【1】①
ー/ー
省吾だ。
昼休みに入ってすぐの廊下を歩いていて、幼馴染みが部活の先輩らしき人たちといるのが目に留まった。
邪魔しないように知らんふりしてやったのに、気遣いの通じない男は向こうから声を掛けて来る。
「茉季! あ、購買行くのか!?」
「……そうよ、今日はお弁当作ってないの」
流石にこれを無視はできないでしょ。あんた、先輩といるときはもっとそっちに集中しなさいよ!
廊下までは暖房も入ってないし、寒いからさっさとパン買って暖かい教室戻りたいのもあったわ。
「あ、小日向先輩、壬生先輩。こいつ俺の幼馴染みなんです。石塚 茉季って──」
礼儀を弁えてるのかそうじゃないのかわからない彼の紹介に、二人の先輩は如才なくあたしに挨拶してくれた。
「野島の幼馴染み? なんかさ、『幼馴染み』っていいよな。アニメとか漫画みたいで」
「小日向先輩、『幼馴染み』いないんすか!?」
「うーん、単なる幼稚園とか小学校の同級生はもちろんいるけど。たとえば『家が近くて今も付き合いが続いてる』相手は、僕はいないかな」
だから! 先輩は適当にあんたに合わせてくれてるだけだって。ホント鈍いなあ。
省吾に腹立って、なるべくじろじろ見ないように俯き加減だった顔をつい上げてしまった。
そこで初めてしっかり視点を合わせた「小日向先輩」は、顔立ちは整ってると思うけどものすごいイケメンとか美形って言うんじゃない、たぶん。
でもあたしには、その穏やかで優しそうな笑顔が輝いて見えたんだ。
「性格の良さが滲み出てる」ってこういうのを指すんじゃないのかな。超イケメンでも、中身が出て意地悪そうだったら魅力感じない気がする。
「あ、──」
「? 茉季、どうかした?」
不自然に固まったあたしに、省吾が心配そうに訊いて来る。
「ううん。ごめん、あたしもう行くね。パン売り切れたら困るから!」
どうにか笑顔を作り、あたしは省吾に断ると先輩二人に頭を下げて速足で購買に向かった。
もう十二月。
雪はそれほど降らないけど、だからって寒くないわけじゃないんだよね。まあ常夏とか南半球でもないのに、十二月が暖かかったらその方がおかしいか。
今まで特に好きな人なんていなかった。
あたしにはそういうごく普通の心って備わってないんじゃないのとか思ってたくらいなのに。
これってなんだろう。
一目惚れ? そんなのくだらないとしか感じてなかったはずが、もうあたしの頭はあの先輩のことでいっぱいだった。
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|省吾《しょうご》だ。
昼休みに入ってすぐの廊下を歩いていて、幼馴染みが部活の先輩らしき人たちといるのが目に留まった。
邪魔しないように知らんふりしてやったのに、気遣いの通じない男は向こうから声を掛けて来る。
「|茉季《まき》! あ、購買行くのか!?」
「……そうよ、今日はお弁当作ってないの」
流石にこれを無視はできないでしょ。あんた、先輩といるときはもっとそっちに集中しなさいよ!
廊下までは暖房も入ってないし、寒いからさっさとパン買って暖かい教室戻りたいのもあったわ。
「あ、|小日向《こひなた》先輩、|壬生《みぶ》先輩。こいつ俺の幼馴染みなんです。|石塚《いしづか》 茉季って──」
礼儀を弁えてるのかそうじゃないのかわからない彼の紹介に、二人の先輩は如才なくあたしに挨拶してくれた。
「|野島《のじま》の幼馴染み? なんかさ、『幼馴染み』っていいよな。アニメとか漫画みたいで」
「小日向先輩、『幼馴染み』いないんすか!?」
「うーん、単なる幼稚園とか小学校の同級生はもちろんいるけど。たとえば『家が近くて今も付き合いが続いてる』相手は、僕はいないかな」
だから! 先輩は適当にあんたに合わせてくれてるだけだって。ホント鈍いなあ。
省吾に腹立って、なるべくじろじろ見ないように俯き加減だった顔をつい上げてしまった。
そこで初めてしっかり視点を合わせた「小日向先輩」は、顔立ちは整ってると思うけどものすごいイケメンとか美形って言うんじゃない、たぶん。
でもあたしには、その穏やかで優しそうな笑顔が輝いて見えたんだ。
「性格の良さが滲み出てる」ってこういうのを指すんじゃないのかな。超イケメンでも、中身が出て意地悪そうだったら魅力感じない気がする。
「あ、──」
「? 茉季、どうかした?」
不自然に固まったあたしに、省吾が心配そうに訊いて来る。
「ううん。ごめん、あたしもう行くね。パン売り切れたら困るから!」
どうにか笑顔を作り、あたしは省吾に断ると先輩二人に頭を下げて速足で購買に向かった。
もう十二月。
雪はそれほど降らないけど、だからって寒くないわけじゃないんだよね。まあ常夏とか南半球でもないのに、十二月が暖かかったらその方がおかしいか。
今まで特に好きな人なんていなかった。
あたしにはそういうごく普通の心って備わってないんじゃないのとか思ってたくらいなのに。
これってなんだろう。
一目惚れ? そんなのくだらないとしか感じてなかったはずが、もうあたしの頭はあの先輩のことでいっぱいだった。