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カバン奪還作戦 1

ー/ー



「待てルー!! カバンがアイツ等の手に渡ったらどうなるか分かってんのか!?」

 アシノに咎められたルーだったが、ナイフを突きつけられているエルフを見て他の方法を考えてみても代案が無い。

「ムツヤ、走ってアイツを倒せないか?」

「やだわぁん、ひそひそ話なんて。ちょっとでも変な動きをしてみなさい。この子は死ぬわ」

 ムツヤ達はキエーウの連中を睨みながら立ち尽くすことしか出来なかった。

「ほら、カバンをこっちに投げなさい」

 ムツヤは苦い顔をしながらバッグを肩から下ろして放り投げた。キエーウのメンバーがそれを拾って立ち去っていく。

「カバンは渡したわよ。開放しなさい!!」

「駄目よ、もうちょっと遠くに逃げるまで待っていて貰うわ」

 すぐに追いかけてカバンを取り戻せたらという甘い考えは打ち砕かれた。

「ただ待っているってのも暇ね、お喋りでもしましょうか?」

 ウトナはそう言ってムツヤを見る。

「お前なんかと話すことはない!!」

「あらぁん、釣れないわぁん。でもね、聞いてくれるだけで良いのよ?」

 そして勝手に話し始めた。

「エルフは長命だから無駄に知識をもっているわ。そして自分達が1番賢い種族だと思い他の種族を見下すの。それはさっきわかったでしょう?」

「それを言ったらあなた達こそ何なの? 人間が1番だと、おごり高ぶって、そんな変な仮面まで付けて」

 ウトナの言葉にルーは言い返した。

「他種族が居るからこんな争いが起こるのよ? 人間が選んだ者以外きれいサッパリ殺しちゃえば、今こんな争いも起きてないわ」

「お前らはつくづく1か0かでしかモノを考えられないんだな。人間同士でも争いも戦争も起こるし、他種族とも分かり合うことができる」

 今度はアシノが言い返すが、ウトナは鼻で笑った。

「まぁいいわ、あなた達とお喋りしても無駄みたいね。それじゃこの子は返してあげる」

 宿屋の夫妻が安堵した次の瞬間だった。ウトナは短剣をカノイの背中に突き立て、一気に押し込んだ。

「えっ」

 カノイは痛みよりも先に自分の腹から生えた金属を理解できない様子で眺めていた。そして思考に痛みが追いつくと。

「ああああああああああああ!!!!!!」

 叫んでその場に四つん這いになり、横に倒れた。キエーウの連中は何処かへ去っていく。

 ムツヤ達は急いでカノイの元に駆け寄って傷を見る。これは致命傷だろう。

「ユモト、回復魔法を使うふりをしろ、私が短剣を抜いて薬を掛ける」

「あ、はい!」

 小声でアシノは耳打ちをし、ユモトは杖を光らせて回復魔法を使うふりをした。

 アシノが短剣を引き抜くとドクドクと血が流れ始めた。仰向けにし、傷口に薬をかける。

「ぷ、ぷぺらんらん!!」

 奇声を上げてカノイは上半身を起こした。

「傷は治したが、出血が酷い。しばらく大人しくしているんだな」

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

 宿屋の女将は泣きながら礼を言う、他のエルフは魔法の見事さに舌を巻いていた。

「このような回復魔法を…… あなた方はいったい……?」

「私はアシノ・イオノンと言います」

「アシノ……!? 勇者アシノ様ですか!?」

「えぇ、まぁ」

 少し恥ずかしげにアシノは答える。だがゆっくりしている時間はない。

「私達はキエーウを追います。あなた方は治安維持部隊の本部へ緊急の信号を送って下さい」

「わっ、わかりました!」

 立ち上がってアシノは言う。

「時間との勝負だな、急ぐぞ!」

 仲間達はそれぞれ返事をした。まだカバンは探知盤に映る距離にある。

「アシノさんすみません!」

「何だムツヤ!」

「服を着てきても良いですか?」

 そう言えばムツヤはまだタオル1枚腰に巻いただけだった。

「あぁ、そうだったな……」


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 アシノに咎められたルーだったが、ナイフを突きつけられているエルフを見て他の方法を考えてみても代案が無い。
「ムツヤ、走ってアイツを倒せないか?」
「やだわぁん、ひそひそ話なんて。ちょっとでも変な動きをしてみなさい。この子は死ぬわ」
 ムツヤ達はキエーウの連中を睨みながら立ち尽くすことしか出来なかった。
「ほら、カバンをこっちに投げなさい」
 ムツヤは苦い顔をしながらバッグを肩から下ろして放り投げた。キエーウのメンバーがそれを拾って立ち去っていく。
「カバンは渡したわよ。開放しなさい!!」
「駄目よ、もうちょっと遠くに逃げるまで待っていて貰うわ」
 すぐに追いかけてカバンを取り戻せたらという甘い考えは打ち砕かれた。
「ただ待っているってのも暇ね、お喋りでもしましょうか?」
 ウトナはそう言ってムツヤを見る。
「お前なんかと話すことはない!!」
「あらぁん、釣れないわぁん。でもね、聞いてくれるだけで良いのよ?」
 そして勝手に話し始めた。
「エルフは長命だから無駄に知識をもっているわ。そして自分達が1番賢い種族だと思い他の種族を見下すの。それはさっきわかったでしょう?」
「それを言ったらあなた達こそ何なの? 人間が1番だと、おごり高ぶって、そんな変な仮面まで付けて」
 ウトナの言葉にルーは言い返した。
「他種族が居るからこんな争いが起こるのよ? 人間が選んだ者以外きれいサッパリ殺しちゃえば、今こんな争いも起きてないわ」
「お前らはつくづく1か0かでしかモノを考えられないんだな。人間同士でも争いも戦争も起こるし、他種族とも分かり合うことができる」
 今度はアシノが言い返すが、ウトナは鼻で笑った。
「まぁいいわ、あなた達とお喋りしても無駄みたいね。それじゃこの子は返してあげる」
 宿屋の夫妻が安堵した次の瞬間だった。ウトナは短剣をカノイの背中に突き立て、一気に押し込んだ。
「えっ」
 カノイは痛みよりも先に自分の腹から生えた金属を理解できない様子で眺めていた。そして思考に痛みが追いつくと。
「ああああああああああああ!!!!!!」
 叫んでその場に四つん這いになり、横に倒れた。キエーウの連中は何処かへ去っていく。
 ムツヤ達は急いでカノイの元に駆け寄って傷を見る。これは致命傷だろう。
「ユモト、回復魔法を使うふりをしろ、私が短剣を抜いて薬を掛ける」
「あ、はい!」
 小声でアシノは耳打ちをし、ユモトは杖を光らせて回復魔法を使うふりをした。
 アシノが短剣を引き抜くとドクドクと血が流れ始めた。仰向けにし、傷口に薬をかける。
「ぷ、ぷぺらんらん!!」
 奇声を上げてカノイは上半身を起こした。
「傷は治したが、出血が酷い。しばらく大人しくしているんだな」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
 宿屋の女将は泣きながら礼を言う、他のエルフは魔法の見事さに舌を巻いていた。
「このような回復魔法を…… あなた方はいったい……?」
「私はアシノ・イオノンと言います」
「アシノ……!? 勇者アシノ様ですか!?」
「えぇ、まぁ」
 少し恥ずかしげにアシノは答える。だがゆっくりしている時間はない。
「私達はキエーウを追います。あなた方は治安維持部隊の本部へ緊急の信号を送って下さい」
「わっ、わかりました!」
 立ち上がってアシノは言う。
「時間との勝負だな、急ぐぞ!」
 仲間達はそれぞれ返事をした。まだカバンは探知盤に映る距離にある。
「アシノさんすみません!」
「何だムツヤ!」
「服を着てきても良いですか?」
 そう言えばムツヤはまだタオル1枚腰に巻いただけだった。
「あぁ、そうだったな……」