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剣と盾 3

ー/ー



 アシノは衝撃で2、3歩後退りするぐらいに思い切り力を込めてパンパンとワインボトルのフタを飛ばした。

 それは男の顔に直撃し、倒れるが、またすぐに立ち上がる。

 本来であれば気絶か致命傷にもなり得たはずだが、裏の道具に体を支配され、感覚が麻痺しているのだろう。

「頼む、正気に戻ってくれ! 私はお前と戦いたくない!」

 モモは叫んでいた。

 しかし、もう声は聞こえていても意味は伝わらないだろう。

 振り回される剣をモモは無力化の盾で受けながら、どうにか男から武器を奪えないか考える。そんな最中で敵の背後を捉えたのはユモトだった。

 今なら確実に捉えられて。

 殺れる。

 ユモトはギュッと目を瞑って覚悟を決めた。

 そんなユモトの肩に手が置かれてビクリとし、思わず目を開けた。

「ユモトちゃん、目を開けて見ないと当たらないわよ」

 怒るでもなく呆れるでもなく、それはルーからのただただ短い忠告だった。

 ユモトは返事をしないまま、目を見開いて攻撃をする。

「貫け、氷柱よ!!!」

 巨大なつらら二本は男を捉え、見事命中し貫いた。

 先程までの騒がしさが嘘のように、当たりは静寂を取り戻す。

「あ、あた、あたっ」

 ユモトは杖を握り込んだまま地面に座り、過呼吸を起こしていた。

「ユモトちゃん、ゆっくり、ゆっくり息を吸って吐いて!」

 ルーが背中を擦りながらユモトに声をかけていた。ユモトは手足がしびれ、耳鳴りがする。

 変な話だが、ユモトは攻撃が外れて欲しかった。

 人を殺したくなかった。

 だが、男の死体には巨大な氷柱が2本深々と突き刺さり「お前がやったんだぞ」と言っている。

 モモは心がグチャグチャになった、剣をカチンと収めると不思議と涙が流れた。

「この剣と盾を同時に持つのは危険だな、隠しておいて後でムツヤに拾わせるぞ」

 冷静にアシノは言う。モモもそれに習おうとした、したのだが、どうしても心から声が溢れ出てしまう。

「この男達は、亜人に…… 憎しみを、恨みを…… 持ったまま死んでいきました」

「……そうだな」

「一度憎しみを持ってしまったら、分かり合えることは出来ないのでしょうか」

 アシノはモモの元まで歩く、怒鳴られるか頬を叩かれるのかと思いモモは思わず目をつむった。

 が、モモを待っていたのは抱擁だった。

「すまない、その答えは私にもわからない」

 声を上げてモモは泣いた。だがそう長く時間を使うことは出来ない。

「あと2つ、裏の道具の反応があるわ」

 ルーが言うとアシノはモモを放す。

「今はとにかくキエーウの暴走を止めなくてはいけない。モモ、ユモト、辛いかも知れないが頑張ってくれ。それと私は大した力になれなくてすまん」

 そう言ってアシノは頭を下げる。

 その頃一方ムツヤはカバンを奪還するために走り続けていた。足止めとして差し向けられたキエーウの一員が裏の道具の剣で襲いかかる。

 振られた剣を難なくかわして死なない程度に加減した拳で殴り飛ばした。

 3人が一気にムツヤを取り囲み、斬りかかり、巨大な魔法の雷を打ち、振り上げると巨大化する金づちでムツヤを叩き潰そうとする。

 ムツヤは回し蹴りで剣ごと叩き折り、雷の魔法は防御壁で吸収し、金づちは片手で受け止めてそのまま横に投げた。

 メチャクチャな強さでカバンを目指して走るムツヤ。流石と言った所だろうか。

 片手で探知盤を操り、カバン目指して突っ走る。

 そんなムツヤに東洋の投擲武器『手裏剣』を巨大化させた物が投げられた。

 さっと避けると手裏剣は持ち主の元へと戻っていく。その持ち主は。

「久しぶりだなムツヤ」

かつてアシノの仲間であり、今はキエーウの幹部であるウートゴだった。

「お前はっ!!」

 ムツヤは自身のカバンを持ち、木の上に立つ男を見る。

「お前は……」

 腕を組んでムツヤは考え出した。

「カバンを返せ!」

「名前忘れやがったな」

 ウートゴはやれやれと首を降る。

「ムツヤ、君と二人で話がしたいんだ」

「俺はお前と話すことなんか無い!」

 ムツヤは思い切り地面を踏み込むと、ウートゴの立つ位置まで一気に上昇した。

 そして、魔剣ムゲンジゴクのレプリカで袈裟斬りにしようとする。

「まぁ、戦いながらでも良いか」

 さっと別の木に飛び移ってウートゴは言う。今度は木をしならせて弾かれた様にムツヤが飛び出す。

「どうせ、君には当たらんのだろうけどな」

 巨大手裏剣を投げると狂ったように縦横無尽に辺りの木をなぎ倒しながら飛ぶ。

 その合間を縫ってムツヤはやってきた。ウートゴはニヤリと笑う。そうでなくてはと。

 ムツヤが斬りかかり、ウートゴは刀を取り出してそれを受け止めた。

 手には衝撃によるジーンとした痺れを感じる。ムツヤが持っているのがレプリカで良かったと思っていた。

「なぁ、ムツヤ。我々の仲間になれ」

 つばぜり合いをしながら話しかける。

 だが、ムツヤは返事の代わりに蹴りを入れた。ウートゴはさっと後ろに引いてそれをかわす。

「絶対に断る!」

 ムツヤは休む暇も与えずウートゴに剣を横に構えて突っ込んで行った。

 キィンキィンガィンと刃物がぶつかる音が辺りに広がった。同時に襲いかかってくる手裏剣などものともせず、ムツヤはウートゴを追い詰める。

「まぁまぁ、落ち着きなよ」

 のらりくらりとウートゴは攻撃を避けているが、避けるのが精一杯だった。仮にも元勇者パーティーの一員が手も足もでない。

「仲間になるなら君の夢を叶えてあげようじゃないか」

「デタラメを言うな!」

 ムツヤは聞く耳を持たず、ウートゴを追いかけカバンを取り返そうとする。

「デタラメじゃないさ、君の夢を叶えてあげるよ」

 ムツヤが片手で発動させた魔法をかわしてウートゴは言った。

「君の夢はハーレムを作る事だろう? 我々と協力して亜人共を処分したら一生ハーレムで遊んで暮らせる人生を約束しよう」

「そんな事をして手に入れたハーレムなんかいらない!」

 ムツヤはハッキリと拒絶をした。これ以上は無駄かとウートゴは諦めてカバンを遠くに放り投げる。

 カバンが投げられた方向を振り返り、ムツヤは風のように走ってカバンを手にした。


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 アシノは衝撃で2、3歩後退りするぐらいに思い切り力を込めてパンパンとワインボトルのフタを飛ばした。
 それは男の顔に直撃し、倒れるが、またすぐに立ち上がる。
 本来であれば気絶か致命傷にもなり得たはずだが、裏の道具に体を支配され、感覚が麻痺しているのだろう。
「頼む、正気に戻ってくれ! 私はお前と戦いたくない!」
 モモは叫んでいた。
 しかし、もう声は聞こえていても意味は伝わらないだろう。
 振り回される剣をモモは無力化の盾で受けながら、どうにか男から武器を奪えないか考える。そんな最中で敵の背後を捉えたのはユモトだった。
 今なら確実に捉えられて。
 殺れる。
 ユモトはギュッと目を瞑って覚悟を決めた。
 そんなユモトの肩に手が置かれてビクリとし、思わず目を開けた。
「ユモトちゃん、目を開けて見ないと当たらないわよ」
 怒るでもなく呆れるでもなく、それはルーからのただただ短い忠告だった。
 ユモトは返事をしないまま、目を見開いて攻撃をする。
「貫け、氷柱よ!!!」
 巨大なつらら二本は男を捉え、見事命中し貫いた。
 先程までの騒がしさが嘘のように、当たりは静寂を取り戻す。
「あ、あた、あたっ」
 ユモトは杖を握り込んだまま地面に座り、過呼吸を起こしていた。
「ユモトちゃん、ゆっくり、ゆっくり息を吸って吐いて!」
 ルーが背中を擦りながらユモトに声をかけていた。ユモトは手足がしびれ、耳鳴りがする。
 変な話だが、ユモトは攻撃が外れて欲しかった。
 人を殺したくなかった。
 だが、男の死体には巨大な氷柱が2本深々と突き刺さり「お前がやったんだぞ」と言っている。
 モモは心がグチャグチャになった、剣をカチンと収めると不思議と涙が流れた。
「この剣と盾を同時に持つのは危険だな、隠しておいて後でムツヤに拾わせるぞ」
 冷静にアシノは言う。モモもそれに習おうとした、したのだが、どうしても心から声が溢れ出てしまう。
「この男達は、亜人に…… 憎しみを、恨みを…… 持ったまま死んでいきました」
「……そうだな」
「一度憎しみを持ってしまったら、分かり合えることは出来ないのでしょうか」
 アシノはモモの元まで歩く、怒鳴られるか頬を叩かれるのかと思いモモは思わず目をつむった。
 が、モモを待っていたのは抱擁だった。
「すまない、その答えは私にもわからない」
 声を上げてモモは泣いた。だがそう長く時間を使うことは出来ない。
「あと2つ、裏の道具の反応があるわ」
 ルーが言うとアシノはモモを放す。
「今はとにかくキエーウの暴走を止めなくてはいけない。モモ、ユモト、辛いかも知れないが頑張ってくれ。それと私は大した力になれなくてすまん」
 そう言ってアシノは頭を下げる。
 その頃一方ムツヤはカバンを奪還するために走り続けていた。足止めとして差し向けられたキエーウの一員が裏の道具の剣で襲いかかる。
 振られた剣を難なくかわして死なない程度に加減した拳で殴り飛ばした。
 3人が一気にムツヤを取り囲み、斬りかかり、巨大な魔法の雷を打ち、振り上げると巨大化する金づちでムツヤを叩き潰そうとする。
 ムツヤは回し蹴りで剣ごと叩き折り、雷の魔法は防御壁で吸収し、金づちは片手で受け止めてそのまま横に投げた。
 メチャクチャな強さでカバンを目指して走るムツヤ。流石と言った所だろうか。
 片手で探知盤を操り、カバン目指して突っ走る。
 そんなムツヤに東洋の投擲武器『手裏剣』を巨大化させた物が投げられた。
 さっと避けると手裏剣は持ち主の元へと戻っていく。その持ち主は。
「久しぶりだなムツヤ」
かつてアシノの仲間であり、今はキエーウの幹部であるウートゴだった。
「お前はっ!!」
 ムツヤは自身のカバンを持ち、木の上に立つ男を見る。
「お前は……」
 腕を組んでムツヤは考え出した。
「カバンを返せ!」
「名前忘れやがったな」
 ウートゴはやれやれと首を降る。
「ムツヤ、君と二人で話がしたいんだ」
「俺はお前と話すことなんか無い!」
 ムツヤは思い切り地面を踏み込むと、ウートゴの立つ位置まで一気に上昇した。
 そして、魔剣ムゲンジゴクのレプリカで袈裟斬りにしようとする。
「まぁ、戦いながらでも良いか」
 さっと別の木に飛び移ってウートゴは言う。今度は木をしならせて弾かれた様にムツヤが飛び出す。
「どうせ、君には当たらんのだろうけどな」
 巨大手裏剣を投げると狂ったように縦横無尽に辺りの木をなぎ倒しながら飛ぶ。
 その合間を縫ってムツヤはやってきた。ウートゴはニヤリと笑う。そうでなくてはと。
 ムツヤが斬りかかり、ウートゴは刀を取り出してそれを受け止めた。
 手には衝撃によるジーンとした痺れを感じる。ムツヤが持っているのがレプリカで良かったと思っていた。
「なぁ、ムツヤ。我々の仲間になれ」
 つばぜり合いをしながら話しかける。
 だが、ムツヤは返事の代わりに蹴りを入れた。ウートゴはさっと後ろに引いてそれをかわす。
「絶対に断る!」
 ムツヤは休む暇も与えずウートゴに剣を横に構えて突っ込んで行った。
 キィンキィンガィンと刃物がぶつかる音が辺りに広がった。同時に襲いかかってくる手裏剣などものともせず、ムツヤはウートゴを追い詰める。
「まぁまぁ、落ち着きなよ」
 のらりくらりとウートゴは攻撃を避けているが、避けるのが精一杯だった。仮にも元勇者パーティーの一員が手も足もでない。
「仲間になるなら君の夢を叶えてあげようじゃないか」
「デタラメを言うな!」
 ムツヤは聞く耳を持たず、ウートゴを追いかけカバンを取り返そうとする。
「デタラメじゃないさ、君の夢を叶えてあげるよ」
 ムツヤが片手で発動させた魔法をかわしてウートゴは言った。
「君の夢はハーレムを作る事だろう? 我々と協力して亜人共を処分したら一生ハーレムで遊んで暮らせる人生を約束しよう」
「そんな事をして手に入れたハーレムなんかいらない!」
 ムツヤはハッキリと拒絶をした。これ以上は無駄かとウートゴは諦めてカバンを遠くに放り投げる。
 カバンが投げられた方向を振り返り、ムツヤは風のように走ってカバンを手にした。