12
ー/ー
ほかに好きな人がいると言っても、まだ恋人ではないらしい。ポリアモリーでバイセクシュアルということを理解してもらわなければならないのは、かなり難しいことなのだろう。
それでもオレに打ち明けたことで、心の枷は外れたようだ。それ以来、スミレの表情は明らかに明るくなった。
オレが度量の大きい人間になればいい。ただそれだけの話だ。そう言い聞かせていたものの、オレは完全にひとりの人間しか愛せないタイプなので、スミレのことをすべて理解するのは難しかった。
なぜオレだけを見てくれないのかという気持ちが次第に出てきて、そのたびに自己嫌悪する。さらにスミレからは絵について厳しいことばかり言われるので、本当にオレのことが好きなのかという疑念まで湧いてきた。
そうしているうちに、彼女ができたとスミレから告げられる。同級生の女とは別の相手らしい。男じゃないだけマシだと、何度も自分に暗示をかけた。しかしいずれは、オレ以外の彼氏もできるはずだ。
理解して受け入れると決めたくせに、覚悟が据わらない。そんな自分に嫌気がさしたし、思うような絵が描けないフラストレーションも相まって、自分の心が少しずつ剥がれ落ちていくのを感じていた。
スミレはそれに気がついていたと思う。だから、あえて追い込んだ。そうでもしなければ、オレが殻を破ることはできないと感じたからだろう。
心が不安定なまま付き合い続け、高3になった春。スミレから耳を疑うようなことを言われた。
「私の彼女と、セックスしてほしいの」
そのときスミレには、オレ以外にも恋人がふたりいた。どちらも女で、そのうちのひとりを抱いてほしいのだという。
「彼女はバイセクシュアルじゃなくてレズビアンなんだけど、男性とのセックスには興味があるみたいで。桔平なら優しいし上手だから安心かなって。あ、バージンなのよその子」
事もなげにスミレが言う。オレはすぐに言葉を返すことができなかった。
ポリアモリーは、自分の恋人が他人とセックスするのを嬉しく感じるそうだ。やはり、どうにも理解できない。
オレはそれまで一度も、スミレ以外を抱きたいと思ったことはないのに。スミレも、それは分かっているはずなのに。それでもオレに、ほかの女を抱けと言うのか。
ただ、そのときのオレは自分の心を無くしていて、スミレの言うことに黙って頷くことしかできなかった。
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。
ほかに好きな人がいると言っても、まだ恋人ではないらしい。ポリアモリーでバイセクシュアルということを理解してもらわなければならないのは、かなり難しいことなのだろう。
それでもオレに打ち明けたことで、心の枷は外れたようだ。それ以来、スミレの表情は明らかに明るくなった。
オレが度量の大きい人間になればいい。ただそれだけの話だ。そう言い聞かせていたものの、オレは完全にひとりの人間しか愛せないタイプなので、スミレのことをすべて理解するのは難しかった。
なぜオレだけを見てくれないのかという気持ちが次第に出てきて、そのたびに自己嫌悪する。さらにスミレからは絵について厳しいことばかり言われるので、本当にオレのことが好きなのかという疑念まで湧いてきた。
そうしているうちに、彼女ができたとスミレから告げられる。同級生の女とは別の相手らしい。男じゃないだけマシだと、何度も自分に暗示をかけた。しかしいずれは、オレ以外の彼氏もできるはずだ。
理解して受け入れると決めたくせに、覚悟が据わらない。そんな自分に嫌気がさしたし、思うような絵が描けないフラストレーションも相まって、自分の心が少しずつ剥がれ落ちていくのを感じていた。
スミレはそれに気がついていたと思う。だから、あえて追い込んだ。そうでもしなければ、オレが殻を破ることはできないと感じたからだろう。
心が不安定なまま付き合い続け、高3になった春。スミレから耳を疑うようなことを言われた。
「私の彼女と、セックスしてほしいの」
そのときスミレには、オレ以外にも恋人がふたりいた。どちらも女で、そのうちのひとりを抱いてほしいのだという。
「彼女はバイセクシュアルじゃなくてレズビアンなんだけど、男性とのセックスには興味があるみたいで。桔平なら優しいし上手だから安心かなって。あ、バージンなのよその子」
事もなげにスミレが言う。オレはすぐに言葉を返すことができなかった。
ポリアモリーは、自分の恋人が他人とセックスするのを嬉しく感じるそうだ。やはり、どうにも理解できない。
オレはそれまで一度も、スミレ以外を抱きたいと思ったことはないのに。スミレも、それは分かっているはずなのに。それでもオレに、ほかの女を抱けと言うのか。
ただ、そのときのオレは自分の心を無くしていて、スミレの言うことに黙って頷くことしかできなかった。