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【My girl~愛娘~】①

ー/ー



「圭亮。お母さん買い物に行きたいんだけど、付き合ってもらえる? お米を買いたいのよ」
 母の言葉に、圭亮は承諾を返した。

「いいよ、もちろん。重いもんな。そういうのは必ず言ってくれよ。……ああ、買い物なら真理愛も──」
「真理愛ちゃんまで行ったら、お父さんが寂しがるじゃない。真理愛ちゃん、おじいちゃんとお留守番しててくれる?」
「うん、わかった~」
「ありがとう、真理愛ちゃん。おじいちゃんとゲームしようか?」
 年寄り扱いにも苦言を呈さない父に、多少の違和感を覚える。──その理由は、出先で判明した。

「ねえ、お母さんちょっと休みたいわ。お茶飲んで行きましょう」
 一通り買い物が済んだあと、母が切り出す。
 普段は外でお茶などしたがらない母の申し出を不思議には思ったのだが、そういう気分なのかとあっさり流した。

「いいけど」
 二人で適当に目についたカフェに入る。

「圭亮。もし結婚するなら、真理愛ちゃんのことを最優先に考えてあげてね」
 唐突な母の台詞に、圭亮はコーヒーに()せそうになった。

「な、何。何を急に、母さん──」
「お付き合いしてる方がいるんじゃないの? ああ、もちろんそれは構わないのよ。あなたもまだ三十四歳なんだし」
「……いや、俺まだ三十三だから」
「あら、そうだった? とにかく、お母さんもお父さんも結婚そのものに反対する気はないの。ただ、真理愛ちゃんがいることだけは忘れないで」
 母の忠告に、圭亮は心外だという気持ちを隠さなかった。

「忘れるわけないだろ。その、彼女、にも真っ先に話してるよ。というか、職場でも俺が子持ちでシングルファーザーなのは知れ渡ってるし」
 あくまでもプライベートであり、家庭の事情について正式に説明したことはない。(こと)に真理愛に纏わる詳細は、簡単に口にできることではないのだから。
 そのため、特に圭亮より若い社員の間には「学生結婚して離婚したあと、元奥さんが亡くなって娘さんを引き取った」という、真実と遠いのか近いのかわからない説が普通に広まっているらしかった。
 別に実害もないし、放置しているのが現状だ。
 説明に困るのは事実なので、勝手に思い込んでくれているならむしろ好都合なくらいだった。
 実際に結婚歴はないので当然なのだが、「結婚したことを聞いた人が居ない」というのが何故か『学生結婚』に繋がったようだ。



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「圭亮。お母さん買い物に行きたいんだけど、付き合ってもらえる? お米を買いたいのよ」
 母の言葉に、圭亮は承諾を返した。
「いいよ、もちろん。重いもんな。そういうのは必ず言ってくれよ。……ああ、買い物なら真理愛も──」
「真理愛ちゃんまで行ったら、お父さんが寂しがるじゃない。真理愛ちゃん、おじいちゃんとお留守番しててくれる?」
「うん、わかった~」
「ありがとう、真理愛ちゃん。おじいちゃんとゲームしようか?」
 年寄り扱いにも苦言を呈さない父に、多少の違和感を覚える。──その理由は、出先で判明した。
「ねえ、お母さんちょっと休みたいわ。お茶飲んで行きましょう」
 一通り買い物が済んだあと、母が切り出す。
 普段は外でお茶などしたがらない母の申し出を不思議には思ったのだが、そういう気分なのかとあっさり流した。
「いいけど」
 二人で適当に目についたカフェに入る。
「圭亮。もし結婚するなら、真理愛ちゃんのことを最優先に考えてあげてね」
 唐突な母の台詞に、圭亮はコーヒーに|噎《む》せそうになった。
「な、何。何を急に、母さん──」
「お付き合いしてる方がいるんじゃないの? ああ、もちろんそれは構わないのよ。あなたもまだ三十四歳なんだし」
「……いや、俺まだ三十三だから」
「あら、そうだった? とにかく、お母さんもお父さんも結婚そのものに反対する気はないの。ただ、真理愛ちゃんがいることだけは忘れないで」
 母の忠告に、圭亮は心外だという気持ちを隠さなかった。
「忘れるわけないだろ。その、彼女、にも真っ先に話してるよ。というか、職場でも俺が子持ちでシングルファーザーなのは知れ渡ってるし」
 あくまでもプライベートであり、家庭の事情について正式に説明したことはない。|殊《こと》に真理愛に纏わる詳細は、簡単に口にできることではないのだから。
 そのため、特に圭亮より若い社員の間には「学生結婚して離婚したあと、元奥さんが亡くなって娘さんを引き取った」という、真実と遠いのか近いのかわからない説が普通に広まっているらしかった。
 別に実害もないし、放置しているのが現状だ。
 説明に困るのは事実なので、勝手に思い込んでくれているならむしろ好都合なくらいだった。
 実際に結婚歴はないので当然なのだが、「結婚したことを聞いた人が居ない」というのが何故か『学生結婚』に繋がったようだ。