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26話 土地神様と懸隔の恋 その一

ー/ー




 柊崎家の一件から四日が経った。
 後日学校でフキに聞いた話によると、マトイさんと一緒にコマチさんと着物の付喪神を家族に紹介して、居候として住まわせることが決定したそうだ。

 さらにまだ決めてはいないものの、着物の付喪神の方も名付けるつもりらしい。
 あんなことをしでかした付喪神と縁を結ぶのは危なくないのかとも思ったけど、コマチさんは生まれたばかりの神様で、力の使い方も拙い。なのでフキを介して繋がりを持つことで見張り兼お守として着物の付喪神を隣に置いておく方がむしろ安心できる……とマトイさんから言われたらしい。

 そんなわけで二柱の付喪神騒動は無事に決着。柊崎家に平穏が戻ったというわけである。

 その一方で、僕はというと……


「キリさーん! 返事してくださーい!」
「キリチャン、ドコー!?」


 神社の境内でサラと一緒にキリさんを捜していた。


 フキの家で急に帰ってからというもの、サラが家に帰ってもキリさんはいなかったという。その時に神社にも足を運んだらしいのだが、そこにも姿は無く、僕にも連絡が来た。しかし、当然こちらも彼女の行先は知らなかった。
 心配から電話口で泣いているサラに戸惑いつつ、僕は以前マトイさんが言っていた話を思い出した。


『――例えるなら仕事の書類を一旦置いた状態になるわけですから、後で忙しくなってただろうなーってくらいです』


 もしかしたらその時のしわ寄せが来ていて、忙しくて帰れなかったんじゃないか。それにキリさんは姿を消すことができる。土地神として役目を果たしている時はそうしているのかもしれない。
 憶測でしかないものの、その日はそう言ってサラを落ち着かせたのだった。
 その時は次の日、あるいは数日もすれば帰ってくるだろうと軽く考えていたのだが……全く帰ってくる様子は無かった。

 それから日を追う事に萎れていくサラを見た僕達は「あのままだとアイツ、テストまともに受けられなくない?」と心配になり、中間試験前日である今日、フキとイザの協力も得て手分けして捜索しているというわけだ。

「こんだけ探してもいないなんて……」
「ココにはいないのカナー……」
「うーん……フキ達からも連絡はないし、ホントにどこ行ったんだろ」
「ま、まさかKidnap(ゆうかい)?」
「落ち着け。キリさんがそう簡単に拐われるとは思えないよ」

 神通力もあるし、その気になれば暴漢くらいは軽く蹴散らせるだろう。
 でもキリさん優しいからなぁ……その線も考えた方がいいのだろうか。

「皆も探してくれてるし、きっとすぐ見つかるって」
「……ウン」

 肩を軽く叩いて慰めるものの、サラの表情から不安の色は抜けていない。この赤毛がここまで落ち込んでると調子が狂うな。
 こんな時、マトイさんなら簡単に見つけてしまいそうな気がするけど……ちゃんと連絡先を聞いておくべきだったな、クソッ。

「ワタシ達も他のトコ探してみる?」
「まだ最後の手段があるし、それを試してダメなら別の場所に行ってみよう」
「最後の手段?」
「ちょっと待ってね……」

 首を傾げるサラを尻目に、社の裏手にある蔵の中へと入った。
 ええっと、この前中を整理した時にこの辺に……あった!

「コレとコレをこうして……よし、できた」

 目的の物を取り出して、用意していたもう一つと組み合わせる。
 これでどうにか見つかればいいんだけど……。

「セッチャン、コレは……」
「ああそうだ。コレで土地神様を、

 出来上がった物体をサラに見せて簡潔な説明をした。
 そう、僕が作ったのは……紐の先に同人誌を垂らした、対キリさん用特化型釣り竿である!

「流石セッチャン、コレならキリチャンFishingできるカモ!」
「褒めるな褒めるな。……そいやっ」

 ダメ元のお粗末な作戦をおだてられつつ、早速出来上がった物を持ってベンチの上に立つと……釣り餌の同人誌を放り投げ


「はぁっっっ!!!」
(ズサァァァッッ!!!)


 ……放り投げて地面に落ちる寸前で、物凄い勢いで白い影が横切ってヘッドスライディングセーブをかましてきた。

「うわホントに釣れた!?」
「はっ!? しまった!!」
「キリチャン!! シンパイしたヨぉ!!」
「ぅぶっふ!?」

 あまりにもあっさりと釣られた土地神様はすぐさま逃げようとするも、サラが鳩尾を頭突きして……もとい、飛びついて簡単に御用となったのだった。


「で、何してたんですかキリさん」

 ベンチの上で気まずそうに正座する土地神様を見下ろしながら問い詰めると、キリさんは肩をビクつかせた。
 おかしいなぁ。こっちは笑顔ですよ。

「セッチャン笑顔コエーヨ。……でも、ホントに無事でヨカッタ」
「う……ご心配をおかけしました……」
「全くですよ」

 頭を下げる神様に対して溜息を吐く。
 謝るくらいなら最初から姿を消したりしないでほしい。

「それでキリさん。僕らの前から消えてた原因って……やっぱりですか?」
「セッチャン何か知ってるノ?」
「いや知ってるも何も……どう考えても着物の付喪神さんの発言だろ」

 僕の言葉にサラはピンときていないようだが、キリさんはバツが悪そうに目を逸らしている。うむ、当たってるみたいだな。


『――神と人間が共にあっても、


 着物の付喪神さんのあの発言。きっとキリさんはアレを気にして僕らから距離を置こうとしたのだろう。
 彼女の性格的に気にするのは分かるし、多少パニックにも陥ったのだろうということもなんとなく理解できる。それにしたって行動が突然すぎるし、僕らに何も言わないで姿を消したことには腹が立ったけどな。

「セッチャン顔コワイって。落ち着けヨ」
「ほ、本当にごめんなさいぃ! セキさんの言う通り、何か()うてからにすればよかったよね……」
「僕何も言ってませんけど……ていうか、言ったら言ったで止めますよ」
「えっ」

 えっ、じゃないが。

「当たりマエダさんデショ! トモダチなんだから!」
「で、でも一緒におったらお互いその分辛くなるし……」
「エッ?」
「付喪神さんも言っとったじゃろ? 生きる時間も常識も違うのが(私達)なんよ」

 ああ、そういえばそんなことも言ってたっけ。
 置き去りにするとかされるとか、そんな話だったな。

「私、付喪神さんの気持ちが分かるというか……私も皆と別れたくないんよ。でもあの神様(ひと)の言う通り、ずっと一緒にはおられん。なら、いっそ――」


「ふんっ」

(スパァ―――ンッ!)


「あ痛ァッ!?」


 噺の途中だったが、キリさんの脳天目掛けてハリセンを振り下ろした。
 うん、ホントに良い音するなコレ。

「ぐ、ぉおおぅ……」
「アレ? ソレってマトチャンノだよネ。なんでセッチャンが持ってんノ?」
「この前の騒動の時、マトイさんに返しそびれたんだよね。有効活用できてよかったよ」
「コレ、有効活用(ユーコーカツヨー)でイイのカナ?」

 サラが指をさす先、というか下ではキリさんが唸りながら頭を抱えている。いつか似たような光景を見た気がするな。デジャヴ?

「それはさておき……キリさん」
「ぅう……は、はい」
「貴女は、?」
「……え?」

 僕の言葉にキリさんが顔を上げて、目線がかち合った。
 何を言っているのか分からないようで、目を丸くして口を開けている。

「付喪神さんもそうでしたけど、別れるとかどうとかってのはいつ来るか分からない未来の話でしかありません。いつ別れが来るとか、別れた時に悲しいとか寂しいとか……その時にならないと分からないじゃないですか」
「……フキザキさんも、そう言っとったね。でも、私はコマチさんとは違う。皆といつか別れるなんて――」
「いつかって、それは今じゃないでしょう」

 キリさんの言葉をぴしゃりと塞ぐ。
 本当にいつの話をしてるんだこの神様は。

「今言った通り、僕らは今この時生きて、話してるんです。それを差し置いて先の話ばかりするのはおかしいでしょう」
「ウンウン。……あ、キリチャンはワタシタチと話すノがイヤだった……?」
「ち、違うよ! 皆と仲良くなれたんは本当に嬉しい! けど、皆と別れたくない! いつかそれが来るって考えたら私、きっとそんなの……耐えられん……」
「なら考えなければいいじゃないですか」
「それじゃ何の解決にもなっとらんよぉ……」

 たしかに解決にはならない。
 神様とか人間とか、存在としての違いとか……その辺をどうこうすることなんて当然無理な話だから、解決策なんて無いに等しい。

「そうです。こんなの問題の先送りでしかありません。だから――


 ――いつか僕らがいなくなった後、存分に泣いてください。喚いて叫んで、駄々をこねてもいい。それはその時に考えろってやつです」


 僕が少しだけ笑いながら話すと、キリさんはポカンと口を開けた。

 それだけ悩むくらい僕らのことを気に入ってくれたのは嬉しいし、いつか来ることを考えて悲観的になる気持ちはわかる。
 でも、それは人間同士でだって同じような事だ。

「たしかにキリさんは取り残されて、見送る側になる可能性は高いですよ。でも、今から別れを惜しんでどうすんですか。……極端な話、誰しもいつかは死んで別れる。なんならすぐに病気でぶっ倒れてお陀仏かもしれない。でも死に別れる事を常に悲観しながら生きてる人なんてあまりいないと思います」

 誰が先で誰が残されるかなんて分かりゃしない。そんな未確定な先の話を今してどうするんだ。

「長くなりましたけど、要するに……僕もサラも、イザやフキだって皆貴女が好きなんです。だからこそ、いつ来るか分からない別れを気にするのは後にして、今僕らと仲良くしてください。今後ともよろしくお願いします」

 適当にまとめて、頭を下げた。
 我ながら良い答えとは言えない、ほとんどただの我儘のようなもの。これで納得してくれるとは思わないけど……。

「………………」

 返事はない。頭を下げたままなので、表情も分からない。
 ……ダメだろうか。

「……キリチャン。この前のデート、楽しかった?」

 反応が無いことに僕が焦っていると、サラが口を開いた。

「え? う、うん」
「なら、さ。これからもワタシ達と一緒に遊んで、モット楽しいコトいっぱいしよーヨ。せっかく仲良くなれたのに、お別れしちゃったらソーユー楽しみも無くなるし、楽しまナイとMOTTAINAIじゃナイカナ……?」
「……えっ……と――」

「ソレにホラ、皆から離れるってコトは同人誌(ドージンシ)も読めなくなりましてヨ」
「残りまぁす!!!」

 あらやだ元気な返事。僕の説得よりも本を楽しむ方が響いたらしい。
 なんか負けた気分というか、複雑な気持ちではあるが……まあ、思いとどまってくれたのなら良かったと思おう。うん。
 ……泣いてませんよ?




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 柊崎家の一件から四日が経った。
 後日学校でフキに聞いた話によると、マトイさんと一緒にコマチさんと着物の付喪神を家族に紹介して、居候として住まわせることが決定したそうだ。
 さらにまだ決めてはいないものの、着物の付喪神の方も名付けるつもりらしい。
 あんなことをしでかした付喪神と縁を結ぶのは危なくないのかとも思ったけど、コマチさんは生まれたばかりの神様で、力の使い方も拙い。なのでフキを介して繋がりを持つことで見張り兼お守として着物の付喪神を隣に置いておく方がむしろ安心できる……とマトイさんから言われたらしい。
 そんなわけで二柱の付喪神騒動は無事に決着。柊崎家に平穏が戻ったというわけである。
 その一方で、僕はというと……
「キリさーん! 返事してくださーい!」
「キリチャン、ドコー!?」
 神社の境内でサラと一緒にキリさんを捜していた。
 フキの家で急に帰ってからというもの、サラが家に帰ってもキリさんはいなかったという。その時に神社にも足を運んだらしいのだが、そこにも姿は無く、僕にも連絡が来た。しかし、当然こちらも彼女の行先は知らなかった。
 心配から電話口で泣いているサラに戸惑いつつ、僕は以前マトイさんが言っていた話を思い出した。
『――例えるなら仕事の書類を一旦置いた状態になるわけですから、後で忙しくなってただろうなーってくらいです』
 もしかしたらその時のしわ寄せが来ていて、忙しくて帰れなかったんじゃないか。それにキリさんは姿を消すことができる。土地神として役目を果たしている時はそうしているのかもしれない。
 憶測でしかないものの、その日はそう言ってサラを落ち着かせたのだった。
 その時は次の日、あるいは数日もすれば帰ってくるだろうと軽く考えていたのだが……全く帰ってくる様子は無かった。
 それから日を追う事に萎れていくサラを見た僕達は「あのままだとアイツ、テストまともに受けられなくない?」と心配になり、中間試験前日である今日、フキとイザの協力も得て手分けして捜索しているというわけだ。
「こんだけ探してもいないなんて……」
「ココにはいないのカナー……」
「うーん……フキ達からも連絡はないし、ホントにどこ行ったんだろ」
「ま、まさか|Kidnap《ゆうかい》?」
「落ち着け。キリさんがそう簡単に拐われるとは思えないよ」
 神通力もあるし、その気になれば暴漢くらいは軽く蹴散らせるだろう。
 でもキリさん優しいからなぁ……その線も考えた方がいいのだろうか。
「皆も探してくれてるし、きっとすぐ見つかるって」
「……ウン」
 肩を軽く叩いて慰めるものの、サラの表情から不安の色は抜けていない。この赤毛がここまで落ち込んでると調子が狂うな。
 こんな時、マトイさんなら簡単に見つけてしまいそうな気がするけど……ちゃんと連絡先を聞いておくべきだったな、クソッ。
「ワタシ達も他のトコ探してみる?」
「まだ最後の手段があるし、それを試してダメなら別の場所に行ってみよう」
「最後の手段?」
「ちょっと待ってね……」
 首を傾げるサラを尻目に、社の裏手にある蔵の中へと入った。
 ええっと、この前中を整理した時にこの辺に……あった!
「コレとコレをこうして……よし、できた」
 目的の物を取り出して、用意していたもう一つと組み合わせる。
 これでどうにか見つかればいいんだけど……。
「セッチャン、コレは……」
「ああそうだ。コレで土地神様を、《《釣り上げる》》」
 出来上がった物体をサラに見せて簡潔な説明をした。
 そう、僕が作ったのは……紐の先に同人誌を垂らした、対キリさん用特化型釣り竿である!
「流石セッチャン、コレならキリチャンFishingできるカモ!」
「褒めるな褒めるな。……そいやっ」
 ダメ元のお粗末な作戦をおだてられつつ、早速出来上がった物を持ってベンチの上に立つと……釣り餌の同人誌を放り投げ
「はぁっっっ!!!」
(ズサァァァッッ!!!)
 ……放り投げて地面に落ちる寸前で、物凄い勢いで白い影が横切ってヘッドスライディングセーブをかましてきた。
「うわホントに釣れた!?」
「はっ!? しまった!!」
「キリチャン!! シンパイしたヨぉ!!」
「ぅぶっふ!?」
 あまりにもあっさりと釣られた土地神様はすぐさま逃げようとするも、サラが鳩尾を頭突きして……もとい、飛びついて簡単に御用となったのだった。
「で、何してたんですかキリさん」
 ベンチの上で気まずそうに正座する土地神様を見下ろしながら問い詰めると、キリさんは肩をビクつかせた。
 おかしいなぁ。こっちは笑顔ですよ。
「セッチャン笑顔コエーヨ。……でも、ホントに無事でヨカッタ」
「う……ご心配をおかけしました……」
「全くですよ」
 頭を下げる神様に対して溜息を吐く。
 謝るくらいなら最初から姿を消したりしないでほしい。
「それでキリさん。僕らの前から消えてた原因って……やっぱり《《アレ》》ですか?」
「セッチャン何か知ってるノ?」
「いや知ってるも何も……どう考えても着物の付喪神さんの発言だろ」
 僕の言葉にサラはピンときていないようだが、キリさんはバツが悪そうに目を逸らしている。うむ、当たってるみたいだな。
『――神と人間が共にあっても、《《決して幸せになれない》》』
 着物の付喪神さんのあの発言。きっとキリさんはアレを気にして僕らから距離を置こうとしたのだろう。
 彼女の性格的に気にするのは分かるし、多少パニックにも陥ったのだろうということもなんとなく理解できる。それにしたって行動が突然すぎるし、僕らに何も言わないで姿を消したことには腹が立ったけどな。
「セッチャン顔コワイって。落ち着けヨ」
「ほ、本当にごめんなさいぃ! セキさんの言う通り、何か言《ゆ》うてからにすればよかったよね……」
「僕何も言ってませんけど……ていうか、言ったら言ったで止めますよ」
「えっ」
 えっ、じゃないが。
「当たりマエダさんデショ! トモダチなんだから!」
「で、でも一緒におったらお互いその分辛くなるし……」
「エッ?」
「付喪神さんも言っとったじゃろ? 生きる時間も常識も違うのが神《私達》なんよ」
 ああ、そういえばそんなことも言ってたっけ。
 置き去りにするとかされるとか、そんな話だったな。
「私、付喪神さんの気持ちが分かるというか……私も皆と別れたくないんよ。でもあの神様《ひと》の言う通り、ずっと一緒にはおられん。なら、いっそ――」
「ふんっ」
(スパァ―――ンッ!)
「あ痛ァッ!?」
 噺の途中だったが、キリさんの脳天目掛けてハリセンを振り下ろした。
 うん、ホントに良い音するなコレ。
「ぐ、ぉおおぅ……」
「アレ? ソレってマトチャンノだよネ。なんでセッチャンが持ってんノ?」
「この前の騒動の時、マトイさんに返しそびれたんだよね。有効活用できてよかったよ」
「コレ、有効活用《ユーコーカツヨー》でイイのカナ?」
 サラが指をさす先、というか下ではキリさんが唸りながら頭を抱えている。いつか似たような光景を見た気がするな。デジャヴ?
「それはさておき……キリさん」
「ぅう……は、はい」
「貴女は、《《いつの話をしてるんですか》》?」
「……え?」
 僕の言葉にキリさんが顔を上げて、目線がかち合った。
 何を言っているのか分からないようで、目を丸くして口を開けている。
「付喪神さんもそうでしたけど、別れるとかどうとかってのはいつ来るか分からない未来の話でしかありません。いつ別れが来るとか、別れた時に悲しいとか寂しいとか……その時にならないと分からないじゃないですか」
「……フキザキさんも、そう言っとったね。でも、私はコマチさんとは違う。皆といつか別れるなんて――」
「いつかって、それは今じゃないでしょう」
 キリさんの言葉をぴしゃりと塞ぐ。
 本当にいつの話をしてるんだこの神様は。
「今言った通り、僕らは今この時生きて、話してるんです。それを差し置いて先の話ばかりするのはおかしいでしょう」
「ウンウン。……あ、キリチャンはワタシタチと話すノがイヤだった……?」
「ち、違うよ! 皆と仲良くなれたんは本当に嬉しい! けど、皆と別れたくない! いつかそれが来るって考えたら私、きっとそんなの……耐えられん……」
「なら考えなければいいじゃないですか」
「それじゃ何の解決にもなっとらんよぉ……」
 たしかに解決にはならない。
 神様とか人間とか、存在としての違いとか……その辺をどうこうすることなんて当然無理な話だから、解決策なんて無いに等しい。
「そうです。こんなの問題の先送りでしかありません。だから――
 ――いつか僕らがいなくなった後、存分に泣いてください。喚いて叫んで、駄々をこねてもいい。それはその時に考えろってやつです」
 僕が少しだけ笑いながら話すと、キリさんはポカンと口を開けた。
 それだけ悩むくらい僕らのことを気に入ってくれたのは嬉しいし、いつか来ることを考えて悲観的になる気持ちはわかる。
 でも、それは人間同士でだって同じような事だ。
「たしかにキリさんは取り残されて、見送る側になる可能性は高いですよ。でも、今から別れを惜しんでどうすんですか。……極端な話、誰しもいつかは死んで別れる。なんならすぐに病気でぶっ倒れてお陀仏かもしれない。でも死に別れる事を常に悲観しながら生きてる人なんてあまりいないと思います」
 誰が先で誰が残されるかなんて分かりゃしない。そんな未確定な先の話を今してどうするんだ。
「長くなりましたけど、要するに……僕もサラも、イザやフキだって皆貴女が好きなんです。だからこそ、いつ来るか分からない別れを気にするのは後にして、今僕らと仲良くしてください。今後ともよろしくお願いします」
 適当にまとめて、頭を下げた。
 我ながら良い答えとは言えない、ほとんどただの我儘のようなもの。これで納得してくれるとは思わないけど……。
「………………」
 返事はない。頭を下げたままなので、表情も分からない。
 ……ダメだろうか。
「……キリチャン。この前のデート、楽しかった?」
 反応が無いことに僕が焦っていると、サラが口を開いた。
「え? う、うん」
「なら、さ。これからもワタシ達と一緒に遊んで、モット楽しいコトいっぱいしよーヨ。せっかく仲良くなれたのに、お別れしちゃったらソーユー楽しみも無くなるし、楽しまナイとMOTTAINAIじゃナイカナ……?」
「……えっ……と――」
「ソレにホラ、皆から離れるってコトは同人誌《ドージンシ》も読めなくなりましてヨ」
「残りまぁす!!!」
 あらやだ元気な返事。僕の説得よりも本を楽しむ方が響いたらしい。
 なんか負けた気分というか、複雑な気持ちではあるが……まあ、思いとどまってくれたのなら良かったと思おう。うん。
 ……泣いてませんよ?