入浴後。
圭亮は真理愛の髪にドライヤーを当ててやった。
長さはあるが頼りないほどに細く少ない髪は、あっという間に乾いてしまう。
いま真理愛は、良枝に渡されたコップの水を飲んでいる。あとは、歯磨きして寝かしつけだ。
この二つは、必ずではないが普段から圭亮もやっていたので慣れていた。
これまで真理愛に関することで、手を抜いていたわけではない。それは断じてない。
しかし、娘としての明確な愛情を自覚した今思えば、どこか責任感で機械的に行っていた部分はあったように思えて来たのだ。
親も人間だから、いつでも子どものことだけ考えて全力で接することなどできないのが当然だという気持ちもある。それでも、少なくとも今は、真理愛の面倒を見るのが楽しいと感じている。
たかが風呂、たかが歯磨きでも、真理愛にとっては不可欠な生活習慣なのだ。
どうせやらなければならないのなら、楽しんだ方がいいだろう。遊び半分でいい加減にさえならなければ。
「よーし、これでピカピカだな。ぶくぶくして」
歯ブラシを置くと、水を入れた専用のコップを渡してうがいを促す。真理愛はまだ下手で水を零してしまうため、さり気なく顎の下にタオルを当てた。
こういうことも最初はわからなかった。何度もパジャマを水浸しにして着替えさせたものだ。
そう思えば圭亮自身、知らず父親としてのスキルが身について来ているということなのではないか。些細なことかもしれないが、それに気づいて圭亮は口元が緩むのを感じた。
それまで、存在していることさえまったく知らなかった真理愛と、父と娘として出逢って暮らし始めて二か月と少し。
真理愛の五歳の誕生日を迎えた今日。
圭亮もまた、『父親』として新たに生まれ変わったのかもしれない。
確かに親子だけれど、決してニワトリとヒヨコではないのだ。圭亮も真理愛も、卵から
孵ったばかりの雛も同然なのだろう。
まだまだよちよち歩きの二人を、人生の先輩としての両親であり祖父母が見守ってくれている。
ここから真理愛が育つのと同時に、父としての圭亮も成長して行ける筈だ。