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桔平くんがお店に来たのは、その直後だった。タイミング的に、外であの人と遭遇していてもおかしくないはずだけど、桔平くんの様子は普段と変わらない。顔を合わせずに済んだのかな。
私は出来るだけ平静を装った。マスターも、なにも言わないでいてくれたし。
だからいつものように桔平くんと手をつないで、美術館へと向かった。
「愛茉ちゃーん来てくれてありがとうー! マイエンジェール!」
美術館にはヨネちゃん、英哉くん、一佐くんというおなじみのメンバーがいて、強張っていた心が少しほぐれた。
ヨネちゃんの明るい笑顔は、いつも私の癒しになっている。友達でもあり、お姉さんでもあり、お母さんのような存在。
「愛茉姫ー! おれの血と汗と涙の結晶を! その愛らしい眼に! 焼きつけておくれっ!」
一佐くんは、たまに意味不明なスタンプだけをLINEで突然送ってくる。私も、自分が持っているスタンプの中で、できるだけ変なものを返していた。よく分からないやり取りだけど、なんか楽しいの。
「寒いのに来てくれてありがとう。絵だけじゃなくて、彫刻とか立体オブジェとかもあるから、いろいろ観ていくと面白いと思うよ」
英哉くんはなぜか、桔平くんの学校での言動をよく報告してくれる。教授にこんなことを言われていたとか、後輩の子に話しかけられていたとか。本当に桔平くんのことが好きなんだね。私も学校での様子が知れて、とても嬉しい。
ちなみに、葵とは特に進展なしの模様。手強すぎるって、葵が歯をギリギリさせていました。
私が普通に生活していたら、絶対に知り合うことはなかった3人。こんなに仲よくなれたのは、桔平くんのおかげ。
桔平くんと出会ってから、私の世界は大きく広がった。根暗でネガティブな私が、こんな素敵な友達にたくさん囲まれているなんて。小樽にいたころは、まったく想像できなかったよ。
「母さんと本條さんは、楓と一緒に、明日来るって言ってた」
少し周りを見回しながら、桔平くんが言った。
「さくら達も、イタリアへ帰る前に来るってよ」
さくらお姉さん一家は、結構長い休暇を取っているみたい。イタリアへ帰るのは、来月頭だと言っていた。
卒業制作は、藝大で過ごした4年間の集大成。大学院へ進学するから卒業の実感はないと本人は言っていたけれど、ご家族は桔平くんの節目を見届けたいって思っているんだろうな。私のお父さんと智美さんも、来週末に観に来る予定です。
展示は、作者の自画像と卒業制作のセットになっていた。自画像は小さな絵だけど、その横にある卒業制作はとっても大きくて圧巻のひと言。
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私は出来るだけ平静を装った。マスターも、なにも言わないでいてくれたし。
だからいつものように桔平くんと手をつないで、美術館へと向かった。
「愛茉ちゃーん来てくれてありがとうー! マイエンジェール!」
美術館にはヨネちゃん、英哉くん、一佐くんというおなじみのメンバーがいて、強張っていた心が少しほぐれた。
ヨネちゃんの明るい笑顔は、いつも私の癒しになっている。友達でもあり、お姉さんでもあり、お母さんのような存在。
「愛茉姫ー! おれの血と汗と涙の結晶を! その愛らしい|眼《まなこ》に! 焼きつけておくれっ!」
一佐くんは、たまに意味不明なスタンプだけをLINEで突然送ってくる。私も、自分が持っているスタンプの中で、できるだけ変なものを返していた。よく分からないやり取りだけど、なんか楽しいの。
「寒いのに来てくれてありがとう。絵だけじゃなくて、彫刻とか立体オブジェとかもあるから、いろいろ観ていくと面白いと思うよ」
英哉くんはなぜか、桔平くんの学校での言動をよく報告してくれる。教授にこんなことを言われていたとか、後輩の子に話しかけられていたとか。本当に桔平くんのことが好きなんだね。私も学校での様子が知れて、とても嬉しい。
ちなみに、葵とは特に進展なしの模様。手強すぎるって、葵が歯をギリギリさせていました。
私が普通に生活していたら、絶対に知り合うことはなかった3人。こんなに仲よくなれたのは、桔平くんのおかげ。
桔平くんと出会ってから、私の世界は大きく広がった。根暗でネガティブな私が、こんな素敵な友達にたくさん囲まれているなんて。小樽にいたころは、まったく想像できなかったよ。
「母さんと本條さんは、楓と一緒に、明日来るって言ってた」
少し周りを見回しながら、桔平くんが言った。
「さくら達も、イタリアへ帰る前に来るってよ」
さくらお姉さん一家は、結構長い休暇を取っているみたい。イタリアへ帰るのは、来月頭だと言っていた。
卒業制作は、藝大で過ごした4年間の集大成。大学院へ進学するから卒業の実感はないと本人は言っていたけれど、ご家族は桔平くんの節目を見届けたいって思っているんだろうな。私のお父さんと智美さんも、来週末に観に来る予定です。
展示は、作者の自画像と卒業制作のセットになっていた。自画像は小さな絵だけど、その横にある卒業制作はとっても大きくて圧巻のひと言。