「真理愛、じゃあそれでいいか? もっと他も見る?」
「これがいい」
圭亮の問いに、真理愛は小さな声で、それでもはっきりと答えた。
「すみません、これいただきます」
圭亮は店員に申し出て、揃ってレジに移動する。
支払いは母がするため、圭亮は父と真理愛と一緒に邪魔にならないようにレジの少し後方で待つことにした。
事前に、両親には入学祝としてランドセルは買いたいと言われていたのだ。
「いいのよ。ランドセルはじじばばが買うものなんだって相場は決まってるから」
「離れて住んでたらそうかもしれないけど、うちは違うじゃん。普段から世話になりっ放しなのに」
圭亮が固辞するのも、特に母がどうしても承知せず、結局は根負けして甘えることにしたのだった。
「母さん、ありがとう。俺持つよ」
「おばあちゃん、おじいちゃん、ありがとう」
圭亮がランドセルの大きな箱を受け取るのに、横から真理愛が嬉しそうに礼を言う。
「いよいよ小学生なのねぇ。楽しみね、真理愛ちゃん」
「うん」
まだ半年以上先ではあるが、真理愛にとって初めての集団生活が始まるのだ。
正直、喜びより心配の方が大きいのは否めない。しかし、こちらが動揺してしまい真理愛に不安感を抱かせるのは良くないだろう。
そういうわけで、三人とも努めて「入学は嬉しい、楽しいこと」だと伝えるようにしていた。
出逢って一年近く。
真理愛は会話も随分スムーズになった。多少人見知りはするが、無条件で他人を怖がるようなことはない。
このまま同年代の子どもと楽しい時間を過ごして欲しいというのが、圭亮と両親の願いだ。
~END~