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第56話 プレゼント1~お別れ~ー迅目線ー

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 初恋の相手のいろはに家を一部焼かれた。その関係で彼女の夏芽の家にしばらく居候になった。居候の期間はだいたい1月中旬頃から3月中旬頃までだ。夏芽の受験結果はこの前の月曜日に西馬高校に貼り出されただろう。夏芽の受験の手応えがダメだったことは聞いてる。
 
 夏芽は好きだ。大好きだ。愛してる。『好き』という感覚は初恋ぶりだった。ドラマやアニメなどフィクションの世界で『愛してる』というセリフがよくあるが、その意味が理解できていなかった。夏芽と出会って恋人になって『愛してる』という感情が理解できた。簡単に言えば『離れたくない』これだろう。
 
「きっと、オレの人生、今後夏芽(あの子)以上の恋人はできないだろうなぁ」

 夏芽のお父さんの忠さんはオレのアルバイト先の店主でもある。さらに、友だち感覚で関われるけど、ハッキリダメなことはダメと言ってくれるよき大人と言った感じだ。

「お給料ほとんど使ってないんだよなぁ」

 お給料は梶原家に少しだけ入れていた生活費と光熱費くらいの気持ち程度の金額しか使っていない。ざっと見積もって15万円くらいはあると思う。
 
 この前までは梶原家にいた。今は広瀬家にいる。よくよく考えれば夏芽に夜這いをしかけなかったな。

 ……当たり前だ。夏芽はまだ中学生だ。さらにこの前まで受験期だったのだ。かなりきわきわのガマンだったのを覚えている。
 
 ふと思った、忠さんの刑事ドラマのDVD返したっけ? それよりも夏芽の受験結果が気になる。

 いや、関係ないか。夏芽は大阪の高校には進学できない。……となれば有紀も転校か。有紀は誰とでも分け隔てなく仲良くしようとするから心配はなさそうだ。

「有紀はあれはあれで勘違い男子をこっぴどくふってるからなぁ。夏芽と有紀って似てないよなぁ。もしかして夏芽は忠さん似なのかねぇ? 有紀は有紀で居候してた間、ふざけてスキンシップ多かったよなぁ」
 
 問題があるとしたら向こうに梶原姉妹を受け入れる全日制の高校があるかだ。

 そうだ、家族の再縁だ。この間から忠さんがやたらソワソワしてると思えば、奥さんとのビデオ通話の時間まで、何を話そうか考えていたらしい。そして、奥さんに関東でやり直そうと言われたらしい。

「夏芽がお母さんと再会できるんだ。彼女の幸せは願わないとな。このまま自然消滅だとオレは一生引きずるよなぁ。やっぱり……お別れしたくない」

 夏芽はお母さんとの思い出がないとたまに話していた。だからなのかはわからないが、オレの母さんと仲良く話していた。なぜか、オレの母さんも夏芽とよく連絡を取っていた。

「……母さんとの思い出がないか」

 忠さんはオレだけに関東で奥さんとやり直すと伝えた時に、奥さんは『夏芽を産んですぐ関東に行った』と言っていた。夏芽の部屋に何度か入ったことがある。忠さん、奥さん、有紀の三人の写真に夏芽一人で映っていた写真を無理やり貼り付けた写真が飾られていた。

「今からでも夏芽とお母さんの関係が戻るのも悪いことではないよなぁ」

 ……そろそろのぼせそうだな。

 そうだ、頭の中も体ものぼせそうだ。風呂から出た。時間的には夜の8時だ。今思えば、晩ごはんを食べてない。

「カップ麺ならあるけど食べるー?」
『それ、わたしのセリフ!!』
 
 頭の中によぎったのは、居候してた頃の有紀の声だ。そこに夏芽の声がした気がした。

 あの家、すごい居心地よかったなぁ。

 現実は母さんのセリフだった。カップ麺の湯を入れてスマホのタイマーを3分セットして母さんに話しかけた。

「なぁ、母さん、家族のあるべき姿ってなんだと思う?」
「あるべき姿かぁ。そうねぇ、お母さんもお父さんと出会う前までは家族ケンカなく女性最強家族がいいと思ってたのよ。実際、家族仲良くなんて無理だし、子どもはいつか巣立ちをする。そう考えると迅をここまで育てたお母さんもわからないわ」

 今までの母さんなら『どうかしたの?』と聞いてきていた。なにかあったのを察してそれは聞かずに言葉を続けた。

「大丈夫よ、わからないことがあるから人生は楽しいのよ。勉強だってそうだもの。解答がわからないからどうしてだろうって考えるから楽しいのよ。もう後10年もしないうちに迅も仕事を始める。そうなの、仕事だってそうなのよ、この仕事に対して最適解はこれだって思って動いてても、途中で別の最適解案が出てくる。だから、そういう部分を楽しいと思うようにしてるの。人生ずっと勉強とはよく言ったものね。さ、迅、早く食べないと麺伸びるわよ」

 母さんの話を深く考えていたら、タイマーが鳴り終えてからカウントアップをしていた。だいたい2分くらい経っていた。

 夏芽に会いたい。でも、今じゃない。

 そうだ、今まで『そばにいる』ことが最高のプレゼントと思って1度も物を渡していない。お別れするにしても、最後に彼氏らしいことをしたい。


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 初恋の相手のいろはに家を一部焼かれた。その関係で彼女の夏芽の家にしばらく居候になった。居候の期間はだいたい1月中旬頃から3月中旬頃までだ。夏芽の受験結果はこの前の月曜日に西馬高校に貼り出されただろう。夏芽の受験の手応えがダメだったことは聞いてる。
 夏芽は好きだ。大好きだ。愛してる。『好き』という感覚は初恋ぶりだった。ドラマやアニメなどフィクションの世界で『愛してる』というセリフがよくあるが、その意味が理解できていなかった。夏芽と出会って恋人になって『愛してる』という感情が理解できた。簡単に言えば『離れたくない』これだろう。
「きっと、オレの人生、今後|夏芽《あの子》以上の恋人はできないだろうなぁ」
 夏芽のお父さんの忠さんはオレのアルバイト先の店主でもある。さらに、友だち感覚で関われるけど、ハッキリダメなことはダメと言ってくれるよき大人と言った感じだ。
「お給料ほとんど使ってないんだよなぁ」
 お給料は梶原家に少しだけ入れていた生活費と光熱費くらいの気持ち程度の金額しか使っていない。ざっと見積もって15万円くらいはあると思う。
 この前までは梶原家にいた。今は広瀬家にいる。よくよく考えれば夏芽に夜這いをしかけなかったな。
 ……当たり前だ。夏芽はまだ中学生だ。さらにこの前まで受験期だったのだ。かなりきわきわのガマンだったのを覚えている。
 ふと思った、忠さんの刑事ドラマのDVD返したっけ? それよりも夏芽の受験結果が気になる。
 いや、関係ないか。夏芽は大阪の高校には進学できない。……となれば有紀も転校か。有紀は誰とでも分け隔てなく仲良くしようとするから心配はなさそうだ。
「有紀はあれはあれで勘違い男子をこっぴどくふってるからなぁ。夏芽と有紀って似てないよなぁ。もしかして夏芽は忠さん似なのかねぇ? 有紀は有紀で居候してた間、ふざけてスキンシップ多かったよなぁ」
 問題があるとしたら向こうに梶原姉妹を受け入れる全日制の高校があるかだ。
 そうだ、家族の再縁だ。この間から忠さんがやたらソワソワしてると思えば、奥さんとのビデオ通話の時間まで、何を話そうか考えていたらしい。そして、奥さんに関東でやり直そうと言われたらしい。
「夏芽がお母さんと再会できるんだ。彼女の幸せは願わないとな。このまま自然消滅だとオレは一生引きずるよなぁ。やっぱり……お別れしたくない」
 夏芽はお母さんとの思い出がないとたまに話していた。だからなのかはわからないが、オレの母さんと仲良く話していた。なぜか、オレの母さんも夏芽とよく連絡を取っていた。
「……母さんとの思い出がないか」
 忠さんはオレだけに関東で奥さんとやり直すと伝えた時に、奥さんは『夏芽を産んですぐ関東に行った』と言っていた。夏芽の部屋に何度か入ったことがある。忠さん、奥さん、有紀の三人の写真に夏芽一人で映っていた写真を無理やり貼り付けた写真が飾られていた。
「今からでも夏芽とお母さんの関係が戻るのも悪いことではないよなぁ」
 ……そろそろのぼせそうだな。
 そうだ、頭の中も体ものぼせそうだ。風呂から出た。時間的には夜の8時だ。今思えば、晩ごはんを食べてない。
「カップ麺ならあるけど食べるー?」
『それ、わたしのセリフ!!』
 頭の中によぎったのは、居候してた頃の有紀の声だ。そこに夏芽の声がした気がした。
 あの家、すごい居心地よかったなぁ。
 現実は母さんのセリフだった。カップ麺の湯を入れてスマホのタイマーを3分セットして母さんに話しかけた。
「なぁ、母さん、家族のあるべき姿ってなんだと思う?」
「あるべき姿かぁ。そうねぇ、お母さんもお父さんと出会う前までは家族ケンカなく女性最強家族がいいと思ってたのよ。実際、家族仲良くなんて無理だし、子どもはいつか巣立ちをする。そう考えると迅をここまで育てたお母さんもわからないわ」
 今までの母さんなら『どうかしたの?』と聞いてきていた。なにかあったのを察してそれは聞かずに言葉を続けた。
「大丈夫よ、わからないことがあるから人生は楽しいのよ。勉強だってそうだもの。解答がわからないからどうしてだろうって考えるから楽しいのよ。もう後10年もしないうちに迅も仕事を始める。そうなの、仕事だってそうなのよ、この仕事に対して最適解はこれだって思って動いてても、途中で別の最適解案が出てくる。だから、そういう部分を楽しいと思うようにしてるの。人生ずっと勉強とはよく言ったものね。さ、迅、早く食べないと麺伸びるわよ」
 母さんの話を深く考えていたら、タイマーが鳴り終えてからカウントアップをしていた。だいたい2分くらい経っていた。
 夏芽に会いたい。でも、今じゃない。
 そうだ、今まで『そばにいる』ことが最高のプレゼントと思って1度も物を渡していない。お別れするにしても、最後に彼氏らしいことをしたい。