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残酷な気晴らしの誘い

ー/ー



 あまりにもタイミングがよかったから、うっすらと笑みも浮かんだ。

 すぐさま槍を構え音を立てないようにして歩く。

 じっくりと視線を巡らせていたけど、気配を感じて右側を睨み、視線を下げる。すると消火器の下に潜んでいる、黄緑色の小さな光を見つけた。

 じっと潜んでいた一対の光は、私と視線がかち合った瞬間、突き上がるように動いた。

 すかさず右足を踏み込み、消化器の下に槍を潜らせるようにすると、足元を風が吹き抜けた。
 魔物は光の残像を伸ばして逃げ出した。

 それを見て足を大きく踏み出し槍の届く範囲まで距離を詰める。
 振り返ることもなく一直線に走り続ける魔物の背に槍を振り下ろした。

 頭にめり込み、骨を押し割る手応えが伝わってくる。
 絶命を確信しても槍を抜かず、肉の感触を突き抜けて硬い床にまで到達した。

 魔物が消えまっさらになった床から槍を抜き、その場に槍の跡を置き去って次の魔物を探す。
 魔物は人間とは違う存在であり、大きさも様々だ。前や横はもちろん、足元でも狭い隙間でもありとあらゆるところに潜んでいる可能性がある。

 それを理解したつもりで注意を払っていた。

 左から気配を感じて首を回した後、違う上からだと考え直す。すぐさま上を見上げ、槍を差し向けたもののすでに遅く、私の顔に覆い被さるように落ちてきた。

 おそらく人間のような四肢を持っているだろう魔物は、四つん這いになるとちょうど私の顔に収まる大きさで、視界を遮りながら爪を立ててくる。邪魔なことこの上なく、脇の下を握り潰すように引き剥がそうとしてみた。

 しかしこの小さな体からは想像できないほどの力で張り付き、頭蓋骨に引っ掻き傷がついたのではと思うほどだった。

 引っ張って剥がせないなら……どうせちょっと傷がついたところで治るんだ。

 痺れを切らせた私はこれまでにないほど穂先の近くで握り、魔物に押し当てた。

 手の感覚で穂先の位置はなんとなくわかるとは言え、視界を遮られながら変な持ち方をするのはやりづらかった。長い柄に翻弄され、眼鏡のフレームという見当違いなところを切りつけるだけに終わり、別の武器にした方がいいと考えた。

 ナイフがいい。
 そう思うと長い柄は消え、手のひらにかかっていた圧力も軽減される。

 武器が取り回しやすくなったところで、逃げようとした魔物を掴み、ノコギリを引くように首を切った。

 包丁のように手を当て一気に断ち切ることもできるけど、勢い余って自分の眼鏡も傷つけてしまいそうだからあえてこうしている。
 眼鏡に傷がついたとしても明日には元に戻るけど、今日の戦いに支障が出る。

 自分の顔をまな板にするつもりはなく、悲鳴を聞きながら慎重に命を奪っていく。

 喉に刃が到達したことによって悲鳴も消える。ぶつりと最後まで断ち切ると、魔物が消えて視界が開けた。

 爪痕がじくじくと痛む。
 小さな魔物なのに死んでからも痛めつけてくる。小癪な……

 小さな魔物二匹倒した程度では帰れない。爪痕にかかる前髪を横に流して再び魔物を探した。


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 あまりにもタイミングがよかったから、うっすらと笑みも浮かんだ。
 すぐさま槍を構え音を立てないようにして歩く。
 じっくりと視線を巡らせていたけど、気配を感じて右側を睨み、視線を下げる。すると消火器の下に潜んでいる、黄緑色の小さな光を見つけた。
 じっと潜んでいた一対の光は、私と視線がかち合った瞬間、突き上がるように動いた。
 すかさず右足を踏み込み、消化器の下に槍を潜らせるようにすると、足元を風が吹き抜けた。
 魔物は光の残像を伸ばして逃げ出した。
 それを見て足を大きく踏み出し槍の届く範囲まで距離を詰める。
 振り返ることもなく一直線に走り続ける魔物の背に槍を振り下ろした。
 頭にめり込み、骨を押し割る手応えが伝わってくる。
 絶命を確信しても槍を抜かず、肉の感触を突き抜けて硬い床にまで到達した。
 魔物が消えまっさらになった床から槍を抜き、その場に槍の跡を置き去って次の魔物を探す。
 魔物は人間とは違う存在であり、大きさも様々だ。前や横はもちろん、足元でも狭い隙間でもありとあらゆるところに潜んでいる可能性がある。
 それを理解したつもりで注意を払っていた。
 左から気配を感じて首を回した後、違う上からだと考え直す。すぐさま上を見上げ、槍を差し向けたもののすでに遅く、私の顔に覆い被さるように落ちてきた。
 おそらく人間のような四肢を持っているだろう魔物は、四つん這いになるとちょうど私の顔に収まる大きさで、視界を遮りながら爪を立ててくる。邪魔なことこの上なく、脇の下を握り潰すように引き剥がそうとしてみた。
 しかしこの小さな体からは想像できないほどの力で張り付き、頭蓋骨に引っ掻き傷がついたのではと思うほどだった。
 引っ張って剥がせないなら……どうせちょっと傷がついたところで治るんだ。
 痺れを切らせた私はこれまでにないほど穂先の近くで握り、魔物に押し当てた。
 手の感覚で穂先の位置はなんとなくわかるとは言え、視界を遮られながら変な持ち方をするのはやりづらかった。長い柄に翻弄され、眼鏡のフレームという見当違いなところを切りつけるだけに終わり、別の武器にした方がいいと考えた。
 ナイフがいい。
 そう思うと長い柄は消え、手のひらにかかっていた圧力も軽減される。
 武器が取り回しやすくなったところで、逃げようとした魔物を掴み、ノコギリを引くように首を切った。
 包丁のように手を当て一気に断ち切ることもできるけど、勢い余って自分の眼鏡も傷つけてしまいそうだからあえてこうしている。
 眼鏡に傷がついたとしても明日には元に戻るけど、今日の戦いに支障が出る。
 自分の顔をまな板にするつもりはなく、悲鳴を聞きながら慎重に命を奪っていく。
 喉に刃が到達したことによって悲鳴も消える。ぶつりと最後まで断ち切ると、魔物が消えて視界が開けた。
 爪痕がじくじくと痛む。
 小さな魔物なのに死んでからも痛めつけてくる。小癪な……
 小さな魔物二匹倒した程度では帰れない。爪痕にかかる前髪を横に流して再び魔物を探した。