屈辱のプロローグ
ー/ー
あの日、死んだ。友は逝った。
俺が声を掛けられなかったから。あの瞬間に声が出なかったから。銃弾の雨に撃たれて穴だらけで逝った。
銃撃が終わってからしか、友に近づけなかった。
「小川! 小川!」
絶対に死んでるとわかってるのに声を掛ける。返事は当然ない。緑の蒸し暑いジャングルに悲痛な声しか響かない。戦争は無惨だと心と脳に刻まれた。
「ヘイ! 雑魚じゃっぷ!」
軍服を着たローウィア人が声を掛ける。俺は銃口を向けるが、そいつは笑ってた。
「お前の銃弾じゃ俺を撃ち抜けねえに決まってるだろ? お前には弾がねえからだ!」
そいつの言ってる通りだ……。弾はない。だから向けるだけしかできない。と言うか、何故わかる?
「何故知ってるか不思議そうだな? 俺はむかーし日本に居たからだ! まあお前らの下等生物の言語くらい簡単に覚えられたよ! その雑魚を蜂の巣にするのと同じくらい簡単にな!」
コイツ……日本人を日本の誇りと小川を馬鹿にしやがって……許さねえ! 俺のプライドに賭けてコイツを殴り殺す!
ローウィア人に向け飛びかかる。俺はボクサー。五輪にも出たエリートだ。コイツくらい、殴り殺せるはず! インビジブルと評された俺のパンチは、相手に気づかれずに決まる。
ノーモーションからの右を音もなく繰り出す。反応はない。よそ見をしている。決まったはずだ。
どごぉん!!!!
鈍い音と共に、俺の身体が宙に浮く。一瞬の無重力と無を感じる。次の瞬間に重すぎる重力と今まで感じたことのない痛みを顔の右半分に感じながら、ぬかるんだ地面に叩きつけられる。
何故だ……何故、俺がこうなっている。痛みで消えそうな意識で思考をするが、次の瞬間にはローウィア人が上にいる。冷徹で冷たすぎて凍えそうな目つきで、拳を振り上げていた。避けられない。
次に当たった一撃を覚えておくのは不可能だった。ただ、意識を取り戻して二ヶ月は目を開けられなかった。
屈辱の敗北だった。
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。
あの日、死んだ。友は逝った。
俺が声を掛けられなかったから。あの瞬間に声が出なかったから。銃弾の雨に撃たれて穴だらけで逝った。
銃撃が終わってからしか、友に近づけなかった。
「小川! 小川!」
絶対に死んでるとわかってるのに声を掛ける。返事は当然ない。緑の蒸し暑いジャングルに悲痛な声しか響かない。戦争は無惨だと心と脳に刻まれた。
「ヘイ! 雑魚じゃっぷ!」
軍服を着たローウィア人が声を掛ける。俺は銃口を向けるが、そいつは笑ってた。
「お前の銃弾じゃ俺を撃ち抜けねえに決まってるだろ? お前には弾がねえからだ!」
そいつの言ってる通りだ……。弾はない。だから向けるだけしかできない。と言うか、何故わかる?
「何故知ってるか不思議そうだな? 俺はむかーし日本に居たからだ! まあお前らの下等生物の言語くらい簡単に覚えられたよ! その雑魚を蜂の巣にするのと同じくらい簡単にな!」
コイツ……日本人を日本の誇りと小川を馬鹿にしやがって……許さねえ! 俺のプライドに賭けてコイツを殴り殺す!
ローウィア人に向け飛びかかる。俺はボクサー。五輪にも出たエリートだ。コイツくらい、殴り殺せるはず! インビジブルと評された俺のパンチは、相手に気づかれずに決まる。
ノーモーションからの右を音もなく繰り出す。反応はない。よそ見をしている。決まったはずだ。
どごぉん!!!!
鈍い音と共に、俺の身体が宙に浮く。一瞬の無重力と無を感じる。次の瞬間に重すぎる重力と今まで感じたことのない痛みを顔の右半分に感じながら、ぬかるんだ地面に叩きつけられる。
何故だ……何故、俺がこうなっている。痛みで消えそうな意識で思考をするが、次の瞬間にはローウィア人が上にいる。冷徹で冷たすぎて凍えそうな目つきで、拳を振り上げていた。避けられない。
次に当たった一撃を覚えておくのは不可能だった。ただ、意識を取り戻して二ヶ月は目を開けられなかった。
屈辱の敗北だった。