4月。正門をくぐった先、体育館横に貼り出された紙の前に、人だかりができている。
「お前何組?」
「1組だ」
「マジ!?今年も一緒だ!」
「ねえ私の名前ないんだけどー!」
「そんなわけないじゃん!ちゃんと探しなよ〜」
「え、バスケ部俺以外にいなくね!?」
「うわ、ぼっちじゃん!ドンマイすぎ…」
2度目の春を迎えた生徒たちは、クラス分けの表を確認しながら、一喜一憂している。
「……3組か」
その人だかりの後方。波のようにうねる生徒たちの隙間から自分の名前を見つけて、俺は確かめるように呟いた。
別に、他に誰がいるかとか、誰と一緒で誰と離れたとか、そういうのはどうでもいい。自分の所属が分かれば十分だ。
どうせ1年経てばまたクラス替えがあって、2年経てば卒業して……最後はみんな散り散りになる。
「うわ、すごい人」
「全然見えないんだけど〜」
「クラスわかったら早くどいて欲しいよねー、邪魔すぎ」
背後から聞こえてくる話し声。
たとえ直接向けられた言葉じゃなかったとしても、聞こえないふりをしようとしても、それは空気を伝って、俺の背中をちくちくと小突いてくる。
(席、後ろの方だといいな…)
ピンと立った耳を寝かせつつ、背中を丸めて、教室へ向かおうとしたその時。
「でっけーーーー!」
ハツラツとした声が、俺の鼓膜を弾いた。
思わず振り返るが、目線の先には誰もいない。
「なあ、何食ったらそんだけでかくなれんだ!?」
顎を引いて、声の鳴る方へ視線を落とす。
俺を見上げる、小さな体。小豆色の垂れ耳の間で、ぴょこぴょこと毛束が跳ねている。
そのくりっとした瞳は、春の陽射しを取り込んで、乱反射する水面のようにきらきらと輝いていた。