第50話 異形の戦い
ー/ー地面に黒い円形のものが現れ、うめき声のようなものが聞こえてくる。
そして、巨大なトカゲだかカエルだかわからない怪物が浮かび上がるようにして現れた。
「まさか…異形…!?」
キョウラが驚きの声をあげる。
苺は、怪物が召喚されるのを途中まで黙って見ていた。
そして、やがて口を開いた。
「これは…」
「爬虫系異形、グランメルドだ!さあ…こいつらを始末するのだ!」
男がそう指揮すると、怪物は一歩前に出て、こちらを睨みつけてきた。
「仕方ない…やるか!」
俺は後ろに飛び、一度距離を取った。
すると、異形は素早く横を向いて、尻尾で薙ぎ払ってきた。
俺達は殆ど一列に並んでいた事もあって、ほぼ全員がもろに当たった。
唯一、苺だけはジャンプして回避していたが。
「…みんな、大丈夫!?」
「あ、ああ…」
足に食らったので、思わず地面に膝をついてしまったが、問題はない。
そう思った次の瞬間、
「伏せて!」
苺の声とほぼ同時に、怪物が噛みついてきた。
「おっと…!」
とっさに両手をつき、回避した。
当たり前ではあるが、まともに食らったらひとたまりもないな…
と思った刹那、大将が鋭い雷を飛ばしてきた。
慌てて横に転がり、どうにか回避した。
休む間もなく、異形がこちらへ向けて岩を吐き出してくる。
ジャンプして、なんとか回避した…だいぶ無理のある体勢での跳躍だったが、なんとか。
着地する所を狙われたが、ナフィーが異形の前足を突き刺して怯ませてくれたおかげで無事に着地できた。
「[フックノート]!」
ナフィーは槍を振り上げ、異形の首元を斬りつける。
さらにそこから槍を振り回し、顔を3回斬りつけた。
「[三段払い]!」
異形は爪を振り上げ、ナフィーに反撃しようとしたが、そうはいかなかった。
異形と戦っているのは、ナフィーだけではない。
輝とタッドが矢を放ち、異形の目を潰した。
そこからは、みんな見事な連携だった。
猶や煌汰、ミロウが腹を、イルクや樹、ナイアが足を斬りつける。
そうして異形の身動きを封じた所で、柳助とラギルが異形の頭に武器を振り下ろす。
無論、俺もそこに参加する。
斧を振りかぶってジャンプし、異形の額目掛けて力いっぱい振り下ろした。
血がほとばしり、異形はうめき声をあげて動かなくなった。
それを見た男は、特別な作り笑いをした。
「ほ、ほう…少しはやるようだな。だが、私はそうはいかんぞ!」
男は手を伸ばし、手のひらをこちらに向ける。
「雷法 [エルクボルト]」
ストレートな青い電撃を撃ってきた。
流すのは難しそうだったので回避しようとしたら、
「[サンダーバリア]!」
セルクの声と共に黄色い壁が現れ、電撃を防いだ。
「…?」
男は、ゆっくりとセルクを見た。
「ほう、感心だな。魔法使いが私の術を阻むだけの術を扱えるとは」
「当然だ…!僕は、代々この神殿に仕える一族の身。まだ修行中だけど、それでも一族の名を汚さない程度の魔力はある!」
「修行中?…なるほど。この壁、一見見事だが、魔力の密度が低い。それに…」
男は、横目でメニィを見た。
「詰めも甘い」
次の瞬間、細い電撃が空中に現れた。
そしてそれはたちまち蜘蛛の巣のように広がり、セルク達に襲いかかった。
メニィと苺は間一髪避けたが、セルクとキョウラはもろに食らい、体中に雷の糸が巻き付いて動けなくなってしまった。
「ううっ…!」
「セルクさん!キョウラさん!」
嘆くメニィの背後から、男は電撃を浴びせる。
苺が結界を張ったが、間に合わなかった。
「きゃっ!」
メニィはふっ飛ばされ、地面に倒れた。
「会話にだけ意思を取られるとは、注意力散漫も良いところだな。我々はあくまで戦闘をしているのだ、忘れるなよ?」
「こいつ…!」
メニィは男に火球を飛ばす。
男はローブの袖を振ってそれをかき消し、
「術士の魔法など取るに足りん。私は賢者なのだからな!」
と、どこか誇らしく言った。
「賢者…?」
「そうだ…知らんかもしれんが、術士の上の上、高位の魔法種族…!それが、賢者だ!
私はな…お前などより、立場も力も、ずっと上の存在なのだよ!」
「っ…!」
メニィは、誇らしげにする男を睨みつけた。
まあ、そりゃそうだろう。
というか、この世界でもそういう…生来の性質や家系?を理由にしたマウント…というか揚げ足取りみたいなのはあるのか。
どこの世界も、同じなようである。
と思ったら、苺が喋りだした。
「何を勘違いしてるのかしら」
「…なんだと?」
「確かに、あなたは賢者として恥じない力を持っているかもしれない。でも、あなたは彼女をバカにできるような存在なの?」
「はて、どういうことかな?」
すると、苺は少し言い方を強めて言った。
「彼女を蔑む資格が、あなたにあるのかと言ってるのよ!」
「…何を言っているのだ?上位の存在たる者が、下位の者に口を出して何が悪い?」
「例え立場の差があろうと、言ってはいけないこと、やってはいけないことがある。
あなたの理屈が通るなら、虐めや威圧を容認することになるわ!」
「馬鹿を言うな。それとこれとは話が違う」
「同じよ!例え些細な事でも、心持ちは行動に出るもの。
あなた、恐らく今までもこうして自分より下の者を軽蔑してきたんでしょう!」
男は、殺意を含ませた顔で苺を見た。
「その顔…やはり、そうなのね。あなたのような考えを持つ者が、この神殿にいるなんて…!」
「ずいぶんと怒っているようだな?だが、それで?果たして、お前に何が出来る?」
「言ったわね?して見せようじゃない」
苺はそう言って杖を出し、魔力を溜め始めた。
その様子は、俺から見てもただならぬ雰囲気が感じられた。
「私は一度、記憶と力の大半を失った。でも、今は彼らのおかげで、それを取り戻しつつある。少なくとも、あなたのような者を裁けるだけの力はある!」
ここで、男は焦りを見せ始めた。
「…な、なんだ、この魔力…!き…貴様、何者だ!」
「私はサディ…この大神殿の大司祭よ!」
「大司祭…!?がっ…!!」
苺が手を伸ばすと、男の体は浮き上がる。
ちょうど、首を掴まれているような感じで。
「権力と種族の性質を振り回し、哀れな考えを持ち続けていた愚か者よ。お前のような者に、賢者としてこの神殿にいる資格はない。
故郷に戻り、始めからやり直しなさい!」
苺はそう叫び、男を遥か東の彼方へ飛ばした。
終始手で直接掴んでた訳ではないので、投げ飛ばした…と言えるかは微妙だが。
「…さあ、これでもう大丈夫よ。神殿の中へ突入しましょう」
「あ、ああ…」
立派な金属の扉を開き、俺達は神殿の中へ入った。
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