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稲妻 ―2―

ー/ー



激しい攻防で、轟音と共に雷が迸る。全身が帯電し、あらゆる攻撃を仕掛けレオノールと対峙するのは、七曜の魔法使いの1人、『木曜(フエベス)』。足に仕込ませた2本のスティレットを巧みに使いこなし、雷を掻い潜り、のらりくらりと攻撃を躱す。


(……避け


 攻防の中、木曜(フエベス)が感じたのは殺意の無さだった。張り巡らされた雷からは殺意を感じない。多くの場数を踏んできた木曜(フエベス)だからこそ分かる違和感だった。


(誘われている? いや、この感じは……時間稼ぎか)

(って、バレてるんだろうな)


 激しい戦闘の中、繰り広げられるのは腹の中の探り合い。相手の目的を、癖を、実力を見極めた所から本当の戦いは始まる。
 レオノールは、こういった戦いが大の苦手だ。頭を働かせながら戦うことができない。というのも、レオノールは旭、国綱と比べてそれほど頭が良くないのだ。むしろ頭の良さは『悪い』と言ってもいい。頭を働かせるだけで精一杯になってしまう。


(撃ち合いに自信があるか? なら、こっちから行ってやる!)

(……ッ! 来る!)


 木曜(フエベス)のスティレットの先端に魔素(マナ)が集まっていく。咄嗟に身構えるレオノールは前方に雷を集め、重ねて防御魔法を展開する。一瞬、辺りは稲光とは違う光に包まれる。


「……なっ」


 だが――


(なんで使()()()()!)

「”迅雷(じんらい)”ッ!」

「あぁ、もう!……痛ったいんだよ、くそが!」


 魔法が発動することはなく、虚しくも光は消えていく。困惑し、戸惑う木曜(フエベス)をレオノールは逃がさない。雷は閃光となり、木曜(フエベス)の左腕を掠めた。


(なんでっ! ここに来る前までは使えてたのに!)


 余裕な顔をしていた木曜(フエベス)の表情は徐々に険しくなっていく。スティレットを握る手の力が強まり、赤い血が腕を伝っていく。
 レオノールはこの瞬間に勝機を見出した。今、この瞬間を逃せば次は無い。この一瞬が勝敗を分ける。溜め込んでいた魔力が、雷が放出される。レオノールが青白い光を纏う。


「……くそ」

「”雷迎(らいごう)”ッ!」


 稲妻が空間を切り裂く。鼓膜を突き破るほどのけたたましい音は脳までも揺らす。雷は全てを諦めたような顔をした木曜(フエベス)に直撃し、影も残さないほどの光に包まれる。
 だが、レオノールには誤算があった。()()を理解していたのにも関わらず、まるで、目の前の木曜(フエベス)()()であると断定してしまっていた。


「……嘘だろ」


 稲光が過ぎ去った後、残されていたのはボロボロになった植物の塊だった。木の根、枝、花。植物で構成された人間のような形をした人形が無造作に置かれていた。


(血は!? さっき流れてただろ!)


 すべて偽物だったのだ。床に残された赤い液体は食の色素が溶け込んだただの水だった。その瞬間、レオノールの予想は確信に変わった。
 木曜(フエベス)は、どこからか木の人形を操り、人に化け、戦力を分散させている。さっきまでレオノールが戦っていたのも、国綱と戦っていたのも、すべて偽物。本物の木曜(フエベス)は、今もどこかに隠れている。
 だが、一つだけ疑問が残る。レオノールの背筋が凍りつく。あれほど盛大に戦闘を繰り広げていたのは偽物だった。戦力を分散させて、何をしたいのか。木曜(フエベス)の、敵の目的は――


「……ッ! まさか!」


 レオノールが振り向いた先は、つい数分前までモニカとアリシアが隠れていた本棚。だがそこに、モニカたちの姿はなかった。


「最悪だ……!」


 それと同時に、レオノールの前にある人物が現れた。


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激しい攻防で、轟音と共に雷が迸る。全身が帯電し、あらゆる攻撃を仕掛けレオノールと対峙するのは、七曜の魔法使いの1人、『|木曜《フエベス》』。足に仕込ませた2本のスティレットを巧みに使いこなし、雷を掻い潜り、のらりくらりと攻撃を躱す。
(……避け《《させられている》》)
 攻防の中、|木曜《フエベス》が感じたのは殺意の無さだった。張り巡らされた雷からは殺意を感じない。多くの場数を踏んできた|木曜《フエベス》だからこそ分かる違和感だった。
(誘われている? いや、この感じは……時間稼ぎか)
(って、バレてるんだろうな)
 激しい戦闘の中、繰り広げられるのは腹の中の探り合い。相手の目的を、癖を、実力を見極めた所から本当の戦いは始まる。
 レオノールは、こういった戦いが大の苦手だ。頭を働かせながら戦うことができない。というのも、レオノールは旭、国綱と比べてそれほど頭が良くないのだ。むしろ頭の良さは『悪い』と言ってもいい。頭を働かせるだけで精一杯になってしまう。
(撃ち合いに自信があるか? なら、こっちから行ってやる!)
(……ッ! 来る!)
 |木曜《フエベス》のスティレットの先端に|魔素《マナ》が集まっていく。咄嗟に身構えるレオノールは前方に雷を集め、重ねて防御魔法を展開する。一瞬、辺りは稲光とは違う光に包まれる。
「……なっ」
 だが――
(なんで|使《・》|え《・》|な《・》|い《・》!)
「”|迅雷《じんらい》”ッ!」
「あぁ、もう!……痛ったいんだよ、くそが!」
 魔法が発動することはなく、虚しくも光は消えていく。困惑し、戸惑う|木曜《フエベス》をレオノールは逃がさない。雷は閃光となり、|木曜《フエベス》の左腕を掠めた。
(なんでっ! ここに来る前までは使えてたのに!)
 余裕な顔をしていた|木曜《フエベス》の表情は徐々に険しくなっていく。スティレットを握る手の力が強まり、赤い血が腕を伝っていく。
 レオノールはこの瞬間に勝機を見出した。今、この瞬間を逃せば次は無い。この一瞬が勝敗を分ける。溜め込んでいた魔力が、雷が放出される。レオノールが青白い光を纏う。
「……くそ」
「”|雷迎《らいごう》”ッ!」
 稲妻が空間を切り裂く。鼓膜を突き破るほどのけたたましい音は脳までも揺らす。雷は全てを諦めたような顔をした|木曜《フエベス》に直撃し、影も残さないほどの光に包まれる。
 だが、レオノールには誤算があった。|そ《・》|れ《・》を理解していたのにも関わらず、まるで、目の前の|木曜《フエベス》が|本《・》|物《・》であると断定してしまっていた。
「……嘘だろ」
 稲光が過ぎ去った後、残されていたのはボロボロになった植物の塊だった。木の根、枝、花。植物で構成された人間のような形をした人形が無造作に置かれていた。
(血は!? さっき流れてただろ!)
 すべて偽物だったのだ。床に残された赤い液体は食の色素が溶け込んだただの水だった。その瞬間、レオノールの予想は確信に変わった。
 |木曜《フエベス》は、どこからか木の人形を操り、人に化け、戦力を分散させている。さっきまでレオノールが戦っていたのも、国綱と戦っていたのも、すべて偽物。本物の|木曜《フエベス》は、今もどこかに隠れている。
 だが、一つだけ疑問が残る。レオノールの背筋が凍りつく。あれほど盛大に戦闘を繰り広げていたのは偽物だった。戦力を分散させて、何をしたいのか。|木曜《フエベス》の、敵の目的は――
「……ッ! まさか!」
 レオノールが振り向いた先は、つい数分前までモニカとアリシアが隠れていた本棚。だがそこに、モニカたちの姿はなかった。
「最悪だ……!」
 それと同時に、レオノールの前にある人物が現れた。