『私が心から信頼し、愛しているのはあなただけです』
『私の秘密を他に漏らしてしまえば、あなたもあなたの大事な家族も巻き添えになります』
『どうか冷静になってください。そんなふざけた嘘ではなく、私の言う言葉を信じてください』
私はスマートフォンが揺れ動くのをただじっと待っていた。
そして待ちに待った三上さんからの返信。
並んだ文字を素早く目で追う。
それは数秒で終了し、私の心は安堵した後、静かに地に落ちた。
愛しているのは、あなただけ。
それは、私が心の底から欲した言葉だった。
突然私宛に送られてきた写真の、あの若くてきれいな女ではなく……私だけを愛していると言って欲しかった。
だけど。
巻き添えになると三上さんが心配したのは、私だけじゃなかった。
私の家族……私をハウスキーパーとしか見ていない夫をも、彼は心配した。
いや、資産家である私の実家を、だろうか。
それとも、遠くで暮らす二人の娘のことを?
それは優しい気遣いにも見えたけれど、私が欲しかった言葉ではない。
胸の内に、ぽかりと暗い穴があいた。
『あなたがそういうつもりなら、私にも考えがあります』
三上さんが恐れているのは、あの黒いビニール袋の中身が世間に出ることだ。
それがわかっていたからこそ打ち込んだ、あのメッセージ。
考えがある、とは実に曖昧な表現だ。
私は、三上さんに何回もお金を渡してきた。
別荘を使いたいと言われれば、その鍵を渡してきた。
その度に、年老いた父に疑わしい視線を向けられたけれど、気にもならなかった。
三上さんが喜ぶなら……三上さんを、私に繋ぎ留めておけるなら。
こんなこと、いつまで続けるのだろう。
ふと、虚しさが込み上げた。
私だけを愛して欲しい。
この私の望みは、本当に叶っているのだろうか?
私は、これからも三上さんに会うことを望んでいる。
一緒にいて、肌を合わせたいと願っている。
それだけが私の望み。
三上さんは……それだけじゃない。
ううん、もしかしたら私を抱くのは、単に欲しいものを手に入れるためだけの手段なのかもしれない。
私が抱く欲と、三上さんの抱く欲のズレ。
本当は、ずっと前から気づいていた事だ。
『また金曜日が終わった真夜中に、あなたを迎えに行きます』
次に送られてきた三上さんからのメッセージを、ぼんやりと眺める。
ずっと見て見ぬふりをしてきた、ぽかりと空いた暗い穴。
それを覆い隠していた何かは、あっさりとどこかに吹き飛んでしまった。
きっと今までと同じように一緒に時を過ごしても、もう偽りの満たされた気持ちにはなれないだろう。
でも。
そうだったとしても……私には、もう三上さんしかいない。
私はゆっくりと息を吐きながらスマートフォンを手にとり、メッセージを打ち込んだ。
『はい、待っています』
と。