表示設定
表示設定
目次 目次




第11章〜よつば様は告らせたい〜⑨

ー/ー



〜白草四葉の見解〜

 小会議室の開かれた窓から校舎の外を眺めるふりをしながら、黄瀬クンが立ち去ったことを確認すると、わたしは、椅子に腰掛けると、会議用の机に突っ伏した。
 この一ヶ月半ほどの間、自分自身が計画したプランを、ほぼ完璧に達成することができた安堵感と、その計画について、クラスメートにして、クロの親友でもある彼に問い詰められた疲労感も、その要因ではあるのだけど……。
 なによりも、黄瀬クンが最後に語ってくれた言葉が、わたしの頭から離れない。

「竜司の初恋の相手は、小学生の時に出会ったシロちゃんって、女の子なんだってさ……」

 その言葉が、何度も何度も頭の中を駆け巡り、とても平静な気持ちでは居られなかった。
 顔の火照りを感じながら、口元を左手で覆って、会議用机に額を付けると、

「ひゃ〜〜〜〜〜!!」

と、声をあげ、強く握った拳で思わず机を二度、三度と叩いてしまった。
 こんな気持ちになるのは、クロと出会った頃、伯父さんの家で布団にくるまりながら、彼のことを考えていたとき以来かも知れない。
 いまのわたしの表情は、とても他人に見せられたモノではない、という自覚はある。
 
(それなら、そうだと、あの時、新幹線のホームで言ってくれれば良かったのに……)

 少しだけ、彼のことを恨めしく思いつつも、今となっては、素直になりきれない小学生時代のクロのことを、より愛おしく感じるのだから、人間のココロとは不思議なものだ。
 もしも、タイムマシーンが発明されたなら、小学生時代のクロの元に行って、思い切り抱きしめて、頭を撫でてあげたい気分になる。

「やっぱり、クロはカワイイ――――――」

 つぶやくように口にすると、現在のクラスメートである黒田竜司のことも、いっそう愛おしく感じるようになった。
 しかも、先日、母の日のプレゼント選びに付き合ってもらった際のわたしの言動で、彼は大いに勘違いをしてしまっているらしい。

「竜司は、白草さんに意中の男性が居ると、勘違いしているみたいだよ」 

 苦笑いをしながら語ってくれた黄瀬クンにも、おそらく、真相はわかっているのだろう。
 そりゃ、多少は思わせぶりで、「匂わせ」じみた発言をしてしまった自覚はあるが……。
 それにしても、クロが、こんなにも単純に、相手が男性だと思い違いをするとは考えてもみなかった。

(わたしが、クロ以外の男性に夢中になるハズなんてないのに……嫉妬するなんて可愛い)
(みんなの前で、悪いことしちゃったよね……明日からは、もっと優しくしてあげないと)

 実際、週明けとなる今日、教室に登校してきたクロは、明らかに覇気がなかったので、元気づけてあげる必要があるだろう。
 失恋の痛みを感じた経験のある自分には、いまの彼の気持ちが理解できるし、彼の心が傷を負った理由が、わたし自身にあるのだとすれば……。
 やっぱり、わたしが、癒やして、慰めてあげないと――――――。

(クロは、小学生の時のわたしの告白を受け入れてはくれなかった……)
(さらに、クロは、二週間前にクラスメートの紅野サンに告白している)
(それでも、土曜日に、クロはみんなの前で、わたしに告白してくれた)

 これで、クロ、紅野サン、わたしの三人は、三者ともにイーブンの関係になったと、自分自身では考えている。
 ようやく、フラットな関係に落ち着いたところで、あとは、じっくりと……わたしが、これまで蓄積してきた知識と見解をもとに、いままで以上にクロとの距離を近づけて行くだけだ……。
 それに、一度フラれた女子を諦められない場合、男の子がどんな心構えで再告白に挑むべきか、ひと月前、クロには、()()()()()()()()()()()()()つもりだ。
 そして、彼が傷心から立ち直って、もう一度、わたしに対して、想いを告げてくれた、その時には――――――。
 いや、その先をいう必要はないだろう。


スタンプを贈って作者を応援しよう!



みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



〜白草四葉の見解〜
 小会議室の開かれた窓から校舎の外を眺めるふりをしながら、黄瀬クンが立ち去ったことを確認すると、わたしは、椅子に腰掛けると、会議用の机に突っ伏した。
 この一ヶ月半ほどの間、自分自身が計画したプランを、ほぼ完璧に達成することができた安堵感と、その計画について、クラスメートにして、クロの親友でもある彼に問い詰められた疲労感も、その要因ではあるのだけど……。
 なによりも、黄瀬クンが最後に語ってくれた言葉が、わたしの頭から離れない。
「竜司の初恋の相手は、小学生の時に出会ったシロちゃんって、女の子なんだってさ……」
 その言葉が、何度も何度も頭の中を駆け巡り、とても平静な気持ちでは居られなかった。
 顔の火照りを感じながら、口元を左手で覆って、会議用机に額を付けると、
「ひゃ〜〜〜〜〜!!」
と、声をあげ、強く握った拳で思わず机を二度、三度と叩いてしまった。
 こんな気持ちになるのは、クロと出会った頃、伯父さんの家で布団にくるまりながら、彼のことを考えていたとき以来かも知れない。
 いまのわたしの表情は、とても他人に見せられたモノではない、という自覚はある。
(それなら、そうだと、あの時、新幹線のホームで言ってくれれば良かったのに……)
 少しだけ、彼のことを恨めしく思いつつも、今となっては、素直になりきれない小学生時代のクロのことを、より愛おしく感じるのだから、人間のココロとは不思議なものだ。
 もしも、タイムマシーンが発明されたなら、小学生時代のクロの元に行って、思い切り抱きしめて、頭を撫でてあげたい気分になる。
「やっぱり、クロはカワイイ――――――」
 つぶやくように口にすると、現在のクラスメートである黒田竜司のことも、いっそう愛おしく感じるようになった。
 しかも、先日、母の日のプレゼント選びに付き合ってもらった際のわたしの言動で、彼は大いに勘違いをしてしまっているらしい。
「竜司は、白草さんに意中の男性が居ると、勘違いしているみたいだよ」 
 苦笑いをしながら語ってくれた黄瀬クンにも、おそらく、真相はわかっているのだろう。
 そりゃ、多少は思わせぶりで、「匂わせ」じみた発言をしてしまった自覚はあるが……。
 それにしても、クロが、こんなにも単純に、相手が男性だと思い違いをするとは考えてもみなかった。
(わたしが、クロ以外の男性に夢中になるハズなんてないのに……嫉妬するなんて可愛い)
(みんなの前で、悪いことしちゃったよね……明日からは、もっと優しくしてあげないと)
 実際、週明けとなる今日、教室に登校してきたクロは、明らかに覇気がなかったので、元気づけてあげる必要があるだろう。
 失恋の痛みを感じた経験のある自分には、いまの彼の気持ちが理解できるし、彼の心が傷を負った理由が、わたし自身にあるのだとすれば……。
 やっぱり、わたしが、癒やして、慰めてあげないと――――――。
(クロは、小学生の時のわたしの告白を受け入れてはくれなかった……)
(さらに、クロは、二週間前にクラスメートの紅野サンに告白している)
(それでも、土曜日に、クロはみんなの前で、わたしに告白してくれた)
 これで、クロ、紅野サン、わたしの三人は、三者ともにイーブンの関係になったと、自分自身では考えている。
 ようやく、フラットな関係に落ち着いたところで、あとは、じっくりと……わたしが、これまで蓄積してきた知識と見解をもとに、いままで以上にクロとの距離を近づけて行くだけだ……。
 それに、一度フラれた女子を諦められない場合、男の子がどんな心構えで再告白に挑むべきか、ひと月前、クロには、|キ《・》|ッ《・》|チ《・》|リ《・》|と《・》|レ《・》|ク《・》|チ《・》|ャ《・》|ー《・》|を《・》|し《・》|た《・》つもりだ。
 そして、彼が傷心から立ち直って、もう一度、わたしに対して、想いを告げてくれた、その時には――――――。
 いや、その先をいう必要はないだろう。