10 アヤマチなのか?

ー/ー



 翌朝、ミチルはベッドの上で目を覚ました。

「あれ?」

 おかしいな、昨夜は床でジェイに抱き締められながら寝たはずなのに──

 え、まさか、夢?
 オレの願望が夢を見せただけ?
 恥ずい! それは恥ず過ぎる!


 
「ああ、起きたか」

「はぅあ!」

 起き抜けにジェイの顔を見て、ミチルは羞恥で悶えた。

 ごめん……ジェイ
 オレの妄想が貴方を汚してしまった……

「コーヒーだが、飲むか?」

「い、いただきます……」

 この世界にもコーヒーがあったのか、なんて考える余裕は今のミチルにはなかった。恥ずかしさでジェイの顔が見れず、かと言って熱いコーヒーをすぐには飲めず、ミチルは固まりながらカップとにらめっこしていた。


 
「君は、寝相が悪いのか?」

「へ?」

 ジェイは少し口ごもりながら言う。

「その……目が覚めたら、君が私の腕の中にいたので……」

「ふおぉおっ!」

 現実だった! ざまあみろ!
 だが、オレが寝込みを襲ったみたいになってる!

 ミチルは羞恥と動揺でしどろもどろになりながらも説明した。


 
「いや、違うよ? あの、眠れなくてね、ジェイはどうして熟睡できるのかなーって、つい顔を覗いたらね……?」

 あー、やばい
 結局寝込みを襲ったっぽくなってる!

「ちょっと覗いただけだよ!? 月明かりに照らされてかっこいいとか思っただけだよ!? そしたら、急にジェイがオレの腕を引っ張ったんだよ!」

「──私が?」

 ミチルはぶんぶんと勢いよく頷いた。

「君を寝床に引きずり込んだのか?」

 いやん! なんて卑猥な表現!
 鼻血が出ちゃう!

「……」

 ミチルは思わず赤面して黙ってしまった。昨夜のドキドキ同衾の感触を思い出してしまったのだ。

「それは──すまなかった」

 ジェイも頬を赤らめて頭を下げる。照れた様もイケていた。

「いえいえ、こちらこそ。顔を覗き込んでしまったので……」


 
 二人の間に気まずい雰囲気が流れている。
 先に口を開いたのはジェイだった。

「で、では朝食でも食べに行くか」

「あ、朝から外食するんですか?」

「そんないいものではない。ただの屋台だ。私は自炊できないからな」

 あー、だと思いました。ぽんこつですもんねえ。

 などとは言えないミチルは、不自然なほど元気よく返事をした。

「わかりました! 行きましょう! さあ、早く!」

「朝食を食べたら私はそのまま出勤するが、君はどうする?」


 
 しまった……
 なんとなく昨日の話の続きっぽい……

 ミチルは昨夜考えたことを、たどたどしくも懸命に伝えた。

「あの、仮に戻る方法を探すとしてもどう探せばいいかわからないし、この世界に来たのも何かの縁かもしれないし、少しここで色々経験してみたいんです」

「……」

 ジェイは黙って考え込んでしまった。
 その様子にミチルは不安になって更にまくしたてる。
 
「あ、でも、そしたらジェイに迷惑かけっぱなしになっちゃうし、でもオレ、行くとこないし……経験してみたいって言っても何したらいいかわかんないし……」

「……」

「ごめんなさい! やっぱり迷惑ですよね、すぐ帰ります!」

 自分勝手なことばかり言ってしまったとミチルは泣きそうになった。
 だが、ジェイは全てを包み込むような慈愛の笑みを浮かべて言った。

「私は構わない。確かにこれも何かの縁だろう。君がよければしばらく共にいよう」

「あ、ありがとう!」

 なんていい人なんだろう。
 ジェイに出会えたことを、ミチルは改めて感謝した。

「それで、今日はどうしたい?」

 そんなの決まってる。
 ジェイと一緒にいたい。

「ジェイのお仕事を見学したいな!」


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 翌朝、ミチルはベッドの上で目を覚ました。
「あれ?」
 おかしいな、昨夜は床でジェイに抱き締められながら寝たはずなのに──
 え、まさか、夢?
 オレの願望が夢を見せただけ?
 恥ずい! それは恥ず過ぎる!
「ああ、起きたか」
「はぅあ!」
 起き抜けにジェイの顔を見て、ミチルは羞恥で悶えた。
 ごめん……ジェイ
 オレの妄想が貴方を汚してしまった……
「コーヒーだが、飲むか?」
「い、いただきます……」
 この世界にもコーヒーがあったのか、なんて考える余裕は今のミチルにはなかった。恥ずかしさでジェイの顔が見れず、かと言って熱いコーヒーをすぐには飲めず、ミチルは固まりながらカップとにらめっこしていた。
「君は、寝相が悪いのか?」
「へ?」
 ジェイは少し口ごもりながら言う。
「その……目が覚めたら、君が私の腕の中にいたので……」
「ふおぉおっ!」
 現実だった! ざまあみろ!
 だが、オレが寝込みを襲ったみたいになってる!
 ミチルは羞恥と動揺でしどろもどろになりながらも説明した。
「いや、違うよ? あの、眠れなくてね、ジェイはどうして熟睡できるのかなーって、つい顔を覗いたらね……?」
 あー、やばい
 結局寝込みを襲ったっぽくなってる!
「ちょっと覗いただけだよ!? 月明かりに照らされてかっこいいとか思っただけだよ!? そしたら、急にジェイがオレの腕を引っ張ったんだよ!」
「──私が?」
 ミチルはぶんぶんと勢いよく頷いた。
「君を寝床に引きずり込んだのか?」
 いやん! なんて卑猥な表現!
 鼻血が出ちゃう!
「……」
 ミチルは思わず赤面して黙ってしまった。昨夜のドキドキ同衾の感触を思い出してしまったのだ。
「それは──すまなかった」
 ジェイも頬を赤らめて頭を下げる。照れた様もイケていた。
「いえいえ、こちらこそ。顔を覗き込んでしまったので……」
 二人の間に気まずい雰囲気が流れている。
 先に口を開いたのはジェイだった。
「で、では朝食でも食べに行くか」
「あ、朝から外食するんですか?」
「そんないいものではない。ただの屋台だ。私は自炊できないからな」
 あー、だと思いました。ぽんこつですもんねえ。
 などとは言えないミチルは、不自然なほど元気よく返事をした。
「わかりました! 行きましょう! さあ、早く!」
「朝食を食べたら私はそのまま出勤するが、君はどうする?」
 しまった……
 なんとなく昨日の話の続きっぽい……
 ミチルは昨夜考えたことを、たどたどしくも懸命に伝えた。
「あの、仮に戻る方法を探すとしてもどう探せばいいかわからないし、この世界に来たのも何かの縁かもしれないし、少しここで色々経験してみたいんです」
「……」
 ジェイは黙って考え込んでしまった。
 その様子にミチルは不安になって更にまくしたてる。
「あ、でも、そしたらジェイに迷惑かけっぱなしになっちゃうし、でもオレ、行くとこないし……経験してみたいって言っても何したらいいかわかんないし……」
「……」
「ごめんなさい! やっぱり迷惑ですよね、すぐ帰ります!」
 自分勝手なことばかり言ってしまったとミチルは泣きそうになった。
 だが、ジェイは全てを包み込むような慈愛の笑みを浮かべて言った。
「私は構わない。確かにこれも何かの縁だろう。君がよければしばらく共にいよう」
「あ、ありがとう!」
 なんていい人なんだろう。
 ジェイに出会えたことを、ミチルは改めて感謝した。
「それで、今日はどうしたい?」
 そんなの決まってる。
 ジェイと一緒にいたい。
「ジェイのお仕事を見学したいな!」