表示設定
表示設定
目次 目次




前編

ー/ー



※以下の文章はAI学習や転載など厳禁です※

 寒さとともにやってくるのは、何も北風だけじゃない。もちろん、雪や氷といった現象とも違う。
 『いやあ、今年もようやく外に出れたぜ。まったく待ちくたびれちまったよ』
 これである。悪ガキをさらに小さくしたような存在で、俗に、妖精、と呼ばれる存在である。
 実際に関わる身からすると、悪鬼のほうに近いんだけど。季節毎に妖精界から降りてきて、人間たちに知恵や力を貸してくれる、一応ありがたい存在なのよ。
 ただし、生まれた時に契約を結べた人間だけ、っていう条件付きだけどね。
 「って、ちょっと。勝手にクッキー食べないでよ」
 『ツレネーコトいうなって。久々の外なんだし』
 「んもう。夏の間に出して溶かしてやろうかしら」
 『何つーコトいいやがんだよっ』
 半べそで抗議する妖精。ちなみに、人間のように個人を特定する名前はない。
 「早速仕事があるからね。今年は多いわよ」
 『んあ。何でまた』
 「最近、天候がおかしいせいか、妙な現象が頻発しててね」
 『他の連中は?』
 「ちゃんと対処してくれてる。どうもね、季節をまたぐみたいなのよ」
 『ふうん? そんな話はきてないぞ』
 「え、そうなの」
 『おお。人間たちの仕業じゃねぇのか』
 「それが証拠がなくって」
 『ふーん』
 ああ、私のおやつが。また焼かないと。って、それどころじゃないわ。
 「このままだと飲み水や食料がなくなるかもしれないのよ。冬を越せなくなるわ」
 『そんな重要な案件なら共有されてるはずなんだが。まあいいや、お茶ちょーだい』
 「あのねえ」
 マイペースなのは昔からで、自由に存在しているから致し方ない。この村に何かあった際は、いつも助けてくれてるから、信頼してはいるけど。
 ご要望通り冷たいお茶を持ってくると、おいしそうにゆっくり飲んでいる冬の妖精であった。
 ようやく満足してくれたので、かの者を連れて問題が起こってる土地へとむかう。備蓄倉庫だ。
 村長さんがいたので挨拶をする。
 「おお、いらっしゃいフラン。やっぱり誰かが盗んでいるって事は無いようじゃよ」
 「動物でもないのよねえ。何なのかしら、本当」
 普段の半分以下となっている在庫は、日に日に少なくなっていってる。食べ散らかされてもいないし、倉庫には普段カギがかけられていて窓もない。
 『あー。妖精の仕業だな、こりゃあ』
 「えっ」
 『確信を得るためにも、まずは北山の魔女の元に行こうぜ』
 「え。今の時期だと遭難しちゃうわ」
 『オレがついてるから大丈夫。念のために三日分の食料と荷物まとめてきなよ』
 「わ、わかったわ」
 村長さんに事情を話して、一度帰宅。ちょうど料理中だったお母さんにも伝える。とはいえ、今から出発すると途中で夜になってしまうので、明日の早朝に出発することになった。
 一番ひんやりしている時間帯に外出した私は、思わず手袋の上から息を吹きかけてしまう。
 山のふもとにつくと、見上げた先には吹雪が暴れ回っていた。
 妖精は人には理解できない言葉をつぶやくと、私の周りがほのかに暖かくなる。寒さをよけてくれる結界だ。
 『オレの後ろをしっかりついてきなよ』
 「うん」
 『クッキー食いたい』
 「はいはい」
 嬉しそうにほおばりながら、進んでいく妖精と私。さすがに視界は悪いけど、足元は結界のお陰で歩きやすい。ひざ下まであるが、ストックでバランスをとりながらでも、ゆっくりながら十分に歩ける。仕組みは謎だけど、妖精の加護って思ってるわ。
 昼過ぎぐらいになり、ようやく頂上へとたどり着く。小さな一軒家には、偏屈で有名な魔女が住んでる。
 悪い人じゃないけど、気まぐれで頑固なところがあるのよね。
 コンコン、とノックをすると、不機嫌そうな声が、
 「誰だい」
 「あ、あのー。私、ふもとの村に住むフランです」
 「ああ。冬のお嬢ちゃんかい。お上がり」
 すんなりと入れてくれたので、ちょっと驚いたわ。以前は帰れっていわれちゃったのよね。
 魔女さんの姿は会うたびに変化してる。今はおばあちゃんの姿だけど、以前は若い男性だったり、鳥だったりと。
 温かいスープをだされ、お礼を言って飲みはじめる。
 「お前さんが妖精と一緒に来るのは分かってたからね。単刀直入に言おう」
 魔女は隣の国から突然ドラゴンがやってきて、逆側のふもとの村や町を制圧したという。虐殺こそはしないものの、水と食料をねだり、大量に消費してる、らしい。
 「そんな事、初めて聞きました。本当なんですか」
 「嘘をついてどうする。それで、悪いとは思ったがそちらの食料を貰ったんだよ」
 『おい。だったら何故オレたちに相談しない』
 「出来なかったのさ。奴はどういう訳か時空移動の魔法が使える」
 見開く冬の妖精。魔女いわく、妖精の世界と人間の世界との行き来をするための魔法だとか。人間は妖精の世界に行くことができない。やっぱり、じゃあ。
 「アタシが分かる事はここまでだ。ベースは人間なんでな」
 『そうだな。こっちで何とかする』
 珍しく真面目な顔をする妖精。テーブルにあるお菓子を手にすると、ふくれっ面をしながらほおばった。
 やっぱり変わりないかも。
 「ああそうだ。ちょいと待ってな」
 そろそろ問題の地へ行こうかと思っていたところ、魔女が席をたち、奥の部屋で何かを動かす音をならした。
 しばらくすると、鐘を小さくしたような杖を持ってでてくる。
 「こいつが役に立つだろう。持って行きな」
 「ありがとうございます」
 天気はすっかりご機嫌になっていて、逆方面に行くには大して苦労はなかった。
 ただ、近づくたびに、風景が白い銀世界から枯れはてた茶色い世界になっていったけど。これは自然現象だからいいとして、別の違和感があった。ナナカマドについてるはずの実が、ごっそりなくなっていたの。この時季ならまだ残ってるんだけど。
 妖精に伝えたら、眉間のしわをより深くさせちゃった。

(C)望月 葵


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 後編


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



※以下の文章はAI学習や転載など厳禁です※
 寒さとともにやってくるのは、何も北風だけじゃない。もちろん、雪や氷といった現象とも違う。
 『いやあ、今年もようやく外に出れたぜ。まったく待ちくたびれちまったよ』
 これである。悪ガキをさらに小さくしたような存在で、俗に、妖精、と呼ばれる存在である。
 実際に関わる身からすると、悪鬼のほうに近いんだけど。季節毎に妖精界から降りてきて、人間たちに知恵や力を貸してくれる、一応ありがたい存在なのよ。
 ただし、生まれた時に契約を結べた人間だけ、っていう条件付きだけどね。
 「って、ちょっと。勝手にクッキー食べないでよ」
 『ツレネーコトいうなって。久々の外なんだし』
 「んもう。夏の間に出して溶かしてやろうかしら」
 『何つーコトいいやがんだよっ』
 半べそで抗議する妖精。ちなみに、人間のように個人を特定する名前はない。
 「早速仕事があるからね。今年は多いわよ」
 『んあ。何でまた』
 「最近、天候がおかしいせいか、妙な現象が頻発しててね」
 『他の連中は?』
 「ちゃんと対処してくれてる。どうもね、季節をまたぐみたいなのよ」
 『ふうん? そんな話はきてないぞ』
 「え、そうなの」
 『おお。人間たちの仕業じゃねぇのか』
 「それが証拠がなくって」
 『ふーん』
 ああ、私のおやつが。また焼かないと。って、それどころじゃないわ。
 「このままだと飲み水や食料がなくなるかもしれないのよ。冬を越せなくなるわ」
 『そんな重要な案件なら共有されてるはずなんだが。まあいいや、お茶ちょーだい』
 「あのねえ」
 マイペースなのは昔からで、自由に存在しているから致し方ない。この村に何かあった際は、いつも助けてくれてるから、信頼してはいるけど。
 ご要望通り冷たいお茶を持ってくると、おいしそうにゆっくり飲んでいる冬の妖精であった。
 ようやく満足してくれたので、かの者を連れて問題が起こってる土地へとむかう。備蓄倉庫だ。
 村長さんがいたので挨拶をする。
 「おお、いらっしゃいフラン。やっぱり誰かが盗んでいるって事は無いようじゃよ」
 「動物でもないのよねえ。何なのかしら、本当」
 普段の半分以下となっている在庫は、日に日に少なくなっていってる。食べ散らかされてもいないし、倉庫には普段カギがかけられていて窓もない。
 『あー。妖精の仕業だな、こりゃあ』
 「えっ」
 『確信を得るためにも、まずは北山の魔女の元に行こうぜ』
 「え。今の時期だと遭難しちゃうわ」
 『オレがついてるから大丈夫。念のために三日分の食料と荷物まとめてきなよ』
 「わ、わかったわ」
 村長さんに事情を話して、一度帰宅。ちょうど料理中だったお母さんにも伝える。とはいえ、今から出発すると途中で夜になってしまうので、明日の早朝に出発することになった。
 一番ひんやりしている時間帯に外出した私は、思わず手袋の上から息を吹きかけてしまう。
 山のふもとにつくと、見上げた先には吹雪が暴れ回っていた。
 妖精は人には理解できない言葉をつぶやくと、私の周りがほのかに暖かくなる。寒さをよけてくれる結界だ。
 『オレの後ろをしっかりついてきなよ』
 「うん」
 『クッキー食いたい』
 「はいはい」
 嬉しそうにほおばりながら、進んでいく妖精と私。さすがに視界は悪いけど、足元は結界のお陰で歩きやすい。ひざ下まであるが、ストックでバランスをとりながらでも、ゆっくりながら十分に歩ける。仕組みは謎だけど、妖精の加護って思ってるわ。
 昼過ぎぐらいになり、ようやく頂上へとたどり着く。小さな一軒家には、偏屈で有名な魔女が住んでる。
 悪い人じゃないけど、気まぐれで頑固なところがあるのよね。
 コンコン、とノックをすると、不機嫌そうな声が、
 「誰だい」
 「あ、あのー。私、ふもとの村に住むフランです」
 「ああ。冬のお嬢ちゃんかい。お上がり」
 すんなりと入れてくれたので、ちょっと驚いたわ。以前は帰れっていわれちゃったのよね。
 魔女さんの姿は会うたびに変化してる。今はおばあちゃんの姿だけど、以前は若い男性だったり、鳥だったりと。
 温かいスープをだされ、お礼を言って飲みはじめる。
 「お前さんが妖精と一緒に来るのは分かってたからね。単刀直入に言おう」
 魔女は隣の国から突然ドラゴンがやってきて、逆側のふもとの村や町を制圧したという。虐殺こそはしないものの、水と食料をねだり、大量に消費してる、らしい。
 「そんな事、初めて聞きました。本当なんですか」
 「嘘をついてどうする。それで、悪いとは思ったがそちらの食料を貰ったんだよ」
 『おい。だったら何故オレたちに相談しない』
 「出来なかったのさ。奴はどういう訳か時空移動の魔法が使える」
 見開く冬の妖精。魔女いわく、妖精の世界と人間の世界との行き来をするための魔法だとか。人間は妖精の世界に行くことができない。やっぱり、じゃあ。
 「アタシが分かる事はここまでだ。ベースは人間なんでな」
 『そうだな。こっちで何とかする』
 珍しく真面目な顔をする妖精。テーブルにあるお菓子を手にすると、ふくれっ面をしながらほおばった。
 やっぱり変わりないかも。
 「ああそうだ。ちょいと待ってな」
 そろそろ問題の地へ行こうかと思っていたところ、魔女が席をたち、奥の部屋で何かを動かす音をならした。
 しばらくすると、鐘を小さくしたような杖を持ってでてくる。
 「こいつが役に立つだろう。持って行きな」
 「ありがとうございます」
 天気はすっかりご機嫌になっていて、逆方面に行くには大して苦労はなかった。
 ただ、近づくたびに、風景が白い銀世界から枯れはてた茶色い世界になっていったけど。これは自然現象だからいいとして、別の違和感があった。ナナカマドについてるはずの実が、ごっそりなくなっていたの。この時季ならまだ残ってるんだけど。
 妖精に伝えたら、眉間のしわをより深くさせちゃった。
(C)望月 葵