかのように言葉を吐き出し始めた。
 彼女の元気が無い理由は母親の容体が悪いからだった。そういえば、店内に母親の姿が見られない。厨房内にいるのはリディアちゃんの兄と従業員がひとりだけだ。
 母親の容体を治すのに必要なのは高額な薬や危険な場所に咲く花などという、よくあるお使いクエストではない。三日前に狩猟に出た父親が戻ってこないことで、もともと病弱な母親は心労によって倒れてしまったというのだ。
 話を聞いたハヤトは「俺に任せてくれ」と男らしく言ってのけた。やっぱり男のモチベーションは女だねぇ。
 クエスト受注が確定するとハヤトのステータスウィンドウが自動で開き、最下部にリディアちゃんの好感度ゲージが追加された。
 なるほど、この事態を解決することで好感度を上げるというクエストなわけだ。恋愛シミュレーション的な奴だね。
 現在の好感度は二十三パーセント。低いように見えるけどマイナス方向にも伸びているので、興味は持たれているってことだ。伸びしろがある。そう考えよう。
 さらに、画面中央にメッセージが表示された。
 『ショップに新しい商品が追加されました』
 開いたショップの一覧に【キューピッドの矢】なるアイテムが点滅している。嫌な予感しかしないアイテム名をクリックして詳細を確認してみると……。
 『任意のキャラクターに対する想いを矢に宿し、対象者のハートを射抜くことで、その者の心に恋の花を咲かせる恋愛成就のアイテム。一万|J《ジュエール》』
 恋愛すら金の力か! アドミス、私が愛の女神なら、お前は金の女神だな。
 嫌な予感が当たって私が脱力しているあいだにも、ハヤトはリディアちゃんと話を進めていた。行方不明の彼女の父親が狩猟に向かったのは町の北の森だという。
 話を聞いたハヤトは彼女が見ている前で素早く料理をたいらげて、「必ず見つけ出すよ」と告げてから店から飛び出していった。このとき、好感度が三パーセント下がった。なんで?
「ハヤトさーん、お代がまだ……」
 おい!