表示設定
表示設定
目次 目次




ー/ー



 俺は焦っていた。類のことを考えると悪い方にばかり考えてしまうからだ。俺は類のことを何も知らないのかもしれない。だが、側面として見てきた類はとても誠実な奴だった。

「現実はプラスティックだ」と類は語る。俺には理解できなかったが、類の中性的な見た目とは正反対な低い声に説得力を感じて、頷くことしかできなかった。

 そうなのだろうか? 本当に?

 さっき俺が、歩いているその場所には小さな石を感じられて、鬱陶しく感じられるし、パン屋の匂いもいい香りだった。
 ただ、今俺の前にあるのは類のまるでプラスティックはこれだと見せているようなグレーな部屋の中だけだ。青系に彩られているはずの類の部屋は以前きたとより殺風景で元からものの少ないやつだったのにどこを減らしたらこうなるのだろうか、と言った様子だった。

「お前さあ、どうしたんだよ」
「はあ、どうしたも何もお前も体験しただろう」
「またその話だ。なんで花苗にいきなりしたんだよ。怯えてたぞ」
「怯えるって、知らないよ。事実しか話してない」
「だからさ、想子はお前の幼馴染以外にないのに、勘繰ってたんだよ」
「想子は殺された。その事実だけ言っているだけだよ」
「事実は自殺だろ」

「まあ、座れよ」

 ベッドを刺され、促されるままベッドに座る。
「ここにくるのも随分ぶりなんだから、少しゆっくりしよう」
 類はそう言うと、自分の椅子に腰掛けた。回るタイプの勉強椅子だ。
「想子、よくここに来ると、この椅子で遊んでたよな」
 類はどこか遠くを見つめたような深い笑みを浮かべている。
「俺らそっちのけで携帯いじってたしな」
「よくやるよ。なんだっけ、ゲームよくやってたな」
 ふと蘇る。鮮やかな記憶たち。もしかしたら、現実がプラスティックというのはとても現実がつまらないという意味なのだろうか。

「彼女、聞きにきたんだろ」
 類は笑いながら言う。
「なんで分かるんだよ」
「きっと花苗がそういうこと言ってそうだなって思ってさ」
「そうなんだけど」と少し疑っている自分が申し訳なくなって俯く。

「花苗、ご名答だよ」

 類は引き出しから、一枚のプリクラを出した。俯いた俺に見せる。二人で写った生々しい写真。
「携帯にならもっとあるけど、見る?」
「なんで……」
「知らない。というか教える気がない。
 大輝はそのままでいてほしい。想子の想いだよ」

 愕然とする俺をよそに類は静かに立ち上がった。

「僕が殺した」

 うんざりしていた。友人と恋人二人から裏切られていたのかと思っているタイミングでその狂言に辟易した。
「違うと思っているだろうけど、想子、僕の前で死んだじゃん」
 類は言い切る。そして少し嬉しそうだ。
「僕が殺したし、想子は僕のものだよ」
「そういうことじゃないだろ」
 力なく言うと「そう言うことなんだよ」とにっこり笑っていた。



 男は徐に近づいてくる。化け物のような男に少し萎縮する自分がいた。友人だった男だ。

「しばらく痛いかも」

 その瞬間だった。鳩尾を何度も執拗に殴られた。抵抗しようとすると、思いのほか力が強く、頭を壁に打ちつけられた。
 飛びそうだった。その時、男が取り出したのはなんとなく見覚えのある刃物だった。

「やっとだ。今なら君の気持ちがわかるかもしれない」
 そう言ったのは男だった。
「色々あったね。笑ってバイバイだ」
 朗々と語る男は自分の胸に刃物を突き刺していた。朦朧とする意識の中、友人に声をかけようとするも、声が出ない。



「……君のやりたかったことはこういうことだよね。
 愛してるよ。延々と永遠に」


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 俺は焦っていた。類のことを考えると悪い方にばかり考えてしまうからだ。俺は類のことを何も知らないのかもしれない。だが、側面として見てきた類はとても誠実な奴だった。
「現実はプラスティックだ」と類は語る。俺には理解できなかったが、類の中性的な見た目とは正反対な低い声に説得力を感じて、頷くことしかできなかった。
 そうなのだろうか? 本当に?
 さっき俺が、歩いているその場所には小さな石を感じられて、鬱陶しく感じられるし、パン屋の匂いもいい香りだった。
 ただ、今俺の前にあるのは類のまるでプラスティックはこれだと見せているようなグレーな部屋の中だけだ。青系に彩られているはずの類の部屋は以前きたとより殺風景で元からものの少ないやつだったのにどこを減らしたらこうなるのだろうか、と言った様子だった。
「お前さあ、どうしたんだよ」
「はあ、どうしたも何もお前も体験しただろう」
「またその話だ。なんで花苗にいきなりしたんだよ。怯えてたぞ」
「怯えるって、知らないよ。事実しか話してない」
「だからさ、想子はお前の幼馴染以外にないのに、勘繰ってたんだよ」
「想子は殺された。その事実だけ言っているだけだよ」
「事実は自殺だろ」
「まあ、座れよ」
 ベッドを刺され、促されるままベッドに座る。
「ここにくるのも随分ぶりなんだから、少しゆっくりしよう」
 類はそう言うと、自分の椅子に腰掛けた。回るタイプの勉強椅子だ。
「想子、よくここに来ると、この椅子で遊んでたよな」
 類はどこか遠くを見つめたような深い笑みを浮かべている。
「俺らそっちのけで携帯いじってたしな」
「よくやるよ。なんだっけ、ゲームよくやってたな」
 ふと蘇る。鮮やかな記憶たち。もしかしたら、現実がプラスティックというのはとても現実がつまらないという意味なのだろうか。
「彼女、聞きにきたんだろ」
 類は笑いながら言う。
「なんで分かるんだよ」
「きっと花苗がそういうこと言ってそうだなって思ってさ」
「そうなんだけど」と少し疑っている自分が申し訳なくなって俯く。
「花苗、ご名答だよ」
 類は引き出しから、一枚のプリクラを出した。俯いた俺に見せる。二人で写った生々しい写真。
「携帯にならもっとあるけど、見る?」
「なんで……」
「知らない。というか教える気がない。
 大輝はそのままでいてほしい。想子の想いだよ」
 愕然とする俺をよそに類は静かに立ち上がった。
「僕が殺した」
 うんざりしていた。友人と恋人二人から裏切られていたのかと思っているタイミングでその狂言に辟易した。
「違うと思っているだろうけど、想子、僕の前で死んだじゃん」
 類は言い切る。そして少し嬉しそうだ。
「僕が殺したし、想子は僕のものだよ」
「そういうことじゃないだろ」
 力なく言うと「そう言うことなんだよ」とにっこり笑っていた。
 男は徐に近づいてくる。化け物のような男に少し萎縮する自分がいた。友人だった男だ。
「しばらく痛いかも」
 その瞬間だった。鳩尾を何度も執拗に殴られた。抵抗しようとすると、思いのほか力が強く、頭を壁に打ちつけられた。
 飛びそうだった。その時、男が取り出したのはなんとなく見覚えのある刃物だった。
「やっとだ。今なら君の気持ちがわかるかもしれない」
 そう言ったのは男だった。
「色々あったね。笑ってバイバイだ」
 朗々と語る男は自分の胸に刃物を突き刺していた。朦朧とする意識の中、友人に声をかけようとするも、声が出ない。
「……君のやりたかったことはこういうことだよね。
 愛してるよ。延々と永遠に」