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第24話 初詣2~彼氏失格~

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 夏芽と新田神社に初詣に行った。新田神社は南商店街の奥にあり、店主たちがこぞって商売繁盛を祈願する神社だ。

 店主ということは、もちろん、この人もだ。

「よう、夏芽ちゃんにその彼氏!! ガハハ」

 高らかに笑いながら、オレのことを頑なに夏芽の彼氏と呼ぶ宇川さんだ。

「肉屋のほうどうっすか?」
「肉屋も楽しいけどなー、そろそろ店じまいしようと思うのやー!!」
「え、それってやっぱり、駅前にショッピングモールができる関係ですか?」
「んや、オレが肉屋以上に面白いものを見つけてしまってなぁー!!  最後の2ヶ月くらい店が繁盛するよう、新田神社にprayしにきたんや!!」
「そうなんすか」
「彼氏!! なんで、ツッコまん!!」
「祈るなんで英語なんすか」
「いやぁ、まぁ、prayはな、このまえ、たまたま動画サイトで、アメリカ在住のVtuberの配信見ててなー。その単語知ったんやー!! Vtuberはいいぞー、海外勢であれば、英語の勉強になるし、日本人なら癒しがもらえるし、時に笑えていいぞ!!」

 相変わらずの宇川さん節だなーとオレはおもった。そして、そのちゃらんぽらんな目には、オレの心がわかったのだろうか。

「時に夏芽ちゃんの彼氏!! お前、今、夏芽ちゃんの事が心にないな!!」
「……っ、宇川さん!! 大人と言っても、言っていい言葉とダメな言葉が……あります」

 最初の方のオレは語気が強かったが、徐々に弱くなった。なぜなら、さっきのニュースだ。そう、『新田 いろは』だ。直接再会した訳でもないし、連絡が来て、助けを求められた訳でもない。

 でも、さっきのニュースを聞いてから、オレの心はいろはのことが心配でしかたなかった。そして、あの頃の思い出や、今、どうなっているのだろうか、などオレの心はそれでいっぱいだ。

 ――どうしようもないのに……、きっとあれが、『初恋』だったからだろう

 そして、オレの横には今、いろはではなく夏芽がいる。それを時折忘れてしまうほどだ。

「……、オレは……、夏芽の彼氏失格だ」
「迅くん?」
「ごめん、夏芽。ホント、ゴメン」
「どうした?」

 宇川さんですら、オレに心配する言葉をかけるほどだ。オレは新年早々、神社で大粒の涙を流した。

「夏芽、ごめん、今までありがとう」
「え? どうして……」

 宇川さんは邪魔してはいけないと思ったのか、『じゃあな』と去っていった。いつものように、そこでガハハと笑わなかった。

「オレ……、さっきも言ったけど、ホントに夏芽の彼氏……失格だ。いま、いつも近くにいてくれて愛をくれるのは夏芽だ。でも……、でも……」

 夏芽は今にも泣きそうだが、オレの言葉を最後まで待っている。しかし、オレがそれ以上言葉にできなかったのがわかったのだろう。

「もしかして、昨日の夜、お姉ちゃんとなにかあった?」
「お姉さんとはなにもないよ。その……、朝のニュース……」
「朝のニュース?」

 夏芽は特に朝のニュースを気にしていなかった。それは当たり前だ。怖いねぇという話をしただけだから。

「あれの被害者の『新田 いろは』ってさ……」

 ……ここでこれ以上言っていいのだろうか? 初恋をまだ引きずっている情けない男と思われないだろうか……。いや、でも、きっと、夏芽とはここで終わるんだ。すべて話した方がオレにも夏芽にも後々、未練が残らないだろう。

「前、話したオレの……()()()()なんだ」
「そっか、わたしは迅くんが初恋の人だから、そういう感情はわかんないけど、まだ、迅くんはそのいろはさんが好きなの?」
「……いと思う。でも、心配なんだ!!」
「連絡は取れるの?」
「取れない……」
「わたしにはわからない感情だけど、それって()()とかじゃなくて、友だちだから、大切だから、心配だと思うよ。だから、当たり前の感情だよ。それに、迅くんは迅くんだよ。その優しさがあるから、わたしは迅くんが大好きなんだよ」

 『ありがとう、ありがとう……』と言いながら、オレは夏芽に優しく包み込んでもらっていた。


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 夏芽と新田神社に初詣に行った。新田神社は南商店街の奥にあり、店主たちがこぞって商売繁盛を祈願する神社だ。
 店主ということは、もちろん、この人もだ。
「よう、夏芽ちゃんにその彼氏!! ガハハ」
 高らかに笑いながら、オレのことを頑なに夏芽の彼氏と呼ぶ宇川さんだ。
「肉屋のほうどうっすか?」
「肉屋も楽しいけどなー、そろそろ店じまいしようと思うのやー!!」
「え、それってやっぱり、駅前にショッピングモールができる関係ですか?」
「んや、オレが肉屋以上に面白いものを見つけてしまってなぁー!!  最後の2ヶ月くらい店が繁盛するよう、新田神社にprayしにきたんや!!」
「そうなんすか」
「彼氏!! なんで、ツッコまん!!」
「祈るなんで英語なんすか」
「いやぁ、まぁ、prayはな、このまえ、たまたま動画サイトで、アメリカ在住のVtuberの配信見ててなー。その単語知ったんやー!! Vtuberはいいぞー、海外勢であれば、英語の勉強になるし、日本人なら癒しがもらえるし、時に笑えていいぞ!!」
 相変わらずの宇川さん節だなーとオレはおもった。そして、そのちゃらんぽらんな目には、オレの心がわかったのだろうか。
「時に夏芽ちゃんの彼氏!! お前、今、夏芽ちゃんの事が心にないな!!」
「……っ、宇川さん!! 大人と言っても、言っていい言葉とダメな言葉が……あります」
 最初の方のオレは語気が強かったが、徐々に弱くなった。なぜなら、さっきのニュースだ。そう、『新田 いろは』だ。直接再会した訳でもないし、連絡が来て、助けを求められた訳でもない。
 でも、さっきのニュースを聞いてから、オレの心はいろはのことが心配でしかたなかった。そして、あの頃の思い出や、今、どうなっているのだろうか、などオレの心はそれでいっぱいだ。
 ――どうしようもないのに……、きっとあれが、『初恋』だったからだろう
 そして、オレの横には今、いろはではなく夏芽がいる。それを時折忘れてしまうほどだ。
「……、オレは……、夏芽の彼氏失格だ」
「迅くん?」
「ごめん、夏芽。ホント、ゴメン」
「どうした?」
 宇川さんですら、オレに心配する言葉をかけるほどだ。オレは新年早々、神社で大粒の涙を流した。
「夏芽、ごめん、今までありがとう」
「え? どうして……」
 宇川さんは邪魔してはいけないと思ったのか、『じゃあな』と去っていった。いつものように、そこでガハハと笑わなかった。
「オレ……、さっきも言ったけど、ホントに夏芽の彼氏……失格だ。いま、いつも近くにいてくれて愛をくれるのは夏芽だ。でも……、でも……」
 夏芽は今にも泣きそうだが、オレの言葉を最後まで待っている。しかし、オレがそれ以上言葉にできなかったのがわかったのだろう。
「もしかして、昨日の夜、お姉ちゃんとなにかあった?」
「お姉さんとはなにもないよ。その……、朝のニュース……」
「朝のニュース?」
 夏芽は特に朝のニュースを気にしていなかった。それは当たり前だ。怖いねぇという話をしただけだから。
「あれの被害者の『新田 いろは』ってさ……」
 ……ここでこれ以上言っていいのだろうか? 初恋をまだ引きずっている情けない男と思われないだろうか……。いや、でも、きっと、夏芽とはここで終わるんだ。すべて話した方がオレにも夏芽にも後々、未練が残らないだろう。
「前、話したオレの……|初《・》|恋《・》|の《・》|人《・》なんだ」
「そっか、わたしは迅くんが初恋の人だから、そういう感情はわかんないけど、まだ、迅くんはそのいろはさんが好きなの?」
「……いと思う。でも、心配なんだ!!」
「連絡は取れるの?」
「取れない……」
「わたしにはわからない感情だけど、それって|好《・》|き《・》とかじゃなくて、友だちだから、大切だから、心配だと思うよ。だから、当たり前の感情だよ。それに、迅くんは迅くんだよ。その優しさがあるから、わたしは迅くんが大好きなんだよ」
 『ありがとう、ありがとう……』と言いながら、オレは夏芽に優しく包み込んでもらっていた。