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第51話 激動の神殿

ー/ー



全員が神殿に入ると、苺はすぐに扉を閉めた。
心なしか妙に焦っているようにも感じられ、気にはなったが、そんな状況ではなさそうなので言及はしなかった。

入ってすぐの正面に、司祭を象ったらしい石の像と堀があり、像の持つ杖から堀に向けてきれいな水が噴き出していた。
なんか、人間界でも似たような像を見た記憶がある。
「この像が無事…ということは、内部は荒らされてはいなさそうですね…」

「確かに、神殿自体はね。でも、奴らはこの国を…長い時間をかけて、私達が築き上げてきたものを、めちゃくちゃにした。
さっきの兵達が、その何よりの証拠よ」

「え…?」
ちょっと、意味がわからなかった。
何だ?あの兵士達は、操られてたとでも言うのか。

「彼らは、間違いなくサンライトの軍だった。何なら、私の顔見知りもいた。…」

苺は、暗い顔をした。
「あの二人、許せない。彼らを、モノのように扱うなんて…」

ここで俺は、聞いてみた。
「えーっと、つまりあの兵士達は操られてたとか、そういう事か?」

「いいえ…でも、それに近い。
彼らは統率者の命には忠実に従う。けれど、自我や良心をしっかり備えている。
彼らの目を見て何となくわかったの…私達を攻撃するのに、疑問を感じていたのが。
彼らは、レギエル姉妹が国を乗っ取り、大司祭の立場に就いたから従っていただけなのよ」

「そう…なのか?」

「ええ、そうよ」
突如、どこか耳障りな声が聞こえてきた。


「あっ…!」
像の上に立っていたのは、ルードで遭遇した、あの司祭。
相変わらず異様な迫力を放っているが、同時にその美しさもまた健在である。
…よく見てみると、確かにどことなくキョウラに似ている。

「一つ間違えないでほしいのだけど、彼らはあくまでもこの国の兵士。個人についていく兵士じゃないわ」

「エリミア…!」
苺は目を見開き、身構えた。
「久しぶりね、サディ。こんなにゾロゾロとお仲間を連れて、どうしたの?」

「エリミア…私は、本当に残念だわ。まさか、あなたが…!」
そう言って、杖を握りしめる苺に、女…もとい司祭エリミアは、不思議そうな顔で言った。

「あら、そんなに身構えなくてもいいでしょ?私達、5000年来の仲じゃない」

「それを粉々にするような事をしたのは、誰だと思ってるのよ!レギエル姉妹に肩入れするなんて…!」

「私は何もしてない。そもそも、あなたがそんなに怒ってる理由がわからないわ」

苺は震え上がり、杖を振りかざした。
「[アルドゥール]!」
杖の先端から、白いパワーの塊が飛び出す。
エリミアはジャンプでそれをかわし、そのまま空中に留まった。

「危なっかしいわね…全く」

そんな奴に、キョウラが震えるように言った。
「お、お母様…」

すると、女はキョウラを優しく、だが冷たい目で見た。
「あら、キョウラ。久しぶりね。外界回りまで来られたなんてすごいじゃない」

「お母様、そ、その…」

「どうしたの?」

「レギエル姉妹に協力し、サディ様から記憶を消したというのは…事実なのですか?」

「いいえ。私はただ、彼女らに魔法を教えただけ。…私の得意な魔法を、ね」

それを聞いて、キョウラは唖然とした。
「…!!」

「あの二人は、この国を根本から変えてみせる、って言ってた。だから、私は協力した。ただ、それだけのことよ」

「国を、根本から変える…?」

「そう。具体的にどうするのかは、知らないけどね。
そして、それにはサディの存在が邪魔だから、潰そうって話になってたけど、私はそこには何も触れなかった。何度も言うけど、私は彼らに魔法を教えただけよ」

すると、苺が震えた。
「彼女らの話をそこまで聞いていながら協力したなら、共謀したも同然じゃない!」

「まあ…そうかもね。でも正直、どうでもいいのよね」

「どうでもいい…!?」

「そう。だって、私の目的は始めからあんたを潰すことなんだもの」

「なっ…!?あなた、友人に何を…」

「友人…?そんなわけないでしょ!」
そして、エリミアはその真っ黒な目で苺を睨みつけた。
「…あんたがいなきゃ、私は今頃大司祭にもなれてた!あんたは、いつも私の一歩前を歩いてた!あんたさえ…あんたさえいなければ、私は何もかも予定通り上手く行ってた!
だから…だから…!」
その口調と表情から、尋常ではない程の憎悪と殺意、そして嫉妬が伝わってくる。

「あの姉妹を使って、あんたを潰そうと考えた…けど、そうはいかなかった。まさか、あんたがここまでしぶといとは思わなかった。でも、もういい…あいつらがやれないなら、私がやる!」

エリミアは杖を構えた。
「さあ、来なさいよサディ。
あんたが死ぬか、私が死ぬか。最後の決闘と行こうじゃない!」

そして、エリミアは魔法を唱えた。

「[ラヴガラート]!」

一筋の光が走り、全てが破壊され―





…は、しなかった。
「…!!」
何故なら、俺達が全力でガードしたからだ。
俺が斧を横に持ち、それにキョウラ、メニィ、セルクが全身全霊で結界を張ったのだ。
俺達は少しの間、光を全力で押し留めていたが、やがて、
「[リペーロ]!」
苺が光の衝撃を分散させてくれ、そのおかげで簡単にかき消せた。

「なっ…あんた達、余計な事を!」
キョウラはエリミアをしっかりと見つめ、言った。
「お母様。私は、お母様が大好きです。だからこそ…お母様が誤った道に進んでしまったのであれば、それを正します」

「…!」

「あーあ、娘にも言われちまったな」
俺がそう言うと、今度は俺を睨んできた。
「お前は…ああ、あの時いた防人ね。まさか、こいつらはみんなお前の仲間なの?」

「だったら何だ?」

「…別に。どうせ下級種族ばかりだもの、気にするまでもないわ。でも…そうね。まずは、サディとキョウラ…あと、お前から始末してあげる」

「随分余裕がおありだな?」

「当然でしょ?お前は所詮、防人…力の差ってのを、嫌ってほど見せてやるわ」

完全にこちらをナメている。
だが、果たしてどうかな。

そして、俺は仲間たちに戦闘開始の指示を出す。








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全員が神殿に入ると、苺はすぐに扉を閉めた。心なしか妙に焦っているようにも感じられ、気にはなったが、そんな状況ではなさそうなので言及はしなかった。
入ってすぐの正面に、司祭を象ったらしい石の像と堀があり、像の持つ杖から堀に向けてきれいな水が噴き出していた。
なんか、人間界でも似たような像を見た記憶がある。
「この像が無事…ということは、内部は荒らされてはいなさそうですね…」
「確かに、神殿自体はね。でも、奴らはこの国を…長い時間をかけて、私達が築き上げてきたものを、めちゃくちゃにした。
さっきの兵達が、その何よりの証拠よ」
「え…?」
ちょっと、意味がわからなかった。
何だ?あの兵士達は、操られてたとでも言うのか。
「彼らは、間違いなくサンライトの軍だった。何なら、私の顔見知りもいた。…」
苺は、暗い顔をした。
「あの二人、許せない。彼らを、モノのように扱うなんて…」
ここで俺は、聞いてみた。
「えーっと、つまりあの兵士達は操られてたとか、そういう事か?」
「いいえ…でも、それに近い。
彼らは統率者の命には忠実に従う。けれど、自我や良心をしっかり備えている。
彼らの目を見て何となくわかったの…私達を攻撃するのに、疑問を感じていたのが。
彼らは、レギエル姉妹が国を乗っ取り、大司祭の立場に就いたから従っていただけなのよ」
「そう…なのか?」
「ええ、そうよ」
突如、どこか耳障りな声が聞こえてきた。
「あっ…!」
像の上に立っていたのは、ルードで遭遇した、あの司祭。
相変わらず異様な迫力を放っているが、同時にその美しさもまた健在である。
…よく見てみると、確かにどことなくキョウラに似ている。
「一つ間違えないでほしいのだけど、彼らはあくまでもこの国の兵士。個人についていく兵士じゃないわ」
「エリミア…!」
苺は目を見開き、身構えた。
「久しぶりね、サディ。こんなにゾロゾロとお仲間を連れて、どうしたの?」
「エリミア…私は、本当に残念だわ。まさか、あなたが…!」
そう言って、杖を握りしめる苺に、女…もとい司祭エリミアは、不思議そうな顔で言った。
「あら、そんなに身構えなくてもいいでしょ?私達、5000年来の仲じゃない」
「それを粉々にするような事をしたのは、誰だと思ってるのよ!レギエル姉妹に肩入れするなんて…!」
「私は何もしてない。そもそも、あなたがそんなに怒ってる理由がわからないわ」
苺は震え上がり、杖を振りかざした。
「[アルドゥール]!」
杖の先端から、白いパワーの塊が飛び出す。
エリミアはジャンプでそれをかわし、そのまま空中に留まった。
「危なっかしいわね…全く」
そんな奴に、キョウラが震えるように言った。
「お、お母様…」
すると、女はキョウラを優しく、だが冷たい目で見た。
「あら、キョウラ。久しぶりね。外界回りまで来られたなんてすごいじゃない」
「お母様、そ、その…」
「どうしたの?」
「レギエル姉妹に協力し、サディ様から記憶を消したというのは…事実なのですか?」
「いいえ。私はただ、彼女らに魔法を教えただけ。…私の得意な魔法を、ね」
それを聞いて、キョウラは唖然とした。
「…!!」
「あの二人は、この国を根本から変えてみせる、って言ってた。だから、私は協力した。ただ、それだけのことよ」
「国を、根本から変える…?」
「そう。具体的にどうするのかは、知らないけどね。
そして、それにはサディの存在が邪魔だから、潰そうって話になってたけど、私はそこには何も触れなかった。何度も言うけど、私は彼らに魔法を教えただけよ」
すると、苺が震えた。
「彼女らの話をそこまで聞いていながら協力したなら、共謀したも同然じゃない!」
「まあ…そうかもね。でも正直、どうでもいいのよね」
「どうでもいい…!?」
「そう。だって、私の目的は始めからあんたを潰すことなんだもの」
「なっ…!?あなた、友人に何を…」
「友人…?そんなわけないでしょ!」
そして、エリミアはその真っ黒な目で苺を睨みつけた。
「…あんたがいなきゃ、私は今頃大司祭にもなれてた!あんたは、いつも私の一歩前を歩いてた!あんたさえ…あんたさえいなければ、私は何もかも予定通り上手く行ってた!
だから…だから…!」
その口調と表情から、尋常ではない程の憎悪と殺意、そして嫉妬が伝わってくる。
「あの姉妹を使って、あんたを潰そうと考えた…けど、そうはいかなかった。まさか、あんたがここまでしぶといとは思わなかった。でも、もういい…あいつらがやれないなら、私がやる!」
エリミアは杖を構えた。
「さあ、来なさいよサディ。
あんたが死ぬか、私が死ぬか。最後の決闘と行こうじゃない!」
そして、エリミアは魔法を唱えた。
「[ラヴガラート]!」
一筋の光が走り、全てが破壊され―
…は、しなかった。
「…!!」
何故なら、俺達が全力でガードしたからだ。
俺が斧を横に持ち、それにキョウラ、メニィ、セルクが全身全霊で結界を張ったのだ。
俺達は少しの間、光を全力で押し留めていたが、やがて、
「[リペーロ]!」
苺が光の衝撃を分散させてくれ、そのおかげで簡単にかき消せた。
「なっ…あんた達、余計な事を!」
キョウラはエリミアをしっかりと見つめ、言った。
「お母様。私は、お母様が大好きです。だからこそ…お母様が誤った道に進んでしまったのであれば、それを正します」
「…!」
「あーあ、娘にも言われちまったな」
俺がそう言うと、今度は俺を睨んできた。
「お前は…ああ、あの時いた防人ね。まさか、こいつらはみんなお前の仲間なの?」
「だったら何だ?」
「…別に。どうせ下級種族ばかりだもの、気にするまでもないわ。でも…そうね。まずは、サディとキョウラ…あと、お前から始末してあげる」
「随分余裕がおありだな?」
「当然でしょ?お前は所詮、防人…力の差ってのを、嫌ってほど見せてやるわ」
完全にこちらをナメている。
だが、果たしてどうかな。
そして、俺は仲間たちに戦闘開始の指示を出す。