表示設定
表示設定
目次 目次




第45話 迅の家へ6~ビデオ通話~

ー/ー



「夏芽ちゃん、ビデオ通話にしてくれない?」

 『はい』と言って画面をタップして、wireの画面をビデオ通話にした。

『そちらにそれ以上、お手を……』
「で、お父さんはなんで、自分はアイスの食べ過ぎの腹痛でお店休んで、迅くんに働いてもらおうとしてるの?」
『その……迅さんは常連客からも人気があるし、魚の扱いが上手いから任せられるかなぁと、そのいずれは店の4代目に……』
「4代目はさておき……」

 結局、迅くんはバイトのシフトに急遽入る約束をした。色々な報告や荷物の回収の為、夏美センパイの家にも寄った。既に梨絵は帰っていた。鮮魚のはなまるまで迅くんと一緒に歩いていた。その道中にホントは距離を置こうと思っていたことや、彩莉センパイと浮気していると疑っていたことを改めて話した。

『なんとなくは察していたよ。距離を置こうとしていたこととかも。でも、オレも離れたくないからさ』

 迅くんはどこかぎこちない笑顔で教えてくれた。

「でもさ、夏芽の志望校は西馬なんだよなー。高校でも学年は違うけど一緒の学校はないんだよなぁ」
「そうだよね。でも、でも、迅くんがわたしと宝賀で過ごしたいって言うなら……」
「それはダメ!! 夏芽の将来の希望が何かあって西馬に……多奈川さんと相談して西馬高校にしたんだから」
「ですよね……。落ちないように頑張ります」

 ピコンとwireが1件通知を知らせた。wireは便利なことに人やグループによって通知音やバイブレーションのタイプを変えられる。このタイプは滅多に鳴らない。クリスマス会の準備期間にはよく鳴ったけども。その人との前回のやり取りは、迅くんの得意料理と好きな味付けについてだった。そう、さっきまで一緒だった幸恵さんだ。

『夏芽ちゃん、ごめん、さっきの提案、夏芽ちゃんの家族が許すなら受け入れるわ』

とのことだ。

「わかりましたっと……」
「夏芽?」
「幸恵さんも広瀬先生も迅くんを『婿』に出すのに同意だって。結婚しよっか」

 ちょっとふざけて。でも、真剣に可愛く見せるために上目遣いで後ろで手を組んでプロポーズとも取れる言葉を発した。

「オレもさ、けっこう考えるんだよ。18歳とかだと明らかに早いけど、20代中盤になっても夏芽と恋人で、今よりも親密で濃い恋人関係だったらとかさ。その時は結婚しよう」
「ふふっ、迅くんのそういうバカが付くほどマジメなところが大好きです」

 この後、どちらからと言うこともなく、わたしは手を差し出し、それとほぼ同時に迅くんも手を出した。最初は手がぶつかって『ゴメン』とお互い謝った。

 ――手を繋ぐのも初めてでもないのになぁ

「ごめん、こういう時、オレが車道側歩くべきだったな」
「あぁ、別にそんなの気にしないのに。宝賀入ってから、何回か中等部の男の子と2人で遊んだ時もあったけど、みんな、車道側歩いてくれたけど……」
「……そっか」

 迅くんの様子がおかしい。なにかを隠している。

 しかし、場所はもう南商店街の入り口だ。この商店街に買いに来る常連客のおばちゃんや店主たちともわたしは当たり前だけど、迅くんも顔見知りだ。何人も常連客のおばちゃんたちが茶化してくる。それにはもうわたしは慣れっこだ。
 
 お店に着いた。

-よぅ、見せつけてくれるねぇ-

 宇川さんが鮮魚のはなまるの近くでうろうろしていた。だいたい常連客や商店街の店主たちがわたしと迅くんの関係を知っているのは、宇川さんとお父さん、後、迅くん自身の発言だ。宇川さんとお父さんはドストレートに『恋人』と言っていたけども、迅くんは接客中にわたしとの関係を聞かれ『ご想像にお任せします』と言ってることが多かった。

「宇川さん、お世話になりました!!」
「おう、広瀬!! お前はもう立派な男だ!! 夏芽ちゃんをしっかり大事にな。でもなぁ、忠が心配なんだよなぁ……」

 2人は仲良さげに話している。なにかわたしをめぐってこの2人にはあったみたいだ。そこはだいたい察しが付く。この前の偽の商店街の会議のことだろう。1通り話したようで少し沈黙が走った。迅くんがわたしも疑問に思っていることを聞いてくれた。

「それはそうと、宇川さん、どうして鮮魚のはなまるの前に? お肉屋は?」
「忠から広瀬が4代目として来るから、腹痛の忠の代わりに鍵を渡してくれってな、ガハハ」

 『フッ』と笑って迅くんが『4代目にはまだまだ知識不足ですけど、いつかなりたいなぁ』と答えた。

「まぁ、食品衛生責任者とかそういう資格いるから、ちゃんと勉強するんだな、ガハハ」

 その後、迅くんの接客を見てわたしは思った。魚を売ってるけど、さっき、宇川さんが言っていた『食品衛生責任者』という資格を持っていない迅くんが販売しても大丈夫なのだろうか……? 営業終了時間まで迅くんは働き、再び現れた宇川さんが鮮魚のはなまるの閉店作業を手伝ってくれた。

「ほい、馬刺し8人前!!」
「え?」

 わたしも迅くんも驚きだ。

「あぁ、いや、お代はもう忠から受け取ってる。まぁ、受け取り拒否は不可だ、ガハハ」


スタンプを贈って作者を応援しよう!



みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「夏芽ちゃん、ビデオ通話にしてくれない?」
 『はい』と言って画面をタップして、wireの画面をビデオ通話にした。
『そちらにそれ以上、お手を……』
「で、お父さんはなんで、自分はアイスの食べ過ぎの腹痛でお店休んで、迅くんに働いてもらおうとしてるの?」
『その……迅さんは常連客からも人気があるし、魚の扱いが上手いから任せられるかなぁと、そのいずれは店の4代目に……』
「4代目はさておき……」
 結局、迅くんはバイトのシフトに急遽入る約束をした。色々な報告や荷物の回収の為、夏美センパイの家にも寄った。既に梨絵は帰っていた。鮮魚のはなまるまで迅くんと一緒に歩いていた。その道中にホントは距離を置こうと思っていたことや、彩莉センパイと浮気していると疑っていたことを改めて話した。
『なんとなくは察していたよ。距離を置こうとしていたこととかも。でも、オレも離れたくないからさ』
 迅くんはどこかぎこちない笑顔で教えてくれた。
「でもさ、夏芽の志望校は西馬なんだよなー。高校でも学年は違うけど一緒の学校はないんだよなぁ」
「そうだよね。でも、でも、迅くんがわたしと宝賀で過ごしたいって言うなら……」
「それはダメ!! 夏芽の将来の希望が何かあって西馬に……多奈川さんと相談して西馬高校にしたんだから」
「ですよね……。落ちないように頑張ります」
 ピコンとwireが1件通知を知らせた。wireは便利なことに人やグループによって通知音やバイブレーションのタイプを変えられる。このタイプは滅多に鳴らない。クリスマス会の準備期間にはよく鳴ったけども。その人との前回のやり取りは、迅くんの得意料理と好きな味付けについてだった。そう、さっきまで一緒だった幸恵さんだ。
『夏芽ちゃん、ごめん、さっきの提案、夏芽ちゃんの家族が許すなら受け入れるわ』
とのことだ。
「わかりましたっと……」
「夏芽?」
「幸恵さんも広瀬先生も迅くんを『婿』に出すのに同意だって。結婚しよっか」
 ちょっとふざけて。でも、真剣に可愛く見せるために上目遣いで後ろで手を組んでプロポーズとも取れる言葉を発した。
「オレもさ、けっこう考えるんだよ。18歳とかだと明らかに早いけど、20代中盤になっても夏芽と恋人で、今よりも親密で濃い恋人関係だったらとかさ。その時は結婚しよう」
「ふふっ、迅くんのそういうバカが付くほどマジメなところが大好きです」
 この後、どちらからと言うこともなく、わたしは手を差し出し、それとほぼ同時に迅くんも手を出した。最初は手がぶつかって『ゴメン』とお互い謝った。
 ――手を繋ぐのも初めてでもないのになぁ
「ごめん、こういう時、オレが車道側歩くべきだったな」
「あぁ、別にそんなの気にしないのに。宝賀入ってから、何回か中等部の男の子と2人で遊んだ時もあったけど、みんな、車道側歩いてくれたけど……」
「……そっか」
 迅くんの様子がおかしい。なにかを隠している。
 しかし、場所はもう南商店街の入り口だ。この商店街に買いに来る常連客のおばちゃんや店主たちともわたしは当たり前だけど、迅くんも顔見知りだ。何人も常連客のおばちゃんたちが茶化してくる。それにはもうわたしは慣れっこだ。
 お店に着いた。
-よぅ、見せつけてくれるねぇ-
 宇川さんが鮮魚のはなまるの近くでうろうろしていた。だいたい常連客や商店街の店主たちがわたしと迅くんの関係を知っているのは、宇川さんとお父さん、後、迅くん自身の発言だ。宇川さんとお父さんはドストレートに『恋人』と言っていたけども、迅くんは接客中にわたしとの関係を聞かれ『ご想像にお任せします』と言ってることが多かった。
「宇川さん、お世話になりました!!」
「おう、広瀬!! お前はもう立派な男だ!! 夏芽ちゃんをしっかり大事にな。でもなぁ、忠が心配なんだよなぁ……」
 2人は仲良さげに話している。なにかわたしをめぐってこの2人にはあったみたいだ。そこはだいたい察しが付く。この前の偽の商店街の会議のことだろう。1通り話したようで少し沈黙が走った。迅くんがわたしも疑問に思っていることを聞いてくれた。
「それはそうと、宇川さん、どうして鮮魚のはなまるの前に? お肉屋は?」
「忠から広瀬が4代目として来るから、腹痛の忠の代わりに鍵を渡してくれってな、ガハハ」
 『フッ』と笑って迅くんが『4代目にはまだまだ知識不足ですけど、いつかなりたいなぁ』と答えた。
「まぁ、食品衛生責任者とかそういう資格いるから、ちゃんと勉強するんだな、ガハハ」
 その後、迅くんの接客を見てわたしは思った。魚を売ってるけど、さっき、宇川さんが言っていた『食品衛生責任者』という資格を持っていない迅くんが販売しても大丈夫なのだろうか……? 営業終了時間まで迅くんは働き、再び現れた宇川さんが鮮魚のはなまるの閉店作業を手伝ってくれた。
「ほい、馬刺し8人前!!」
「え?」
 わたしも迅くんも驚きだ。
「あぁ、いや、お代はもう忠から受け取ってる。まぁ、受け取り拒否は不可だ、ガハハ」