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未散(みちる)、そんな寒い? 確かにもう十二月だけど、今日わりと暖かくないか? なんかすげー手が冷たい」
 初めてのデート。
 並んで歩いてるわたしとさり気なく手を繋いだ(とおる)が、驚いた声を上げる。

「わたし、昔っから冷え性だから。結構酷い方みたい。特別寒くなくても手や足の先はいつも冷えてるのよ。冬じゃなくてもね」
 言われ慣れてる台詞に、わたしはさらっと返した。

「冷え性ってこんな冷たくなるんだ! ここまでだと思ってなかった」
 そうよね、男の人で冷え性って聞いたことないし。女だってみんながみんなってわけじゃないから。

「でもね、『手が冷たい人は心が(あった)かい』とか言うじゃない?」
 冗談めかしたわたしの言葉に、あなたは優しく笑ってくれるの。

「確かに未散はココロ温かいよな。一途で可愛い。付き合えてホントよかったよ。……今は足は無理だけど、手は繋いでたらちょっとはマシだろ? 俺がいるときは温めてやるからさ」
 あなたと二人でいるだけで、心も身体も温かい。──わたしの大切な、あなた。

「ねぇ、あの女の人。亨のこと見てたわ」
 ちょうど十回目のデートね。今日はあなたの希望で映画に行くのよ。
 あなたとの予定は全部、スマホのスケジュールに記録してあるの。いつでも思い出せるように。会えない時も、あなたと二人きりの気分に浸れるように。

「ん? どの人? 未散の気のせいだろ。俺、別にイケメンでもないしさ」
 平気な顔のあなた。
 だってこんなに素敵なんだから、みんな気にして当然なのに。

「でも、確かに──」
「お前は考え過ぎだよ。心配しなくたって、俺なんかモテるわけないって」
 そんな筈ないわ。……ないのよ。
 誰もがあなたを気にしてる。擦れ違いざまに、遠くからも、いろんな女が視線を送ってくる。
 ほら、あの女もよ!

 人の恋人を、物欲しそうにじろじろ見ないで!

「それよりさぁ、何食べたい? 映画の時間あるから今日は簡単なもんでいいよな?」
「いいわ、何でも。その辺のカフェでもいいじゃない」
 のんびりした亨の声に、わたしはあっさり答える。

「うーん、カフェ飯って正直物足りないんだよ。もうちょっと量あるもの選べるとこでもいいか?」
 少し申し訳なさそうなあなたの言葉。
 そんなこと気にしなくていいのよ。本当に優しいのね。

「ええ」
「未散って俺の『見た目より中身!』にフツーに付き合ってくれるよなぁ。女の子って嫌がりそうなのにさ。じゃあ次はお洒落なカフェ行こうな」
 食べるものなんて何だっていいの。あなたと一緒ならそれだけで。
 左腕にぎゅっと抱き着いたら、あなたが斜め上で笑ってる。私だけが映ってるその瞳。

 そうね。わたしはとても、とても幸せ。



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「|未散《みちる》、そんな寒い? 確かにもう十二月だけど、今日わりと暖かくないか? なんかすげー手が冷たい」
 初めてのデート。
 並んで歩いてるわたしとさり気なく手を繋いだ|亨《とおる》が、驚いた声を上げる。
「わたし、昔っから冷え性だから。結構酷い方みたい。特別寒くなくても手や足の先はいつも冷えてるのよ。冬じゃなくてもね」
 言われ慣れてる台詞に、わたしはさらっと返した。
「冷え性ってこんな冷たくなるんだ! ここまでだと思ってなかった」
 そうよね、男の人で冷え性って聞いたことないし。女だってみんながみんなってわけじゃないから。
「でもね、『手が冷たい人は心が|温《あった》かい』とか言うじゃない?」
 冗談めかしたわたしの言葉に、あなたは優しく笑ってくれるの。
「確かに未散はココロ温かいよな。一途で可愛い。付き合えてホントよかったよ。……今は足は無理だけど、手は繋いでたらちょっとはマシだろ? 俺がいるときは温めてやるからさ」
 あなたと二人でいるだけで、心も身体も温かい。──わたしの大切な、あなた。
「ねぇ、あの女の人。亨のこと見てたわ」
 ちょうど十回目のデートね。今日はあなたの希望で映画に行くのよ。
 あなたとの予定は全部、スマホのスケジュールに記録してあるの。いつでも思い出せるように。会えない時も、あなたと二人きりの気分に浸れるように。
「ん? どの人? 未散の気のせいだろ。俺、別にイケメンでもないしさ」
 平気な顔のあなた。
 だってこんなに素敵なんだから、みんな気にして当然なのに。
「でも、確かに──」
「お前は考え過ぎだよ。心配しなくたって、俺なんかモテるわけないって」
 そんな筈ないわ。……ないのよ。
 誰もがあなたを気にしてる。擦れ違いざまに、遠くからも、いろんな女が視線を送ってくる。
 ほら、あの女もよ!
 人の恋人を、物欲しそうにじろじろ見ないで!
「それよりさぁ、何食べたい? 映画の時間あるから今日は簡単なもんでいいよな?」
「いいわ、何でも。その辺のカフェでもいいじゃない」
 のんびりした亨の声に、わたしはあっさり答える。
「うーん、カフェ飯って正直物足りないんだよ。もうちょっと量あるもの選べるとこでもいいか?」
 少し申し訳なさそうなあなたの言葉。
 そんなこと気にしなくていいのよ。本当に優しいのね。
「ええ」
「未散って俺の『見た目より中身!』にフツーに付き合ってくれるよなぁ。女の子って嫌がりそうなのにさ。じゃあ次はお洒落なカフェ行こうな」
 食べるものなんて何だっていいの。あなたと一緒ならそれだけで。
 左腕にぎゅっと抱き着いたら、あなたが斜め上で笑ってる。私だけが映ってるその瞳。
 そうね。わたしはとても、とても幸せ。