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第11章〜よつば様は告らせたい〜⑧

ー/ー



「あと、今回の企画成功時の符牒、というか合い言葉を考案した人間として知りたいことがあるんだけど……白草さんは、自分の計画が成功すると確信したのは、どのタイミングなの? 史実の淵田中佐の例に倣えば、紅野さんがステージの前にいないにも関わらず、竜司が告白する準備に入った時点で、白草さんの壮大なプランの成功は、目に見えていた、と思うんだけど……」

 そんなこちらの質問に、彼女は、微笑みながら答えた。

「黄瀬クンの言っている、わたしのプランが、どんなモノなのか、良くわからないけれど……たしかに、クロ……黒田クンが、紅野サンの姿を探していない時点で、当初の企画が変更されたことだけは、わかったかな。ただ、実際に、黒田クンから告白されるまでは、ね……」

 これだけ大胆な計画をやり遂げた彼女でも、竜司が実際に告白するまでは、不安に感じていたのか、と興味深く感じる。

 それはさておき――――――。

 白草さんに確認しておきたいことについて、おおよそのことは理解できたので、これ以上の追及は意味がないと感じたボクは、話題を変えることにした。

「ところで、話しは変わるけど……白草さん、母の日のプレゼントは喜んでもらえたみたいだね……お母さんの《ミンスタグラム》で、オシャレなサングラスと可愛らしいケーキが並んでいるのを見せてもらったよ」

 そうたずねると、彼女も

「うん……今年も、キチンとプレゼントが出来て良かった……」

と、うなずく。
 そのようすを確認しながら、ボクは彼女に報告しておきたいことを語らせてもらう。

「ただ、ボクの周囲には、約一名、心穏やかでない人物がいるんだ……生徒会と広報部合同での事情聴取が終わったあと、個人的に、二人きりで話しを聞かせてもらったんだよね。竜司は、『先週、プレゼント選びについて行ったんだけど……やっぱり、白草には好きな相手が居るんだな……』って、ずいぶんと落ち込んでたよ」

 ボクの言葉を聞いていた同級生は、口元を手で抑えながら、

「えっ!? そんなつもりじゃなかったのに……」

と言いつつ……。
 その目尻が下がっていることが、こちらからも見てとれる。 
 そんな仕草を観察しながら、ボクは、

「最後にもうひとつ、白草さんに謝る、というか、訂正しておかなくちゃいけないことがあるんだ」

と、彼女に向かって語りかけた。

「春休みにネット上にアゲた竜司の動画には、『ホーネッツ1号 人生で初めて失恋しました』ってタイトルを付けたんだけど……いま言った二人きりでの会話の時に、竜司に過去の恋愛経験についても色々と聞かせてもらったんだ……それでわかったんだけど、竜司にとって、春休みの告白の一件は、初恋じゃなかったみたいなんだよね」

 ここまで語ったボクの言葉に、ピクリと身体を震わせて、白草さんが反応を示した。

「失恋というモノをどう定義するかは、経験の浅いボクが偉そうに語れることではないと思うんだけど……竜司には、小学生の時に、好きになった女の子が居るらしいんだ……だから、あの動画に『人生で初めて失恋しました』ってタイトルを付けたのは、ボクの早とちりだったかも知れない。まあ、もうネット上からは消してしまったモノだから、今さら訂正しても意味のないことなんだけど……」
 
 そこまで語ったあと、ボクは竜司から聞きだした過去の話しを目の前の同級生に語る。
 すると、彼女は、素っ気ない態度で、

「そう……」

と、言ってパイプ椅子から立ち上がると、窓側に背を向けて座るボクの隣をすり抜けて、小会議室の窓際に移動していった。
 そして、ボクには顔を向けずに、校舎の外を眺めながら語りかけてきた。

「黄瀬クン、色々とたのしい話しを聞かせてくれてありがとう! たくさんお話しを聞かせてもらったから、しばらく、この部屋で頭の中身を整理させてもイイかな? ここのカギは、職員室に返しておくから――――――」

 その言葉は、こちらに顔を向けないまま語られたため、こちらから白草さんの表情をうかがい知ることはできない。
 ただ、ボクとしては彼女の頼みを断る理由もないので、その提案を了承する。
 
「わかったよ! それなら、ボクは、このあと、待ち合わせがあるから、行かせてもらうね。この会議室のカギの返却場所は、職員室でユリちゃん先生に聞いてもらったら、教えてくれると思うよ……」

 そう言って、荷物をまとめて小会議室を退室することにする。

「それじゃ、また明日!」

 白草さんに声を掛け、部屋を出てしばらくすると、背後から奇声とも嬌声ともつかない声が響き渡ったような気がしたのだが、ボクは気に留めず、次の待ち合わせ場所に向かうことにした。


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 そんなこちらの質問に、彼女は、微笑みながら答えた。
「黄瀬クンの言っている、わたしのプランが、どんなモノなのか、良くわからないけれど……たしかに、クロ……黒田クンが、紅野サンの姿を探していない時点で、当初の企画が変更されたことだけは、わかったかな。ただ、実際に、黒田クンから告白されるまでは、ね……」
 これだけ大胆な計画をやり遂げた彼女でも、竜司が実際に告白するまでは、不安に感じていたのか、と興味深く感じる。
 それはさておき――――――。
 白草さんに確認しておきたいことについて、おおよそのことは理解できたので、これ以上の追及は意味がないと感じたボクは、話題を変えることにした。
「ところで、話しは変わるけど……白草さん、母の日のプレゼントは喜んでもらえたみたいだね……お母さんの《ミンスタグラム》で、オシャレなサングラスと可愛らしいケーキが並んでいるのを見せてもらったよ」
 そうたずねると、彼女も
「うん……今年も、キチンとプレゼントが出来て良かった……」
と、うなずく。
 そのようすを確認しながら、ボクは彼女に報告しておきたいことを語らせてもらう。
「ただ、ボクの周囲には、約一名、心穏やかでない人物がいるんだ……生徒会と広報部合同での事情聴取が終わったあと、個人的に、二人きりで話しを聞かせてもらったんだよね。竜司は、『先週、プレゼント選びについて行ったんだけど……やっぱり、白草には好きな相手が居るんだな……』って、ずいぶんと落ち込んでたよ」
 ボクの言葉を聞いていた同級生は、口元を手で抑えながら、
「えっ!? そんなつもりじゃなかったのに……」
と言いつつ……。
 その目尻が下がっていることが、こちらからも見てとれる。 
 そんな仕草を観察しながら、ボクは、
「最後にもうひとつ、白草さんに謝る、というか、訂正しておかなくちゃいけないことがあるんだ」
と、彼女に向かって語りかけた。
「春休みにネット上にアゲた竜司の動画には、『ホーネッツ1号 人生で初めて失恋しました』ってタイトルを付けたんだけど……いま言った二人きりでの会話の時に、竜司に過去の恋愛経験についても色々と聞かせてもらったんだ……それでわかったんだけど、竜司にとって、春休みの告白の一件は、初恋じゃなかったみたいなんだよね」
 ここまで語ったボクの言葉に、ピクリと身体を震わせて、白草さんが反応を示した。
「失恋というモノをどう定義するかは、経験の浅いボクが偉そうに語れることではないと思うんだけど……竜司には、小学生の時に、好きになった女の子が居るらしいんだ……だから、あの動画に『人生で初めて失恋しました』ってタイトルを付けたのは、ボクの早とちりだったかも知れない。まあ、もうネット上からは消してしまったモノだから、今さら訂正しても意味のないことなんだけど……」
 そこまで語ったあと、ボクは竜司から聞きだした過去の話しを目の前の同級生に語る。
 すると、彼女は、素っ気ない態度で、
「そう……」
と、言ってパイプ椅子から立ち上がると、窓側に背を向けて座るボクの隣をすり抜けて、小会議室の窓際に移動していった。
 そして、ボクには顔を向けずに、校舎の外を眺めながら語りかけてきた。
「黄瀬クン、色々とたのしい話しを聞かせてくれてありがとう! たくさんお話しを聞かせてもらったから、しばらく、この部屋で頭の中身を整理させてもイイかな? ここのカギは、職員室に返しておくから――――――」
 その言葉は、こちらに顔を向けないまま語られたため、こちらから白草さんの表情をうかがい知ることはできない。
 ただ、ボクとしては彼女の頼みを断る理由もないので、その提案を了承する。
「わかったよ! それなら、ボクは、このあと、待ち合わせがあるから、行かせてもらうね。この会議室のカギの返却場所は、職員室でユリちゃん先生に聞いてもらったら、教えてくれると思うよ……」
 そう言って、荷物をまとめて小会議室を退室することにする。
「それじゃ、また明日!」
 白草さんに声を掛け、部屋を出てしばらくすると、背後から奇声とも嬌声ともつかない声が響き渡ったような気がしたのだが、ボクは気に留めず、次の待ち合わせ場所に向かうことにした。