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 和室の仏壇には、お母さんの写真とピンクの小物入れが置いてあった。これも、いままではなかったもの。

 実はお母さんの妹……つまり私の叔母さんが、私のためにと形見を持ってきてくれていた。
 それが、この小物入れ。自分の物をほとんど処分していたのに、これだけは捨てていなかったんだって。

 中に入っているのは、私が子供のころにプレゼントした手紙や折り紙の花。ずっと大切に取っていてくれたと聞いたときは、涙が止まらなかった。

 仏壇の前に座って、お母さんに手を合わせる。桔平くんも黙って横に来て、静かに手を合わせてくれた。

 お母さんの写真と形見の小物入れを置くのは、智美さんの提案だったみたい。
 子供にとっての母親は、世界でたったひとり。その人をいなかったことにしないで欲しいって。智美さんは本当にあたたかくて優しくて、なんて素敵な人なんだろうと改めて思った。

「ちょっと涙が出てきちゃった」

 柔らかく微笑むお母さんの顔を見ていたら、どうしても堪えられなくなった。桔平くんが私の頭をポンポンと叩いて、肩を抱く。
 お父さんや智美さんがいても、桔平くんはいつも通り。こうやって私のことを一番に考えて、慰めてくれる。

 桔平くんに肩を抱かれたまま、仏壇の前でお母さんの写真をしばらく見つめていた。

 それから、お父さんと智美さんは車で買い物へ出かけた。
 今日は日曜でお休みだけど、ふたりとも明日はお仕事。そしてお盆明けの17日から1週間、オーストラリアへ行く予定になっている。

 ずっと仕事が忙しくてのんびりする暇もなかなかなかっただろうし、ゆっくり楽しんできてほしいな。

 お父さんたちが留守の間は、この家で桔平くんとふたりきり。なんだか不思議な感じがする。
 桔平くんは、小樽の景色をいろいろと見ておきたいんだって。ちなみに今回は行きと帰りの日時以外、完全ノープランです。

「やっぱり、東京より涼しくて過ごしやすいな」

 私の部屋で、桔平くんが窓の外を眺めながら呟いた。

 うちは住宅密集地から1区画だけ離れていて、近所の目はあまり気にならない。
 東京の生活にも慣れてはきたけれど、やっぱり実家はゆったりした気持ちになれる。喧騒とは無縁で、とっても静かだから。

「正月は雪景色ばっかりだったけど、こんなに緑が見えるんだな」
「うん、気持ちいいよね。車がないと不便だけど」
「愛茉は、この景色を見て育ったのか」

 もしかすると桔平くんは、私が上京するまで見てきた景色を、自分の目で見たいのかもしれない。自惚れかもしれないけれど、なんとなくそう思った。


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 和室の仏壇には、お母さんの写真とピンクの小物入れが置いてあった。これも、いままではなかったもの。
 実はお母さんの妹……つまり私の叔母さんが、私のためにと形見を持ってきてくれていた。
 それが、この小物入れ。自分の物をほとんど処分していたのに、これだけは捨てていなかったんだって。
 中に入っているのは、私が子供のころにプレゼントした手紙や折り紙の花。ずっと大切に取っていてくれたと聞いたときは、涙が止まらなかった。
 仏壇の前に座って、お母さんに手を合わせる。桔平くんも黙って横に来て、静かに手を合わせてくれた。
 お母さんの写真と形見の小物入れを置くのは、智美さんの提案だったみたい。
 子供にとっての母親は、世界でたったひとり。その人をいなかったことにしないで欲しいって。智美さんは本当にあたたかくて優しくて、なんて素敵な人なんだろうと改めて思った。
「ちょっと涙が出てきちゃった」
 柔らかく微笑むお母さんの顔を見ていたら、どうしても堪えられなくなった。桔平くんが私の頭をポンポンと叩いて、肩を抱く。
 お父さんや智美さんがいても、桔平くんはいつも通り。こうやって私のことを一番に考えて、慰めてくれる。
 桔平くんに肩を抱かれたまま、仏壇の前でお母さんの写真をしばらく見つめていた。
 それから、お父さんと智美さんは車で買い物へ出かけた。
 今日は日曜でお休みだけど、ふたりとも明日はお仕事。そしてお盆明けの17日から1週間、オーストラリアへ行く予定になっている。
 ずっと仕事が忙しくてのんびりする暇もなかなかなかっただろうし、ゆっくり楽しんできてほしいな。
 お父さんたちが留守の間は、この家で桔平くんとふたりきり。なんだか不思議な感じがする。
 桔平くんは、小樽の景色をいろいろと見ておきたいんだって。ちなみに今回は行きと帰りの日時以外、完全ノープランです。
「やっぱり、東京より涼しくて過ごしやすいな」
 私の部屋で、桔平くんが窓の外を眺めながら呟いた。
 うちは住宅密集地から1区画だけ離れていて、近所の目はあまり気にならない。
 東京の生活にも慣れてはきたけれど、やっぱり実家はゆったりした気持ちになれる。喧騒とは無縁で、とっても静かだから。
「正月は雪景色ばっかりだったけど、こんなに緑が見えるんだな」
「うん、気持ちいいよね。車がないと不便だけど」
「愛茉は、この景色を見て育ったのか」
 もしかすると桔平くんは、私が上京するまで見てきた景色を、自分の目で見たいのかもしれない。自惚れかもしれないけれど、なんとなくそう思った。