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「真理愛ちゃん、誕生日おめでとう!」
「もう十歳なのねぇ。時の経つのは早いわぁ」
「ありがとう、おじいちゃん、おばあちゃん。パパも」
この家に来てから迎える、六回目の十二月二十五日。今日は真理愛の十歳の誕生日だ。
テーブルには、祖母が作ってくれた苺を飾ったバースディケーキ。四歳でこの家に来てから毎年恒例になっていた。
プレゼントは、初めて四つ。
去年までは、父からと祖父母からそれぞれ誕生日プレゼントが、そして『サンタさん』からクリスマスプレゼントが届いていたのだ。
もちろん真理愛も、サンタクロースは実在せず、プレゼントは父や祖父母が用意してくれているのは知っていた。それでも、黙って知らない振りをするのが子どもの役目と心得ていたのだ。
さすがにもう四年生で十歳になるのを機会に、大人三人で話し合いでもしたのだろうか。ついに「サンタはいない」と言うのが、この家でも公の共通理解になった。
そのため、誕生日とクリスマスのプレゼントが父と祖父母から計四つ贈られたのだった。
「誕生日とクリスマスが同じ日なんだから、プレゼントも一緒でいいよ。ケーキも一つだしそれでいいと思う」
しばらく前に真理愛が申し出たのを、父が即座に否定した。
「いや、それは違う! 同じ日でも別物だから。あ、だったらさ。今年からクリスマスはイブの二十四日で、誕生日は二十五日にしようか? そうだ、それがいい! そしたらケーキも両方──」
「パパ、あたしが言ってるのはそーいうんじゃないの!」
「真理愛ちゃん、これはパパもだけど、おじいちゃんやおばあちゃんの楽しみなんだよ。誕生日とクリスマスのプレゼント選べるのが嬉しいんだ」
祖父のしみじみ言い聞かせるような台詞に、父も同調する。
「真理愛。もし『申し訳ない』とか感じてるんならそれは的外れ、って意味わかるか? 今おじいちゃんが言ったみたいに、真理愛は何を喜ぶかなっていろいろ考えたりする自体が楽しみなんだよ」
「……意味はわかる、けど」
「真理愛ちゃん。パパとおじいちゃんの言う通りよ。もちろん、プレゼントの中身が好みに合わないとかは言ってくれていいんだけど。あ、もし全部のプレゼント合わせたくらいの、特別なものが欲しいとかならそれも考えるから」
真理愛が口を開く前に、父が祖母の言葉を拾う。
「あ! そうか。真理愛が言ってるのはそういうことじゃないだろうけど、纏めて高い物っていうのでもいいんだよ」
「ううん。別にあたし、いま特に欲しいものないから。要るものは全部持ってるもん。……でも、わかった。ありがとう、パパも、おじいちゃん、おばあちゃんも」
真理愛は今更のように、もう一つの可能性に思い至った。
父も祖父母も決して口にはしないし、態度に出すこともないけれど。もしかしたら真理愛が来る前の、互いに出逢う前の空白の時間を少しでも埋めたい気持ちもあるのかもしれない。
──モノではなく、選ぶ時の想いで。
四月からは、今までの父の部屋の隣に自分の部屋をもらった。真理愛のために、机もベッドも本棚もカーテンも、すべて新しく買い揃えられた。