表示設定
表示設定
目次 目次




前編

ー/ー



 早足で、ガラス張りの大温室内を歩いていた。外は雪のチラつく寒さだが、ここは温かくて湿っている。

 私とルキちゃん、ゆきちゃんと、リリちゃんの四人で植物園に来ていた。作文を書く下準備だ。でも今は一人、離れて来た。

 気持ちを(まぎ)らわせたくて、「何があるか確かめてくる」と、先へ進んだのだ。
 もうすぐ後戻りし、三人と合流するつもりだ。気は進まないが戻るしかない。

 本当は、私とルキちゃんとゆきちゃんの三人で来るはずだった。リリちゃんがゆきちゃんに付いて来たせいで、四人になった。

 作文は別に、四人でやれと言われたものでもない。一人でやれる内容だ。冬休み中に博物館施設へ行って、どんなだったか書くだけだ。
 博物館は、歴史や科学に限らない。美術館や動物園、水族館も「博物館」だ。郷土資料室のような小さいところでもOKだと先生は(おっしゃ)ったから、候補はたくさんあった。

 私は、心当たりを思い浮かべ、
(一人で行ってもいいし、家族と行ってメモして写真を撮っておいて、後でまとめるのもありだな)
 などと考えていた。
 すると休み時間、ゆきちゃんが私のところへ来て「ゆきちゃん! 作文、一緒にやりましょう!」と誘った。

 そう、彼女も私も「ゆきちゃん」だ。
 私は雪乃で「の」が付いて、彼女は夕樹と書いて「ゆき」と読む。

 クラスが同じになるまで、私達はどちらも「ゆきちゃん」と呼ばれていた。同じクラスになると「の、が付く方」とか「付かない方の!」とか、「もう一人のゆきちゃん」とか呼ばれてややこしかった。ある日ゆきちゃんは「私は『ゆーちゃん』、こっちは『ゆきちゃん』。どう?」と提案し、混乱を収めた。

 ゆきちゃんは、みんなには「ゆーちゃん」になり、彼女を「ゆきちゃん」と呼ぶのは私だけになった。私達は、「どっちのゆきちゃん」か混乱しないからだ。
 名前のせいかは分からないけれど、ゆきちゃんは私に、親近感を持ってくれたようだ。グループワークや、自由に班を決めていい活動の時はいつも、「ゆきちゃん! 一緒にやりましょう」と誘いに来る。

 今度の作文も、まずは「どこかの施設を見にいく」ものだから、見学を「一緒に」と誘われたのだ。ゆきちゃんとどこかへ行くのは嫌ではない。むしろ嬉しい。
 それで「うん、やりましょう!」と答えると、(そば)へ、ルキちゃんも寄って来て「ゆーちゃんゆきちゃん、いつ行くの? 私も一緒に行っていいかな!」と言った。

 ルキちゃんも私達と、名前の音が似ている。それで私達はクラスでなんとなく「ゆーちゃんゆきちゃんルキちゃん」とまとめて呼ばれ、三人セット、仲良し三人組、みたいに思われるようになっていた。クラスメイトがそう(あつか)うからか、私達自身もお互い嫌いじゃないからか、三人組は定着して来ていた。

 悪くない。むしろ良い。二人も私も、ベタベタ仲良くするのが苦手な方だな、とすぐ気付いた。周りから「なんとなく」で見られて出来た、おぼろげな「ゆーちゃんゆきちゃんルキちゃん」のまとまりは、「私達、仲良しだよね!」とお互い力を込めて作られたものではなくて、かなりうっすらして頼りない。けれど、だから、逆にしんどくなくて、嫌じゃない。

 ゆきちゃんが「一緒に」と言って来た時、ルキちゃんが側へ来て「私も」と言うのを多分、私もゆきちゃんも予想し、期待もしていた気がする。本当にルキちゃんが来たので、私達は嬉しくなり、「もちろん! 一緒に行きましょう!」と、ルキちゃんを迎えた。

 ところで実は一つ、二人の知らない秘密がある。
 私はルキちゃんのことが好きだ。恋愛的な意味で。
 ゆきちゃんのことも好きだが、そちらは友情的な意味での「好き」だ。
 どちらの「好き」も良い感情だとは思うが、かなり違う感じの思いだ。

 花でいうなら(しゅ)とか(ぞく)が違う感じかもしれない。これは今日、温室内を歩きながら、思い付いたことだ。植物園には、同じ種や属の名前が書いてあっても、全然見た目の違う植物が、大量にあった。物によっては、生えている地域まで全然違ったりするようだ。それと同じで、「好き」の種類も大量に、いろんな分布で存在するんじゃないだろうか。

 恋愛的な好きや友情的な好きの話は、けれど私の心の中だけの秘密だ。ふんわりうっすらな「仲良し三人組」へ持ち込むには、恋愛的な「好き」は、少量でも重過ぎる気がした。せっかく三人、いい感じなのが、しんどい関係になったら嫌だ。とはいえ、自分の気持ちが「恋じゃない」とは否定できない。「明らかに恋」「すごく恋」だ。外へ出さない分、内側で複雑になっている、だからますます秘密の話だ。

 ルキちゃんに恋愛的な意味で好きな人がいるかどうかは分からない。分かるのは、彼女が私ともゆきちゃんとも同じぐらい仲が良く、「私達よりももっと仲の良い人」は特に見当たらない、ということぐらいだ。
 恋愛的な意味で、ルキちゃんは男子が好きかもしれない。もっと年上の大人が好きかもしれない。芸能人とか二次元アイドルやゲームキャラ、思ってもみないような誰か(か、何か?)を好きかもしれない。場合によっては、友情的な「好き」だけあれば良くて、恋愛に興味がないかもしれない。
 
 私はとりあえず、ルキちゃんと話せるだけでも、嬉しくてウキウキする。このままずっとウキウキできるなら、「これ以上」がなくても良いのかもしれない。臆病(おくびょう)だろうが、変に私が種や属の違っていそうな「好き」の分類を二人に伝え、そのせいで三人の今の関係が崩れてしまうと嫌だ。
 当分、私の「好き」は秘密だろう。場合によっては永久に秘密だ。

 ゆきちゃんが私に声をかけてくれたおかげで、結果的にルキちゃんも一緒に、三人で出かけられることになった。私は嬉しかった。

 ふと目をあげると、「ランとアナナスの部屋」の表示が目の前にある。順路の最後の展示室だ。一人でかなり、歩いて来たってことだ。もう一つ、追加の表示があった。
「ポインセチア特別展……? ああ、冬だし? クリスマスの飾りになってるあれか」
 かなり(うわ)(そら)で読む。
 部屋へ入ると熱帯だ。温かく、滴があちこちを伝って、植物や通路をしっとり()らしている。今の季節と真逆のようだ。そう思ってガラスの壁を見れば、外はさっき以上に雪が降っている。すごく寒そうだし、温室から出ての帰りが大変だろう。気分がさらに沈む。
 どんな花が咲いているのかと、普段だったら興味を覚えてキョロキョロしそうな部屋だが、今はひたすら早足だった。まだまだ、ゆったり歩く気にはならない。

 あの時、ゆきちゃんとルキちゃんと、一緒に出かける先を決めようとしていたら、リリちゃんまでが来た。ゆきちゃんの後ろへ取り()くみたいに立った。そして、
『ゆーちゃん』
 と呼んだ。

 彼女はいつもそうだ。常にぼんやりフニャフニャした様子で、大概(たいがい)のことに要領(ようりょう)の悪いリリちゃんには、仲良しがいない。いないというよりも。
 彼女は、とにかくゆきちゃんにくっついて行く。ゆきちゃん「だけ」の側へ行く。そのせいで他の友達ができないのだと、私は思う。

 ゆきちゃんは優しい。ゆきちゃんの親切はさりげなく目立たないけれど、本当に、誰にでも優しい。勉強でも何でも「教えて」と言われれば、丁寧(ていねい)に教えてあげようとする。
 だから、リリちゃんがゆきちゃんと仲良くしたいのもよく分かる。ゆきちゃんは素敵(すてき)だ。

 けれどリリちゃんは、ゆきちゃんを頼り過ぎていた。あまりにも、ゆきちゃんに「ばかり」頼っていた。
 気が付けばいつでもゆきちゃんの側にいて、何かと注意を引こうとしている。私は最近、それを見るのが、どうにも「鬱陶(うっとう)しい」と思うようになっていた。

 誰かのことを「鬱陶しい」と思うのは、良くない。頭ではそう思う。
 でも、内臓でモヤモヤむかむかする感覚は、頭がいくら「ストップ」と言っても止まらないし消えない。
 リリちゃんがゆきちゃんに付き(まと)っているのを見ると、私はモヤモヤし、鬱陶しく感じる。


 リリちゃんが来て「ゆーちゃん」と呼んだ時、ゆきちゃんは素早く私達を見て、
『あ、じゃあ、四人で行く?』
 と、尋ねた。

 私かルキちゃんが嫌だと言ったら、リリちゃんは立ち去るだろうか? でも「嫌だ」と断れば、リリちゃんに意地悪(いじわる)したことになる?

 私達が断っても、リリちゃんは「じゃあ二人で行こう」と、ゆきちゃんだけをまだ誘う可能性があった。いやきっと、誘うだろう。
 ゆきちゃんは、リリちゃんと二人で行くのでは困ると思って、「四人で行く?」と尋ねたのだろうか。ゆきちゃんは初め「私を」誘いに来た。つまりゆきちゃんは「私と」行きたかったから「私を」誘ったはずだ。

 目まぐるしく考えたものの、本音だけを言えば、全然「四人で」行きたくはなかった。「ゆーちゃんゆきちゃんルキちゃん」の、三人がいいに決まっている。
 けれどもここで「リリちゃんにダメと言って意地悪をする私」を、ゆきちゃんとルキちゃんに見せたくもなかった。特にルキちゃんから「そういう人なんだ」と幻滅(げんめつ)されるのは困る。
 結局、「んー、そうだね。四人で行く?」と、私は(うなず)いていた。ルキちゃんが「どこへ行こうか!」と、話題を次へ移した……。

(つづく)


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 後編


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 早足で、ガラス張りの大温室内を歩いていた。外は雪のチラつく寒さだが、ここは温かくて湿っている。
 私とルキちゃん、ゆきちゃんと、リリちゃんの四人で植物園に来ていた。作文を書く下準備だ。でも今は一人、離れて来た。
 気持ちを|紛《まぎ》らわせたくて、「何があるか確かめてくる」と、先へ進んだのだ。
 もうすぐ後戻りし、三人と合流するつもりだ。気は進まないが戻るしかない。
 本当は、私とルキちゃんとゆきちゃんの三人で来るはずだった。リリちゃんがゆきちゃんに付いて来たせいで、四人になった。
 作文は別に、四人でやれと言われたものでもない。一人でやれる内容だ。冬休み中に博物館施設へ行って、どんなだったか書くだけだ。
 博物館は、歴史や科学に限らない。美術館や動物園、水族館も「博物館」だ。郷土資料室のような小さいところでもOKだと先生は|仰《おっしゃ》ったから、候補はたくさんあった。
 私は、心当たりを思い浮かべ、
(一人で行ってもいいし、家族と行ってメモして写真を撮っておいて、後でまとめるのもありだな)
 などと考えていた。
 すると休み時間、ゆきちゃんが私のところへ来て「ゆきちゃん! 作文、一緒にやりましょう!」と誘った。
 そう、彼女も私も「ゆきちゃん」だ。
 私は雪乃で「の」が付いて、彼女は夕樹と書いて「ゆき」と読む。
 クラスが同じになるまで、私達はどちらも「ゆきちゃん」と呼ばれていた。同じクラスになると「の、が付く方」とか「付かない方の!」とか、「もう一人のゆきちゃん」とか呼ばれてややこしかった。ある日ゆきちゃんは「私は『ゆーちゃん』、こっちは『ゆきちゃん』。どう?」と提案し、混乱を収めた。
 ゆきちゃんは、みんなには「ゆーちゃん」になり、彼女を「ゆきちゃん」と呼ぶのは私だけになった。私達は、「どっちのゆきちゃん」か混乱しないからだ。
 名前のせいかは分からないけれど、ゆきちゃんは私に、親近感を持ってくれたようだ。グループワークや、自由に班を決めていい活動の時はいつも、「ゆきちゃん! 一緒にやりましょう」と誘いに来る。
 今度の作文も、まずは「どこかの施設を見にいく」ものだから、見学を「一緒に」と誘われたのだ。ゆきちゃんとどこかへ行くのは嫌ではない。むしろ嬉しい。
 それで「うん、やりましょう!」と答えると、|側《そば》へ、ルキちゃんも寄って来て「ゆーちゃんゆきちゃん、いつ行くの? 私も一緒に行っていいかな!」と言った。
 ルキちゃんも私達と、名前の音が似ている。それで私達はクラスでなんとなく「ゆーちゃんゆきちゃんルキちゃん」とまとめて呼ばれ、三人セット、仲良し三人組、みたいに思われるようになっていた。クラスメイトがそう|扱《あつか》うからか、私達自身もお互い嫌いじゃないからか、三人組は定着して来ていた。
 悪くない。むしろ良い。二人も私も、ベタベタ仲良くするのが苦手な方だな、とすぐ気付いた。周りから「なんとなく」で見られて出来た、おぼろげな「ゆーちゃんゆきちゃんルキちゃん」のまとまりは、「私達、仲良しだよね!」とお互い力を込めて作られたものではなくて、かなりうっすらして頼りない。けれど、だから、逆にしんどくなくて、嫌じゃない。
 ゆきちゃんが「一緒に」と言って来た時、ルキちゃんが側へ来て「私も」と言うのを多分、私もゆきちゃんも予想し、期待もしていた気がする。本当にルキちゃんが来たので、私達は嬉しくなり、「もちろん! 一緒に行きましょう!」と、ルキちゃんを迎えた。
 ところで実は一つ、二人の知らない秘密がある。
 私はルキちゃんのことが好きだ。恋愛的な意味で。
 ゆきちゃんのことも好きだが、そちらは友情的な意味での「好き」だ。
 どちらの「好き」も良い感情だとは思うが、かなり違う感じの思いだ。
 花でいうなら|種《しゅ》とか|属《ぞく》が違う感じかもしれない。これは今日、温室内を歩きながら、思い付いたことだ。植物園には、同じ種や属の名前が書いてあっても、全然見た目の違う植物が、大量にあった。物によっては、生えている地域まで全然違ったりするようだ。それと同じで、「好き」の種類も大量に、いろんな分布で存在するんじゃないだろうか。
 恋愛的な好きや友情的な好きの話は、けれど私の心の中だけの秘密だ。ふんわりうっすらな「仲良し三人組」へ持ち込むには、恋愛的な「好き」は、少量でも重過ぎる気がした。せっかく三人、いい感じなのが、しんどい関係になったら嫌だ。とはいえ、自分の気持ちが「恋じゃない」とは否定できない。「明らかに恋」「すごく恋」だ。外へ出さない分、内側で複雑になっている、だからますます秘密の話だ。
 ルキちゃんに恋愛的な意味で好きな人がいるかどうかは分からない。分かるのは、彼女が私ともゆきちゃんとも同じぐらい仲が良く、「私達よりももっと仲の良い人」は特に見当たらない、ということぐらいだ。
 恋愛的な意味で、ルキちゃんは男子が好きかもしれない。もっと年上の大人が好きかもしれない。芸能人とか二次元アイドルやゲームキャラ、思ってもみないような誰か(か、何か?)を好きかもしれない。場合によっては、友情的な「好き」だけあれば良くて、恋愛に興味がないかもしれない。
 私はとりあえず、ルキちゃんと話せるだけでも、嬉しくてウキウキする。このままずっとウキウキできるなら、「これ以上」がなくても良いのかもしれない。|臆病《おくびょう》だろうが、変に私が種や属の違っていそうな「好き」の分類を二人に伝え、そのせいで三人の今の関係が崩れてしまうと嫌だ。
 当分、私の「好き」は秘密だろう。場合によっては永久に秘密だ。
 ゆきちゃんが私に声をかけてくれたおかげで、結果的にルキちゃんも一緒に、三人で出かけられることになった。私は嬉しかった。
 ふと目をあげると、「ランとアナナスの部屋」の表示が目の前にある。順路の最後の展示室だ。一人でかなり、歩いて来たってことだ。もう一つ、追加の表示があった。
「ポインセチア特別展……? ああ、冬だし? クリスマスの飾りになってるあれか」
 かなり|上《うわ》の|空《そら》で読む。
 部屋へ入ると熱帯だ。温かく、滴があちこちを伝って、植物や通路をしっとり|濡《ぬ》らしている。今の季節と真逆のようだ。そう思ってガラスの壁を見れば、外はさっき以上に雪が降っている。すごく寒そうだし、温室から出ての帰りが大変だろう。気分がさらに沈む。
 どんな花が咲いているのかと、普段だったら興味を覚えてキョロキョロしそうな部屋だが、今はひたすら早足だった。まだまだ、ゆったり歩く気にはならない。
 あの時、ゆきちゃんとルキちゃんと、一緒に出かける先を決めようとしていたら、リリちゃんまでが来た。ゆきちゃんの後ろへ取り|憑《つ》くみたいに立った。そして、
『ゆーちゃん』
 と呼んだ。
 彼女はいつもそうだ。常にぼんやりフニャフニャした様子で、|大概《たいがい》のことに|要領《ようりょう》の悪いリリちゃんには、仲良しがいない。いないというよりも。
 彼女は、とにかくゆきちゃんにくっついて行く。ゆきちゃん「だけ」の側へ行く。そのせいで他の友達ができないのだと、私は思う。
 ゆきちゃんは優しい。ゆきちゃんの親切はさりげなく目立たないけれど、本当に、誰にでも優しい。勉強でも何でも「教えて」と言われれば、|丁寧《ていねい》に教えてあげようとする。
 だから、リリちゃんがゆきちゃんと仲良くしたいのもよく分かる。ゆきちゃんは|素敵《すてき》だ。
 けれどリリちゃんは、ゆきちゃんを頼り過ぎていた。あまりにも、ゆきちゃんに「ばかり」頼っていた。
 気が付けばいつでもゆきちゃんの側にいて、何かと注意を引こうとしている。私は最近、それを見るのが、どうにも「|鬱陶《うっとう》しい」と思うようになっていた。
 誰かのことを「鬱陶しい」と思うのは、良くない。頭ではそう思う。
 でも、内臓でモヤモヤむかむかする感覚は、頭がいくら「ストップ」と言っても止まらないし消えない。
 リリちゃんがゆきちゃんに付き|纏《まと》っているのを見ると、私はモヤモヤし、鬱陶しく感じる。
 リリちゃんが来て「ゆーちゃん」と呼んだ時、ゆきちゃんは素早く私達を見て、
『あ、じゃあ、四人で行く?』
 と、尋ねた。
 私かルキちゃんが嫌だと言ったら、リリちゃんは立ち去るだろうか? でも「嫌だ」と断れば、リリちゃんに|意地悪《いじわる》したことになる?
 私達が断っても、リリちゃんは「じゃあ二人で行こう」と、ゆきちゃんだけをまだ誘う可能性があった。いやきっと、誘うだろう。
 ゆきちゃんは、リリちゃんと二人で行くのでは困ると思って、「四人で行く?」と尋ねたのだろうか。ゆきちゃんは初め「私を」誘いに来た。つまりゆきちゃんは「私と」行きたかったから「私を」誘ったはずだ。
 目まぐるしく考えたものの、本音だけを言えば、全然「四人で」行きたくはなかった。「ゆーちゃんゆきちゃんルキちゃん」の、三人がいいに決まっている。
 けれどもここで「リリちゃんにダメと言って意地悪をする私」を、ゆきちゃんとルキちゃんに見せたくもなかった。特にルキちゃんから「そういう人なんだ」と|幻滅《げんめつ》されるのは困る。
 結局、「んー、そうだね。四人で行く?」と、私は|頷《うなず》いていた。ルキちゃんが「どこへ行こうか!」と、話題を次へ移した……。
(つづく)