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カバン奪還作戦 3

ー/ー



 モモは剣を右斜め上に構えたまま、静かに、速く、駆け抜けた。

 仮面がコチラを向くと同時にモモは思い切り剣を振り下ろす。

 男は断末魔を上げるまもなく真っ二つになった。上半身がズルリと落ちて下半身がパタリと倒れる。

 モモは返り血を浴びてハァハァと荒い息をしていた。

 いつか人を斬る日が来ると思っていたが、さっきまでの食事を楽しみ風呂に入り、安らいでいた時間がはるか昔の事のように思えた。

「よくやった、モモ」

 アシノはワインボトルを収めて言う。ルーが男の握る裏の道具を回収する。

「モモさん…… 助かりました」

 ユモトは目の前の死体に少し吐き気を覚えながらも気丈に振る舞っていた。

「ルー探知盤はどうだ?」

 アシノはルーに探知盤の様子を聞いた。

「っ!! 反応が1、2、…… 15個もある!! しかも1つの反応に複数重なってるのもあるから」

 恐れていたことが起きた。恐らくカバンの中身を1人1人に複数持たせて散り散りになったのだろう。

「いや、強い武器は持つだけで身を滅ぼす。裏の道具に強いも弱いも無いが、強力なものは持ち運べないだろう」

「そんな! 僕らはどうしたら良いんですか?」

 ユモトがアシノに尋ねると目をつぶって考えた後に言った。

「今の私達では裏の道具持ちと戦うのは危険だ。ムツヤとの合流、カバンの奪還が最優先だ」

「そうねー、1人1人で戦っても負けるのが目に見えてるし」

 モモがぼんやりとしている事に気付いてアシノが言う。

「モモ、お前が居なければ私達は死んでいたかもしれない。感謝する」

 それからアシノは頭を軽く下げて続けた。

「それと嫌な役目を任せてしまってすまない。気持ちはわかるが、今はムツヤと合流する事だけを考えてくれ」

 モモはパンっと自分の顔を叩いてから返事をした。

「はい、急ぎましょう」

 アシノは死んだキエーウの男に片手で素早く祈りをした。モモもそれに習い、皆は先を急いだ。

 恐らくエルフの村から一直線に、一番遠くにある反応がカバンだろう。それを倍以上のスピードで追いかけている点がムツヤのはずだ。

 ムツヤは今、魔剣ムゲンジゴクのレプリカしか持っていない。

 しかし、サズァンから貰ったネックレスと裏の連絡石のおかげで反応が分かる。

「ギルス、ムツヤと繋いでくれ!」

「分かった、ちょっと待ってろ」

 走りながらアシノはギルスに連絡を入れた。しばらくしてムツヤの声が聞こえてくる。

「アシノさんでずか!? 今カバンを持ってる奴を追いかけているんですが、他に道具を持っていった奴もいて!」

「ムツヤ、お前はカバンを取り戻すことだけ考えて走れ!」

「わがりまじだ!」

 ムツヤとの連絡が終わり、石を仕舞おうとした時にちょっと待ってくれとギルスの声がした。

「おい、何人か引き返してきているぞ!」

「僕たちを、倒しに来たんですかね……」

 ユモトの予想は当たっているかわからない。しかし反応が向かう先を見て答えが分かってしまった。

「っ!! そうか、エルフ亜人だから!!」

 ルーの言う通りだ。裏の道具の反応がエルフの村へと近付いて行っている。

「道具の試し打ちにはもってこいって所か、私達も引き返すぞ!」

 アシノの号令に皆で返事をし、来た道を急いで戻る。村に戻ると当然だがエルフ達はざわついている。

「あぁ、勇者アシノ様!!」

 宿屋の女将がアシノ達を見つけて言う。

「先程は本当に、本当に申し訳ありませんでした!!」

「いえ、悪いのは全てキエーウです。それより奴らが引き返してきています」

「治安維持部隊はどうなりました?」

 ルーが尋ねると宿屋の娘カノイは浮かない顔をする。

「駐在の3人の方達は…… 亡くなっていました。後は応援を待つしか無いと……」

 それを聞いてエルフ達はざわつく。アシノは大声で群衆に聞いた。

「相手は相当強いです。戦える覚悟のある冒険者や傭兵が居たら協力して頂きたい。もちろん報酬は払います」

 それに名乗りを上げた冒険者がいた。それは見覚えのある顔だった。

「困っている人は見過ごせません!!」

 正義感が強く、そしてユモトを女だと勘違いしてデートまでした男。タノベだ。

「あ、タノベさん!?」

「ユモトさん…… またお会いしましたね」

 2人はちょっと気まずそうだったが。

「報酬が出る上に勇者アシノ様と共に戦ったなんて自慢できるなら俺も戦いますよ」

 タノベとコンビを組んでいるフミヤもそう言って前へ出た。

 他にもチラホラと冒険者やエルフの腕に自信があるものが名乗り上げてこちらの戦力は総勢20名ほどになった。

 探知盤の反応がコチラに近付いて来ている。今はこの戦力で迎え撃つしか無い。


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 モモは剣を右斜め上に構えたまま、静かに、速く、駆け抜けた。
 仮面がコチラを向くと同時にモモは思い切り剣を振り下ろす。
 男は断末魔を上げるまもなく真っ二つになった。上半身がズルリと落ちて下半身がパタリと倒れる。
 モモは返り血を浴びてハァハァと荒い息をしていた。
 いつか人を斬る日が来ると思っていたが、さっきまでの食事を楽しみ風呂に入り、安らいでいた時間がはるか昔の事のように思えた。
「よくやった、モモ」
 アシノはワインボトルを収めて言う。ルーが男の握る裏の道具を回収する。
「モモさん…… 助かりました」
 ユモトは目の前の死体に少し吐き気を覚えながらも気丈に振る舞っていた。
「ルー探知盤はどうだ?」
 アシノはルーに探知盤の様子を聞いた。
「っ!! 反応が1、2、…… 15個もある!! しかも1つの反応に複数重なってるのもあるから」
 恐れていたことが起きた。恐らくカバンの中身を1人1人に複数持たせて散り散りになったのだろう。
「いや、強い武器は持つだけで身を滅ぼす。裏の道具に強いも弱いも無いが、強力なものは持ち運べないだろう」
「そんな! 僕らはどうしたら良いんですか?」
 ユモトがアシノに尋ねると目をつぶって考えた後に言った。
「今の私達では裏の道具持ちと戦うのは危険だ。ムツヤとの合流、カバンの奪還が最優先だ」
「そうねー、1人1人で戦っても負けるのが目に見えてるし」
 モモがぼんやりとしている事に気付いてアシノが言う。
「モモ、お前が居なければ私達は死んでいたかもしれない。感謝する」
 それからアシノは頭を軽く下げて続けた。
「それと嫌な役目を任せてしまってすまない。気持ちはわかるが、今はムツヤと合流する事だけを考えてくれ」
 モモはパンっと自分の顔を叩いてから返事をした。
「はい、急ぎましょう」
 アシノは死んだキエーウの男に片手で素早く祈りをした。モモもそれに習い、皆は先を急いだ。
 恐らくエルフの村から一直線に、一番遠くにある反応がカバンだろう。それを倍以上のスピードで追いかけている点がムツヤのはずだ。
 ムツヤは今、魔剣ムゲンジゴクのレプリカしか持っていない。
 しかし、サズァンから貰ったネックレスと裏の連絡石のおかげで反応が分かる。
「ギルス、ムツヤと繋いでくれ!」
「分かった、ちょっと待ってろ」
 走りながらアシノはギルスに連絡を入れた。しばらくしてムツヤの声が聞こえてくる。
「アシノさんでずか!? 今カバンを持ってる奴を追いかけているんですが、他に道具を持っていった奴もいて!」
「ムツヤ、お前はカバンを取り戻すことだけ考えて走れ!」
「わがりまじだ!」
 ムツヤとの連絡が終わり、石を仕舞おうとした時にちょっと待ってくれとギルスの声がした。
「おい、何人か引き返してきているぞ!」
「僕たちを、倒しに来たんですかね……」
 ユモトの予想は当たっているかわからない。しかし反応が向かう先を見て答えが分かってしまった。
「っ!! そうか、エルフ亜人だから!!」
 ルーの言う通りだ。裏の道具の反応がエルフの村へと近付いて行っている。
「道具の試し打ちにはもってこいって所か、私達も引き返すぞ!」
 アシノの号令に皆で返事をし、来た道を急いで戻る。村に戻ると当然だがエルフ達はざわついている。
「あぁ、勇者アシノ様!!」
 宿屋の女将がアシノ達を見つけて言う。
「先程は本当に、本当に申し訳ありませんでした!!」
「いえ、悪いのは全てキエーウです。それより奴らが引き返してきています」
「治安維持部隊はどうなりました?」
 ルーが尋ねると宿屋の娘カノイは浮かない顔をする。
「駐在の3人の方達は…… 亡くなっていました。後は応援を待つしか無いと……」
 それを聞いてエルフ達はざわつく。アシノは大声で群衆に聞いた。
「相手は相当強いです。戦える覚悟のある冒険者や傭兵が居たら協力して頂きたい。もちろん報酬は払います」
 それに名乗りを上げた冒険者がいた。それは見覚えのある顔だった。
「困っている人は見過ごせません!!」
 正義感が強く、そしてユモトを女だと勘違いしてデートまでした男。タノベだ。
「あ、タノベさん!?」
「ユモトさん…… またお会いしましたね」
 2人はちょっと気まずそうだったが。
「報酬が出る上に勇者アシノ様と共に戦ったなんて自慢できるなら俺も戦いますよ」
 タノベとコンビを組んでいるフミヤもそう言って前へ出た。
 他にもチラホラと冒険者やエルフの腕に自信があるものが名乗り上げてこちらの戦力は総勢20名ほどになった。
 探知盤の反応がコチラに近付いて来ている。今はこの戦力で迎え撃つしか無い。