第44話 迅の家へ5~両家の挨拶~
ー/ー 鮮魚のはなまるの店主、つまり、お父さんから電話だった。
「ちょっと今、え? なに? 迅くんに用事?」
お父さんが狂ったように『息子を呼べ』と言っていた。いや、まぁ、普段から頭のネジは狂ってるけど……。そもそも、今日はちゃんと『梨絵とセンパイと勉強会してくる』と伝えたはずだ。
「迅くん……」
「忠さんなんて?」
「迅くんに用事みたい」
『オレに? もしかして、今日、バイトの日だっけ?』と迅くんも不安そうだ。慌ててスマホを見ている。ちらっと見たら迅くんのスマホはカレンダーの画面だ。確かに鮮魚のはなまるのバイトの日ではないみたいだ。『もしかして、ドラマのDVDの返す約束……?』などと迅くんはいろいろ口にしている。
『むすこーーーーーーーーーー』
お父さんが電話口越しに叫んでいる。『むすこーーーーーーーーーー』と聞いて、幸恵さんも広瀬先生も笑っている。広瀬先生に至ってはポンッと迅くんの肩を叩き、『お、お前……』と言っている。お父さんと迅くんはアルバイトの日は業務のやりとりはwireであったり電話でしているようだ。わたしが距離を置こうとしていた時期にも、お父さんはわたしの事情を知らないから『息子はよくやっている、夏芽、逃がすなよ。おでが引退したら4代目にする』と言っていた。
迅くんにスマホを渡した。ただし、会話が聞こえるようにスピーカーにするという条件を出した。
「はい、迅です」
『すまん、今日の夕方からバイト入れるか……、昼飯の宇川のとこの馬刺し弁当に入ってたポテトサラダにあたっちまった。いや、宇川のとこの馬刺しは新鮮そのものだ、バイトの帰りに息子の家族分手配したから!! それに腹痛のせいで朝から店開けられてないんだ』
「でも、今……」
「お父さんがあたったのはお弁当のポテトサラダじゃなくて、昨日、お姉ちゃんが買いだめしてた棒アイスを2箱も一気に食べたからでしょう? 朝からずっとトイレ入ってたし。それに迅くんは今……」
『夏芽ぇ!?』
「いや、行っておいで」
「そうね、ここにいるよりかは気が紛れそうね」
『だ……れ……?』
ここにいるみんなでお父さんの反応に笑った。それでもスピーカーからは壊れたロボットのように『だ……れ……? おで、こわい』と繰り返しお父さんが言っていた。
「失礼しました。夏芽さんのクラスの副担任代理で、迅の実の父親の広瀬 修司です。挨拶が遅れて申し訳ない」
『むす……こ……の? 実のお父さん? 夏芽の副担任代理……?』
その後、水洗トイレの水を流す音が聞こえた。さらに、お父さんの『ふぅ』という一息も聞こえた。
「デリカシーなし!! 娘とその彼氏に用事の電話をトイレからかけるな!!」
「忠さん、夏芽に同感です、ねぇ、母さん」
「幸恵さんもそう思いますよね?」
「そうね、びっくりしたわ」
『す、すみません、いやぁ、夏芽の言う通り、娘……、あぁ、夏芽じゃなくて姉の方のアイスがおいしくて、つい2箱以上食べてしまって、さっきまで姉の方から説教くらってまして、何度、漏らすかと思ったか……、いやはや、申し訳ない。いや、何か事情があるみたいなので、今日はお店休みます。ご迷惑をおかけしました』
「いえ、そうね、そこまで信頼されているなら……」
「そうだな、少し早いが婿に出そう」
『あの、結婚してくれたらお……私としても店としても嬉しいですが……。みなさん、ご存じのように夏芽はまだ中学生で……』
「店としても?」
『むすこーーーーーーーーーー!! お前だけがおでの癒しだー、助けてくれー』
「あの忠さん、これ、スピーカーなんで、父さんも母さんも、夏芽の電話なんで当たり前ですけど、夏芽も聞いてますし、なんなら、火事騒動の後もあってご近所さんも聞いてますよ」
『え……、おで、もう婿に行けない……、ーーなにが婿だー!!』
お姉ちゃんのすごい怒っている声がした。お父さんの婿……かぁ。お母さん、どうしてるんだろうなぁ。小さな頃からお父さんからお母さんは東京でビジネスをしていると聞いている。
お母さん、夏芽はこんなに大きくなりましたよ。
『有紀、いたい、いたい、そこまで怒らなくてもいいんじゃないのー。たかだか同じようなアイス2箱食べただけだー』
ちょっと感傷に浸っているとお父さんとお姉ちゃんのケンカの声で現実に引き戻された。
『ーーもういい、この通話をビデオ通話にする!!』
向こうだけが強制的にビデオ通話に切り替えられた。スマホの小さな画面にみんな注目してる。お父さんは正座していた。なお、所在地はトイレの前。腹痛は引き続き健在のようだ。
『はじめまして、広瀬家のみなさん。む……迅さんの彼女、夏芽の父親で梶原 忠です』
急に場の空気が壊れた。
「お父さん?」
『迅さんのアルバイト先の鮮魚のはなまるの3代目店主でもあります』
「忠さん……」
『これ以上自己紹介なんてないんだ! 有紀、もういいだろ、電話を返してくれ』
確かにお父さんにそれ以上の自己紹介はない。幸恵さんも対等に話したいのだろう。
「夏芽ちゃん、ビデオ通話にしてくれない?」
『はい』と言って画面をタップして、wireの画面をビデオ通話にした。
「ちょっと今、え? なに? 迅くんに用事?」
お父さんが狂ったように『息子を呼べ』と言っていた。いや、まぁ、普段から頭のネジは狂ってるけど……。そもそも、今日はちゃんと『梨絵とセンパイと勉強会してくる』と伝えたはずだ。
「迅くん……」
「忠さんなんて?」
「迅くんに用事みたい」
『オレに? もしかして、今日、バイトの日だっけ?』と迅くんも不安そうだ。慌ててスマホを見ている。ちらっと見たら迅くんのスマホはカレンダーの画面だ。確かに鮮魚のはなまるのバイトの日ではないみたいだ。『もしかして、ドラマのDVDの返す約束……?』などと迅くんはいろいろ口にしている。
『むすこーーーーーーーーーー』
お父さんが電話口越しに叫んでいる。『むすこーーーーーーーーーー』と聞いて、幸恵さんも広瀬先生も笑っている。広瀬先生に至ってはポンッと迅くんの肩を叩き、『お、お前……』と言っている。お父さんと迅くんはアルバイトの日は業務のやりとりはwireであったり電話でしているようだ。わたしが距離を置こうとしていた時期にも、お父さんはわたしの事情を知らないから『息子はよくやっている、夏芽、逃がすなよ。おでが引退したら4代目にする』と言っていた。
迅くんにスマホを渡した。ただし、会話が聞こえるようにスピーカーにするという条件を出した。
「はい、迅です」
『すまん、今日の夕方からバイト入れるか……、昼飯の宇川のとこの馬刺し弁当に入ってたポテトサラダにあたっちまった。いや、宇川のとこの馬刺しは新鮮そのものだ、バイトの帰りに息子の家族分手配したから!! それに腹痛のせいで朝から店開けられてないんだ』
「でも、今……」
「お父さんがあたったのはお弁当のポテトサラダじゃなくて、昨日、お姉ちゃんが買いだめしてた棒アイスを2箱も一気に食べたからでしょう? 朝からずっとトイレ入ってたし。それに迅くんは今……」
『夏芽ぇ!?』
「いや、行っておいで」
「そうね、ここにいるよりかは気が紛れそうね」
『だ……れ……?』
ここにいるみんなでお父さんの反応に笑った。それでもスピーカーからは壊れたロボットのように『だ……れ……? おで、こわい』と繰り返しお父さんが言っていた。
「失礼しました。夏芽さんのクラスの副担任代理で、迅の実の父親の広瀬 修司です。挨拶が遅れて申し訳ない」
『むす……こ……の? 実のお父さん? 夏芽の副担任代理……?』
その後、水洗トイレの水を流す音が聞こえた。さらに、お父さんの『ふぅ』という一息も聞こえた。
「デリカシーなし!! 娘とその彼氏に用事の電話をトイレからかけるな!!」
「忠さん、夏芽に同感です、ねぇ、母さん」
「幸恵さんもそう思いますよね?」
「そうね、びっくりしたわ」
『す、すみません、いやぁ、夏芽の言う通り、娘……、あぁ、夏芽じゃなくて姉の方のアイスがおいしくて、つい2箱以上食べてしまって、さっきまで姉の方から説教くらってまして、何度、漏らすかと思ったか……、いやはや、申し訳ない。いや、何か事情があるみたいなので、今日はお店休みます。ご迷惑をおかけしました』
「いえ、そうね、そこまで信頼されているなら……」
「そうだな、少し早いが婿に出そう」
『あの、結婚してくれたらお……私としても店としても嬉しいですが……。みなさん、ご存じのように夏芽はまだ中学生で……』
「店としても?」
『むすこーーーーーーーーーー!! お前だけがおでの癒しだー、助けてくれー』
「あの忠さん、これ、スピーカーなんで、父さんも母さんも、夏芽の電話なんで当たり前ですけど、夏芽も聞いてますし、なんなら、火事騒動の後もあってご近所さんも聞いてますよ」
『え……、おで、もう婿に行けない……、ーーなにが婿だー!!』
お姉ちゃんのすごい怒っている声がした。お父さんの婿……かぁ。お母さん、どうしてるんだろうなぁ。小さな頃からお父さんからお母さんは東京でビジネスをしていると聞いている。
お母さん、夏芽はこんなに大きくなりましたよ。
『有紀、いたい、いたい、そこまで怒らなくてもいいんじゃないのー。たかだか同じようなアイス2箱食べただけだー』
ちょっと感傷に浸っているとお父さんとお姉ちゃんのケンカの声で現実に引き戻された。
『ーーもういい、この通話をビデオ通話にする!!』
向こうだけが強制的にビデオ通話に切り替えられた。スマホの小さな画面にみんな注目してる。お父さんは正座していた。なお、所在地はトイレの前。腹痛は引き続き健在のようだ。
『はじめまして、広瀬家のみなさん。む……迅さんの彼女、夏芽の父親で梶原 忠です』
急に場の空気が壊れた。
「お父さん?」
『迅さんのアルバイト先の鮮魚のはなまるの3代目店主でもあります』
「忠さん……」
『これ以上自己紹介なんてないんだ! 有紀、もういいだろ、電話を返してくれ』
確かにお父さんにそれ以上の自己紹介はない。幸恵さんも対等に話したいのだろう。
「夏芽ちゃん、ビデオ通話にしてくれない?」
『はい』と言って画面をタップして、wireの画面をビデオ通話にした。
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