「ま、まさか……こんなことって……。」
異型たちの住む国は、王様が収めていた。
王様は、誰よりも優しくて強いは人だ。
弱い人に寄り添い、一人一人の意見や考えを尊重することが出来る。
だからこそ、住民は皆王様に敬意を持っていて、王様にどこでもついて行こうと言っていた。
俗に言う、王様はとても優秀な方なのだ。
しかし、そんな王様と住民には大きな悩みがあった。
それは……。
「おい、もっとケーキ持ってこい。持ってこれねぇと打首だ。分かってんのか?」
「は、はいぃ。ただ今!」
男の命令に、その場にいた全員が肩をすくめる。
普通なら冗談だろと笑い飛ばせるような言葉だが、この男の命令は冗談もくそもないらしい。
その男は王子なのだ。
王様の実子であり、小さいころから甘やかされて育った子供。
欲しいものはすべて手に入り、嫌なものはその存在がなくなるまで排除する。
そうやって育った子供が、大きくなるとどうなるか。
答えは簡単だ。
こうなるのだ。
「これは何だ?」
「け、ケーキでございます。」
「こんな小さいのがケーキか?笑わせるな。もっと大きいのを準備しろ。」
「し……しかし、材料が……。」
「あぁ?」
「た……ただいまお持ちいたします。」
従者であろう男は涙目で王子の要求を受け入れた。
これ以上反論しようとするなら、最後まで言う前に首が飛んで行きそうだったからだ。
いや、絶対に飛んでいくだろう。
王子という人間はそういうお人なのだから。
余裕で人を殺す性格の王子だからこそ、王子の使う部屋はすべて血まみれになっている。
すべて今まで殺された従者の血。
一番ひどい殺され方は朝ご飯を食べてもらうために起こしたからというもの。
理不尽に殺された仲間を知っているからこそ、このお城の従者も王様も王子には何も言えないのだ。
そんな王子に困り果てた王様はどうすればよいのかと考えていた。
こんな性格になるまで放っておいたことへの罪意識もあったのだろう。
そんな時、魔女を名乗る女が城を訪れた。
見た目は真っ黒な黒髪に真っ黒な服、顔はとても若いように見える。
従者たちはそんなとてつもなく怪しい女をすぐに王様のもとへと案内した。
「もしよろしければ、わたくしが王子様の性格を矯正いたしましょう。」
「矯正だと?」
「はい、わたくしは不死身にございますゆえに王子様の使っているような脅迫は通じませぬ。もし、本当に殺されたのであればわたくしとしては本望でございます。この長い人生に終止符を打つことができるのですから。」
「具体的にはどういうことをするのだ?」
王様は魔女と名乗る女に少し強い口調で問う。
性格は悪くとも、王様にとってはかわいい息子なのだ。
拷問的なことはさせたくないのだろう。
しかし、魔女はにやりと笑って顔を横に振った。
「それは、秘密にございます。」
「秘密だと?」
「御安心ください。命にかかわることはしませんし、わたくしの命にかけて王子様をお守りいたします。」
「……本当に、あの性格はよくなるのか?」
「それは必ず。」
魔女は笑ったまま王様を見上げた。
「何が欲しいというのだ?皆が王子を怖がって近づかないどころか関わりを持とうともしないのはわかっているだろう?」
「そうですね。わたくしは、人生の終止符を打ちたいのです。ただそれだけです。」
「死にたいから、ということか?」
「簡単に言えばそういうことになります。」
「ほかに、欲しいものとかはないのか?」
女は王様の問いに首を横に振った。
もちろん、王様からしたら魔法でも使わない限り王子の性格が変わるとは思えない。
王様だって、いろいろと試しはしたのだ。
その結果が今。
減る従者。
増える血の付いた部屋。
「すぐに決めることはできないでしょう。わたくしは今日のところは帰りますので、ゆっくりお考え下さい。わたくしには有り余るほどの時間がありますから。」
「やはり、何をするのかだけ、教えてはくれないか?」
「かわいい子には……というでしょう?」
「……かわいい子には?っおい、待ってくれ。」
王様が引き留めているにもかかわらず、女はさっと身をひるがえして帰っていった。
(かわいい子には……?)
この世界にはことわざなどなかった。
だからこそ、女が最後何を言いたいのか王様は全く分からなかったのだ。
しかし、そんなことも言ってられないのは確かだ。
王様からしたら藁にも縋る様な気持ちなのは確かなのだから。
「かわいい子には、あの女は何と言ったのだ?」
「かわいい子にはというところまでしか聞き取れませんでした。」
「私もです。」
「先生に聞いてみてはいかがでしょうか。」
この城には、とても物知りな先生と呼ばれる従者が一人いた。
わからないことがあると、みなその先生の所へ行くのだ。
王様も王子も全員がその先生にお世話になっていた。
見た目は眼鏡をかけていて、蝶ネクタイまで占めている。
いつも書庫にいて、ほかの場所で見かけたという話はめったに聞かない。
数日に一回王子のもとへ呼ばれているらしいが、王子からしてもよい暇つぶしになるからこそ少しのことでは殺されることもないのだ。
「先生、聞きたいことがあるのだが、今よろしいだろうか?」
「はい。ちょうど今本を読み終わったところです。どういたしましたか?」
「さっき、魔女を名乗る女性が城を訪れたんだ。その女がかわいい子には何とかで王子の性格を矯正することができると言っていたんだが、どういうことかさっぱりでな。」
「魔女ですか……。とても懐かしい話ですね。その夫人の見た目や、ほかに話していたことなども教えていただけますか?」
「夫人なんて言う見た目じゃなかったな。子供のような見た目で顔も若かった。後は、不死身だとか言ってたな。」
「不死身……その方は真っ黒い髪をしていましたか?」
「あ、あぁ。真っ黒いドレスに身を包んでいたな。ただ不自然だったのは……。」
「とても質素な服装でしたか?」
「なぜわかるんだ?いや、あぁ。そうなんだ。」
先生は目を細めてうんうん頷きながら、王様の話を聞いた。
そして、持っていた本を近くにあった机へと置いて、たくさんある本棚から一冊の分厚い本を取り出す。
「懐かしいですね。私の故郷を思い出します。」
「故郷だと?」
「はい。私の故郷では魔女狩りが起きていました。なのでもう生き残りはいないと思っていましたが、こちらへと逃げてきたのでしょう。」
「魔女狩りだと?なぜそんなことをしたのだ?」
「それはわかりません。自分と違う人間を怖がるのは当たり前だからかもしれないとしか言えないです。そうそう、私の故郷にはことわざというものがあります。」
「ことわざ……だと?」
「はい。昔の人が作った言葉を受け継いでいるのです。その中には、かわいい子にはから始まるものもありますよ。」
「そうなのか?その続きは何なのだ?」
「可愛い子には旅をさせよ、というものです。」
「たび……だと?」
「一度親元を離れて暮らしてみることも大切だというものです。」
先生はそう言って王様に一枚の写真を見せた。
分厚い本の中に挟まっていたものだ。
写真が挟まっていたページには魔女の言い伝えという項目で魔女狩りについて事細かく書かれていた。
先生はその次のページをめくって王様に手渡す。
「……人間のみの帝国?」
「人外と呼ばれるものが住めなかった世界です。」
「ここから、お前はきたのか?」
「はい。儀式によって召喚されました。」
「あの魔女もここから来たのか?」
「きっとそうでしょう。なので安心して大丈夫だと思います。この世界の人は命は大切にする人ばかりです。」
「命は大切にする……か。お前が言うならそうなんだろうな。」
王様は先生に向かって一礼した。
お礼を告げるようなことはしないものの、王様と呼ばれる人たちの中では礼儀正しい人だといえるだろう。
先生も王様が見えなくなるまで見送る。
先生は異世界転生者だった。
昔は元居た世界に帰りたいと思いながらここにこもっていたが、今となってはここのほうが安心する場所になってしまったのだ。
(魔女……か。)
魔女を名乗った女にもう一度会ってみたいと思いながら先生は本の整理を始めた。
「決まりましたか?」
「どこにいたのだ?」
「住む家はありますので。」
「それがどこだと聞いているんだ。」
「それは言えません。」
魔女が二回目に来たのは一回目に来た時から数えて一か月後だった。
あまりにも訪ねてこない魔女に王様はしびれを切らして魔女を探し回った。
しかし、魔女は全く見つからずあきらめかけていたところだったのだ。
「そなたの名前を聞いていなかったな。」
「名はありません。魔女とでもお呼びください。」
「年はいくつなのだ?」
「いくつに見えますでしょうか。」
「18、か?」
「その1000倍ほどだとお思いくだされば結構です。」
王様は王子を魔女に預けることは決めていた。
ただ、そのためには魔女についてしっかり知っておかなければいけないと思ったのだ。
それなのにもかかわらず、魔女は何を聞いても曖昧にしか返答しなかった。
住んでいる場所も、名前も歳もすべてあいまい。
「わかった、王子を任せよう。」
「さようですか?感謝いたします。」
「ただ、本当に王子の身の安全は保障してくれ。」
「もちろんでございます。ただ、王子とは少しの間会えないと思っていてくださいね。」
こうして、王子の性格矯正生活が始まったのだ。
しかし、魔女はどうやって性格を変えるつもりなのだろうか。
それはそこにいた誰も知らなかった。
「どこだ?ここは!」
目が覚めると、森の中にいた。
元居た国にはこんな緑あふれた森などなかったはずだ。
じゃあ、なぜこんなところにいるのか。
従者たちのいたずらだとしか思えない。
「おい、誰かいないのか?」
「うるっさいわね。少しは静かにしてたらどうなの?」
「オレは王子だぞ?そんな口きいてよいと思っているのか?」
王子がそう言って胸を張るが、声の主は何も言わなかった。
女の声がしたと思ったが幻聴だったのだろうか。
いや、そんなはずはない。
「おい、無視するな。おなかがすいたぞ!」
「知らないわよ。」
「お前はどこにいる?」
「さぁね。申し訳ないけど、答えられないのよ。」
「これはお前の仕業か?出て来い。」
「……しょうがないわね。私の姿がそんなに見たいのね。」
女の声はやれやれと面倒くさそうに答える。
いや、本当にお前の仕業なのかよ。
そう思いながら顔をあげると、目の前にはとても美しい女がいた。
質素な真っ黒いドレスには花飾りの一つすらもついていない。
真っ黒な髪もぼさぼさで寝起き感がぬぐえない。
ただ、顔だけは美しい。
整った顔つきはメイクすらされていないのだろうが、気を抜くと見とれてしまうほどだ。
「どう?見た感想は。」
「きれ……あ、いや。お前の目的は何だ?」
「んーっと、君には今日からこの国で暮らしてもらいます!」
「は?」
意味が分からなさ過ぎて口が閉じれなくなる。
なんなのだ?
何が目的なんだ?
俺には全くわからない。
しかし、女はとても楽しそうに笑って続ける。
「ここが、君の元居た世界と違うことは知っているわよね?」
「もちろん、見た目が全く違うからな。」
「それだけ分かればいいの。」
「それだけ分かっても何もできないだろう?」
「うーん、まぁ。そうね。ここをまっすぐ行くと家があるわ。そこで少しの間暮らしなさいな。あ、もしあなたが異世界の人だとわかったら、すぐ別の山に送るから。」
「つまりは自分の身分を隠して生活しろっと?」
「おぉ、理解はやーい。」
キャピキャピとする女を放っておいて、俺は女が言った方向の逆を行こうとする。
馬鹿にするのもたいがいにしろ。
言った方向と逆にいけば帰れるんだろう?
しかし、俺の予想は外れたらしい。
歩いても歩いても、周りの風景が変わらない。
女はにこにこしながら立っているし、全く動いている気配もないのだ。
「ねぇ、異世界転生って知ってる?」
「先生のことか?」
「うーん、そうとは限らないけど……まぁ、そういう理解ならそれでいいわ。」
「異世界転生は俺らの世界に異世界の奴らが来るんだろう?」
「そうそう。で、どこまで君が自己中なのかは知らないけど逆もあるとか考えたことない?」
あるわけがない。
いや、あり得るわけがない。
あれは魔法を使うやつがいてこそ成り立つ。
先生はそう言っていた。
魔法によって別世界を行き来することができる、と。
「……お前、それ立っているのか?」
「浮いてるのほうが正解かな?」
「魔女、か?」
「うん。今頃?」
「ま、まさか……こんなことって……。」
「ありえちゃったねぇ。」
「ゆ、誘拐だ!今すぐ元の場所に戻せ。戻さないと打ち首だぞ!」
「残念、首切られたくらいじゃ死なないのよねぇ。」
女はやれやれとでもいうようにニッコリとしたまま言う。
「そ、そんなはずがない!」
「ならやればいいじゃない。」
「お、お前……。」
サクッと女の首を切った。
切った感触はあったのだ。
しかし、女はびくともしない。
女の首は切られていなかった。
そして女は怖がるどころか、困ったような目で王子を見た。
「ほら、言ったでしょう?わかったらさっさと山を下りな。日が暮れるよ。」
「俺を誘拐して、何が目的なんだ?」
「誘拐じゃないよ。王様には許可取ってる。ほら、書類だ。あーあー。破いても意味ないよ。それはコピーだ。」
破いた書類が消えていく。
本当にコピーだったようだ。
もう少し読んでから破ればよかったと心から後悔する。
「で?俺は何をすればよいのだ?」
「自分の身分を隠して山を下りたところに住む家でお世話になりなさい。」
「なぜ、自分の身分を隠す?」
「あなたのいたところとは違って、ここは異世界から来た人を怖がる。自分と違う人を受け付けない人が多いの。おとなしくしていればいいのよ。」
おとなしくしておく意味が分からない。
この女は何を言っているのだろうか。
俺は王子なんだ。
お世話されるのが当たり前。
城から出ずに、外の話を聞くだけでも満足なんだ。
それなのになぜ、身分を隠して底辺のような人たちと過ごさなければいけない?
いや、言うことを聞いておく必要はありそうだ。
何といってもおなかがすいてこれ以上は耐えられない。
「……わかった。」
山を下りると、一軒の家があった。
城よりも小さい。
人が住めるのかもわからないような家だ。
「なぁ、本当にここか?」
「ほかにある?」
「ここは、住めるのか?」
「普通の人はこういう家に住んでるの。これでも大きいほうよ?」
「大きい……。」
俺から見ればとても小さい小屋のようにしか見えないが、確かに先生の見せてくれた本に書かれていた家よりかは大きい気もする。
「坊や、一人で何してるんだい?」
「一人?」
「あなた以外に私が見えるわけないでしょう?」
「え?そうなの?」
小屋の中から出てきたのは40代半ばのおばさんだった。
太った体に赤いワンピースを着ている。
その恰好が似合わないかといえば、そうでもないのがまた不思議だ。
おばさんは怪しいものでも見るかのように俺を見ている。
「気味の悪い子だねぇ。」
「ほら、怪しまれてたらごはんもらえないよ?」
「あ、えっと……あの。」
「こんな山奥でどうしたんだい?家は?」
「その……。」
俺は女をにらんだ。
なんて言えばいいのかくらい教えてくれてもよいだろう。
しかし、女は何も言わずにそっぽを向いた。
会ったばかりだが、何となく彼女が言いたいことはわかる。
(自分で考えろってか……。)
「ま、迷子になって……家がどこかもわからないんだ。」
「そうなのかい。おなかはすいているかい?」
「あぁ。」
「じゃあうちに来な。晩御飯くらいおごってあげるよ。」
「ほら、感謝しな。」
今まで何も話さなかった女が急に話し出した。
「え?」
「ありがとうは?」
「あ、ありがとう……。」
「お礼は言えるんだね。いい子じゃないか。」
ただ女の言葉をオウム返しに行っただけだが、おばさんはにっこり笑って俺の頭をなでだした。
意味も分からずに誉められたが、ほめられること自体は悪くない。
最後に褒められたのはいつだっただろうか。
そう遠くない昔に褒められた気もするのだが、あまり記憶にはない。
「ほら、中に入りな。もう暗くなっちまうよ。」
「は、はい。」
「はーい。」
お前も来るのか……。
いや、来てもらわないと困ったりもするのだが、俺より元気じゃないか。
「準備するから少し待ってな。」
「はい。」
俺はいい子を演じる。
さっきのでコツはわかった。
どうすればよい子だと思われるのか、それさえわかればこっちのもんだ。
本当のことを言えば、ごはんさえもらえればそれでいい。
「お前は何か食べるのか?」
「ん?たへてりゅよ。」
「何食べてんだ?」
女は分厚いサンドイッチを片手にニッコリ笑った。
いつどこで入手したのだろうか。
いやそんなことよりも、なぜ俺を差し置いて食べているのだ。
一応俺は王子なのだが、この女からはそういう敬意が伝わってこない。
「なぁ……。」
「怪しまれちゃうよ?」
女はそう言ってこれ以上話さないという意思を示す。
そんな態度を取られてはこちらも何も言えなくなる。
「何か好きな食べ物とかあるかい?」
「あ、えっと……その……。」
「聞き方が悪かったね。何か食べられないものはあるかい?」
「や、野菜が……あまり。」
「あら、残念だね。うちは野菜だけは沢山あるんだよ。」
「え、……あの……。」
嫌だとは言ってられない。
これ以上何も食べないとなると、気が狂いそうだ。
「た、食べます!食べられます。」
「そうかい、ならよかった。」
おばさんはそう言ってスープを器に注ぐ。
どうやら、野菜は出来るだけ入れないようにしてくれているようで、お玉ですくった具材を見ては戻してを繰り返す。
「あの、……なんでも食べます。」
「それは結構。でもね、私は美味しく食べて欲しいんだ。」
「美味しく……?」
「そうさ。わざわざここに来てくれたお客だからね。」
「はぁ……?」
理解できない。
わざわざ来てくれた人を待たせる方が失礼のような気がしてならない。
しかし、おばさんはゆっくりと注いでゆっくりと料理を並べる。
「ほら、ありがとうは?」
「これだけ待たされたのに礼を言うのか?」
「準備してくれたんだから当たり前でしょう?」
「まさか、誰が言うか。」
女に話しかけられて、俺はおばさんにバレないようにそう言ってスープを一口食べた。
美味しい。
これ以上美味しいものは食べたことがない。
「お礼は言わないとダメだよ?」
「なんだ?文句あんのか?」
「文句しかないね。」
「おい!まだ食べ終わってないぞ!」
俺はスープを一口食べてそのまま山の中にワープさせられたらしい。
次の一口を運ぼうとしたら持っていたスプーンも無くなっていた。
「安心していいよ。さっきのおばさんはもう君の存在を忘れてる。」
「そういう事じゃねぇよ!俺の存在はバレてないはずだ。」
「あんな傲慢な態度とってたらいつバレても仕方ない。」
「でもまだバレてねぇだろ?」
俺が怒鳴り散らすと、女は大きなため息をついて睨んた。
「今のでわかったでしょう?私はあんたがどう思おうと関係なくワープさせることが出来る。」
「……は?」
「それが嫌なら私を怒らせないで言うこと聞きな?」
今ので俺は悟った。
この女には逆らうことが出来ない。
冷淡な目、真っ黒な髪に真っ黒な服。
それらを俺が塗り替えることが出来ないように、俺はこいつの言うことを聞いていないと生きていけない。
「……分かりました。」
こうして俺の、転生物語は始まったのだった。