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決闘するなよ、俺以外のヤツと 4

ー/ー



「タノベ殿、ムツヤ殿が言っていたハーレムというのは誤解なんだ」

「じゃあこの状況は何ですか!?」

 モモが弁明をするが、あまり意味がなかったみたいだ。

「あー、じゃあ論より証拠っつーわけで。ユモトお前が男だって証拠見せてやれ」

「な、ななななにを言ってるんですか! こんな可愛い子が男の子のはずがないでしょう!?」

 タノベは慌てて言う、ユモトは赤面してそれを聞いていた。

「僕が見せてムツヤさんの疑惑が晴れるのならば……」

「そうよ! 減るもんじゃないし!」

 ユモトは服の裾を持ち上げてその宝物庫の宝玉を御開帳しようとしている。

「ユモトさん!? そんな事しちゃダメです! おのれ、こんな変態じみたことをユモトさんにやらせるなんて……」

 タノベはすぅーっと息を息を吸って吐く。そして鋭い眼光でムツヤを見た。

「改めてあなたに決闘を申し込みます。時間は明日の14時、この街の闘技場で、逃げたらどこまでも追いかけます」

 言いたいことを言い終えるとタノベはドアを締めて出ていってしまう。

「何か戦う気満々なんですけど!?」

 ルーはどうしようとアシノを見た。

「まぁ、ムツヤに初心者っぽい戦い方を学ばせる良い機会かもしれんな、よし。今日はもう休め、明日付け焼き刃で戦う訓練をするぞ」

 朝になり、ムツヤ達は宿屋を出ると街外れの開けた場所まで来た。

 周囲に人が居ないか探知し、魔剣ムゲンジゴクをレプリカと取り替えてムツヤは抜刀する。

「剣を扱えるのはモモだけだからな、悪いがムツヤの相手を頼む」

「承知しました」

 モモも剣を抜いてムツヤの前に立つ。お互い真剣だが、実力差があるので怪我の心配は無いだろう。

「まずはモモの攻撃をかわしたり受け止めたりしてみろ」

「ムツヤ殿、行きますよ!」

「お願いしまず!!」

 モモは走り出してムツヤに斬りかかった。上から振り下ろされた剣をムツヤは最小限の動きで避ける。

 次に振り上げ、横なぎと剣を振り回すが、それも全て紙一重でかわされ。

 最後の体重を乗せた一撃も軽々と剣で受け止められて、弾かれてしまった。

「こりゃどうしたものかな……」

「完全に達人の動きね」

 アシノもルーもはぁっとため息をつく。

「とりあえずムツヤ、そのギリギリでかわすのをやめろ。後は剣を受け止めた時によろけたり、力を入れてるふりをするんだ」

「わがりまじだ!!」

 ムツヤとモモの特訓は仕切り直しになる。またモモが斬りかかり、今度は大きく飛び跳ねてムツヤはかわした。確かに大きくかわしたのだが……

「まてコラ!! お前は加減ってものが分からんのか!!!」

 十数メートル後ろまでその場からの跳躍でムツヤは飛び跳ねていた。やっぱコイツはバケモノだとアシノは再認識する。

「お手本でも見せてあげられれば良いんだけど、私は召喚術師だし、ヨーリィちゃんも相当強いし……」

 手本と聞いてアシノはハッとした。

 何故、最初に気付かなかったんだとちょっと呆れながらも。

「そうだ、手本ならそれこそ闘技場で見れば良いじゃねーか」

「それよ!!!」

「そうと決まれば急いで行くぞ」

 アシノは再び街に向かって歩き出す。ムツヤ達もその後を付いて行った。

「あそこに見えるのが闘技場だ」

 アシノは遠くの建物を指差す。

「大きな建物ですねー」

 感心してムツヤは言う。モモとユモトも闘技場を見るのは初めてのようで興味津々ではあった。

「これでも闘技場としては小さい方だぞ」

「スーナの街の冒険者ギルドにあった闘技場とはまた違うのですか?」

 モモの質問にルーが答える。

「冒険者ギルドのは試験や手合わせなんかで使うから一般には公開されてないの。ここは入場料を払えば誰でも観戦できるわ」

 モモは「なるほど」と納得をした。

「昔は奴隷を戦わせてたんだが、今の闘技場は冒険者の腕試しや正式な決闘の場になってる」

「奴隷をですか……」

 亜人のモモは少し複雑な気持ちだった。それを察してアシノは言葉を続ける。

「まぁ、この街のは最近になって作られた闘技場だからそういう歴史は無いがな」

「そうですか……」

 あくまでこの街だけで奴隷が戦っていなかったというだけで、亜人の奴隷が戦わされていた事実は変わらない。いらん事を言ったかとアシノは頭を掻いた。

「すまんモモ、ちょっと無神経な説明だったな」

「い、いえ、気になさらないで下さい!」

「モモちゃん!! アシノが謝るなんて珍しいわよ、土下座させちゃいましょう土下座!!」

「お前は黙ってろ!」

 アシノが騒ぐルーの頭を引っ叩くと「プリンッ!」と奇声を上げる。いつものやり取りにモモはクスクスと笑った。

「それでだ、闘技場は大きくわけて3種類の試合がある。1つは木刀を使って魔法の使用は禁止の、通称『子供の喧嘩』って言われてる試合形式だ」

 全員がアシノの話を聞きながら歩く、ルーは知っているらしく少し退屈そうだったが。

「次が武器の使用が認められているが、魔法は禁止の試合。これは剣士の試合だな。そして、武器も魔法も何でもアリの試合だ」

「つくづく思うけどさー、闘技場って魔術師に不利よねー」

「魔法のみの試合や団体戦もあるが、この辺じゃあまりメジャーじゃないからな」

 なるほどと全員が理解したと同時に闘技場へ着いた。アシノが入場料を払って皆で観客席に座る。

「ちょうど試合が始まる頃だな。午前中だから木刀の試合だ」

 木刀の試合はあまり人気が無いらしく、観客席はまばらだった。

 ファンファーレが鳴ると北と南の門が開き、防具を身にまとい、木刀を手にした男がそれぞれ入ってきた。

 闘技場の中央の審判の近くまで歩き、木刀を構える。

 すると審判が天に上げた手を振り下ろした。これが試合開始の合図だ。

 大声で叫んで男が突っ込むと相手は斜めに木刀を構えて受け止めようとするが、叩きつけるように降ろされた木刀に体が持っていかれてよろめく。

 そのスキを逃さずに…… 行くものだと思ったが、2人は距離を取ってにらみ合いになる。その後もカツンカツンと迫力のない攻防を繰り広げていく。

「あの、何ていうか……」

 苦笑いをしてユモトは言った。

「まー、宿場町の小さい闘技場で、しかも木刀の試合っつったらこんなもんだな」

 あくびをしてアシノは言う。

「ひょうよ、これふぁひょひんひゃのふぁふぁふぁいよ!」

 ルーの姿が見えないと思っていたら売店で買ったケバブを頬張っていた。

「汚えから食いながら喋んな!!」

「んっ、ちゃんと皆の分も買ってきたわよ」

「あ、ありがとうございます」

 ユモトは受け取り礼を言った。ムツヤ達もそれと同じ様に受け取る。

「んー、これ美味しいでずね!!」

「でしょー?」

「確かに、食べたことのない味ですが美味しいです」

 皆、試合のことはそっちのけでケバブに夢中になっていた。


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「じゃあこの状況は何ですか!?」
 モモが弁明をするが、あまり意味がなかったみたいだ。
「あー、じゃあ論より証拠っつーわけで。ユモトお前が男だって証拠見せてやれ」
「な、ななななにを言ってるんですか! こんな可愛い子が男の子のはずがないでしょう!?」
 タノベは慌てて言う、ユモトは赤面してそれを聞いていた。
「僕が見せてムツヤさんの疑惑が晴れるのならば……」
「そうよ! 減るもんじゃないし!」
 ユモトは服の裾を持ち上げてその宝物庫の宝玉を御開帳しようとしている。
「ユモトさん!? そんな事しちゃダメです! おのれ、こんな変態じみたことをユモトさんにやらせるなんて……」
 タノベはすぅーっと息を息を吸って吐く。そして鋭い眼光でムツヤを見た。
「改めてあなたに決闘を申し込みます。時間は明日の14時、この街の闘技場で、逃げたらどこまでも追いかけます」
 言いたいことを言い終えるとタノベはドアを締めて出ていってしまう。
「何か戦う気満々なんですけど!?」
 ルーはどうしようとアシノを見た。
「まぁ、ムツヤに初心者っぽい戦い方を学ばせる良い機会かもしれんな、よし。今日はもう休め、明日付け焼き刃で戦う訓練をするぞ」
 朝になり、ムツヤ達は宿屋を出ると街外れの開けた場所まで来た。
 周囲に人が居ないか探知し、魔剣ムゲンジゴクをレプリカと取り替えてムツヤは抜刀する。
「剣を扱えるのはモモだけだからな、悪いがムツヤの相手を頼む」
「承知しました」
 モモも剣を抜いてムツヤの前に立つ。お互い真剣だが、実力差があるので怪我の心配は無いだろう。
「まずはモモの攻撃をかわしたり受け止めたりしてみろ」
「ムツヤ殿、行きますよ!」
「お願いしまず!!」
 モモは走り出してムツヤに斬りかかった。上から振り下ろされた剣をムツヤは最小限の動きで避ける。
 次に振り上げ、横なぎと剣を振り回すが、それも全て紙一重でかわされ。
 最後の体重を乗せた一撃も軽々と剣で受け止められて、弾かれてしまった。
「こりゃどうしたものかな……」
「完全に達人の動きね」
 アシノもルーもはぁっとため息をつく。
「とりあえずムツヤ、そのギリギリでかわすのをやめろ。後は剣を受け止めた時によろけたり、力を入れてるふりをするんだ」
「わがりまじだ!!」
 ムツヤとモモの特訓は仕切り直しになる。またモモが斬りかかり、今度は大きく飛び跳ねてムツヤはかわした。確かに大きくかわしたのだが……
「まてコラ!! お前は加減ってものが分からんのか!!!」
 十数メートル後ろまでその場からの跳躍でムツヤは飛び跳ねていた。やっぱコイツはバケモノだとアシノは再認識する。
「お手本でも見せてあげられれば良いんだけど、私は召喚術師だし、ヨーリィちゃんも相当強いし……」
 手本と聞いてアシノはハッとした。
 何故、最初に気付かなかったんだとちょっと呆れながらも。
「そうだ、手本ならそれこそ闘技場で見れば良いじゃねーか」
「それよ!!!」
「そうと決まれば急いで行くぞ」
 アシノは再び街に向かって歩き出す。ムツヤ達もその後を付いて行った。
「あそこに見えるのが闘技場だ」
 アシノは遠くの建物を指差す。
「大きな建物ですねー」
 感心してムツヤは言う。モモとユモトも闘技場を見るのは初めてのようで興味津々ではあった。
「これでも闘技場としては小さい方だぞ」
「スーナの街の冒険者ギルドにあった闘技場とはまた違うのですか?」
 モモの質問にルーが答える。
「冒険者ギルドのは試験や手合わせなんかで使うから一般には公開されてないの。ここは入場料を払えば誰でも観戦できるわ」
 モモは「なるほど」と納得をした。
「昔は奴隷を戦わせてたんだが、今の闘技場は冒険者の腕試しや正式な決闘の場になってる」
「奴隷をですか……」
 亜人のモモは少し複雑な気持ちだった。それを察してアシノは言葉を続ける。
「まぁ、この街のは最近になって作られた闘技場だからそういう歴史は無いがな」
「そうですか……」
 あくまでこの街だけで奴隷が戦っていなかったというだけで、亜人の奴隷が戦わされていた事実は変わらない。いらん事を言ったかとアシノは頭を掻いた。
「すまんモモ、ちょっと無神経な説明だったな」
「い、いえ、気になさらないで下さい!」
「モモちゃん!! アシノが謝るなんて珍しいわよ、土下座させちゃいましょう土下座!!」
「お前は黙ってろ!」
 アシノが騒ぐルーの頭を引っ叩くと「プリンッ!」と奇声を上げる。いつものやり取りにモモはクスクスと笑った。
「それでだ、闘技場は大きくわけて3種類の試合がある。1つは木刀を使って魔法の使用は禁止の、通称『子供の喧嘩』って言われてる試合形式だ」
 全員がアシノの話を聞きながら歩く、ルーは知っているらしく少し退屈そうだったが。
「次が武器の使用が認められているが、魔法は禁止の試合。これは剣士の試合だな。そして、武器も魔法も何でもアリの試合だ」
「つくづく思うけどさー、闘技場って魔術師に不利よねー」
「魔法のみの試合や団体戦もあるが、この辺じゃあまりメジャーじゃないからな」
 なるほどと全員が理解したと同時に闘技場へ着いた。アシノが入場料を払って皆で観客席に座る。
「ちょうど試合が始まる頃だな。午前中だから木刀の試合だ」
 木刀の試合はあまり人気が無いらしく、観客席はまばらだった。
 ファンファーレが鳴ると北と南の門が開き、防具を身にまとい、木刀を手にした男がそれぞれ入ってきた。
 闘技場の中央の審判の近くまで歩き、木刀を構える。
 すると審判が天に上げた手を振り下ろした。これが試合開始の合図だ。
 大声で叫んで男が突っ込むと相手は斜めに木刀を構えて受け止めようとするが、叩きつけるように降ろされた木刀に体が持っていかれてよろめく。
 そのスキを逃さずに…… 行くものだと思ったが、2人は距離を取ってにらみ合いになる。その後もカツンカツンと迫力のない攻防を繰り広げていく。
「あの、何ていうか……」
 苦笑いをしてユモトは言った。
「まー、宿場町の小さい闘技場で、しかも木刀の試合っつったらこんなもんだな」
 あくびをしてアシノは言う。
「ひょうよ、これふぁひょひんひゃのふぁふぁふぁいよ!」
 ルーの姿が見えないと思っていたら売店で買ったケバブを頬張っていた。
「汚えから食いながら喋んな!!」
「んっ、ちゃんと皆の分も買ってきたわよ」
「あ、ありがとうございます」
 ユモトは受け取り礼を言った。ムツヤ達もそれと同じ様に受け取る。
「んー、これ美味しいでずね!!」
「でしょー?」
「確かに、食べたことのない味ですが美味しいです」
 皆、試合のことはそっちのけでケバブに夢中になっていた。