4
ー/ー
「縁があるなら、落ち着くところに自然と落ち着くものだよ」
「彼氏にも同じこと言われました。他人のことに、首を突っ込むなって……」
「そっか。感情って、すごく複雑だからね。まだフワフワしている段階で外からの力が加わると、変に歪んでしまうこともあるだろうし。だから姫野さんの彼も、そんな風に言ったんじゃない?」
香月さんが、にっこり笑う。噂の必殺スマイル……確かに、これはとてつもなく破壊力ある。
本当は私、こういう王子様みたいな人が好みだったはずなんだけどな。
それがいまでは、桔平くんよりかっこいい人なんていないって思っている。目つきと口が悪くて変わり者な、私だけの王子様。そういう人と出会えたこと自体、奇跡なんだよね。
現実は、少女漫画のように上手くいかないことばかり。そんなことは分かっているけれど。自分自身が少女漫画のような恋を経験してしまったから、大好きな友達にも、そういう奇跡が起こればいいのにって願ってしまう。
七海だけじゃない。翔流くんだって、桔平くんにとって大切な友達だし。そんなふたりが上手くいってくれたらいいなって思うのは、やっぱりお節介なのかな。
「すげぇお節介だろ、どう考えても。たとえ大好物なものでも、周りから執拗に食え食え言われたら、ウンザリするじゃねぇか」
帰宅してからまた七海の話をすると、桔平くんにバッサリと切り捨てられた……優しくない。
ううん、本当は分かっている。こんな風に言うのは、私が下手に首を突っ込んで、他人の感情に巻き込まれてしまうのを心配しているから。桔平くんなりの優しさだって、ちゃんと分かっているの。
でも、言い方よ。言い方が優しくないの。桔平くんらしいといえば、らしいんだけど。
「つーか、1万円もするチョコって。そっちにビックリだわ」
桜吹雪に錦鯉が描かれた鮮やかな羽織を着ながら、桔平くんが言った。今日は米田さんや小林さんたちとのグループ展の打ち合わせで、渋谷へ行くんだって。
「案外、そんなものだよ。もっと高い教室もたくさんあるし」
「そんな高級なもんを翔流に食わせるなんて、なんか勿体ねぇな。あいつは甘けりゃなんでもいいんだぞ」
「それだけの気持ちがあるってことじゃないの?」
「だからさ。そうやって、他人の気持ちを勝手に推し量るのがよくねぇって言ってんの」
ため息まじりに言われて、なんだかとても悲しくなってしまった。
言いたいことは分かる。でも、いったん「そうかもね」ぐらい言ってくれてもいいじゃない。ワンクッションというか、オブラートに包むというか。思っていないことは口にできない人だから、仕方ないんだけど……。
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。
「縁があるなら、落ち着くところに自然と落ち着くものだよ」
「彼氏にも同じこと言われました。他人のことに、首を突っ込むなって……」
「そっか。感情って、すごく複雑だからね。まだフワフワしている段階で外からの力が加わると、変に歪んでしまうこともあるだろうし。だから姫野さんの彼も、そんな風に言ったんじゃない?」
香月さんが、にっこり笑う。噂の必殺スマイル……確かに、これはとてつもなく破壊力ある。
本当は私、こういう王子様みたいな人が好みだったはずなんだけどな。
それがいまでは、桔平くんよりかっこいい人なんていないって思っている。目つきと口が悪くて変わり者な、私だけの王子様。そういう人と出会えたこと自体、奇跡なんだよね。
現実は、少女漫画のように上手くいかないことばかり。そんなことは分かっているけれど。自分自身が少女漫画のような恋を経験してしまったから、大好きな友達にも、そういう奇跡が起こればいいのにって願ってしまう。
七海だけじゃない。翔流くんだって、桔平くんにとって大切な友達だし。そんなふたりが上手くいってくれたらいいなって思うのは、やっぱりお節介なのかな。
「すげぇお節介だろ、どう考えても。たとえ大好物なものでも、周りから執拗に食え食え言われたら、ウンザリするじゃねぇか」
帰宅してからまた七海の話をすると、桔平くんにバッサリと切り捨てられた……優しくない。
ううん、本当は分かっている。こんな風に言うのは、私が下手に首を突っ込んで、他人の感情に巻き込まれてしまうのを心配しているから。桔平くんなりの優しさだって、ちゃんと分かっているの。
でも、言い方よ。言い方が優しくないの。桔平くんらしいといえば、らしいんだけど。
「つーか、1万円もするチョコって。そっちにビックリだわ」
桜吹雪に錦鯉が描かれた鮮やかな羽織を着ながら、桔平くんが言った。今日は米田さんや小林さんたちとのグループ展の打ち合わせで、渋谷へ行くんだって。
「案外、そんなものだよ。もっと高い教室もたくさんあるし」
「そんな高級なもんを翔流に食わせるなんて、なんか勿体ねぇな。あいつは甘けりゃなんでもいいんだぞ」
「それだけの気持ちがあるってことじゃないの?」
「だからさ。そうやって、他人の気持ちを勝手に推し量るのがよくねぇって言ってんの」
ため息まじりに言われて、なんだかとても悲しくなってしまった。
言いたいことは分かる。でも、いったん「そうかもね」ぐらい言ってくれてもいいじゃない。ワンクッションというか、オブラートに包むというか。思っていないことは口にできない人だから、仕方ないんだけど……。