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座席に座っている女子高生グループが、桔平くんをチラチラ見ながらなにか話している。桔平くんは背が高いし、なにより服装が目立つから、いつもこんな感じなんだよね。でも本人は一切意に介さず、常に無表情。
「今日は、いっぱい肉食った?」
「うん、たっぷり。デザートのシャーベットがイチゴでね、すっごく美味しかったの」
「そりゃよかったな」
私にだけは、こんな風に優しく笑いかけてくれる。桔平くんのこの顔が、すごくすっごく大好き。はぁ、どうしよう。なんかもう今日は大好きが溢れて仕方ない。だけどいまは、必死に平静を装う。
「桔平くんは、帰りが早かったね。7時くらいって言っていたのに」
「ああ。今日は長岡がアトリエにいたんだけどさ、雷雨になりそうってボソッと言ってたんだよ」
「あ、そういや不安定な天気って言っていた気がする。一応折りたたみは持ってきてるけど……雷、やだなぁ」
「だから、早く帰らねぇとなーって。長岡の天気予報、当たるし」
そっか、私が怖がるから……それで早めに切り上げて、しかもわざわざ途中で電車を降りて待っていてくれたんだ。やばいやばい。キュンが止まらない。ヨネちゃんにあんなことを言われたから、余計に桔平くんの愛を感じてしまう。
「長岡さん、天気予報が得意なんだね」
桔平くんの胸に飛び込みたい衝動をなんとか抑えつつ、会話を続けた。
「得意っつーか、あいつ高校のときに気象予報士の資格を取ってんだよ。しかも一発合格」
「え、すごい! 気象予報士試験って、難関なんでしょ?」
「そうだな、合格率1桁だし。長岡は天気図が好きらしくてさ、等圧線を見てウットリしている変態なんだよ」
いくら天気図が好きだからといっても、高校生で一発合格ってすごすぎない? そこでさらに藝大も現役合格なわけだし……ちょっと次元が違いすぎる。そういえば、ヨネちゃんも現役合格だよね。あの小林さんも。
改めて考えると、桔平くんってすごい人たちに囲まれている。周りとの違いに傷ついてきた桔平くんが人の中で普通に生活できているのは、強烈な個性が周りに集まっているからなんだろうな。
だから別に、私がいなくたって……なんてネガティブスイッチが入りかけていたけれど、七海やヨネちゃんのおかげで復活した。私にしかできないこと、たくさんあるはずだもんね。
相手のしてほしいことを理解するには、よく観察することだってヨネちゃんが言っていた。だから、これまで以上に桔平くんのことをよく見ておかなくちゃ。
「どうかした?」
サングラスを外して空の様子を眺める横顔を見つめていたら、桔平くんが怪訝な顔を向けてきた。
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「今日は、いっぱい肉食った?」
「うん、たっぷり。デザートのシャーベットがイチゴでね、すっごく美味しかったの」
「そりゃよかったな」
私にだけは、こんな風に優しく笑いかけてくれる。桔平くんのこの顔が、すごくすっごく大好き。はぁ、どうしよう。なんかもう今日は大好きが溢れて仕方ない。だけどいまは、必死に平静を装う。
「桔平くんは、帰りが早かったね。7時くらいって言っていたのに」
「ああ。今日は長岡がアトリエにいたんだけどさ、雷雨になりそうってボソッと言ってたんだよ」
「あ、そういや不安定な天気って言っていた気がする。一応折りたたみは持ってきてるけど……雷、やだなぁ」
「だから、早く帰らねぇとなーって。長岡の天気予報、当たるし」
そっか、私が怖がるから……それで早めに切り上げて、しかもわざわざ途中で電車を降りて待っていてくれたんだ。やばいやばい。キュンが止まらない。ヨネちゃんにあんなことを言われたから、余計に桔平くんの愛を感じてしまう。
「長岡さん、天気予報が得意なんだね」
桔平くんの胸に飛び込みたい衝動をなんとか抑えつつ、会話を続けた。
「得意っつーか、あいつ高校のときに気象予報士の資格を取ってんだよ。しかも一発合格」
「え、すごい! 気象予報士試験って、難関なんでしょ?」
「そうだな、合格率1桁だし。長岡は天気図が好きらしくてさ、等圧線を見てウットリしている変態なんだよ」
いくら天気図が好きだからといっても、高校生で一発合格ってすごすぎない? そこでさらに藝大も現役合格なわけだし……ちょっと次元が違いすぎる。そういえば、ヨネちゃんも現役合格だよね。あの小林さんも。
改めて考えると、桔平くんってすごい人たちに囲まれている。周りとの違いに傷ついてきた桔平くんが人の中で普通に生活できているのは、強烈な個性が周りに集まっているからなんだろうな。
だから別に、私がいなくたって……なんてネガティブスイッチが入りかけていたけれど、七海やヨネちゃんのおかげで復活した。私にしかできないこと、たくさんあるはずだもんね。
相手のしてほしいことを理解するには、よく観察することだってヨネちゃんが言っていた。だから、これまで以上に桔平くんのことをよく見ておかなくちゃ。
「どうかした?」
サングラスを外して空の様子を眺める横顔を見つめていたら、桔平くんが怪訝な顔を向けてきた。