12
ー/ー
「みんなに言っておくよ。姫野は元気そうだったって」
「い、言わなくていいよ、別に」
「気になってるヤツ、多いと思うけど。本当は姫野と仲よくなりたいのに、どうしたらいいか分からなかったんだよ」
「え……そうなの?」
みんな、私と関わりたくないんじゃないかと思っていた。だって、話しかけても気まずそうな返事ばかりされるから。
でも、先に壁をつくっていたのは私のほうだったのかもしれない。自分からは輪に入っていけずに、話しかけられても上手く返せなくて。人付き合いが苦手だからどうしても構えてしまって、会話しづらい空気を自分で作り出していたんだと思う。
「いまなら仲よく話せるんじゃないかって、みんな思っているかもよ」
「……そっか。でもやっぱり、同窓会はいいや。それより彼と一緒にいたいし。いま、大事な時期だから。みんなに、よろしく言っておいてね」
「姫野の彼氏って、なにしてる人?」
「藝大の学生」
「え、すげぇ」
「日本画を描いているの。一緒に帰省したのも、卒業制作の取材を兼ねていて。できるだけサポートしてあげたいから、私だけ昔を懐かしむわけにいかないもん」
「ほら、やっぱりかっこいいよ、姫野は」
三浦くんが、また微笑む。
「ありがとう」
社交辞令でもなんでもない。自分の中から素直にこの言葉が出てきて、なんだか嬉しかった。
私も少しは大人になれた気がする……なんて。また桔平くんに笑われちゃうかな。
「あれ、出かけていたのか。おはよう」
犬の散歩途中だった三浦くんと別れて帰宅すると、お父さんと智美さんはもう起きていた。ふたりとも、お休みでも早いなぁ。まだ8時前なのに。
「おはよう、お父さん。ちょっと、お散歩に行っていたの」
「和室が閉まったままだから、てっきり寝ていると思っていたけど。桔平君が熟睡中なのか」
「うん。あのまま、ずっと寝ているよ」
ちょっと嘘つきました。1回目を覚ましています。
「おはよう、愛茉ちゃん!」
智美さんがキッチンから顔を出した。朝から明るい笑顔だなぁ。
「智美さん、おはよう!」
「トースト食べる?」
「食べる!」
「コーヒーは?」
「飲む!」
「ちょうど淹れるところだったから、ちょっと待っててね~。牛乳たっぷりにするから」
智美さんには、ついつい甘えてしまう。だって優しいんだもん。
それに「お母さん」がいるのって、やっぱり嬉しい。もちろん生みの親はたったひとりだけど、智美さんのことは2人目のお母さんだと思っている。だからいっぱい甘えたいんだ。
「おはようございます……」
ダイニングテーブルで朝食を待っていると、和室の襖がゆっくり開いて、桔平くんが顔を出した。やっぱり、目はほとんど開いていない。
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。
「みんなに言っておくよ。姫野は元気そうだったって」
「い、言わなくていいよ、別に」
「気になってるヤツ、多いと思うけど。本当は姫野と仲よくなりたいのに、どうしたらいいか分からなかったんだよ」
「え……そうなの?」
みんな、私と関わりたくないんじゃないかと思っていた。だって、話しかけても気まずそうな返事ばかりされるから。
でも、先に壁をつくっていたのは私のほうだったのかもしれない。自分からは輪に入っていけずに、話しかけられても上手く返せなくて。人付き合いが苦手だからどうしても構えてしまって、会話しづらい空気を自分で作り出していたんだと思う。
「いまなら仲よく話せるんじゃないかって、みんな思っているかもよ」
「……そっか。でもやっぱり、同窓会はいいや。それより彼と一緒にいたいし。いま、大事な時期だから。みんなに、よろしく言っておいてね」
「姫野の彼氏って、なにしてる人?」
「藝大の学生」
「え、すげぇ」
「日本画を描いているの。一緒に帰省したのも、卒業制作の取材を兼ねていて。できるだけサポートしてあげたいから、私だけ昔を懐かしむわけにいかないもん」
「ほら、やっぱりかっこいいよ、姫野は」
三浦くんが、また微笑む。
「ありがとう」
社交辞令でもなんでもない。自分の中から素直にこの言葉が出てきて、なんだか嬉しかった。
私も少しは大人になれた気がする……なんて。また桔平くんに笑われちゃうかな。
「あれ、出かけていたのか。おはよう」
犬の散歩途中だった三浦くんと別れて帰宅すると、お父さんと智美さんはもう起きていた。ふたりとも、お休みでも早いなぁ。まだ8時前なのに。
「おはよう、お父さん。ちょっと、お散歩に行っていたの」
「和室が閉まったままだから、てっきり寝ていると思っていたけど。桔平君が熟睡中なのか」
「うん。あのまま、ずっと寝ているよ」
ちょっと嘘つきました。1回目を覚ましています。
「おはよう、愛茉ちゃん!」
智美さんがキッチンから顔を出した。朝から明るい笑顔だなぁ。
「智美さん、おはよう!」
「トースト食べる?」
「食べる!」
「コーヒーは?」
「飲む!」
「ちょうど淹れるところだったから、ちょっと待っててね~。牛乳たっぷりにするから」
智美さんには、ついつい甘えてしまう。だって優しいんだもん。
それに「お母さん」がいるのって、やっぱり嬉しい。もちろん生みの親はたったひとりだけど、智美さんのことは2人目のお母さんだと思っている。だからいっぱい甘えたいんだ。
「おはようございます……」
ダイニングテーブルで朝食を待っていると、和室の襖がゆっくり開いて、桔平くんが顔を出した。やっぱり、目はほとんど開いていない。