17
ー/ー
「ねぇ、今年の年末も北海道に帰っていい?」
10日ぶりに東京へと帰る飛行機の中で、愛茉が遠慮気味に訊いてきた。それはつまり、またオレも一緒に来てほしいということだろう。
「そうだな。年末年始を過ごすなら、北海道のほうがいいわ」
年が明けたばかりで年末の話をするというのも滑稽だが、愛茉となら、ずっと未来の話でもしていたい。家族とは、きっとそういうものなのだろう。
そして東京に帰ってきた翌日。オレはひとりで、横浜の実家へと向かった。
前にここへ来たのはいつだったか。もう覚えていないぐらい前のような気もする。訪いを入れると、昔から住み込みで家事を手伝ってくれている原田さんが、嬉々とした表情でリビングに通してくれた。
「まぁ、桔平! おかえりなさい!」
母のエリサは、今年で53歳になるとは思えないほど若い。久しぶりに顔を見ても、老けたという印象はなかった。
「本條さんは、仕事?」
「ええ、お仕事よ」
オレは義父のことを姓で呼んでいた。別に他意があってのことではないが、自分が浅尾姓のままだからというのも原因かもしれない。
決して懐かず、他人だと言わんばかりに自分を姓で呼ぶ再婚相手の連れ子。養子縁組をしていないから正確に言えば義父ではなく他人ではあるものの、こんな子供を可愛いと思えるはずがない。それでも本條さんは、オレの高校や大学進学の支援をしてくれた。感謝してもしきれないぐらいの想いは持っている。
「これ、北海道土産」
「わぁ、ルタオね! ありがとう。私、大好きなのよ。お紅茶淹れるから、桔平も一緒に食べましょう」
「いや、オレはいいよ」
「ちょうど新しい茶葉を買ったの。淹れてくるから、待っててね」
人の話を聞かず、ドレスのようなワンピースの裾を翻してキッチンへと向かう。こういうところは、相変わらずだ。
他人の家のように感じるリビングでしばらく待っていると、オレが買ってきたドゥーブルフロマージュと紅茶を、母が自ら運んできた。
「フィアンセのご実家に、ご挨拶へ伺ったんですって?」
小樽土産に舌鼓を打ったあと、母が尋ねてきた。楓の奴、本当にそう言ったのか。
「帰省に付き合っただけ。あと、ついでに観光」
「あら、そうなの。結婚する予定だって、楓ちゃんが言っていたけれど」
「先の話だよ」
それ以上訊くなというオレのオーラを感じ取ったのか、母は黙って紅茶を口に運んだ。愛茉のお父さんとは会話が弾むというのに、なぜか肉親相手だと同じようにはいかない。
しばらくの沈黙のあと、再び母が口を開いた。
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10日ぶりに東京へと帰る飛行機の中で、愛茉が遠慮気味に訊いてきた。それはつまり、またオレも一緒に来てほしいということだろう。
「そうだな。年末年始を過ごすなら、北海道のほうがいいわ」
年が明けたばかりで年末の話をするというのも滑稽だが、愛茉となら、ずっと未来の話でもしていたい。家族とは、きっとそういうものなのだろう。
そして東京に帰ってきた翌日。オレはひとりで、横浜の実家へと向かった。
前にここへ来たのはいつだったか。もう覚えていないぐらい前のような気もする。訪いを入れると、昔から住み込みで家事を手伝ってくれている原田さんが、嬉々とした表情でリビングに通してくれた。
「まぁ、桔平! おかえりなさい!」
母のエリサは、今年で53歳になるとは思えないほど若い。久しぶりに顔を見ても、老けたという印象はなかった。
「本條さんは、仕事?」
「ええ、お仕事よ」
オレは義父のことを姓で呼んでいた。別に他意があってのことではないが、自分が浅尾姓のままだからというのも原因かもしれない。
決して懐かず、他人だと言わんばかりに自分を姓で呼ぶ再婚相手の連れ子。養子縁組をしていないから正確に言えば義父ではなく他人ではあるものの、こんな子供を可愛いと思えるはずがない。それでも本條さんは、オレの高校や大学進学の支援をしてくれた。感謝してもしきれないぐらいの想いは持っている。
「これ、北海道土産」
「わぁ、ルタオね! ありがとう。私、大好きなのよ。お紅茶淹れるから、桔平も一緒に食べましょう」
「いや、オレはいいよ」
「ちょうど新しい茶葉を買ったの。淹れてくるから、待っててね」
人の話を聞かず、ドレスのようなワンピースの裾を翻してキッチンへと向かう。こういうところは、相変わらずだ。
他人の家のように感じるリビングでしばらく待っていると、オレが買ってきたドゥーブルフロマージュと紅茶を、母が自ら運んできた。
「フィアンセのご実家に、ご挨拶へ伺ったんですって?」
小樽土産に舌鼓を打ったあと、母が尋ねてきた。楓の奴、本当にそう言ったのか。
「帰省に付き合っただけ。あと、ついでに観光」
「あら、そうなの。結婚する予定だって、楓ちゃんが言っていたけれど」
「先の話だよ」
それ以上訊くなというオレのオーラを感じ取ったのか、母は黙って紅茶を口に運んだ。愛茉のお父さんとは会話が弾むというのに、なぜか肉親相手だと同じようにはいかない。
しばらくの沈黙のあと、再び母が口を開いた。