れいほう先生
ー/ー 今まで真面目に地道に、そしてごくごく普通に生きて来た。
だからまさかここにきてそういう人との接点ができるとは想定していなくて。
もちろん偏見を持っているわけじゃないし、他人に迷惑をかけない限りは個人の自由だと思う。むしろわざわざ取り沙汰してああだこうだと論じる方が特殊扱いにしているんじゃないか。
もちろん偏見を持っているわけじゃないし、他人に迷惑をかけない限りは個人の自由だと思う。むしろわざわざ取り沙汰してああだこうだと論じる方が特殊扱いにしているんじゃないか。
そう思うから敢えて、無関心の立場を貫く。
梅崎盟子16歳。
梅崎盟子16歳。
高校2年生に進級した春の始まりは、さよならの季節を彩った桜の名残がまだはらはら散っていた。
期待と不安が入り交じった始業式。
残念なくらい心に残らない校長の挨拶の後、新しく赴任してきた男性教員の一人が舞台上で女子たちの視線をかっさらうという、この学校にしては物々しい事件から今年度がスタートを切った。
何の教科担当かまだわからないその先生は若くて、明らかに「お兄さん」な見た目で。
年齢はたぶん20代の前半かそのくらい。髪の毛を七三風に分けて流し、すごく背が高いわけではないけれどモデルのように決まってみえるのは、とてつもなく姿勢がいいからだ。女子たちが一斉に色めき立つ。
けれど、彼の名前、だった。
そういうことに対して感度の低い盟子のアンテナが最初に反応したのは。
――れいほう先生。
苗字ではなくて、これは下の名前だ。
苗字ではなくて、これは下の名前だ。
もりや、れいほう先生。
凛としたその響きがとてもきれいで、盟子は心の中で反芻してみた。
ぼそぼそと無感情な教頭の声で美術担当だと説明された後、もりや先生は舞台の上から生徒たちに向けて頭を下げる。
すっと伸びた背筋と、緩急つけた古風な一礼。バランスの取れた四肢と頭身。どこか雅な香りすら漂う端正な所作に、盟子に張り付いていた眠気がふっ飛んだ。新しい何かが始まる、そんな予感と共に。ところが、である。
みんなのリアクション
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今まで真面目に地道に、そしてごくごく普通に生きて来た。
だからまさかここにきて|そういう《・・・・》人との接点ができるとは想定していなくて。
もちろん偏見を持っているわけじゃないし、他人に迷惑をかけない限りは個人の自由だと思う。むしろわざわざ取り沙汰してああだこうだと論じる方が特殊扱いにしているんじゃないか。
もちろん偏見を持っているわけじゃないし、他人に迷惑をかけない限りは個人の自由だと思う。むしろわざわざ取り沙汰してああだこうだと論じる方が特殊扱いにしているんじゃないか。
そう思うから敢えて、無関心の立場を貫く。
|梅崎盟子《うめざきめいこ》16歳。
高校2年生に進級した春の始まりは、さよならの季節を彩った桜の名残がまだはらはら散っていた。
期待と不安が入り交じった始業式。
残念なくらい心に残らない校長の挨拶の後、新しく赴任してきた男性教員の一人が舞台上で女子たちの視線をかっさらうという、この学校にしては物々しい事件から今年度がスタートを切った。
何の教科担当かまだわからないその先生は若くて、明らかに「お兄さん」な見た目で。
年齢はたぶん20代の前半かそのくらい。髪の毛を七三風に分けて流し、すごく背が高いわけではないけれどモデルのように決まってみえるのは、とてつもなく姿勢がいいからだ。女子たちが一斉に色めき立つ。
けれど、彼の名前、だった。
そういうことに対して感度の低い盟子のアンテナが最初に反応したのは。
――れいほう先生。
苗字ではなくて、これは下の名前だ。
もりや、れいほう先生。
凛としたその響きがとてもきれいで、盟子は心の中で反芻してみた。
ぼそぼそと無感情な教頭の声で美術担当だと説明された後、もりや先生は舞台の上から生徒たちに向けて頭を下げる。
すっと伸びた背筋と、緩急つけた古風な一礼。バランスの取れた四肢と頭身。どこか雅な香りすら漂う端正な所作に、盟子に張り付いていた眠気がふっ飛んだ。新しい何かが始まる、そんな予感と共に。
ところが、である。