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【Independence~親離れ?~】①

ー/ー



「うちの娘さぁ。もう今年から中学生なんだけど、いまだに『パパ、パパ!』なんだよな。親離れできてなくて困るんだよ……」
 圭亮の言葉に、同じチームの後輩である若林 達大が突っ込む。

「いや、天城さん。その顔、全然困ってませんよね?」
 慌てて緩んでいたらしい表情を引き締める圭亮に、彼は呆れたように笑った。

    ◇  ◇  ◇
「パパ! こんなとこで寝ないで! もう、お酒臭いよ。やだぁ」
 職場の歓送迎会から帰宅した圭亮が、ソファに腰を下ろしてつい身体を横に倒した途端、真理愛の苦言が飛ぶ。

「あ! あー、ゴメン」
「ほら、早くお風呂入って! 絶対ここで寝ないでよね!」
「はいはい。真理愛はもう入ったのか?」
「もうみんな入ったよ。あとパパだけだから」
 飲み会文化(ノミニケーション)が盛んな職場ではないので、全体での飲みの機会は歓送迎会と忘年会か新年会くらいだ。プライベートで誘い合って行くケースはもちろんあるが、家庭持ちは基本的に参加しない者も珍しくない。
 実際、圭亮も真理愛と暮らし始めて以来、外で飲むこと自体がほとんどなくなった。もともと、特別酒や飲みの席が好きなわけでもないので困らないのだが。
 泥酔時の入浴は危険だというが、圭亮は量自体はたいして過ごしていない。
 しかし、このままここにいると本当に眠ってしまいそうで、圭亮は立ち上がって風呂場へ向かった。

「……昨夜さぁ、久し振りに飲んだからかソファで寝そうになったら娘に怒られちゃって。ちょっと前まで『パパ大好き~』だったんだよ。なんかこのままだらしないオヤジだって嫌われたらどうしたらいい?」
 翌朝のオフィスで、圭亮の泣き言に達大が冷静に答える。

「だらしないところ見せなきゃいいんじゃないでしょうか」
「いや、その通りだけど。ま、でもそうだよな。カッコいいパパで居たいよなぁ」
「天城さん、娘さんはちゃんと親離れできてるんじゃないですか? むしろ天城さんが子離れできなさそう……」
 彼が遠慮がちに、それでもズバリ指摘して来た。

「……言ってくれるなよ。自分でも心配してるんだから」
 痛いところを突かれ、圭亮は弱々しく呟く。

「でも、僕の娘も『パパあっち行って!』とか言うようになるんでしょうか。今は『パパだいすき!』なんですけど。超可愛いんですけど」
 我が身に置き換えてみたのか、急に不安になった様子の達大が零した。

「若林くんの娘さんてかなり小さいだろ?」
「三歳です」
「それならまだまだ! ──あー、だけど周りの話聞いてると、早い子は小学校の低学年くらいでもそんな感じらしいね」
「小学校、ってもうあと何年かじゃないですか……」
 圭亮の台詞に彼が悲痛な声を出す。

「いや、だから個人差大きいから。うちの娘は俺の悪いとこビシビシ注意はするけど、『嫌い』とか『あっち行け』とかは言わないし」



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「うちの娘さぁ。もう今年から中学生なんだけど、いまだに『パパ、パパ!』なんだよな。親離れできてなくて困るんだよ……」
 圭亮の言葉に、同じチームの後輩である若林 達大が突っ込む。
「いや、天城さん。その顔、全然困ってませんよね?」
 慌てて緩んでいたらしい表情を引き締める圭亮に、彼は呆れたように笑った。
    ◇  ◇  ◇
「パパ! こんなとこで寝ないで! もう、お酒臭いよ。やだぁ」
 職場の歓送迎会から帰宅した圭亮が、ソファに腰を下ろしてつい身体を横に倒した途端、真理愛の苦言が飛ぶ。
「あ! あー、ゴメン」
「ほら、早くお風呂入って! 絶対ここで寝ないでよね!」
「はいはい。真理愛はもう入ったのか?」
「もうみんな入ったよ。あとパパだけだから」
 |飲み会文化《ノミニケーション》が盛んな職場ではないので、全体での飲みの機会は歓送迎会と忘年会か新年会くらいだ。プライベートで誘い合って行くケースはもちろんあるが、家庭持ちは基本的に参加しない者も珍しくない。
 実際、圭亮も真理愛と暮らし始めて以来、外で飲むこと自体がほとんどなくなった。もともと、特別酒や飲みの席が好きなわけでもないので困らないのだが。
 泥酔時の入浴は危険だというが、圭亮は量自体はたいして過ごしていない。
 しかし、このままここにいると本当に眠ってしまいそうで、圭亮は立ち上がって風呂場へ向かった。
「……昨夜さぁ、久し振りに飲んだからかソファで寝そうになったら娘に怒られちゃって。ちょっと前まで『パパ大好き~』だったんだよ。なんかこのままだらしないオヤジだって嫌われたらどうしたらいい?」
 翌朝のオフィスで、圭亮の泣き言に達大が冷静に答える。
「だらしないところ見せなきゃいいんじゃないでしょうか」
「いや、その通りだけど。ま、でもそうだよな。カッコいいパパで居たいよなぁ」
「天城さん、娘さんはちゃんと親離れできてるんじゃないですか? むしろ天城さんが子離れできなさそう……」
 彼が遠慮がちに、それでもズバリ指摘して来た。
「……言ってくれるなよ。自分でも心配してるんだから」
 痛いところを突かれ、圭亮は弱々しく呟く。
「でも、僕の娘も『パパあっち行って!』とか言うようになるんでしょうか。今は『パパだいすき!』なんですけど。超可愛いんですけど」
 我が身に置き換えてみたのか、急に不安になった様子の達大が零した。
「若林くんの娘さんてかなり小さいだろ?」
「三歳です」
「それならまだまだ! ──あー、だけど周りの話聞いてると、早い子は小学校の低学年くらいでもそんな感じらしいね」
「小学校、ってもうあと何年かじゃないですか……」
 圭亮の台詞に彼が悲痛な声を出す。
「いや、だから個人差大きいから。うちの娘は俺の悪いとこビシビシ注意はするけど、『嫌い』とか『あっち行け』とかは言わないし」