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小さな反撃

ー/ー



 私は転ばされ足を怪我したにも関わらず、今日も魔物狩りに出た。

 光の差す放課後の廊下を歩いていると、目の前に一段と暗くなっているところがあり、その境目に足を踏み入れると魔物が見えた。

 30cm程度の鬼のようなものがちょこまかと走り回り、曲がり角に消えて行く。
 それを追いかけ槍を突き刺すも、的は小さくて小回りが利くから闇雲に突いたところで当たらない。

 未来位置を予測して突き、魔物を床に釘付けにした。
 するとまた跡形もなく消える。

 残りの魔物は仕留められた仲間に目を向ける余裕もなく逃げる。未来位置を予測して突き刺すも、ひょいとかわされ拍子抜けする。
 今度はジグザグに走りつつ予想の裏をかいて直進したり、小さいながらも仕留められないよう学ぶんだなと感心する。

 一匹ずつ倒していれば生き残りに経験を与えてしまう。まとめて倒せないだろうか。

 そこで薙ぐという使い方を思い出す。振り下ろすために上げていた腕を下ろし、腰を低くする。

 左に行こうとする二匹の側面へ、進行を迎え撃つように穂先をぶつける。
 一息に薙ぎ払い、咄嗟に右に逃れようとした一匹も首を断たれた。

 二匹まとめて頭部を失い、消える。


 一階から二階に渡って探し回ったけど、その日見つけたのはどれも弱い魔物で、この調子が続くなら魔物を滅ぼすというのも難しい話ではない。

 私の願いのため、この先出会う敵がそれほど強くないといいな。
 そんな甘いことはないとわかっているけど、潜んでいる魔物の強さなんて知る由もなかった。


 初日と違ってすんなりと魔物を退治した私は、疲れを残さず一日を終えた。

 そして昨日は怪我しながら魔物退治をしたけど、痛みは引いたから今日の体育にも参加していた。

 先生の呼びかけを聞くとみんな手を止め、各々使っていた物を片付けていた。
 自分の分は片付け終えたけど、朝霧たちは当然のようにネットの片付けを押し付けてくる。仕方なく言う通りに片付けて倉庫から出ようとしていた。

 すると歩調に合わせて前髪がちらつくから、手をポンと当てる。ヘアピンが取れている。さっき倉庫の中の何かに頭が擦れたから、その時かもしれない。

 戻って足元を探していると、中の確認もなしに倉庫の重い扉が閉められた。
 こんなことをするのはあいつらしかいない。

 予想通り、ここからでもあいつらの耳障りな笑い声がしてきた。

 朝霧、一井の高い声。雪田たちの引きつった下品な声。

 気が済んだら出すつもりなのだろうけど、それがいつになるかはわからない。むやみやたらに反抗したところで状況は変わらないし、それなら別の出口を探してみよう。

 無駄足になるかもしれないけど、開けてもらうのを大人しく待つよりは気が済む。

 そういえば体育館を外から見たらいくつか扉が付いていた。倉庫から外に出られる可能性もゼロではない。

 壁を見回り、普段行かないような奥まで足を進めると、小さな階段の先に扉があった。しかしここは体育館の外側の壁ではないから、これは別の部屋に繋がっているのだろう。

 気になってドアノブを回すと、期待していなかったのにすんなり開き、光が差し込む。

 視界の隅に垂れる重い幕。正面には日光の降り注ぐステージが真っ直ぐ伸びている。ここは舞台袖だった。

 上がる機会のない場所でそろりと足を進め、幕から姿を現わす。
 私が出たことにも気付かず扉に向かって笑う五人を見下ろしていた。誰もいない倉庫で楽しんでね。

 下りようと階段へ足を出した時、朝霧と目が合った。

「いつのまに……!」

 その声に引かれた雪田たちが私を見て、ありえないというように口を開けていた。

「どうやって出たんだよ!」

「倉庫の中から舞台袖に行けるようになっていたの。別の出口を見つけることも想定できなかった?頭が弱いのね」

 そう返された雪田は肩を吊り上げ、窪田はじとりと見上げてくる。

「今度は出口という出口の鍵をかけてから閉じ込めてやる!」

「馬鹿ね、そもそも内側からは大体開けられるようになっているわよ」

 雪田の意気込みを早々に砕いてやると、肩を落としていた。

「でもさ、生徒が舞台袖に侵入して事故が起きたら……先生もドアにチェーンを付けるなりするよね」

 海堀は閃いたとばかりに顔を歪め、つかつかとステージに寄ってくる。

「もうやめなよ〜海堀。洒落にならないってぇ」

「ちぇー、もっと閉じ込めたかったな」

 朝霧に制された海堀は雪田同様に肩を落とすと、先に帰ろうとする一井たちを見て後ろに下がる。

「つまんない! もうこれ返すわ!」

 不貞腐れた海堀が手の内に包んだものをシュッと投げつけてきて、私の足元を滑り抜ける。

「取れないんだー!」

 最後に馬鹿にしてから朝霧たちを追いかける。
 足元に投げておいてどう取らせるつもりだったの?

 一人残された私は埃をまとったヘアピンを拾い上げ、指で拭った。


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 私は転ばされ足を怪我したにも関わらず、今日も魔物狩りに出た。
 光の差す放課後の廊下を歩いていると、目の前に一段と暗くなっているところがあり、その境目に足を踏み入れると魔物が見えた。
 30cm程度の鬼のようなものがちょこまかと走り回り、曲がり角に消えて行く。
 それを追いかけ槍を突き刺すも、的は小さくて小回りが利くから闇雲に突いたところで当たらない。
 未来位置を予測して突き、魔物を床に釘付けにした。
 するとまた跡形もなく消える。
 残りの魔物は仕留められた仲間に目を向ける余裕もなく逃げる。未来位置を予測して突き刺すも、ひょいとかわされ拍子抜けする。
 今度はジグザグに走りつつ予想の裏をかいて直進したり、小さいながらも仕留められないよう学ぶんだなと感心する。
 一匹ずつ倒していれば生き残りに経験を与えてしまう。まとめて倒せないだろうか。
 そこで薙ぐという使い方を思い出す。振り下ろすために上げていた腕を下ろし、腰を低くする。
 左に行こうとする二匹の側面へ、進行を迎え撃つように穂先をぶつける。
 一息に薙ぎ払い、咄嗟に右に逃れようとした一匹も首を断たれた。
 二匹まとめて頭部を失い、消える。
 一階から二階に渡って探し回ったけど、その日見つけたのはどれも弱い魔物で、この調子が続くなら魔物を滅ぼすというのも難しい話ではない。
 私の願いのため、この先出会う敵がそれほど強くないといいな。
 そんな甘いことはないとわかっているけど、潜んでいる魔物の強さなんて知る由もなかった。
 初日と違ってすんなりと魔物を退治した私は、疲れを残さず一日を終えた。
 そして昨日は怪我しながら魔物退治をしたけど、痛みは引いたから今日の体育にも参加していた。
 先生の呼びかけを聞くとみんな手を止め、各々使っていた物を片付けていた。
 自分の分は片付け終えたけど、朝霧たちは当然のようにネットの片付けを押し付けてくる。仕方なく言う通りに片付けて倉庫から出ようとしていた。
 すると歩調に合わせて前髪がちらつくから、手をポンと当てる。ヘアピンが取れている。さっき倉庫の中の何かに頭が擦れたから、その時かもしれない。
 戻って足元を探していると、中の確認もなしに倉庫の重い扉が閉められた。
 こんなことをするのはあいつらしかいない。
 予想通り、ここからでもあいつらの耳障りな笑い声がしてきた。
 朝霧、一井の高い声。雪田たちの引きつった下品な声。
 気が済んだら出すつもりなのだろうけど、それがいつになるかはわからない。むやみやたらに反抗したところで状況は変わらないし、それなら別の出口を探してみよう。
 無駄足になるかもしれないけど、開けてもらうのを大人しく待つよりは気が済む。
 そういえば体育館を外から見たらいくつか扉が付いていた。倉庫から外に出られる可能性もゼロではない。
 壁を見回り、普段行かないような奥まで足を進めると、小さな階段の先に扉があった。しかしここは体育館の外側の壁ではないから、これは別の部屋に繋がっているのだろう。
 気になってドアノブを回すと、期待していなかったのにすんなり開き、光が差し込む。
 視界の隅に垂れる重い幕。正面には日光の降り注ぐステージが真っ直ぐ伸びている。ここは舞台袖だった。
 上がる機会のない場所でそろりと足を進め、幕から姿を現わす。
 私が出たことにも気付かず扉に向かって笑う五人を見下ろしていた。誰もいない倉庫で楽しんでね。
 下りようと階段へ足を出した時、朝霧と目が合った。
「いつのまに……!」
 その声に引かれた雪田たちが私を見て、ありえないというように口を開けていた。
「どうやって出たんだよ!」
「倉庫の中から舞台袖に行けるようになっていたの。別の出口を見つけることも想定できなかった?頭が弱いのね」
 そう返された雪田は肩を吊り上げ、窪田はじとりと見上げてくる。
「今度は出口という出口の鍵をかけてから閉じ込めてやる!」
「馬鹿ね、そもそも内側からは大体開けられるようになっているわよ」
 雪田の意気込みを早々に砕いてやると、肩を落としていた。
「でもさ、生徒が舞台袖に侵入して事故が起きたら……先生もドアにチェーンを付けるなりするよね」
 海堀は閃いたとばかりに顔を歪め、つかつかとステージに寄ってくる。
「もうやめなよ〜海堀。洒落にならないってぇ」
「ちぇー、もっと閉じ込めたかったな」
 朝霧に制された海堀は雪田同様に肩を落とすと、先に帰ろうとする一井たちを見て後ろに下がる。
「つまんない! もうこれ返すわ!」
 不貞腐れた海堀が手の内に包んだものをシュッと投げつけてきて、私の足元を滑り抜ける。
「取れないんだー!」
 最後に馬鹿にしてから朝霧たちを追いかける。
 足元に投げておいてどう取らせるつもりだったの?
 一人残された私は埃をまとったヘアピンを拾い上げ、指で拭った。