「
一彦、あたし今年の夏休みは海行きたい! 水着新しくしようかな~」
大学図書館で一緒に試験勉強した帰り道。
美知が組んだ腕を揺さぶるようにしながら、弾んだ調子で切り出した。
「あー、悪いな。俺、今年は休み入ったらすぐ帰省するんだ。ちょっと家の方で用あってさ。こっち戻るの八月後半、たぶんお盆は過ぎると思う」
「ええ? それじゃ泳げないじゃない! お盆過ぎたらクラゲ出るんだよ⁉ それに半月も会えないなんて……」
あっさり却下する俺に、斜め下から
睨めつけるような視線を寄越しながら彼女があからさまな不満の声を上げる。
付き合って二年になる恋人。
多少身勝手なところはあるかもしれないが、俺とは真逆の自由で強気な面にも惹かれた。
あまりにもタイプが違い過ぎるからか、一緒に過ごしてて新鮮で楽しい相手だった。
小さな喧嘩くらいはしても、特に問題なく順調に行っていた。少なくとも俺はそう考えてたんだ。
「すぐじゃないとダメなの? 海行ってから帰省するのは? 日帰りでいいんだし」
「もう決めたから。八月初めの試験最終日に帰る」
実家の方は何が何でも休みになったら速攻帰らないと、ってわけじゃなかった。だけど俺はいったん立てた計画を崩すのが嫌いなんだ。
「だったらせめて早めに教えてくれたらよかったのに。あたし、すごく楽しみにしてたのよ。大学最後の夏休みだから。今からじゃ試験前だからどこにも行けないわ」
「それはゴメン」
謝りはするものの、俺が考えを変える気がないのは美知にも伝わったらしい。するりと腕が離れて行く。
「そっか。……もういい」
「戻ったらどっか行こう。九月も休みだしさ。泳げなくてもいいじゃんか。海は見に行ってプール行けば」
「もういいったら!」
ぷい、と横を向いた彼女に、俺はそれ以上説得を重ねることもしなかった。
いつもの我が儘か。気分屋だからすぐに機嫌直すだろう。
──その程度にしか受け止めていなかった。